satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第53話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き勝手繰り広げる物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
長かったユーリ、イツキ、リリアーナの物語も終わりが見えてきました。どんぱちばっかりでやっちゃいけない一線を越えた気分。
ユーリ「自覚してましたか」
まあ、ほんわか物語は相方……
ユーリ「前にも聞いた」


二人の上に乗ったまま……主にイツキに体重を乗っけていた。リリアは僕から抜け出して、素早く回復魔法をかけていた。ふんわりと暖かい空気に包まれる感覚と共にイツキが座って、尚且つ僕を庇うような体勢になる。
「ゆっちゃんっ……!」
リリアが今にも泣きそうな声で名前を呼ぶものだから、安心させたかったけれど体を動かそうにもイツキががっちり捕まえていて、動くに動けない。
「失敗した! これで終わりなんだって気が抜けて……ごめん、ユーリ。ごめん」
「……いっちゃん」
「リリィ、ユーリ治せる?」
「う、うん! 大丈夫。毒も何も塗ってないから、傷口塞げば……もうちょっとかかるから、待っててね。ゆっちゃん」
僕はいい加減、この体勢から抜け出したくて、イツキの背中を叩いた。それに気付いたイツキは少しだけ力を緩めて、ようやく、喋るだけの余裕が出来る。
「大袈裟……大丈夫だよ」
「大丈夫なわけないだろ。ちょっと黙ってろ」
……怒らせたかな。まあ、この状況、もう僕らの手には負えないんだけど。これで十分なんだ。……僕らの役目は終わり。
見えない攻撃を上手く受け流すイツキに感服しつつも、僕は複数の気配に混じって、別のものを感じていた。前者は言うまでもなく、敵の援軍。後者は僕が万が一のために考えていた最終手段だろう。結局、手を借りることになりそうだ。
「っだあぁぁっ!! 鬱陶しい!」
攻撃を防ぐことは出来ても、反撃に転じられず、苛立ちが表に出ている。僕を離せばもっとまともに戦えるとは思うけれど、それはしたくないらしい。個人的な意見としては、さっさと離れて欲しいけど。
何度かの攻防の末、イツキの手が止まる。困惑気味のイツキと、それを不思議そうに見つめるリリア。
「どうかしたの?」
「相手の攻撃、止まった。俺、何もしてないんだけど……?」
「思ったより早いかも……どんな風に対処したのか気になるけれど」
「んなもん、適当だよ。適当」
僕の疑問に答えた人物はいつの間に登ったのか、小屋の屋根の上で暇そうに僕らを見下ろしていた。学校でよく見るパーカー姿ではなく、地味なロングコート姿のフォースさんだ。
突然の登場にイツキもリリアも処理しきれず、呆然としていた。連絡のつかなかったはずの先輩が目の前にいるのだから、仕方がないのかもしれない。
「さて。さっさと終わらせますか」
何かを引っ張る動作をした後、屋根から飛び降り、見えない敵へとドロップキック。その攻撃で事切れたらしく、魔法あるいは技が解けて姿が可視化できた。
「先輩、なんで?」
「説明は後でしてやるよ。それとも、ユーリにでも聞けば?」
それだけを言い残すと、フォースさんはどこかへ行ってしまった。後ろから来ていた敵の増援の退治にでも行ったのだろうか。
「ゆっちゃん……?」
二人からの視線が痛い。先輩を待つ間、ずっと黙っているのも暇と言えば暇なので、僕から説明しておこう。
「……ここに入る前、ステラさん……中等部の後輩に連絡したんだ。彼女、ラルさん達と仲良かったから、もしかしたら連絡取れるかもって」
ステラさんには、簡単に状況の説明をしただけだったし、間に合うかまでは視野に入っていなかった。彼女がどのような手段を用いたのかさっぱりだけれど、まさかフォースさんが来るとは思っていなかった。僕的には警備団体的なやつをイメージをしていたんだけれど。
「なるほど……流石、ユーリ」
「元はと言えば、お前が勝手に突っ走るのが悪い」
「うー……ごめん」
「……い、一応、なんとか……応急処置は終わった、かな。でも、あんまり動かないでね。高度な治癒魔法は私、使えないから」
リリアの魔法のお陰で、痛みは大分引いた。これだけ頑張ってくれて感謝しかない。支えてくれていたイツキから離れ、リリアの頭をそっと撫でた。
「ありがとう、リリア」
「……もう、無茶しないでね」
「ん~……善処します?」
「今のゆっちゃん、会長様みたい」
うえ。あんな風にはなりたくないかなぁ……あの人はかなり無茶苦茶だから……なんて、本人目の前にして言えないけれど。仮に言ったとして、笑って流すか、笑いながら手が出るかの二択?
「さっきのユーリの言葉聞いてさ。……今、思い出した」
「ん?」
突然のイツキの言葉に思わず首を傾げた。リリアも思い当たる節がなく、僕と同じような動作をする。
「ガキんとき、ユーリが上級生に啖呵切ったやつ。あー……啖呵っていうか、脅しか?」
「あれは……脅しかな。多分」
「えっ!? ゆっちゃん、何したの!」
「ん~……上級生に目をつけられて、喧嘩吹っ掛けられて、イツキが果敢に攻めるけど、やられたんだよね」
「やられてねぇし! 元気だったし!」
そこそこへばってた気がするけれど……まあ、いい。イツキがやられていたかどうかなんて、どうでもいい話だ。
「そこに僕が幻術使って、相手を脅したの。僕の姿を大人に見せて、お前らよりも強くなったから、覚悟しろ~……みたいな」
「そんなに優しくなかったけどね。実際は色々言ってましたよ、ユーリさん」
はて……? そうでしたっけ。
幼かった僕が考えられる言葉を並べただけだ。普段から慣れ親しんできた創作物から、引用したに過ぎない。過激な表現も愛嬌だろう。子供の脅し文句と大人の脅し文句では迫力が違う。まあ、「お前ら覚悟しろよ~」なんて言い回しは使わなかったが。
「元気だな、お前ら」
僕達から離れてそこまで時間が経っていない気がするけれど、フォースさんが帰ってきた。目に見える範囲に怪我なんかは見られないけれど、この先輩の場合、無傷で全員倒してきたきたんだろうな。
「とりあえず、全員拘束完了。探検隊バッジ使って転送も終わっている」
「て、展開が早いっす……フォース先輩」
「何それ。褒め言葉?」
「めっちゃくちゃ、尊敬込めてます」
「あぁ、そう。……で、何してるのか、理解してるの?」
いつも以上に温度を感じない言葉。会長達に比べ、感情が表に出てこない人ではあるけれど、ここまでのはそうそう見ない。つまり、これは……かなり怒っていらっしゃる、のだろう。
「はい。……理解している……つもり、です」
僕の横で小さくなって受け答えしているイツキ。答えているのはイツキなんだけれど、リリアもなぜかその場で正座し、黙って話を聞いていた。反省してますという空気が出まくっている。
「じゃ、お前の友達が危ない目に遭って、何かあったら責任取れるんだな」
「責任……ですか」
「そう。責任。探検隊ってのは、チームで動く。つまり、責任は指揮を執るリーダーにある。今回の発端はお前だろ、イツキ」
「……はい」
「ユーリとリリアーナに何かあったら、責任はお前が取らなきゃなんない。意味、分かるな」
本格的な隊を組んでいる訳でも、フォースさんの言う本当のチームでもない僕らだけれど、この場ではそんなものは関係がない。子供だからと許されない。これは……僕達がやろうとしていたのは遊びでも何でもないのだ。
「あの、フォースさん……」
流石にイツキばかり責めるのも罪悪感があるので、恐る恐る、話に割って入ってみた。が、僕に向けられたのは冷たい視線だった。
「黙ってろ。……言っておくが、止めないお前らもほぼ同罪だ」
あ、はい……すいませんでした……
普通にこちらも対象だった。気まずい中に入らなくても順番回ってくるな、これ。
しかし、この後、フォースさんは小さくため息を漏らしただけで、他に何かを言うことはなかった。もっと何か言ってくるものだと思ったんだが。……なんて考えていたら、心を読んだみたいにフォースさんが答えてくれた。
「説教なんて、おれのキャラじゃないから。それに、この先は適任がいるってもんだろ。さっさとここを出るぞ」
適任……? 会長、とか?
「いや。もっとお前らを大切に思っている人達」
……えっと?
全くピンと来ていなくて、イツキとリリアを交互に見るけれど、二人も思い当たらないらしく、首を傾げている。
「ま、ユーリはその前に病院行きだけど。大人しく背負われろ」
はい……よろしくお願いします。
先輩の言葉を考える間もなく、僕はフォースさんにおんぶされる。身長はフォースさんの方が高いとはいえ、高校二年の男子をこうも軽々と背負えるんだな。鍛え方が違うのか、本職は違うと言うべきか。
フォースさんの後ろを黙ってついてくるイツキとリリアは小声で適任者について話しているらしいが、明確な答えは出てこないみたいだった。背負われていなければ、二人の会話に混ざるのだけれど、今の僕にそんな元気はないようで、ゆったりとしたまどろみに抗えず、気が付いたら眠ってしまっていた。



~あとがき~
助けてくれたのはフォースでした。イケメン。

次回、ユーリ達のお騒がせ騒動、終幕!(予定)
……無理な気がする(汗)

ユーリが連絡取れて、この事態……事件じゃないかもしれない状況でも気にせず(?)、駆け付けてくれる人なんて限られてますよね。ってことで、ステラ経由からのフォースが来てくれました。フォースでなくても、ラルやティールでもいいかなとは思いましたが、こいつでいいや的な適当さで選んでます。

前回……前々回? 辺りでユーリの回想の結末をさらりと書きました。ユーリが何をしたか、ですね。
あれだけではなんか物足りないというか、せっかくなので、次回にでも回想で詳しく語りますね。
要は私がやりたいだけという。

ではでは。