satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第89話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお気楽に過ごす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、綺麗に一撃でアリアちゃんに負けたレオン氏! 一言!!
レオン「できる限りは尽くしたのですがっ……勝てる自信はありませんでした……っ!!」
アラシ「茶番ノリノリだな」
レオン「こうでもしないと心折れそうなんだよね」
アラシ「あ、そう」
レオン「冷たぁい」
ってことで、一回戦も後半戦! ミユルVSユーリ戦です。視点は久しぶりのユーリ中心の第三者視点。たまにはね。第三者視点も練習が必要なんやで……
アラシ「それで苦労しなきゃいいけど」
レオン「だなー」


ミユル・ノフェカが次の対戦相手だと知らされたときに思ったのは、「苦手な相手に当たった」である。彼女が出ていた予選を見て、苦手だなと感じたのだった。
ユーリが今回、参加した主な理由は「行け」と言われたからであった。当初、そこまで関心もなく、参加を深く考えてはいなかったのだ。また、戦いという行為に興味がなくなったのも、大きな要因かもしれない。しかし、ほんの少し前に剣の師である、リンドウにせっかくだからと言われてしまったのだ。
「今の自分を確かめてみるいい機会さ。同年代との差というものを知るにはね」
という勧めもあり、参加を決めたのだった。そこで出された条件なるものがあった。予選での個人ルールは、得意である糸とデバフ魔法を使わないことであった。とはいえ、糸は最終手段として張り巡らせてはいたのだが、昼休み中にあっさりリンドウにバレたのだ。咎められはしなかったものの、肝が冷えた。
それを思い出してしまったユーリは一人、フィールドに繋がる廊下で、ふるふると首を振った。
「……来てるなら来てるって言えばいいのに。先生は悪趣味だな」
そして、トーナメントに出るに辺り、出された個人ルールは糸と剣の使用不可。つまり、今、自分の使える魔法だけで立ち回れと言われたのと同義である。まあ、使えないとはいえ、腰に装備はしてあるし、糸を使うためのグローブだって着用済みだ。
「……僕の魔法だけで、どうにかなる相手だと思えないんだけれど。まあ、経験して何とやらってね」
一度、深呼吸をし、フィールドへと繋がる入口を見据える。これを潜ったら最後、勝つか負けるかの世界へと変わっていくのだ。

『一回戦も後半戦!! 第三試合を盛り上げてくれる選手の入場だぁぁ!!!』
第一、第二試合と変わらず、リュウのハイテンションなアナウンスと共にユーリとミユルが姿を現す。そして、相も変わらず、即興で作り上げている選手紹介が始まった。
『生徒会三年達からは、優秀な部下と慕われており、実は密かに女子達から人気もあるかも? 毒舌黒狼王子! ユーリ・ケイィィィン!!』
アラシ、イツキ、レオン、アリアとおかしな説明ではあったから、一応の心構えはあった。あったのだが、何も言わずにスルーできるか否かはまた話が違うわけで。
「……なんですか、その呼び名。初めて聞きましたけれど」
「そういえば、前にリリィちゃんが『ゆっちゃんは怒るとすっごく口が悪くなるんだよ!』って言っていたけど……もしかして、それってユーリくんのことかしら?」
幼馴染みは自分の友人に対して、そんなことを話しているのかと困惑する反面、それをリュウは知っているのだろうかとの疑問が浮かぶ。
「リリア情報からの創作あだ名なの……?」
「うふふ。さあ……?」
ユーリだけで終わるはずもなく、次はミユルの紹介が入る。
『続きまして! 現在は園芸部副部長の地位についているが、部長よりも強かったりするのか? 植物のことならお任せあれ♪ ミユル・ノフェカァァァァ!!』
「うふふ♪ 今までの紹介もそうでしたけど、司会をやっている三年の先輩は面白い方ですね~♪」
部活の権力についての否定はない辺り、事実なんだろうなと推測してしまう。が、それを聞けるほどの度胸も余裕もユーリにはないので、突っ込みはしなかった。しかしまあ、笑って何も言わないのが、ミユルの性格かもしれないのだが。
『さあ! これからどんなバトルを見せてくれるのか!! 開始のゴングを鳴らさせてもらうぜ!』
鐘の鳴るほんの一瞬、ユーリとミユルはお互いを見る。警戒を込めた視線ではなく、互いの健闘を祈る意を込めて。
「……よろしくお願いします、ノフェカさん」
「ええ。こうして戦うのは初めてかもしれないわね? よろしくね♪ ユーリくん」
微笑を浮かべるミユルに、ユーリは一礼で応える。顔を上げた瞬間にゴングが鳴った。
「ユーリくんは、真正面から勝てる相手ではない……だから、私に有利な環境にさせてもらうわね?」
試合が始まった瞬間、ミユルの手が腰の鞭へと伸び、素早い動作で振り上げた。鞭の攻撃が来るのかと警戒するものの、それは杞憂だったらしい。鞭は地面に打ち付けられ、バシンと大きな音を立てる。すると、淡い緑色に光る巨大な魔法陣が出現した。
「発現せよ。“グリーン・フィールド”!」
「……! フィールド変化か」
頑丈な石を加工し、造られているはずのリングから植物の芽がいつくも生え、それらは一秒毎に成長していく。数秒のうちにユーリは青々と生い茂る森の中へと誘われていた。辺りをぐるりと見回してみても、観客も人工的な建物すら見えてこない。正真正銘の自然界へと連れてこられたと錯覚してしまう。
「あ、アリアちゃんみたいな魔法じゃないから、ちゃんと試合後には元に戻るわ。安心してね?」
これは、関係者に向けられたものなのか、ユーリ自身に向けられたものなのか、判断できなかった。現状、判断する必要もないが。
それはともかくとして。
一瞬のうちに何もなかったフィールドを小さな森へと変化させたミユルに、単純に感心し、舌を巻いた。予選で見たものとはまた規模の違う魔法に、ユーリは思った通りの感想を述べる。
「流石、植物系魔法特化の樹妖精、と言ったところですかね」
「うふふ。褒め言葉として受けとるわね。……さぁって、植物さん達。お願いします♪」
その言葉を合図に、周りを囲う木々が揺れ、はらはらと葉が落ちる。その落ちてくる葉が鋭い刄かのようにユーリに襲いかかった。
「うっわ! マジか」
思わず、細剣の柄に手が伸びるものの、あと少しのところで思い止まる。バックステップで一撃を避け、二撃目以降を近くの木の幹に隠れることで難を逃れた。
ミユルの魔法で出現したこの植物ら全てがユーリの敵となる。身を隠しているこの木も、今は何もしてこないが、一秒後もそうであるとは限らない。
「……厄介だな。……あれ。実質、全方向から攻撃されるってことなんじゃ……?」
ミユルの様子を窺うべく、ちらりと影から顔を覗かせると、彼女は試合が始まってから変わらない笑顔を浮かべたまま。しかし、攻撃の手は止んでいた。
「視界にさえ入らなければ、セーフって認識でいいのかな」
ユーリの予測は当たっているようで、いくら待っても何かされることはなかった。とは言え、このままでいるわけにもいかない。今は何もなくても、別の手段で攻撃される可能性はゼロではないのだ。つまり、この間にこれからどうするか、何らかの手を考える必要がある。
「……とりあえず、いつも通りいこう」
気持ちを切り替えるようにふっと短く息を吐くと、ある行動に出た。

「私は攻撃魔法が得意ではないから、植物達の力を借りて、あぁしたのだけれど……やっぱり簡単にはいかないわね」
フィールドを有利に作り替え、ユーリに先制攻撃を仕掛けたのが試合始まってすぐの話。しかしそれは、彼の反応速度の適応内だったらしく、あっさりと避けられてしまう。現在、木の影に隠れてしまったために攻撃も通らなくなってしまった。植物による攻撃は、ミユルが視認していなければならないからだ。
このまま隠れた状態が続くとも思えないが、この硬直状態もなかなかに辛いものがあった。焦る気持ちをぐっと堪え、ミユルは目を閉じる。ユーリがすぐに何らかの行動を見せると信じて。
「……だって、ここは私の庭だもの」
どれくらいの時間が経ったのだろう。まだ一分も経っていない気もするし、十分以上経った気もする。それほど、戦闘中とは思えない程の静けさがここにはあった。しかし、ミユルには何ら関係ない。
研ぎ澄まされた感覚の中で、明確な気配を感じ取り、ミユルはその方向に向かって鞭を放った。その気配に当たりはしなかったものの、鞭が放った破裂音に驚いたのか、茂みを揺らしながら姿を現した。
ミユルの目の前に現れたのは、よく見なければ猫や子犬と間違えそうなくらい小さく黒い狼だった。長毛のため、分かりにくいが首元にリボンのようなものが巻かれているらしかった。
「ユーリくんの……?」
「きゃうっ」
愛らしく一鳴きすると、再び、茂みの中へと戻ってしまう。そこへすかさず、鞭の攻撃を試みた。すると今度は、一匹ではなく複数体が飛び出し、ミユルの周りを走り回る。この狼達が音に驚いたのか、これが彼の作戦なのかまでは検討もつかない。それでも、彼女がする行為は一つであった。
「ごめんなさい。……相手が誰であろうと、負けるわけにはいかないの!」
幸いにも、小さな狼達の動きは統率の取れた動きではなく、適当に逃げ惑うような動きだ。これならば、狙いもつけやすいというものである。
鞭で横に凪ぎ払うように小さな狼達を攻撃した。狼達にヒットし、呆気なく黒い霧となって霧散する……はずだった。本来ならば。
「なっ!?」
倒したはずの狼達は霧となっても、まるで意思を持ったかのようにミユルにまとわりつく。その瞬間、ミユルの視界がぐにゃりと歪んで、立っていられなくなった。思わずしゃがみ、自分がどうなったのか、頭を巡らせようとするも、それすらもできなくなるような強い目眩に襲われた。
「……こ、れは」
「意外と上手く行くものですね。実は半信半疑だったんですよ」
声の聞こえる方を向こうとしても、方向感覚すら狂わされたのか、そちらを見ることは叶わなかった。声の主、ユーリは続ける。
「申し訳ありません。僕の使える魔法はこれくらいなもので、卑屈な手段ではありましたが。……他にもやりようはあったんですけれど、僕はイツキみたいに割り切れませんので」


~あとがき~
これの作成時に色々ありましたが、これだけ一つ。
いいか、私!! 打ち合わせを怠るな!?(戒め)

次回、まさかの後編へ! ミユルVSユーリ!
二話構成ってなんだ……

今まで以上に書き直しをしていて、仮タイトルに二版改訂とか書いてしまう始末。意味合いとしては、ちょっとした手直しをした上で、がらっと改訂してますってことだ! なんかもう何を編集するのか分からなくなってきて、このタイトルを裏で入れていたという小話でした。あほみたいにどうでもいいわぁ……(笑)

ではでは。