satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第64話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわたわたする物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック。
前回、屋台探索も終わり、出場者によるブロック決めも駆け足ながらも終了。
アラシ「……なんで、アリアと」
メタ的で身も蓋もないことを言えば、アラシ君のポジションのせいだよ。
アラシ「俺、そんなキャラ?」
ここではそうかな……?
アラシ「はあぁぁぁ~」
今回はお久しぶりのあの子視点です。ツバサちゃんがステラ達と合流して、楽しそうにしてる辺りまで時間を戻します。一方その頃ってやつです。


《L side》
剣技大会の開催日を迎え、一足先に周りの出店や屋台が賑わう頃。私と二人の男子は、しんと静まった部屋に集まっていた。集まった私達は大会の責任者として、ある程度の情報共有と、これからの段取りについての最終チェックだ。本来なら、出店等々が出る前に行う予定だったのだが、ある人物の遅刻があり、予定が変わってしまったのだ。
「……って感じによろしくね。言っておくけど、リュウ君。ここで機材故障なんてしないでよ。くっそ忙しくなる予定なんだからね!」
釘を指した相手は、今回の放送全般を請け負う放送部部長で、今回、朝に遅刻をしたリュウ君。理由は単純に寝坊したらしい。
リュウ君は紫色の髪を後ろでアップにまとめ、首にはヘッドフォンがかけられている。彼は冒険科三年で私と同学科、同学年だ。彼の放送は生徒には好評価なのだが、何かと機材トラブル─主に些細な故障─が多く、ことある毎に買い変えたいと申請に来る。そりゃあ、直らないくらい駄目になったのなら考えなくはないけれど、全くもってそんなことはないので、直せば使える! と、なぜか私が直しに行っている次第だ。原因は基本的にリュウ君なので、彼が卒業すれば、放送部も利口になる……はずだ。
「だぁいじょうぶだって! 今回使うのは、俺達の持ち物じゃないしな! 最高の機材と司会を勤めて見せるぜ~♪」
その最高の機材とやらを壊すなって話なんだけれどね、私は。
リュウの司会っぷり、楽しみにしてる人もいるだろうな。僕らで今回の大会、成功させようね」
少しおっとりした話し方をするのは、剣技大会実行委員長のマル君だ。彼も私達と同学科、同学年。リュウ君よりは俄然、話が通じる相手であり、この中の良心みたいなポジションである。いやまあ、今回の大会が終われば、このトリオも解散するけれども。
「極力、努力はするよ。……放送関連に関して言えば、ある程度は現場の判断で構わないよ。私からとやかく言わない。本当に何かあるなら、連絡してもらっていいけれど、基本、任せる」
「OK! 任せとけって!」
うるさい。音量下げろ。
リュウ君は放置しておき、もう一人の責任者に視線を向けた。
「マル君は逐一、連絡くれるかな。現状把握がしたいから、少しの疑問や懸念があるなら私に伝えて。何かあったら一人で決めようとせずに、周りと相談。よろしくね」
「分かった。……ラルさんは手慣れてて、安心するよ。こういうの、あんまり得意じゃなくってさ」
困ったように笑うマル君。ここでずっと気になっていた質問を彼に投げ掛ける。
「そんな気はしてたよ。よく受けたよね」
「前の委員長からのご指名だったんだ。それで断りきれなくって」
「あ、よくあるよくある」
「ラルも先代会長に押しきられて、今の会長職だっけか? いつ就いたんだっけ。気がついたら、お前がトップだったろ」
「一年生の冬。先輩が卒業するから、新しい会長を指名するとかなんとかで呼び出されて、あれよあれよと、今に至る……」
思い出したくもないわ。この生徒会に入ったのも、その会長に引っ張られたからだし、流石に会長なんて上に任せるだろとか思っていたら、こっちに投げてきたし。
先代の話なんてしたくはないが、どこか親方……プリン校長と似た雰囲気の持ち主だった。だからだろう。私が断りきれなかったのは。最初から苦手な相手だったというわけだ。しかしまあ、早めに会長という職務を得て、この組織を改革できた。自分好みの組織改革も完了したと言っていい。なんだかんだ、慣れると楽しいんだよね、生徒会長。
「雑談はここまでにして……私からはこれで以上よ。二人の質問がなければ、今後、余程のことがない限り、三人で集まるなんてないから、何かあるなら、ここで言ってね」
と、一応、形式に乗っ取った口上を述べるが、これを言われて、じゃあ質問ですと飛んできた試しがない。大抵、時間が経ってから、あれを聞けばよかった、これを聞き忘れたと思い出すものである。少しの時間を置き、それぞれの頭の中で整理する時間が必要なのだ。
「じゃ、今後は各自、連絡ちょうだい」
「おー! 円滑に進行するからよっ! 司会進行は任せろ!」
「うん、裏方業は任せてね。頑張るよ」
「トラブルはないに越したことはないけれど、何かあれば迅速に対処する。大会成功目指して、お互い頑張りましょ。……さて、解散!」
リュウ君とマル君と別れた後は、その足で生徒会が使用する予定の会場内に設置された控え室もとい、会議室へと向かった。

「ただいま、我が家……」
扉を開けると、見慣れた二人が好きな席に座って寛いでいた。どこから買ってきたのか、唐揚げを食べるフォース君と、律儀に周りの整理をしているティールだ。部屋は違くても、やっていることは、大して変わらない二人にどこか安心感を覚える。
「お前ん家じゃねぇけどな。ま、お帰り」
「お帰り、ラル。お疲れ様」
「こんなんで疲れてたら、体持たないよ~……で、どう? 今回の規模は」
「結構来てるぜ。去年よりは多いと思う」
「そのせいだと思うんだけど、お客様同士のトラブルが頻発してるみたい。ま、ラルが出なきゃいけないくらいのレベルはないから安心してね」
にっこりと笑うティールの口からは物騒な話が飛んできた。私が出なくても、フォース君やティールは出たんだろうな……
「後輩を引っ張ってこなきゃならんこともないし、人数の割には平和な方だ。不安に思っていた程、忙しくならんかも」
かもしれないけれど、生徒会としては人数がいつもより少ないのは、不安材料ではある。実行委員を少々こちらに回してもらっているし、その子達が上手く機能するといいんだが。
「お前の一言で問題ねぇよ」
「ラルの真面目バージョン、鶴の一声だもんね」
なんじゃそりゃ。いいけどさ、何でも。
フォース君の隣の席に座り、じっとフォース君を見た。
「……何?」
「言わなきゃ分かんない?」
「……言わなくても分かるけどさ」
ため息混じりに竹串の唐揚げ一つを私の口に突っ込むと、空になったらしいカップと竹串をビニール袋にまとめて、口を縛る。そして、フォース君は立ち上がることなく、備え付けのゴミ箱に投げ捨てる。投げ捨てられたそれは、吸い込まれるようにゴミ箱へゴール。それを見届けながら、フォース君からありがたくいただいた、唐揚げをちゃんと飲み込む。その唐揚げを味わった後に、ふと思い付いたことを口に出した。
「こういうお祭りの屋台ご飯ってさぁ」
「なんだよ、急に」
「うわ、マジかよって値段だけど、大体、美味しいって思うよね。屋台マジック?」
「素直に唐揚げ旨いって言えば?」
「唐揚げ美味しかったです」
「はい。お粗末さんでした。……でも、これって冷凍だったりすんのかね」
うわぁ、夢がねぇ……ま、冷凍も美味しいけどね。
「真面目に答えるなら、ちゃんとその場で揚げてると思うよ。今の唐揚げ、形が全部バラバラで、市販のものより大きかったから」
「ぼくらの家にある冷凍のって少し小さいもんね。主婦目線だ」
ティールのその発言には反論したいと思ったけれど、残念ながらその通りだったので、黙っておこう。
「フォース君も主夫だろ。頑張れよ」
「うち、揚げ物は極力しないから。面倒じゃん。油の処理」
分かる。めっちゃ分かる。けど、揚げたてが美味しいんだよなぁ。
「それは分かるけどさ……学校から帰ってきてからの揚げ物は気力ねぇな」
同意。
「『しゅふ』談義……?」
したいわけじゃないけど、暇だからね。しちゃうね、どうでもいい話。どうでもいいついでに、あんまり興味のない質問でもするか。今なら真剣に聞ける気がする。
ティール、今年のりんご飴、いかがです?」
「全部回ってきた~♪ 全部よかったけど、やっぱりいつものだね!」
「今年も同じところ来てたんだね」
ティールのりんご好きはいつものことなのだが、こういうお祭りの屋台では、りんご飴というお菓子が出るわけだ。出るのは普通で、買うのは個人の自由なんだけれど、ティールの場合、来ているりんご飴屋さんを全部回る。
この大会においても何店舗がお店が出ているようで、いつの間に行ってきたのか、ティールは全て制覇してきたらしい。そして、彼の言ういつもの、とは、毎年屋台を出しに来るりんご飴屋さんがあるのだ。
「飴とりんごのバランス絶妙だよね……飴の甘みに負けないりんご飴、最高……」
りんごの話になると、アホの子になるからな、ティール。私がツバサちゃんやしーくんに対して、可愛いとか、私の天使可愛いと騒ぐのと同じ原理。ものは違えど、似た者同士である。
「次はその味に会えないな。おれら卒業だし」
「あ、来年は一般客として来るから大丈夫!」
それのためだけに来るんかい!!
「ん~……それだけじゃないけどね。剣技大会、ゆっくり観客席で見てみたいなーって。考えてみると、ゆっくり見られたのって中等部のときくらいじゃない?」
まあ、確かに。高等部へ進学すると、ティールは選手として参加していたし、最初から最後までじっくり見る機会はほぼゼロに等しい。
「中等部三年のときは仕事で来れなかったもん。後さ、今ならそこそこの知識ついて、見るの面白そうじゃない?」
そうかもね。私は興味ないけど。
「あ、でも、来年は見たいかも。きっと、ツバサちゃんが参戦でしょ? めっちゃ見たい。来年はどうなってるか知らないけど、仕事休み取って来よう」
「とことんツバサ中心なやつだな」
心底どうでもいい話を永遠としていると、部屋に設置してあるスピーカーから、先程、聞いた声が響いた。
『放送部からお知らせだ! もうすぐ大会が始まるから参加生徒、大会関係者はイベント会場に集まってくれ! 到着した参加生徒はイベント会場入り口に集まり、案内の指示に従ってくれよ? 大会実行委員、生徒会の生徒は会場内の控え室Aに集合だ! もう一度繰り返す!』
立っていたティールが素早くスピーカーの音量を下げてくれたお陰で、ダメージは最小に留まった。ここのスピーカーいじるの忘れていた。初期設定のままだと、リュウ君の声によって、私達の耳が死んでしまう。
「ありがと、ティール」
「忘れてた。あいつだったな、司会進行」
「ぼくもいじるのすっかり忘れてたよ。間に合ってよかった」
さてさて、私達も準備しますかね。



~あとがき~
大会(導入)が終わりませんね。

次回、今度こそ、開会宣言を! お願いします!!

分かってるんですよ。茶番をなくせば、その分早く進むってのは……分かっているんです。でも、駄目なんです……楽しくて……この、無駄な会話が……楽しくてだな……っ!!

ラルが生徒会長になった経緯を少しだけ明かしました。ここでの生徒会のシステムについてちろっとお話ししますと……
生徒会に入るためには、選挙に参加する必要があります。で、そこで当選すると、一役員として迎えられます。例外として、ツバサちゃんがそうでしたが、会長自ら、スカウトした場合です。そうなると、選挙をパスして、役員として登録されます。まあ、滅多にありませんけど。ラルもツバサちゃん採用に関しては慎重になっていたのは、お話の中で出てきた気がするので省略します。
役職は一役員から指名制で決められます。そして、お披露目をして、よろしく! みたいな。まあ、選挙をパスする人がほぼなので、元から支持のある人ばかりなんですけどね。ティールやフォースはその口です。面倒臭がりのフォースが参加した理由は、ラルにお願いされたってのがあります。頼む。味方は多い方がいい! とかなんとか。
そんなラルは、入学早々、前会長に気に入られ、春から興味のない生徒会に出入りするようになって、選挙に立候補させられ、気がついたら会長にって感じです。流されてます。彼女らしくもなく、流れに流されました。理由は……一応、今回の話で語りましたね。苦手な相手だった、この一言に尽きます。前会長の話は……いつか機会があれば……うん。なさそうですけど、いつかね。

ではでは!