satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第33話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で日常を過ごす物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとフォースっていうちょっと珍しいコンビでやってます。今回もいきますですよ。
ラル「この二人が話してると、精神年齢がぐっと下がるときあるよね?」
フォース「……? そうか?」
ティール「そんなことないよね?」
フォース「ないない」
ラル「そういうところだよ」


手早く手続きを終わらせると、トレーニング室の鍵を手渡される。
「今日、使用希望者はいませんので、終わったら鍵をこちらにお戻しください♪」
「ふーん? いないんだ。……貸し切り状態だな」
「うふふ。お二人が大暴れしても大丈夫ですね」
「そして、壊して弁償かぁ」
「ですねぇ~」
しないから! 大丈夫だから!!
リンとフォースで物騒な話をしているけれど、そんなことはぼくが許さない。加減を知らない子供じゃあるまいし。
「着替えよう。ほらほらー!」
「はいはい」
「ごゆっくりどうぞ~♪」
リンに見送られながら、ぼくはフォースの背中を押して更衣室へと向かった。
ここのギルドは正面玄関……一階は誰でも自由に出入りが出来る。主に依頼の受注や、お礼品の渡し口……仕事の後処理をする等がメインだけど、探検隊、探検家達の情報交換の場でもある。カフェが併設されていて食事を取りながら話も出来るし、聞かれたくなければ、ちょっとした個室を借りて利用も可能とあって、利用者は多い。
その一階から下に降りると、探検隊、探検家登録者のみが立ち入り許可されているところだ。ぼくらの目指すトレーニング室を筆頭に資料の閲覧、コンピューター利用、医務室等、探検のための支援を行う施設や情報が揃っている。もちろん、機密事項文書はここにはないけれど、ある程度の資料は見せてもらえるし、コピーも頼めばしてくれる。それなりに制約は存在するけれども。
ちなみに、一階より上の部分はギルドメンバーの私生活スペースで、ギルドメンバーのみが立ち入り出来る。ぼくらも以前、籍をおいていた関係で上に上がらせてもらえるけれど、最近は久しく訪れていない。とはいえ、親方に気に入られているラルはちょこちょこお呼ばれしているみたいだけど。帰ってくると決まって、叫び散らしているんだよね。何をしているのか気になるけど、教えてくれない。

ぼく達はお互い、動きやすい服に着替えを終えると、トレーニング室の鍵を開ける。文字通り、トレーニング用の器具が揃っていて、使いたければ自由に使用できる。まあ、こっちは目当てじゃないんだけど。
ぼくとフォースは器具の置いてある部屋とは別の扉を開けて、内鍵をする。ここに物はほとんどなく、ただ広いスペースがあるだけだ。床は少し弾力のあるマットみたいな素材だ。怪我をしにくい造りになっていて、壁もある程度の高さまでクッションに覆われている。
「こんなところあるんだな。初めて知ったわ」
「ぼくとラルはたまに使うんだけどね。君を連れてきたのは初めてか」
「ラル、この場所知ってるのかよ。じゃあ、なんでおれとやるときは外なんだ」
時々、ラルがやる気のないフォースを連れ出して、なんちゃって試合するときは、確かに人気のない屋外だ。その理由もなんとなく分かっている。
「オープンな方がラルにあってるから、かな?」
「でも、お前とやるときはここなんだろ? 意味分からん」
ぼくとフォースでは、構え方が違うんだろう。強いのはフォースの方だし、ラルも全力が出せるのは、限られたスペースよりも、広く開けた場所だ。自分にあった場所で挑みたいんだと思う。
「なるほど。ラルもせこいことすんね」
「チート級の強さを持つフォースに言える?」
「お褒めの言葉として受けとるわ」
そう言うと、フォースはニヒルに笑って見せた。特に嬉しくもないらしい。当たり前と言えば当たり前か。フォースがぐっと背伸びをしながらぼくから離れると、向かい合うような位置に立つ。
「ルールは?」
「最初は武器なし、技なしで。そこから色々試していきたい。見た感想を踏まえて、アドバイスしてくれると嬉しいかな」
「ほーい。いつでもいいよ」
フォースはいいとは言うものの、構えの姿勢も取らず、左手を腰に手を当てて立っている。これから戦うってときは基本、構えから入るものだと思うんだけれど、これが彼のスタイルだ。
ぼくは右足を半歩後ろに引き、少しだけ腰を落とした。接近戦且つ肉弾戦は全くの専門外だから、見様見真似ではあるけれど、授業で基本は押さえている。基本が通じる相手なのかは、また別の話かもしれないんだけど。
ふっと息を短く吐くのと同時に前に走り出す。一気に距離を詰めて、突きを繰り出す。
「てやっ!」
「まあ、そう来るよね」
予想の範囲内らしく、軽々と後ろへジャンプして避けられる。でも、こっちもそれは予想内だ。勢いを殺さないよう、更に一歩前に踏み出して回し蹴りにシフトする。
「やあぁっ!」
「おっと」
頭を狙ったつもりなんだけれど、これも読まれていたのか体を屈ませて避けられた。そして、次はこっちの番だと言わんばかりに素早く動いた。気が付いたら、フォースはぼくの視界から消えていた。しまったと思ったときには、ぼくの体は地面……ここでは床か。床に倒されていた。何が起きたのか理解出来ない。何をされたんだろう。そして、かなり不服だ。こんなにも早く終わらされるなんて思ってなかったから。
「……えー?」
「不満か? それならもっかいやる?」
ぼくのことを見下ろしたフォースがニヤリと笑う。その表情にムッとして、ぼくは腹筋を駆使して一気に跳ね起きる。
「当然!」
「ははっ! 威勢のいい奴は嫌いじゃねぇ。納得するまで相手してやる。少しでもおれを本気にさせてみろよ」
初めから勝てる相手ではないとは思っていたから、負けることに抵抗はない。ないけれど、少しでも焦った顔をさせてやる。それが今日の目標! 頑張れ、ぼく!

結果から言おう。全敗でした……
あれから、条件を変えて色々やってみた。最後はもうやけくそで、何でもありのルールとも呼べない条件下でもあっさり負けた。
そんなぼくは大の字になって天井を見上げている。ふて腐れているわけではないんだけど、脱力したと言うのが正しいと思う。何十回も重ねれば、何か見えるかもと期待していたが、残念ながら何も見えなくて、今に至る。
「武器まで持ち出したのに残念だったな」
声のする方をちらりと見ると、涼しい顔のフォースが隣に座ってきたところだった。流石、継承者を守る騎士様と言ったところか。フォースは時々、アラシをナイト様と呼称するけれど、フォースの方が余程騎士らしい。何があっても揺るがない強さは、主のための強さなんだから。
「おれが騎士なんてお偉い地位かよ。ないない。どっかの雇われ傭兵が関の山さ」
ぼくの心を読んだフォースが苦笑を漏らしながら、軽く否定した。
「雇われ……ねぇ? それでも強いってことには代わりないし、ステラ……継承者のための力だろ」
「こーんな平和な世界じゃ、こんなの宝の持ち腐れってもんだ。まあ、楽でいいけどな」
フォースは紅く怪しく光る瞳をぼくに向ける。その目の奥で何を考えているのか、ぼくにはさっぱりだった。フォースみたいに心を読めるわけでも、ラルみたいに推測が出来るわけでもないんだから。
「乱世の方がお好み? 次から次へと強敵を相手にするみたいな感じの」
「やだ。しんどそう。そう言うお前はそっちの方がいいのか? 自分を含めて、周りが傷つきながらも前に進む青春がよかったってか」
「死んでもごめんだね」
地獄かよ。ぼくはまあ、百歩譲っていいとしても、周りってことは仲間がやられるってことだろう。そこまでやわな仲間達ではないけれど、危険がないに越したことはない。特にラル。普段の行動ですらひやひやするのに、そんな危ない世界だと命がいくらあっても足りないよ。どんな無茶をするのやら。
「あいつなら世界を救うためとか言って、代わりに死にかねないな。身代わりになるとか」
「ありそう。平和でよかった~」
「だな。おれもすぅ達を守るために頑張らなくていいし、平和が一番。……っと話が逸れた。アドバイスだけど、ティールは型にはまりすぎ。奇抜な行動をされると、処理が追い付かない。なんだろ。フェイントに見事引っ掛かるタイプっつーの?」
「そ、そんなこと……ある、かも」
「レイ学の生徒相手だと、ほとんど実力差が目に見えてあるから、倒せるんだよな。レベルの差って奴。けど、大会で言う、勝ち上がる奴らとは実力が拮抗しているから、基本的な型と攻撃じゃ簡単には倒せない。相手も対応するだけの実力がある。適応力がないが故に、お前が慣れる前に終わるって訳」
「はあー……なるほど」
「解決策としては臨機応変に立ち回ればいいんだけど……つか、ティールは一人よりも大勢だったり、誰かのバックアップがあって、初めて真価を発揮するタイプだと思うんだよねぇ? お前の得意技、範囲攻撃だろ。ラルもそれを分かってて動いている」
言われてみると、ダンジョン内では確かにそうだ。大量の敵に囲まれたとき、ラルは一歩後ろに下がって、後方支援に回る。あるいは、ラルが前に出て、ぼくが後ろから攻撃をする。……なるほどね。
「ぼくは一人じゃ駄目ってことか」
「十分強いけどね。単騎でやれるおれやラルとは違うってだけ」
君が一人の方がいいのは分かる気もするけど、ラルも一人の方がいいの?
「いや? というか、あいつの武器は力の強さじゃなくて、頭の回転率だ。自分の強さも弱さも理解している。だから、その場にあった動きと作戦を瞬時に見抜くんだ。それもいくつもな。状況に合わせて修正をして、正解……勝ち筋を見つける。そこに突き進むんだ。それが一人だろうと多数を率いていようと同じだ。やることは一緒だから」
……とんでもないなぁ。ぼくの相棒。
「そうだよ。お前の相棒はとんでもないの。それを理解した上で付き合え」
「うーん。そうだね。ぼくが足を引っ張るのはラルのよさを消しちゃうよね」
「そうじゃないけど……まあ、いいや」
「君の強さは……やっぱり、力?」
「それもあるけど、一番は経験かな。今まで色んな時代を見てきて、体験したっていう経験値。そこら辺の奴より場数を踏んできた。それに伴った自信だってある。それに見合った力の使い方をしているだけだ」
経験。……確かに、それは大きな武器かも。
「お前の武器は安定した命中度と攻撃だ。一定のダメージソースを産み出せるだけの力量がある。あとは、それを使いこなすだけの力、策を練るとか観察力とかだな。それを身につけられれば、もっと伸びると思う。……今のお前に足りないものをラルが補ってるから、スカイは強いんだぜ?」
「それは自信持てってこと?」
「そ。今でも十分に強いっつたろ? 努力を忘れないのもお前の強さ。おサボり大好きなおれ達とは大違いだね。ま、ラルは隠れて特訓するのがお好きなようですけれど」
ふふ。そうだねぇ……
しばらく、お互いにぼんやりしていたけれど、ぼくがゆっくり体を起こすと、スポーツドリンクの入ったボトルを渡してきた。無言で受け取り、蓋を開けながら話しかけた。
「そろそろ帰ろっか。どうせならうちに来る? ラルのことだから、皆の分のご飯準備してると思うよ。食べてけば?」
「あいつ、邪険にしないか?」
「嫌な顔はするだろうけれど、ステラ達がいるなら追い返さないよ。いなかったとしても、追い返すもんか。ラルは優しいから。ラルの優しさはツバサの折り紙つきだよ?」
「ツバサ姫基準は駄目だろ。ラルはツバサに甘いんだから。……けどまあ、一理あるか。流石、お前の嫁さんだ。よく分かってる~」
丁度、スポーツドリンクを飲んでいたところの不意討ちだったから、動揺して思い切り気管にスポドリが入ってしまい、むせてしまった。
「んぐっ!? げほっ! けほ!」
「くくっ……反応が可愛らしいね、ティール」
「けほっ……んんっ……君がいきなり変なこと言うから! 嫁じゃないし! あり得ないから!!」
息を整え、慌てて訂正するも、残念ながら発言者はとっくに部屋を出ていった後だった。置いていかれた。しんとなった部屋でなんとなく、ラルがぼくの相手だったらと考えてみる。エプロン姿で笑顔で出迎えてきて……お帰りって声をかけてくれて……?
「……うん。今とあんまり変化ないかも。無駄なことしてないで早く着替えて帰ろう」



~あとがき~
なっっっが!!!
でも、最後の方のはやりたかったのでやりました。

次回、日常へと戻ります。何か事件が起こる……わけでもなく、ほのぼのな学園生活をお送りします!

本当なら、武器なし技あり、武器あり技なしとか色々するつもりでしたが、カットしました。なぜって長いからです。ティールがカッコ悪くやられまくるシーンもフォースがかっこよく勝ちまくるシーンもカットしました。ってことで、皆様のご想像にお任せします(笑)

この世界の二人にさりげなく、本編を否定するような文章入れました。残念だけど、お前らの現実はあっちだ!!! なんかもう自虐ネタっぽいね。ブーメランでふ(汗)
ティール「ここでは夢を見させて!?」
フォース「本当にな」
う、うるしゃーい!!

ギルドの内装についてもざっと説明しました。どれだけ広いのかとかはあんまり考えてませんが、よくあるファンタジー世界のギルドを想像してもらえれば幸いです。このレイ学世界限定の弟子とかもいそうですね。魔法を使う探検家とか、探検隊とかいそうです。全く考えてないけど。

ではでは!