satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第70話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で無茶苦茶やってる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバックです。
前回、救護室のお手伝い(と書いて、『おサボり』と読む)していたラルの元に、なんだか色々と緊急のお仕事が……ってことで、大会(氷山解体編)やります。大会とは関係はないけれど、まあ、箸休めとしてね? 楽しんでってくださいな。


《L side》
全員への伝達が終わり、通信機を切ると、私はふっと息を吐いた。安心するにはまだ早いけれど、とりあえず、一仕事終えた気分である。いや、厳密には何一つとして終わってないんだけれども。
「なぁんか、久しぶりに真面目に仕事してるラルを見たな」
イグさんのその言葉に私は首を傾げた。確かに真面目に仕事をする方ではないと自覚しているつもりだが、一応、人前に出なければならない式典等々では、それなりにやっていると思っていたのだけれど。それに、言うほど久しぶりでもない。
「? 入学式でもちゃんとしたご挨拶したつもりですが?」
「いやぁ、そうじゃなくって。生き生きしてるって言うの? そんな感じ」
「えぇっと……楽しそうってこと?」
「簡単に言えばな♪ ラル、ちまちま書類とかやってるよりも、動いている方が様になってるぞ」
……うーん? 褒め言葉? 受け取っていいのか、これは。悩ましいところだ。
「お待たせしました!」
準備を終えたらしいツバサちゃんが部屋に帰ってきた。普段の制服姿……ではなく、少し薄い黄緑色のパーカー、水色のTシャツにショートパンツといったいわゆる、普段着姿。私服姿だ。そして、そんな彼女の手には槍のように長く、両端に刃がキラリと光る、両剣が握られていた。そして、魔力石も埋め込まれている。
魔力石とは、まあ、読んで字のごとくではあるのだが、魔力の込められた石である。色によって使えるものは異なり、石の秘める魔力量にもよるが、魔法にも似た術を繰り出すことが可能だ。ここら辺は魔法使用者の髪の色と同じである。そして、ツバサちゃんの武器には白い魔力石がつけられており、白い石は大変珍しいのも、魔法使用者の特徴と全く同じで、大変覚えやすい。
つまり、青い魔力石なら、水系統だし、赤い魔力石なら、炎系統の術が出せる。ただし、純粋に魔法で攻撃した方が威力は高く、魔力石にも容量があるために、必要以上の攻撃は期待できない。あくまで、サブとして、あるいは自身の弱点を補うためのアシストとして考えた方がいい。ちなみに、私のメイン武器の雷姫に魔力石はついていない。雷姫を手に入れる前に使っていた短剣には、一応ついていたが、ほぼ使った記憶はない。
武器自体の話をすると、─私個人の感想だけども─両剣なるものは扱いが難しいので、槍とか薙刀で事足りてしまう……と、考えてはいる。まあ、近くに使い手もいなかったのが原因ではあるが。
そんな中距離武器の一つをメインにするらしい、ツバサちゃんはいつも通りの笑顔を輝かせていた。
「ツバサちゃん、会長様からもらった服、着替えたの?」
「はい。あのお洋服とってもかわいいし、せっかく
ラルさんが用意してくれたので。汚したくないですもん」
汚れてもいいからこそのナース服では……あーいや、そういう話はいいか。
制服姿や先程のナース服はふわっとしたスカートだったからか、今のショートパンツ姿は、いつもと違う印象を感じる。大人しそうな少女から、活発な少女へ変化した。
うん。可愛い女の子は正義ですね!
「よっしゃ、行くか! リア、魔力回復ポーション、もらってくぞ?」
「ええ、もちろんいいわよ♪」
「ツバサ、ラル。行くぞ~」
「はーい!」
「ラジャーです」
前を先導して歩いてくれるイグさんを追いかけつつ、耳につけたままのインカムから絶えず情報収集をしていく。聞いている限り、特に問題なく人員の配置と結界の補填は行われているようだった。来場者が多い割にはトラブルも少なく、円滑と言えば円滑に進んでいると思われる。
……理事長様の一言が効いたのかな。そうだとすれば、やはりと言うべきか。侮れない人物である。
リングへと繋がる橋の手前の通路までやって来ると、開会式と服装は変わらないものの、そこにプラスするようにレイピアを帯剣したセラフィーヌ理事長が待機していた。
「お母さん!」
セラさんに気付いたツバサちゃんは無邪気に駆け寄る。ツバサちゃんからすれば、理事長である前に実の母親であるから、その反応は間違っていない。が、私としては、母である前に理事長という大きな肩書きが頭を過り、少しヒヤッとはしたけれど。
ツバサちゃんに少し遅れ、イグさんと私が追い付くと、イグさんが一歩前に出て、─非常勤とはいえ教師だから当たり前だけど─理事長に報告していく。
「理事長、お待たせしました。指示通り、二人を連れてきましたが……もしかして、お待たせしましたかね?」
イグさんの貴重な敬語を使うところを拝んでいると、理事長はふわりと笑う。
時折、理事長を『セラおばさん』と呼ぶ辺り、昔からの知り合いとかそんなんだろう。というか、イグさんがおばさんと呼ぶってことは、イグさんより年上……なんて、当たり前か。二児の母ですもんね。……いや、私が知らないだけでまだ何人もいる……いや、終わらない推測はするべきではない。なぜなら、終わりのない迷宮だから。はい。終わり!
「いいえ。今来たばかりだから大丈夫。それと、イグくん。ここには他の先生方もいらっしゃらないから、いつも通りに話してくれて構わないわ♪」
「そうっすか? そんじゃ、お言葉に甘えて」
イグさんの顔からふっと緊張の色が消える。昔からの慣れを今すぐ変えるのは容易ではない。私がイグさんやリアさんを先生と呼べないのと同じ。私に関しては、意図的にそうしているところもあるけれど、あと一年足らずで先生と生徒関係もなくなるわけだし、呼び方なんて些細なものだ。
理事長はイグさんの一歩後ろに立っていた私にも目を向ける。一人、勝手に思考を巡らせていた意識を現実に引き戻しつつ、姿勢を正してイグさんの隣に立つ。
「会場周辺、並びに会場内の警備強化もすでに完了しています。あと、余計かもしれませんが、観客に被害が出ないよう、会場周辺に理事長のとは別の結界も張らせました。……即席ですので、長くは持たないと推測されますが、最低でも三十分は私が保証します」
……私の相棒もいるから。……とは言わず。
私の報告に理事長は少しの感心を含ませるような優しい笑みを浮かべた。
「短時間でそこまで……流石、会長さんね。ありがとう♪」
「えっ!? あ、いえ……感謝されるようなことでは。これが仕事ですので、できて当然です」
素直に感心されるなんて思っていなかったから、若干、挙動不審になった。基本的に、お前ならできて当然だろと思われる方が多いからかもしれない。そう思わせてるのは、あの教頭だけどな……!
「あらあら♪ 謙遜なんてしなくてもいいのに」
面白そうに笑う理事長に、どこかプリン校長と同じ雰囲気を感じ取った。何度か話した経験はあるが、時折、理事長と校長は似ていると思っていた。口にはしない。絶対に。
と、理事長とは別の方向から小さな笑い声が聞こえる。そちらを見ることなく、近くの腕をつねってやった。
「いててっ!? ごめんって! 変な意味じゃないから~♪」
「どの口が言ってるんですか。楽しそうに笑ってましたよ、イグせんっぱいっ!」
彼の実力なら、私につねられるなんてあり得ない。イグさんなら、さらりと避けてしまえるはずなのだ。つまり、これはわざと受けている。その辺りも大変腹立たしいので、嫌味も込め、先輩呼びしてるものの、それを察してくれる程、イグさんは優しくはない。口では痛いとか言っている割には、イグさんの表情は穏やかで笑っている。
「昔から褒め慣れてないよなぁ、ラルは♪」
「腕だけじゃなくて、次はほっぺたを思いっきりつねってやりましょうか、先輩?」
「それは流石に痛いからパス♪」
「そう言われると、やりたくなりますねぇ」
「あはは♪ いやいや、やめてくれ」
やれるもんならやってみろ……って、顔に書いてあるな。覚えてろよ。いつかやってやる……!
話は変わるが、私とイグさんのやり取りを変わらずに楽しそうに見ている理事長は大物である。イグさんは有名な探検家で、そんな有名人に楯突いているんだから。まあ、私とイグさんの関係を知らない人から見れば、生意気な生徒が先生に歯向かっているようにしか見えないだろう。
「そうだ。ツバサ、ちゃんと武器は持ってきた?」
「うんっ! ほら♪」
世間話はそこそこに、理事長はツバサちゃんに向き直る。話しかけられたツバサちゃんは、自分の背丈ほどある両剣を理事長に見せた。言いつけ通りにしっかり武器を持ってきたツバサちゃんに、理事長はにっこりと笑う。
「よろしい♪ それじゃあ、アリアちゃんが作った氷山を解体するために、お母さんからツバサに一つのテーマを出します」
「テーマ?」
こてんと首を傾げるツバサちゃん。
そう言えば、普通に解体するだけじゃつまらないと、解体ショーにすると言っていた。ショーは見せ物。それのためのテーマ、か。
「難しく考えなくていいわ。今から言うことは、あくまで『できたら』の話。失敗したり、危ないことしたりしなければ、お母さんは怒らないから」
「うん……?」
「テーマは『氷と炎』。これを意識しながら、観客をあっと言わせつつも、ツバサ自身が楽しめるようなショーを行いなさい。お母さんも手伝うから……ね?」
「お母さんと!? 分かった!! 頑張るね!」
テーマを課せられた意味について不思議そうにしていたツバサちゃんだったけれど、お母さんと一緒にできると知ると、その疑問も吹っ飛んでしまったらしい。パッと顔を輝かせて尻尾をパタパタさせていた。
かなり微笑ましいシーンで、心がほかほかするところである。が、悲しいかな。私の脳内では、ツバサちゃんが疑問に思った問いの回答を考えていた。
テーマを与えたのは、ツバサちゃんを試すためだろう。ある意味、修行の一種なんだろう。解体するだけなら、適当な魔法を一つや二つぶつけてしまえば終わること。アラシ君の魔法で一部は防げているのだから、似たような炎系統の魔法を使えば終わる。しかし、そこにテーマ、ショーであると条件付けるとそうはいかない。如何にして魅せるか、そのための技術、魔力操作、どんな魔法を使うかが変わってくる。要は、単純に壊すのとは訳が違うということだ。
「ふふ。よろしい♪ それじゃあ、頑張ろっか?」
「はーいっ♪」
ツバサちゃんは、無邪気な笑顔を見せつつも、母親の期待に応えようと気合い十分だ。
一方のじゃれあっていた私とイグさんは、すでに取っ組み合い─私の一方的なものだが─は終わりにしていて、黙って親子二人を観察していた。
「……お母さんって感じですね」
「そりゃ、ツバサのお母さんだからな~♪」
「でも、仕事のときは上の人って感じです」
「そりゃ、理事長だからしっかりしてないと、学園の経営なんて成り立たない。それにあの若さで上に立つのも、相当な苦労があるはずだぜ。威厳って大切だしな。それは、お前が一番分かってるだろ?」
「探検隊のリーダーと理事長並べないでくださいよ……ん? あの若さって……?」
「ん? セラおばさん、三十五だから。理事長やるにはまだ若いだろ?」
あぁ、そういうことか。女性の年齢をさらりと言ってしまうイグさんには突っ込まず、スルーしておこう。
セラ理事長が今の立場に就任したのは、確か五年前……私がここの中等部に来た頃だったはずだ。ということは、三十で学園経営と教育者の立場にあるという計算になる。まあ、もしかしたら教育者の立場は三十歳前からやっていた可能性はあるが。
「……あんまり関係ないんですけど、ツバサちゃんとツルギ君の他にお子さんは?」
「いないぞ。双子だけだが……どした?」
「いえ。私の中の可能性を潰したかっただけです」
「ふーん? まぁた変に頭働かせてんのか~? 物好きだなー!」
なんて言いながら、イグさんは私の頭をぐしゃぐしゃっと撫で回した。力加減はギリギリしてあるけれど、痛いものは痛い。叫ぶほどではないけれど。
「……さて、そろそろ始めましょう♪」
親子ショーの打ち合わせが終わったのか、ぱちんと手を叩くと、理事長は私達の方を振り返り、にっこり笑う。
「会長さん、警備等々はお願いしますね? イグくんも」
「承知しました」
「了解っす♪」
「ツバサ、行こうか?」
「はいっ!」
イグさんに撫で回され、乱れた髪を整える。ついでにインカムを使い、警備班全員にこれから解体を開始することも伝える。
できれば、会場、あるいはモニター越しで全体を見てみたかったが……致し方ない。これもお仕事。ここから見学させてもらおうか。



~あとがき~
長いなぁ……まあ、しゃーなし。え? 途中の茶番?? 知らない人ですね……(目を逸らし)

次回、氷山を解体するぞー!! 親子ショーだぞー!! 多分、三人称視点!

ラルは途中編入組です。ティールは一年からいるけど。ラルが学校に通うことになった経緯とか二人の出会いとか、同居するきっかけとかその他もろもろ考えてはあるけれど、考えておこう……くらいの気持ちなので、日の目を見ることはないでしょう。
裏設定を考えるって楽しいよね……(笑)

いやぁ……必要以上にラルとイグさんの絡みを入れました。半分は私の欲望のままに書きましたが、もう半分は二人の関係性をお見せしたかったのです。探検隊として、色々教えてもらっていたので、ラルはラルでなついている……? いや、なついているって表現は違うか。フランクに接しているみたいなところを見せられたらと。
伝わればいいなぁ……!!(笑)

ではでは!