satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第55話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で楽しくのんびり過ごす物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
イツキのおじいさまに捕まったユーリ。何させられるんですかね。
ユーリ「昔と同じですよ」
イツキ「俺、一生離れてやるって思ってたんだけどなぁ」
まあ、そこまで書きません。(ネタがない)
ユーリ「心の声が……」


ご指導よろしくなんて言ったけれど、思い描く厳しいものは何もなかった。少なくとも僕は。
道場から落ち着いた雰囲気のある庭園を眺められる……いわゆる、縁側で三十分くらい座禅をさせられていた。その後ろでリンドウさんと同じように袴に着替えたイツキが竹刀の素振りをしている。結構嫌々だった割には、太刀筋や姿勢なんかは流石だ。
「……ユリ坊や」
「はい」
「修行に終わりはないぞ。お前さんが好きな勉学と同じだの」
「……心得ておきます」
「うむ。明日も来なさい」
「じいちゃ……師匠! 明日からは大会関係で生徒会の仕事あるって言って……いえ、お伝えしたと思いますが……がぁっ!?」
スパァン!!……と、気持ちいいくらいのいい音が僕の後ろで響く。振り返らずとも何が起こったのかは理解できる。竹刀で思い切り叩かれた音だ。
僕は体ごと向きを変え、イツキとリンドウさんと向き合った。
「イツキの言う通り、来週末に行われる剣技大会の準備があります。僕達も参加するしないに限らず、準備に追われることでしょう。……ここへ来る時間が遅くなりますが、それを許していただけるなら、明日も来ます」
「よいよい。遅くとも待っておるよ、ユリ坊」
「恐縮です。先生」
リンドウさんは険しくも暖かみのある笑みを見せる。その隣ではイツキが滅茶苦茶嫌がっているけれど、きっとこれは昨日の罰だ。それにいい機会でもある。
「先生、お一つ伺っても?」
「なんだい」
「僕はまだ、強くなりますか?」
「もちろんさね。そこの馬鹿タレよりも見込みがあるからの。てめぇの子にしたいくらいさ」
「あはは。ありがとうございます」
馬鹿……イツキの方が剣の腕はあるのに。変わらず、身内にはとことん厳しい人だ。
「師匠! もうそろそろ、帰らせてやってください。一応、病み上がりですよ」
「ふむぅ。仕方ない……マリアさんにも悪いかね。ユリ坊、もう帰ってよい。残りはイツキにさせよう」
マリアは僕の母の名前だ。そういえば、ちゃんと話をしていないし、帰ってからしっかり謝っておかないと。……それはそれとして、イツキは僕の代わりまでやってくれるらしい。働き者だな。珍しく。
「うげっ!?……まあ、いいか」
そこまで気を使わなくても平気なんだけれど。ここはお言葉に甘えるかな。

まだまだお仕置きが終わらないイツキを置いて、僕は家路についた。家の前に待ち合わせでもしているのかぼうっと妹が立っていた。無視して入ってもいいけれど、声をかけずに入ると後々面倒そうなので、仕方なく話しかけた。
「……何してんの、アイ」
ツバサさんと大して年の変わらないアイこと、アリシャはむっと頬を膨らまして、いかにも不満ですって顔をしている。母さんから受け継いだ透き通った水色の髪の中に、僕とは違ったぴんと立った耳をぴこぴこ動かしている。
「にぃがいないから、待ってた」
「出掛けてたから。家の中で待てばいいのに」
「ケガして帰ってきたのに……?」
「それって関係ある? ほら、中に入れって」
「にぃ、わたし、心配したの」
自分勝手に振り回すアイが僕の心配なんてあり得ないとは思った。ほんの二、三年前は吹っ掛けられた喧嘩を買い、それに加えてリンドウさんのところで体術のトレーニングをしていたから、怪我は当たり前だった。そのときは心配一つされた記憶はない。けれど、病院沙汰は初めてのことではあったから、それなりに思ってくれていた……のかもしれない。
「……それはごめん」
「ぜんぜん、おきなかった」
「それは魔力の使いすぎ……って、アイ? 泣いてるの? 嘘だろ」
「にぃのばかぁぁ!」
どこで涙腺が崩壊したのか分からないが、完全に号泣し始める。いや、意味が分からない。こんな往来で泣かないでいただきたい。
泣きわめくアイを無理矢理家の中に押し込み、玄関を閉める。手を引いて、リビングへと向かった。その短い間も幼稚な罵倒が聞こえていたけれど、うるさいと一蹴はできなかった。心配をかけたのは事実だから。
「ただいま、母さん。なんかラムネとかお菓子ない? アイを落ち着かせたいんだけど」
「あら、お帰りなさい。あらあら、アイちゃんったら……我慢できなくなっちゃったのねぇ」
わんわん泣くアイをソファに座らせつつ、母さんの言葉に首を傾げた。我慢って何を。
「お兄ちゃんが病院に運ばれたって聞いてね。アイちゃん、とっても心配してたのよ? 夜中になってもお兄ちゃんの傍から離れないって言ってたの。あの人もね、心配してたわ。仕事放り出して病院来ちゃうくらいは」
「……あの父さんが?」
僕の父さんは魔術について研究している人だ。専門機関の研究所に泊まり込みで家にはほとんど帰ってこない。僕は父親と何か遊んだ記憶はないのだ。恐らく、おじさん……イツキのお父さんと遊んだ回数の方が絶対に多い。学校関係の行事だって、参加しない人なのに。
「もちろんよ。ね、ユーリ? 母さん、あなたのすることに反対はしないわ。……でも、ちゃあんとお家に帰ってきて。これだけは約束してね」
僕の頭を一撫でし、優しく抱き締める。実際は数秒間だったけれど、僕には長い時間に感じた。母さんが僕から離れると、控えめに服の裾を引っ張られる感覚がした。
「にぃ、いなくなったら、やだ」
ぐすぐすと涙まみれの顔で僕を見上げた。僕は苦笑を浮かべて、アイと目線の高さを合わせる。
「大袈裟だろ……にぃが強いの知ってるだろ」
「でも、きのうは、ずっと……っおきなくて……まえは、あんなのなかったんだよ」
「あ~……そう、ね」
「もう、やだぁ……にぃ、いないの、こわいぃ」
「いつもはどっか行けって蹴るくせに……」
「知らないっ!」
理不尽かよ……同年代のツバサさんの方が余程大人だ……少なくとも、僕と話しているときの、だけれど。実際のプライベートまではよく知らないから、比較対象としては不十分かもしれないが。
「ごめんごめん。もうあんなことにならないように気を付けるから……な?」
「きょう、いっしょにねる」
「……はぁ!? 冗談だろ」
「ねるのっ!!」
「まあ……蹴り飛ばさないなら好きにしてくれ」
くすくす小さく笑う母さんからアイの好きなラムネを受け取り、ぽいっと彼女の口に投げ込む。しゅわっと消える感触が好きらしく、いつの間にか、涙も引っ込み、大人しくソファに座り直した。
フォースさんの言った適任ってこういうことか。確かに、会長やフォースさんに叱られるのとはわけが違う。
「にぃ! ここっ!」
「はいはい……」
アイが自分の隣を必要以上に叩きまくっている。ここに座れってことなんだろう。
座って何するのかも謎だが、今日は言う通りにしてあげようか。



~あとがき~
私のオリキャラにしたら、ユーリ、イツキ、リリアーナは至極平和な家族構成。空と海のキャラを見ろ! 孤児だらけだ!!((

次回、ついに剣技大会編スタートです!
剣技大会は少し特殊な進め方になります。前からやっている視点入れ替わりと書き方も変えていきます。その、あれだ! つ、ついてきてくれよな!!

初期プロットから大幅に変更しました。ユーリが大怪我する描写もなかったし、家族を書くつもりもありませんでした。叱る役はフォースだったし、締めくくりはフォースとラルに出てきてもらう予定でした。何がこうなったのかさっぱりですが、まあ、これにて終わりです。
あ、でも、ユーリとイツキがリンドウにしごかれるのは前々からネタとしてはありました。剣技大会終わりとか、その辺かなとは思ってたんだけど、こんなに早く出てくるとは。
この流れで出てきた家族の名前を書いときましょう。ユーリ視点だったので、ユーリ宅の方々が多いですな。
マリア・ケイン(母)、アリシャ・ケイン(妹)ですね。父は出ず。パパ……ごめん。
イツキのところはリンドウ・カグラ(祖父)です。あと五人いるけど、未公開。
リリアーナのところは手つかずでした。
出てきてないってことは決まってないってことだ! 察して!! いや、決まっている人もいるけど、多分、出てこないんで覚えなくていいです……(笑)

ではでは!