satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第54話

~attention~
『空と海』のキャラたちが学パロなif世界でわちゃる物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ようやく終わりが見えてきました。そして、一番長かった休日回。……ステラとツバサちゃんの仲良し大作戦もこれくらいだった気がする。
イツキ「ヤバい」
ユーリ「これ、ちょっとした長編ですよ」
この長さは中編かな……長編ってのはこのあとの剣技大会のことを言うんだよ!!??
ユーリ、イツキ「……あぁ~」


ふと気が付くと、見知らぬ地に立っていた。
いや、知らないというのは語弊がある。ここは小さい頃、いじめっ子達に呼び出された場所と風景が似ていた。どこだったかはあんまり覚えていないけれど、それは大して重要に思えなかった。
少年の僕は複数の上級生とどんぱちしている親友をぼうっと見ている。
そして、それを遠目に見ている今の僕。
夢か。と思うのに時間はかからなかった。昔の記憶を見ているのだと。
それなら、少年が次に出る一手も予想に難くない。当時の魔力が不安定な時期にしてはなかなか上手く出来た幻術でこう言うのだ。
「魔法が安定して使える年にもなったんだ。お前たちなんて簡単に倒せちゃう。……もしかしたら、即死魔法なんてものも簡単に出来るかも。呪文一つで死んじゃうんだって。見たコトないんだけどね。……うん。面白そうだから、お前らで試してみようかな」
断言するけれど、即死魔法なんて使える訳がないし、そもそも話、存在自体を知らない。けどまあ、創作の中ではさも当たり前に魔王とかが口々に言うもんだから、とりあえずそれっぽくしておけばもしかして……っていう浅い作戦だった。今にして思えばもっとやり方あるだろうとか思ったんだけれど、これはこれで上手くいき、知識の乏しい子供達はこれが出まかせだと疑いもせずに震え上がった。また、幻術の助けもあり、かなり雰囲気が出ていたらしく、僕の演技を本物だと捉えたいじめっ子達は泣きながらその場を去る。
この経験から、魔法は攻撃魔法だけじゃないと心から思ったし、知識はあるだけ自分を高め、助けるものであると自覚した。反対に別の手段で自分の身を守らねばとも思った。この時期から、本格的に剣道や体術の修行に打ち込むようになったんだったか。

「……ユ……ーリ。ユーリ」
「……んぇ?」
誰かに呼ばれて目を覚ますと、横向きに寝ていたのか壁しか見えない。が、この壁は自宅にある僕の部屋の壁だ。部屋の中がほのかに明るいから、日が出ている時間帯なんだろう。誰が後ろにいるのか確認するために振り返ろうとして、背中の鋭い痛みでその動作は中断される。情けないけれど、その痛みでこの前の出来事を─多分、昨日─思い出した。
あぁ、フォースさんに運ばれている間にそのまま寝ちゃったのか。
振り返るのを諦め、元の体勢に戻る。未だにひっそりと近づく眠気と懸命に戦いながら、小さく言葉を発する。
「……なぁに?」
「イツキくんが来てるんだけれど、起きれそう?」
今度ははっきりと聞こえた。僕の母親の声だ。言葉通り、訪問者が来たから僕を起こしに来たんだろう。起きれないことはないが、イツキだしな、と当人からすると失礼な考えがない訳ではない。しかし、昨日のこともある。顔くらいは見せてやった方がいいかもしれない。明日、学校で会うとはいえ、だ。
「行く……五分、待ってもらって。て、母さん」
出来る限り体が痛まないように気をつけながら体を起こした。正直、背中よりも魔力の使い過ぎの後遺症なのか、頭痛の方が酷い。意味もなく、こめかみ辺りをぐりぐりと押すような仕草をしつつ、ちらりと母さんを見る。僕とは違う、透き通ったような水色の髪と瞳はいつも通りの母さんに見えた。しかしまあ、こんな怪我して帰ってきた息子の心配をしていないはずもなく、表情には心配の色が出ていた。
「今、何時?」
「もうお昼過ぎよ。早く着替えていらっしゃいね」
おっと、約一日寝ていたのか。となると……この頭痛はあれだ。寝すぎた奴だ。
母さんが部屋から出て行ったのを確認すると、僕はベッドから降りる。そして、クローゼットを開け、着替えを引っ張り出した。
「昨日着てたのは……普通に考えれば捨てたんだろうなぁ。……いや、いいけどね。いいけど……ん?」
もぞもぞ着替えながら、あることを思い出した。僕、敵から奪った拳銃はどうしたんだったか。剣振り回してた敵に撃って……そこから……? 奪われないようにとベルトに引っ掻ける形で……
「持って、帰ってきた……気がする……えっ!? あれ、どこいった!?」
部屋を見渡しても、整頓された自分の見慣れた景色しかない。机の上に学校の図書館から借りてきた本が数冊積まれているくらいで、あとは全て僕の私物だ。場違いな拳銃なんて見当たらない。
最後まで一緒だったのは誰、なんだろう。寝ちゃってて、知らないんだけど……うわ。
「運んでくれたのはフォースさんだし、何か知ってるかも。……え。なんて聞くんだ、これ」
電子端末を手に取るものの、どう切り出していいのか分からない。分からないけれど、とりあえず、聞きたいことがあるとかなんとか言えば、察してくれるかも……多分?
「……あれ。連絡来てる」
今まさに連絡しようとしていた相手からメッセージが来ている。今日の日付で時間帯は朝。何の躊躇いもなく選択し、チャット画面を開く。そこには僕の知りたい情報が一言で記されていた。
『ユーリが持ってた銃は回収しといた』
そして、その下にもう一言。
『あれ、改造したら化ける。敵のくせにいいもん持ってんだな。使いたいならあげるよ』
「……改造て。銃をカスタマイズするってこと?」
これ、僕が欲しいですなんて言ったら、くれるのかな。……いらないって言ったら? フォースさんが使うのかな。うーん。まあ、駄目元で。
『興味があるので、銃の使い方を教えてくれますか』と打ち込み、画面を閉じる。次に、中途半端な着替えを終わらせた。上着のパーカーのポケットに端末を突っ込んで、ようやく部屋を出た。待たせているなら、家の中に通しているだろうか。リビング見て、いなかったら外に行こう。
リビングの扉を開けると、思った通り、イツキはソファの上に座っていた。昨日よりもラフな格好で、プルオーバーとジーパン姿。母さんが出したであろうオレンジジュースを飲んでいる。が、気になるのはそこじゃない。
「……イツキ?」
「んお。やっほ! ごめんな。病み上がりの家に来るのは気が引けたんだけどさ~」
「いや、それはいいんだけど……なんで怪我してんの? 帰る途中に何かあったのか?」
イツキの顔には絆創膏やガーゼが当ててあり、怪我しましたと言わんばかりの見た目である。少なくとも、あのダンジョンでは怪我一つなかったはずなので、その後、ダンジョンから出る辺りで何か不測の事態に巻き込まれたのだろうか。
「何もないよ。めっちゃ安全に何事もなくあそこからは出られたから。その後、フォース先輩にユーリ任せて帰った後……っすね」
「……おじさん?」
「と、じいちゃんと兄ちゃん姉ちゃんに」
これ、参加していないのはおばさんとおばあさんくらいなのでは。
「フォース先輩の適任者ってのが分かった。目の前にしないと気づかないのも馬鹿だったよ。リリィも両親にめちゃめちゃ絞られたみたい。……でさ、ユーリ、外出られる? じいちゃんが話したいらしいんだけど」
なるほどね。そういうこと。
でも、それでいくと、なぜ僕はイツキの家に出向くんだろう。……もしかして。
「……しばかれろと?」
「それはない! 少なくとも、俺みたいにはならないよ。なりそうなら、俺が守るし! んでも、無理にとは言わない。じいちゃんには俺から言っとく」
嫌なことを後回しにしても仕方ないしな。
「分かった。今から行こう。僕は平気だから。……母さん、行ってくるね。すぐに戻るけど、遅くなりそうなら連絡する」
「分かったわ。気を付けて行っておいで、ユーリ。……イツキくん、よろしく伝えておいてね」
「はい! しっかり伝えます。すんません、ユーリ借りてきますね!」
イツキは礼儀正しく一礼すると、僕と一緒に家を出る。僕の家からイツキの家はそこまで遠くない。大した会話もなく、すぐに目的地へと到着すると、イツキの家の玄関……ではなく、その横にある道場の入口へと向かった。イツキの一族が代々受け継いでいるものの一つで、ここでは剣道や柔道、空手等々の教室を開いている。僕も高校に上がるまでは毎日のように練習していた。イツキは今でも練習しているんだろうけれど。
「……ユーリ、ほんとごめん」
「それは何に対してのごめん? 思い当たる節が多くて見当つかない」
「あー……や、じいちゃんの言うだろうことに謝っとこうと思って」
何も聞いていないのにここで謝られても。
「話を聞いてから謝罪を受けるよ。……行こう」
ばつの悪そうな表情は変わらず、イツキは道場の扉を開く。入る前に一礼。
「失礼します!!」
二人で声を揃えて、一言。武道の世界は礼儀の世界……少なくとも、イツキの一家の流派はそうで、一つ一つの動作に気持ちを込めろと耳にタコができるくらい聞かされた。
中に入ると、畳の匂いと汗の臭い。……それを消すための芳香剤はおばさんが置いているのだろう。人工的な花の甘い匂いがする。そんな様々な匂い─これを感じ取ってるのは僕だけなんだろう─がする中で、奥の方に袴姿のイツキのおじいさん……リンドウさんが険しい顔をして鎮座していた。まとっている雰囲気が近づいてはならないと教えてくれているが、ここで立ち止まっていても怒号が飛んでくるだろう。覚悟を決めて話しかけるべきだ。
表には出さず、しかし、内心は緊張しまくりつつ、その場で頭を下げる。
「お久しぶりです、先生」
「あぁ……頭を上げて、そこに座りなさい。お前もだ、イツキ。……すまんね、ユリ坊よ。呼び出すのは悪いと思うたんだが、早く話をしたくてな」
「失礼します。……話、ですか」
一礼の後、言われた通りにリンドウさんの向かいに座る。僕の言葉にリンドウさんはゆっくりと頷いた。
「聡いお前のことだ。何のことだか、分かっているんじゃないかね」
「……昨日の件でしょうか」
「多くは問わん。うちの阿呆も迷惑をかけたようだしのぉ。……しかし、だ。ユリ坊」
ここまで聞いて、何を言いたいのか何となく察してきた。できれば外れて欲しいなと思いつつ、返事をする。
「はい。先生」
「なっとらんな」
「……仰る通りです。僕は昔のように鍛練に時間を割いておりません。その結果が今回の事態を招きました。何が悪かったのか理解しているつもりです。もちろん、先生のお考えも。……昔のようになさるつもりでしょう」
「ユーリ……!」
「イツキ。……大丈夫だから。先生、しばらくの間、ご指導の程、よろしくお願いします」
……って言わないと帰してくれないんだもん。リンドウ先生は。



~あとがき~
終わりませんでした。

次回、今度こそ! 終わる!! 終わるよ!!!
続きすぎててびっくりしてるよ。

ユーリの家族構成は両親と妹の四人家族。
イツキは大所帯ですね。祖父母、両親、兄、姉、イツキって感じです。七人かな?
リリアーナは三人です。両親とリリアーナ。
もしかしたら、増えたり減ったりするかもですが、そんなイメージですね。

やるよって言っていたユーリの回想も入れました。小学生があの台詞言ってるの相当ヤバイと思います。ヤバイ。まあ、彼は創作物の引用だと言っているので、普段何読んでんだよって話ですね。
図書部というのでお察しでしょうが、彼は子供の頃から読書家であります。部屋の描写はあまりしませんでしたが、本棚に囲まれ、勉強に使う参考書や小説、神話などの物語系の他にも、魔導書や学校の図書館から、一般生徒が借りられないような本を拝借していたりします。
関係ないけれど、イツキは日本家屋のめちゃめちゃ広い二階建ての家。フローリングよりも畳! みたいな部屋多めで、イツキ自身の部屋も畳にカーペット敷いてるみたいなのをご想像ください。彼はベッドじゃなくて敷き布団。部屋は散らかってるんじゃないかと。
リリアーナは西洋風のお屋敷住まいですね。ちょっとしたお嬢様なので、天蓋付きのベッドで綺麗に整頓されている……と思います。
あれ? ユーリの回想の話だったはずなのに、三人の部屋の話になってしまった……(笑)

ではでは!