satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第212話

~前回までのあらすじ~
過激表現に注意だ。死ネタとか暴力表現とかそこら辺だ。いいな!?
前回、ピカが復活してポチャと協力してるところです。終わる。展開早い。
ピカ「さっさと終わらせたいという心の現れ」
ポチャ「あはは……」
きっと、今回でVSガオガエン戦は終わりでしょう。多分。きっと、恐らく……?
ポチャ「これは終わるよ!」
ピカ「どんでん返しなんていらねぇ~」


逃げ場のないガオガエンにピカの攻撃を防ぐ手立てはなかった。赤い電撃を散らしながら、神器、ピンキーの刀身に負荷をかけていく。力ではピカの方が劣っているはずだが、雷姫の身体強化のお陰だろう。ガオガエンに押し切られることもなく、ピカが力任せにガオガエンの武器を弾いた。この時点で武器破戒とまでは至っていないものの、敵の手から武器を引きはがしたという事実は大きい。
『マスター』
「分かってる。神霊の宿る武器を手放せば、その能力は弱まる。……ポチャ、そいつにとどめさせるよ!」
「え、あ……うん!」
地面に着地をし、間髪入れずに指示を飛ばす。戸惑うポチャには目もくれず、ピカ自身はピンキーの落下地点へと走った。自我を失ったとはいえ、自分を守るために実体化してくる可能性もある。そして、その神霊が牙を向けば、形勢逆転もありえるのだ。
思ったより高くまで跳ね上げてしまったらしく、ピンキーは剣のまま、くるくると勢いよく回転しつつ落下していた。ピカはその真下に来ると、再び雷姫を構えた。
「実体化するなら、ガオガエンなのかな~……っと!」
『主がそうならそうだろうが……む?』
予想通り、ピンキーは空中で姿を変えた。しかし、大剣からガオガエンではなく、ライチュウへと変化したのだ。ガオガエンだと思っていたピカは予想外の展開に、構えていた雷姫を降ろした。このような状態では、反撃を受けてしまっても文句は言えないが、その心配はいらないらしい。ピンキーは体を捻り、着地点のずらしてピカとの衝突を免れた。
「ど、どういう……暴走して」
意味も分からず、ぽろりと素朴な疑問を零した。そんな彼女にピンキーはにこりと穏やかに笑う。
「しています。今も貴女を斬りたくて仕方がない」
「勝利宣言でもした後に私を斬り殺すつもりなの?」
降ろした雷姫を構えようとしたが、ピンキーはゆっくりと首を振る。
「いいえ。少し、貴女とお話したかったの。……雷姫の主様、神器を操る貴女と」
「……? すぐに終わるならいいけど」
『マスター、そんなことをしている暇はないのでは?』
「ないけど、せっかくだし」
雷姫自身はさっさと斬り倒せと説得したいが、ピカが簡単に自分の考えを変えないことは何年も仕えてきて十分すぎるくらい理解している。雷姫は内心呆れつつも、少しでもおかしな気配を感じたら問答無用で実体化でもして斬ってやると決意する。
「ありがとう。戦いの中で……遠い意識の中でも、気付いた。貴女は私を壊す選択を最後まで拒んだ、優しい子だと。そして、雷姫の主様……貴女なら、私の主様を助けてくれると思ったの。お願い。主様を助けて」
ピンキーは酷く悲しい表情を浮かべ、ピカに向かって懇願した。ピンキー……彼女の言う主が誰なのかはさっぱりであった。ピンキーの所有者はガオガエンであると思っていたし、疑っていなかったためである。
「雷姫の主様、お願いです」
「誰のこと言ってるのか分からない以上、易々と受け入れられない。ピンキーの本当の所有者ってのは誰?」
「イズというオスのライチュウ。ピストにいいように使われて、私も利用されイズと離れ離れになった。……もう、暴走した私は神霊ではないし、神器ではないの。主様の剣にはなれない……お願い。私はもう、駄目だけど、イズだけは、助けて」
ピンキーの所有者の名前を聞いても知っている名ではなかった。が、もう一つの名前には心当たりがあった。ピカの中でずっと黒幕ではないかと疑っていた人物である。
「……ピスト・フォレスか!? 今回の件、黒幕はやっぱりあいつが」
「イズ、ごめんね……ごめんなさい」
ピンキーはピカの問いに答えることはなく、顔を覆い、嘆くように謝罪の言葉を繰り返した。これ以上は会話出来そうにない。彼女自身、暴走してしまった先に未来がないのは知っていた。こうなるのも理解してたはずだ。ピカは雷姫を強く握り直し、しっかりと彼女と向き合う。
「分かった。イズさんのことは任せてくれていいよ。私の出来る範囲で頑張ってみる」
「ありがとう。……ありがとう、雷姫の主様。……最後のお願いです」
ピンキーは顔を上げ、優しく笑う。そして、落ち着いた声でゆっくりと言葉を紡いだ。
「私を、壊して」

ピカがピンキーと会話を交わしている頃。その場に取り残されたポチャはピカに言われた通り、ガオガエンにとどめを刺そうとしていた。とはいえ、彼のすることといえば、スイとセツに指示するくらいである。「そのまま、全身を包み込め」と。その指示は口にするまでもなく、二振りは忠実に遂行していた。その光景を眺めつつ、動かなくなったガオガエンを見上げる。あんなに牙を向けてきていたというのに、今はぴくりとも動かないのである。
「この人も、被害者……なんだよな」
ピカの言葉から、このガオガエンが何かに巻き込まれ、利用されたのではないかという考えをするのは簡単であった。そもそも、仮にこのガオガエンが生きていたとして、あんな回復力があったとしても、ヴァルツとピカの猛攻にびくともしないのはどう考えてもおかしな話である。耐えられたのは、何らかの能力が与えられ、かつ、神器の力のお陰であったと。戦いが終わった今、じっくり考えればたどり着ける答えであった。
「人体実験、か。……非道なことをする」
『あい。おわったよ』
『せーめーはんのー、まったくないのら』
ガオガエンが完全に氷に包まれたのを目でも確認し、二振りの完了の声を聞く。心なしか、二振りの声も沈んで聞こえてくる。
『てぃー、このひと、ずっと、かなしかった?』
『ないてた。いたかった?』
「多分ね。……残念ながら、ぼくには死者の声は聞こえないけれど、きっと辛いことからは助けられたと思う。スイとセツのお陰だよ。ありがとう」
『あい! てぃーのためだもん』
『うん。だーいじょぶ!』
「ごめんね。本当なら戻してやりたいんだけど、ピカの指示があるまではこのままでいてくれる? 完全に倒せたかはあの神器を壊したっていう確認をしないと……!?」
ぞわりと全身の神経が逆立つ感覚に襲われた。脅威は去ったはずなのに、警戒を解くなと全身が訴えているかのようである。とはいえ、スイとセツを剣に戻すわけにもいかなかった。ここでようやく押さえた敵を解放しましたとなっては元も子もない。
「誰だ。……もう、戦いは飽き飽きなんだよ、こっちは」
『てぃー! なんかくる!!』
スイの忠告を聞き入れ、目一杯横に飛び退いた。そして、これは完全に咄嗟の判断だったが、スイとセツを自分のところに呼び戻した。そうしておかなければ、と瞬時に思ったのだ。先程の発言を一転させた主から理由を聞き出さず、二振りは素直にポチャの手元に収まる。そして、支えを失ったガオガエンは前のめりに倒れる……はずだった。倒れる前に何かに貫かれ、くし刺しになったのだ。よく見ると、それは黄金の毛並みを持つ尻尾見える。その尻尾が何もない空間から伸びてきたのだ。そこに別空間に繋がるホールがあるかのように。
「なっ……!?」
「あら、避けましたの?」
どこからともなく、否、尻尾が出てきている穴から声が響いた。トーンからして、女の声だろう。尻尾をガオガエンから引き抜き、その尻尾を持つ人物が姿を現した。妖艶な笑みを浮かべる、キュウコンである。
「初めまして、大海のポチャさん。私、紅と申しますわ」



~あとがき~
ほら、ガオガエン戦は終わった。

次回、フォースを追い込んだ紅が登場。いったいどうなる!!

初めましての名前が二つあるかな?
まあ、今後出てくると思うので、特に何も言いません。

ではでは。