satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第214話

~前回までのあらすじ~
暴力表現、過激表現に注意。
前回、紅が牙を向きました。ポチャは耐えきれずにダウンしましたが、ピカは変わらずに対峙してます。こんなはずじゃなかった。
ピカ「出たよ。いつものやつ」
ポチャ「勢いに任せてここまで来ちゃったやつ」
はい。いつものやつです……
ま、なんとかなるやろ。


「さて。……逃げても追いかけてくるなら説得するか、倒すしかこちらとしてはやることないんだけど」
「私の話、聞いてくれるの? それで納得してくれるなら楽でいいわ」
納得など出来るはずがないが、ピカとしては何としても脱出する方法を見出だす時間がいる。ここは相手の話とやらを聞き、相手の目的等を探るのも同時に行える。リスキーではあるが、これしかやれることがない。
「私自身が目的なの? それだけのために、こんなことをしたわけ」
「いいえ。確かに私達のトップ、ボスのための贄を探していたのは事実よ。それのために私の造り上げたお人形達を襲わせたの。ほら、極限状態であれば、本性を見られると思ってね」
紅はそのボスのための贄を探し、たまたまピカに目をつけたのだろう。そして、目的の人物を見つけたために、次のステップへと進んだのだ。目をつけられたピカとしては、とんでもないことに巻き込まれたのだが、更に質問を続ける。
「仮に私が捧げられたとして、何になる? 私が私でなくなるみたいだけど、何かに乗っとられるのかしら」
「勘がよくて助かるわ。私達のボスはね、実体がない……だから、その体が欲しい。死体でもいいけれど、すでに事切れた体など早くに朽ちるでしょう? それなら、生きている人からいただいた方がいいじゃない。そして、どうせなら強い肉体と力もいただいてしまおうってね」
「はぁ~……なるほど?」
「これは喜ばしいことよ。ボスはこの世界を牛耳るお方。その手助けが出来るんだもの! 貴女は女王となるわ」
話が大きくなってきたと感じると共に、似たような言葉をどこかで聞いたなと思った。記憶の棚を少し探ってみれば、すぐに思い出した。
「……あぁ。ダークライに同じことを言われたのか。あれは悪夢だったけど、これも同じように悪夢ならどれだけ楽だったか。……じゃあ、何か? 私は敵の糧になってくれってお願いされてるのかな」
「敵だなんてとんでもないけれど……貴女の立場からすると、そうね。私達の目的のため、礎になってもらいたいわ」
かなりぶっ飛んだお願いをされている。そんな風に考えざるを得ない。出来るかと突っぱね、ここで話を終わらせることも可能である。しかし、今それをしたところで大した収穫は得られていない。ここはもう少し探りを入れようと、ピカはあくまで冷静であった。
「あんたらの目的って何? この世界を黒く染めてやる的な」
「あながち間違ってはないわね。……貴女達が阻止した本来の歴史をここに復活させることよ」
ピカとポチャが大きく関わった歴史的事件とは、時の歯車事件、ダークライによる悪夢事件を指している。それを復活させるという言葉の意味は、この世界の崩壊を意味する。同じ様な事柄を起こせないはずだ。時の歯車、時を司る『時空の塔』はディアルガによって守られている。当時こそ、ダークライの思惑で正気を無くし、引き起こされたものだ。その元凶のダークライは時空ホール内での事故により─パルキアによって、故意に起こしたものだが─記憶を喪失。現在はクレセリアの監視の下、各地を放浪していると聞く。塔の崩壊も悪夢も引き起こす原因は今はない。が、紅は同じ規模の何かを引き起こすつもりなのだ。
「それに意味を感じないけれど」
「貴女はやることなすこと全てに意味を探し出すの? それにこれはいわゆる、リセット。世界のリセットよ」
「んー……同じことしか言えないんだけど、さっぱり分からない。けどまあ、つまり、この世界の平和を壊すんだよね?」
「ふふ。この今を平和と言うなら、そうね」
「何もかもなかったことにする、と」
「そうね。少なくとも、今ある歴史は消え去るわ。今の文明も文化も……一度、全て無に還す。そうして、歴史の修正を行うの」
「まあ、本来の歴史で言えば、この世界は時が止まって、星の停止を迎える運命だったけどね。それを変えたのが気に入らない?」
「いいえ。もっと先よ。私達を拒むこの世界を壊したいの」
歴史を改変されたのが気に食わないというよりは、今あるこの世界そのものが気に食わないらしい。それを壊し、一からどうにかしたい。自分達の思い通りの世界を創り直す。それを目的としている。そのようにピカは感じ取った。
「なるほどね。理解はしたよ。……理解はしたけれど、賛同はしない。私はこの世界が好きだからね。というか、守るためにいるんだし、過去の私がしたことを否定なんて出来ない。というわけで、私は貴女の敵になるわ」
「残念。それなら、無理矢理拐うしかないわね」
紅の瞳に殺意の炎が揺れる。しかし、それに動揺するピカではなかった。ニヤリと勝ちを確信したかのように笑う。それを不信に思った紅は敵意を剥き出しのまま、首を傾げた。
「あら、余裕ね? 戦う気力なんてないはずなのに?」
「私にはなくても、頼もしい仲間にはあるもんだよね?」
身に付けているスカーフをひらりと捲ると、探検隊バッジがつけられていた。探検隊なのだから、身に付けていて当たり前なのだが、バッジの中心が規則正しく点滅を繰り返していた。
「私のこれ、転送システムはないし、位置情報も送信しないけど、通信だけは出来るんだよねぇ? 通話に特化したおもちゃなの♪」
「……っ! そういうことっ!」
紅はピカの意図を読み、その場から飛び退いた。その瞬間、目の前に誰かが落ちてきた。突然現れた人物は距離を取ろうとする紅を追いかけ、手元にある武器を操る。
「俺のかーくん……もとい、大切なお友達のピカちゃん達をいじめたのは君かなぁ~♪」
空から現れたウィルはにこにこの笑顔を浮かべながら、槍の突き攻撃を次々と紅へと繰り出す。それを避けながら、紅の頬には汗が伝っていた。予想外の展開にどう動こうか悩んでいるのかもしれない。
「ゼルネアス……! 神である貴方が下界のいざこざに首を突っ込むのかしら」
「かんけーないね! 大体さぁ、俺様、そーゆーのきらぁい! 神々に作られた世界だ。つまり、俺様達の世界。好き勝手するような邪魔者は排除すべきじゃん? どんなに愛するべき子らでもなぁ?」
キャラ作りなのか、本音なのかいまいち分からないような主張をする。が、ウィルの猛攻に紅が戸惑っているのは間違いなかった。このまま任せてもいいような気がしていたが、遠くで声がした気がして、ピカは上を向いた。
「きゃあぁぁ!? るーくんのばかぁぁ!!」
「ウィルさん、急にいなくならないでぇぇ!!」
空を飛んでいたのはウィルだったのだろう。そんな彼がイーブイの姿で目の前にいるのなら、乗っていた人達も同じように落ちるしかない。つまり、イブとチコが真っ逆さまに落ちてくるところであった。彼女達に空を飛ぶ手段はない。回避する手立てはあるだろうが、あの状態ではそれを考える暇もないだろう。とりあえず、ピカは二人に向かって……しかし、やる気のない声で叫んだ。
「わー、あの女の子達をたすけて~! フォースおにぃちゃぁん」
「お前にお兄ちゃん呼びされたくないっ!」
何もないところからフォースが現れ、イブとチコを抱き寄せた。くるりと体を捻り、“アイアンテール”で硬化させた尻尾を上手く使い、落下ダメージを逃がした。
「ピカさん! 大丈夫なんですか!?」
着地したのと同時にフォースの腕から離れ、イブがこちらに駆け寄ってきた。何がどう伝わっていたのかピカは知らないが、心配をかけていたのは目に見えて分かる。
「大丈夫じゃないけど、大丈夫。イブちゃんとチコちゃんは寝ちゃってるポチャの近くにいてね。出来るなら、守っといて……ま、ある程度、スイちゃんとセツちゃんがどうにかするだろうけど」
ポチャが倒れてしまったために、スイもセツも彼の近くに転がったままになっていた。それでも、主を守るための防御くらいはしてくれるはずだ。ポチャの近くにいれば、その身くらいは守れるだろう。
ピカはフォースのところまで近寄り、彼を見上げた。彼も激戦を潜り抜けてきたのか、所々怪我をしているらしかった。この中でもトップクラスの強さを持つ彼がここまで追い込まれているのも珍しいとピカは思った。それほどの相手がいたのだろう。
「手酷くやられてますね、フォース君?」
「そっくりそのまま返す。鏡見ろよ。怪我人」
「いや、フォース君もだからね?」
「こんなの怪我した内に入らん」
それだけを言い残すと、フォースもウィルの加勢に入る。双剣を創り出し、一気に畳み掛けるつもりなのだろう。対するピカはこれ以上、戦うつもりはなかった。底知れない紅を相手するのは嫌だったのだ。そのため、二人に完全に任せる形に遠目から観察していた。このまま進めば、紅の負けは確実であり、こちらが有利にであるのは目に見えてわかる。
「ここまでかしら」
そう呟くと、紅がウィルとフォースの攻撃を避けると、跳躍して距離を取る。紅の背後に空間を切り取ったような暗闇が現れた。
「貴女の理解が得られなくて残念ですわ。けれど、必ず手に入れて見せますの。……それまでは、お別れです。ピカ様?」
背後の闇に覆われると、紅はこの場から消えてしまった。この場を支配していた緊張感から解放されたピカは、へなへなと力が抜けてしまった。
「やっと終わったぁ……雷姫、長い間ありがとね」
『うむ。まあ、奥の手を使わなかっただけでも善戦したと言えようぞ。それでも、ひやひやしたがな。しばらくの間、我を頼るのは避けるべきだ』
「そうだね。流石にやりすぎた」
『自覚しておるのなら、よい。ではな』
「二、三か月は呼び出し厳禁かなぁ……っと。ウィルさん、ありがとうございます。無理させてませんか……?」
雷姫を消し、ゆっくりと立ち上がった。神々の掟についての知識のあったため、申し訳なさがあったのだが、ウィルは気にした様子はなく、パッと明るい笑顔を見せた。
「お礼なんていいよ! 何か言われてもピカちゃんを守るためですって、君を言い訳に使わせてもらうから!」
「それでどうにかなるなら、どうとでも使ってください。あのキュウコン、どう思いました?」
ほんの少し考えた後、ウィルは手元の槍を消しながら口を開いた。
「そおね。底無し沼、かな。俺とかーくんで攻めてみたけど、決定打は与えられなかった。まあ、かーくんも怪我の回復してなくて、本気出せなかったし、俺も神様としての立場もある。お互い、本気じゃなかったってことだね」



~あとがき~
少し消化不良な気もするけど、まとめていきます。

次回、夏祭り編(シリアスバトルパート)終わらせてくぞ~♪

何年振りだよってレベルで全員集合だ。いやまあ、ポチャ君、すやすやしてますけどね。

ウィルが俺様とかなんとか言ってますけど、なんでだろうか。本音なんでしょうね。多分。
私の中では一人称が『俺様』のときはほぼ丸っと自分の考えそのものを口にしていると思います。
激おこぷんぷんでも俺様+口悪くなるんですけど、そんなウィルが出てくるのかは今のところ微妙ですね。

ではでは!