satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第215話

~前回までのあらすじ~
紅も退け、どうにかこうにか場を納めたピカ一行です。やっと終わりそう~! 夏祭り編!!
ピカ「ようやくですわぁ」
イブ「やりましたね! ピカさん」
もう少しお付き合いください! これが終わればわいわいガヤガヤ出来るからな!!
ピカ「終わるまでも長いけどな」
イブ「……ですね」
おう……(´・ω・`)


ウィルの言葉にピカは少しだけ考えるものの、今することではないと切り替えて、ポチャの傍へと近付いた。そして、イブとチコの頭を同時に撫でた。
「お疲れ様! 大変だったでしょ。ありがとうね、助かった!」
この言葉で緊張の糸が切れたのだろう。二人はお互いの顔を見合わせた後、瞳を潤ませながらピカに抱きつく。流石に尻餅をつきつつも、どうにか二人を受け止めた。こんな反応されるとも思っていないピカは戸惑いを隠せなかった。
「お、おぉ……? どしたぁ?」
「怖かったぁぁ!! 色々! 分かんないことばっかり起きてて、わけわかんなかったです! 意味わかりませんよぉ!」
「すーくんもピカさんも、ポチャさんも、傷だらけなんですもん! どうなるかと思いました!」
「……そっかぁ。そうだよね。大丈夫だよ。もう終わったからね」
ピカの見ていないところで、彼女達も戦っていたのだ。不馴れな戦いで、フォースやウィルが常に一緒にいたとはいえ、不安だったはずだ。そんな中でも最後までいてくれたのである。
「心配しました! すーくんもね!」
イブの睨む先に、こちらへと近付いてきたウィルとフォースの姿があった。フォースはちろりと舌を出して、嫌そうな表情を浮かべた。
「うえ。飛び火してんじゃねぇか。どうにかしろ」
「どうにかとは。……フォース君、皆を連れて先に帰ってていいよ。私はお偉い様とお話ししてくるからさ」
「それはいいけど、皆ってのは……お前を除いた皆?」
「そ。別に着いてきてもいいけど、面白くないよ。ギルドはまだ鍵閉まったままだろうから、うちにいていいから」
「……了解。……兄貴は自分のところに帰れ」
「んえ~? かーくん、つれなぁい」
横目で冷たく言い放つフォースに、ウィルは頬を膨らませながら、フォースの頬をつつく。構ってくれアピールが凄まじく鬱陶しく感じているが、手助けしてくれた恩があるため、無下にも出来ない。が、邪魔なものは邪魔なので、フォースは遠い昔にも感じる、バトルロイヤル時にずっと意識していた笑顔を見せた。
「後でゆっくり話するから。ね、お兄ちゃん」
「分かった! 帰る!!」
「フォース、ウィルさんに対して……その、結構雑じゃない?」
フォースの言う通り素直に帰ったウィルを見送り、それを見ていたチコが若干の呆れ顔を浮かべていた。しかし、フォースは詫びれるそびれもなく、さも当たり前かのような返答をする。
「あれくらいでいいんだよ、あの人は。……さて。お前らも帰るぞ」
その呼び掛けで、イブとチコはピカから離れた。まだ少しの心配の色を見せてはいるが、これ以上は何も起こらない。それを伝えるために、安心させるために笑顔のまま、もう一度優しく撫でた。
「すぐ帰るから、待っててね」
二人が頷くのを確認し、ピカはポチャの愛剣であるスイとセツを拾い上げる。
「スイちゃんとセツちゃん、お疲れ様。あと、白雪ちゃんもね。久し振りに見たけどさ」
『あい。ぴー、だいじょぶ?』
『てぃー、ずっとしんぱいしてたよ』
「大丈夫。まあ、もうちょい頑張るけどね。先に帰っててね」
二振りをポチャの持っていた鞘に戻し、フォースに目配せする。小さく頷いた彼はポチャを軽々と持ち上げた。この中で疲れの色を一番見せていないのはフォースである。やはり、このような戦場は慣れているんだなと思いつつ、ピカは手招きをした。
「ちょいちょい。耳貸して」
「あ? 何」
顔を浮かべていた。近づけてきた彼にそっと耳打ちした。これは話すべきなのかと悩んでいたのだが、しないわけにもいかないかと決意したのだ。
「話がある。明日の夜、海岸で待ってるよ」
「……? おう」
何の話なのかピンと来ていないらしいフォースは不思議そうな表情でピカを見るものの、ここでは追及せずに、イブ達の方を振り返る。二人にどうしたのか聞かれているが、完全にすっとぼけてかわすつもりらしく、知らんの一言である。
「じゃ、大人しく待っててね! また後で」
三人に手を振り、ピカは本部方面へと向かった。どうせなら、各自解散してくれててもいいのだが、無事に戦い抜いた人々は集まるのが普通である。帰るのも手ではあるものの、話がしたい人物がいるため、ここで帰るわけにもいかないのだ。

走る元気はないため、のんびり歩いて数分かけて到着した。どれだけ集まったのかピカは見ていないため知らないが、そこそこの人数は生き残っていたらしく、お互いを労い合っているらしい。
「はわぁ~……思ったより残ってら」
そっと救護テントに寄り、トレジャーバッグと探検隊バッジを回収してきたため、ピカの肩にはしっかりとバッグが掛かっていた。怪我した人達の手当てでてんやわんやしていたものの、知り合いの顔は特に見かけなかった。
「ヴァルツさん、ぶっ倒れて帰ったか」
「帰っていない。生きていたか」
「うへぇ!? びっくりした!」
会いたかった一人、ヴァルツが後ろから話しかけてきた。彼の見た目は最後に別れたときと怪我などもなく、大して変化はない。フィフィとの共闘後、戦場には戻らなかったのかとも思ったが、ヴァルツがそのようなタイプでもないことは周知している。確認のためと興味半分で、一応、聞いておく。
「楽でした?」
「あのガオガエンと戦うよりは」
「……戻ったんだ、やっぱ。……相方さんは?」
「しばらくは別行動していたが、途中で合流したよ。今は先に家に帰したがな。初めから合流なんてせずに、寝ておけばいいものを」
「うーん。……ま、何も言わないことにします。ところで、ヴァルツさん。今回のお偉いさんの件なんですけど」
もえぎの心中を察しつつも、この人に何かを言っても通じる相手ではないのだ。この話はここまでにして、本題に移る。詳しく語るまでもなく、ヴァルツは何のことなのか理解しているようで、小さく頷いた。
「あぁ。これをやらかした組織のバックだろう」
「あー……流石です。お願いしてもいいですか?」
「それは構わないが、お前がやる必要はないんじゃないか? それこそ、俺達の領分になるだろう。任せてくれてもいいんだぞ」
確かにそうかもしれない。ヴァルツ達の所属するギルドは主に裏社会の取り締まりをしている。専門家に任せた方が上手く事が進むだろう。しかし、今現在の環境を考えると、簡単に引き渡すのもはばかられる。
「前はそれでもよかったけれど、今は状況が変わってるんです。後、これ以上はヴァルツさんが死んじゃいますし、相方さんの心臓にも悪いので」
「ふむ。お前より強いと自負はしているんだが。……まあ、ピカがそう言うなら、バックアップに回ろう。少し時間をくれ。今回、敵は派手に動いたからな。いつもよりは情報を手に入れやすいと思う」
「お願いします。なるべく早いと助かりますね」
「了解。……あ」
何かに気付いたヴァルツが小さく声を上げる。ピカはヴァルツの見る視線を辿ると、尊敬する先輩がそこにはいた。
「あら。思ったより元気そうね、ピカちゃん?」
「あ、あさ姉様……!」
「安静にって思っていたんだけれどね~? どうして戦場を駆け回っているのかしら?」
「い、色々ありまして~♪ そんなことより、姉様、お一人ですか?」
苦しい話の変え方ではあったものの、浅葱は気にせずに質問に答えた。
「ええ。太陽はレンの手伝いに駆り出されているから。ヴァルツくんも大丈夫そうね」
「まあな。浅葱、太陽と二人で暴れ回っていたらしいな」
「ふふ。それはヴァルツくんもでしょ?」
「そうだな。……このあとは勝ちましたおめでとう、みたいな挨拶があって終わりだろう。俺は抜けさせてもらうぞ」
「? それならさっさと出ていけばよかったのに、変な人ね」
浅葱の指摘は最もだ。ここでいなくなったとしても、誰も止めるなんてしなかったはずだ。実際、ピカもポチャ達を先に帰らせたし、ヴァルツ自身ももえぎを帰らせている。一緒に帰る選択肢もあったのだ。
ヴァルツは浅葱の指摘に、ちらりとピカを見た。
「一応、顔を見ておきたい奴がいたんでね。俺のやり残したものを引き継いでくれたからな」
「あは。ありがとうございます、ヴァルツさん」
「いいよ。別に。……じゃ、お先に」
ひらりと片手を上げ、さっさと行ってしまった。このような場は好きではないヴァルツが、ピカに会うためだけに残っていたのは、それほど気にかけていたのだろう。
「あさ姉様、突然なんですけど、お願いがあります」
「あら? 何かしら」
「今回の親玉の話です。ヴァルツさんにも同じ話をしたんですけれどね。バックにいる人物を洗い出したい……というか、潰したいんです。その調査のお手伝いを頼みたいのですよ」
「へぇ……構わないけれど、ヴァルツくんに頼んだのなら、私の力なんていらないんじゃない?」
「いえ。情報はあるだけ欲しいんですよ。万全に策を練りたいので。……もちろん、他にもいくつか当たりますけどね。姉様にも助力を乞いたいんです」
「そう言うことなら、いいわよ。詳しい話は明日、連絡して聞くわ。今日はもう何もしたくないもの」
浅葱の言葉にピカも苦笑を浮かべた。今の今まで戦いに身を投じていたのだ。確かにその通りである。
「それは私もおんなじです。なーんにもしたくないです」
「ね。……早く終わるといいけれど」
浅葱の思いとは裏腹に、周りの称賛が止まらず、結局全てが終わったのはかなり時間の経った後であり、最後の最後でプクリンがとんでもないことを言い残して幕を閉じたのである。その内容とは、ある意味プクリンらしく、予想していたとも言えるものではあった。
「詳しい話はまとめ終わったら、皆に通達するね。……そんなことより、大切な話をするね! 明日、花火大会を決行しま~す♪ よろしくね~♪」
という宣言を最後に、その場にいた探検隊達は戦いから解放されたのであった。



~あとがき~
無理矢理感。

次回、夏祭り(延長戦)です。
久し振りにイブ視点の一人称視点でやるぞ。

イブとチコはまだまだひよっ子なのにこんな激戦に巻き込まれていたんだなと思うと、なかなかの不運ですよね。いやまあ、フォースもウィルもいましたが、途中、フォースは退場していたので、ウィルだけってことになります。最悪、フォースは出てくるとは思うし、なんなら空飛んで逃げられますけどね。

ではでは!