satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第230話

~前回までのあらすじ~
お届け物が終わったものの、フォースの口から衝撃的な事実が発覚しました。
コメディっぽい日常からシリアス雰囲気に突入するのよくない。いや、バトルしない……しないぞ……
フォース「本当かよ」
イブ「ね~?」
チコ「作者さんの頭の中にあるシナリオではバトルあったって話ですけど……?」
な、ない!! 私はないって! イメージしても、ないことにする!!
フォース「何言ってんの」
……分からない。


すーくんはこれ以上の説明はせずに、ザゼルさんの家を出ていく。私達も慌てて、すーくんに続こうとするも、目の前のすーくんが邪魔で外に出られなかった。
「すーくん?」
「人気がしないと思ったら。いつもこんな感じに警戒してたのか。邪魔者は排除か?」
「すまないねぇ……秘密を知られては、外には出せんのです」
ザゼルさんはさっきまでの優しそうな声色のままだけれど、言っている内容は全く平和的なものではない。
え、え!? 何が起きてるの!? すーくん!
「囲み取材?」
「フォース、真面目に言って」
「すんません。村人全員から睨まれてる」
意味分かんない!!
どういうことなんだろう。きっと、すーくんの言った、預言者さんが原因だよね。どう考えても。
預言者……神の代弁者ってこと? 神様の代弁者……? 何それ……?
理解できてはないけれど、話がどんどんややこしい方向へと向かっているのは分かる。前に立つすーくんがちらりとザゼルさんの方を向く。変わらず、ひやりとした声で告げた。
「おれが面と向かってあんたと話したのは、黙って拐うのは気が引けるからだ。同等に落ちたくはないんだよ、おれでもね」
「知らずに任された仕事を……荷物運びをやっていれば、このような事態にはならなかったでしょう。とても残念ですよ」
「お前らがどう思っているのかよぉく分かったよ。そんじゃあ、前言撤回だ。迷惑はかけないっていったけど、かけるわ。……すぅ、チコ。ここを突破するぞ」
は、はわ……分かった! よく分かんないけれど、敵意を向けられているのは、理解したもん。
何が起こっているのか、どうしてこんなことになったのか、預言者ってなんなのか……聞きたいことは山程あるけれど、それは全部後回しだ。
すーくんはふしぎ玉みたいなものを両手に一つずつ創り出すと、一つはザゼルさんに、もう一つは大勢の村人さん達に向かって投げた。玉が地面に当たると、ピカッと光り、同時に煙が大量に噴き出した。
「ちょっとごめんなさいね、お嬢様方」
は、え……きゃっ!
すーくんは私とチコちゃんを抱き抱えると、煙の中だと言うのに、迷いなく群衆の隙間を縫って、この場を脱出する。
煙の影響がないところまで、一気に走り抜け、次に地面に下ろされたときには見知らぬ景色が辺りに広がっていた。いや、見知らぬというよりは、知っているけれど、知らないと言うべきかもしれない。
私達はまだ、森の中だ。そして、目の前には場違いな小さなログハウスがぽつんと建っている。
「……すーくん、説明して」
「おれがプクリンに頼まれたんだよ。人を閉じ込めてるかもしれないから、それを探ってこいって」
それって、すーくんと親方さんが二人きりになったときに、か。
「そ。おれも半信半疑だったけど、あの反応を見せられるとね。……それに、届けた荷物の中身も明らかに関係のないものも入ってる」
「んーと、関係のないもの?」
辺りを見回していたチコちゃんが質問を投げかけながら、すーくんに視線を送る。ログハウスの方を向いて、すーくんは口を開いた。
占星術関連の道具や書物」
……やる人がいるだけじゃないの?
「最近になって頼まれ出したんだと。それに、毎回行く度に村の中があんな感じ。昔はもっとフレンドリーだったのにって前任の奴がプクリンに報告した。で、真相を確かめてこいって依頼」
要するに、村の様子が変だから、真相を確かめろって……? そこから預言者の話はどこから?
「それは単なる噂。カマかけ大成功だったから、村ぐるみでクロだな」
ザゼルさんの家で言ったのは、全部ハッタリ!?
なんて言うと、すーくんは心外だったらしく、少し不満げに反論をする。
「おれを誰だと思ってるんだよ。ちゃんとザゼルの心読みましたぁ~」
ずっるい!!
「ラルならもっと上手くやるんだろうが、おれはそんなまどろっこしい手なんて使いたくないんでね。どう転んでも面倒なら、手っ取り早く終わらせられる方法を選ぶさ」
それがあの全面戦争みたいな宣言を。巻き込まれる私達の身にもなってよ。
「お前らは帰ってもいいよ。この先はおれ一人でも事足りんだろ」
「行くよ。変なことに誰かが巻き込まれているかもしれないんでしょ? そんなの放っておけない。ワタシも、未熟でも探検隊だもん。……イブも同じ気持ち。……そうでしょ?」
真剣な表情でチコちゃんが断言する。それに私も大きく頷いた。
「そうだよ。どうなるのがその人の……この集落の人達の幸せなのか、それを見極めるためにも、一緒に行く。いいでしょ?」
「……そうお前らが決めたんなら、止めはしない。好きにすれば?」
「うん。好きにする! で、すーくん、このあとはどうするの?」
「決まってるだろ。突撃する」
と、突撃……?
にやっと笑ったすーくんは、目隠ししていたリボンを解くと、左耳にぐるぐるっと巻き付けた。続けて、目の前のログハウスの扉に何の躊躇いもなく、手をかける。カギがかかってなかったのか、簡単に開けてしまった。その事実にチコちゃんは戸惑い気味に私を見る。
「い、いいの? これ」
さ、さあ……?
ちらりとログハウス内の様子をうかがってみると、生活感がないわけではなかったが、かといって誰かが住んでいる感じもない。生活するための道具は揃っているのに、人の気配がないのだ。
「お……お邪魔しまーす」
聞く人がいるかどうかも怪しいけれど、一応、お断りをした上で中に入った。すーくんもチコちゃんも私に続けて部屋に上がる。
「ここにいるの? その、預言者さん?」
「少なくとも通じる道はあると思う」
どこにそんな確信……あ、ザゼルさんか。
「ははっ♪ 有力ソース元だな」
本当にずるい能力。
「ずるいなりに扱い難しいんだけど……さて、さっさと探索してずらかりたいね」
発言が犯罪者さんだよ。すーくん。
リビングやキッチンを見ていくものの、特に変なものを見つけることはなかった。手当たり次第、漁っていっても、預言者さんへと繋がるような収穫はなかった。
「フォース! イブ! こっち!」
奥の方を探していたチコちゃんが、ちょいちょいっと手招きをして私達を呼んだ。私とすーくんは、お互いに顔を見合わせ、チコちゃんのところへと駆け寄った。
「ここ。なんか変だよね」
チコちゃんがいたのは、客間みたいなところ。そして、チコちゃんの指差す方角には壁。
「壁叩いたら、空洞っぽい感じなの。ほら、こういうときは隠された道を探すのが一番だもん!」
「……なるほど。仕掛けかなんかあるんだろうけど、いいか。壊す」
え、あ、えぇぇ!?
言うが早いか、すーくんは軽く助走をつけた回し蹴りを壁に向かって繰り出した。武器でもなく、キックで壁が壊れてたまるかと思ったんだけれど、元々、壁自体が脆かったのか、蹴り一つで私達が通れるくらいの穴はできた。
「……うっそぉ」
「制御者なめんなよ~♪ これくらい、本気出せば楽勝だっての」
いやいや……怖いよ!? いつもそんな力一杯蹴ってる!?
「全く。んでも、そんなことしたら、相手は粉砕骨折どころじゃなさそうだな。全力キックなんて、今の今まで一度もやったことないかも」
よかったよ! 実践してなくて!
「とりあえず、行ってみよ。イブ」
すーくんの新たな……それも見たくもないような一面を見せられつつ、私は隠し通路へと足を踏み入れた。洞窟を歩いているような感じで、左右は岩壁だ。後ろはログハウスに通じている。そして、前は明かりもなくて薄暗く、先も見えないくらいだ。明かりがほしいけど、私もチコちゃんも明かりを作れるような技も技術もない。
「チコ、これ持ってろ」
「うん? わっ! これ、ランプ?」
「……セーギョシャ、ベンリー」
すーくんが力の具現化を使い、光源としてランプを創り出したのだろう。普段は武器を創り出すけれど、いざとなれば、生活用品も楽々……一家に一人はほしいですね……なんて。
「あんまり無駄な力は使いたくないが、やむ無し。おれは暗くても見えてるんだけどね」
「じゃあ、フォースが先導して歩いてくれてもよかったのに」
「ちょっと物音立てるだけでも、お前らおれに抱きつくだろ。それが嫌だから創ったの。暑い」
すみませんねー! 臆病者でー!
チコちゃんにはランプを“つるのムチ”で、少し高めにキープしてもらい、私達三人の足元を照らしてもらった。光源があるだけでも、かなり違う。
歩きやすくなった一本道を突き進んでいくと、私達のとは別の明かりを見つける。淡いオレンジ色の光。とても明るい光とは言えないけれど、こんな暗いところで、明かりを見つけたということは……
「すーくん」
「あぁ。……おれ達が捜している御仁かもな」



~あとがき~
ちょっとしたお話程度に考えていたのに……大丈夫か。これは。

次回、ようやくご対面! 預言者とは一体!!
前々回くらいから言っている気がします(汗)

夏祭り編のようながっつりシリアスにはならないと誓います。大丈夫大丈夫……頑張れ、私。
このあとの長編の方がシリアスシリアスする予定なので!! こんなところでシリアスしたくないよぉぉ!! 真面目なお話をしつつも、ちょっとほんわかする、できるようなシーンをまぜまぜしたい。と、思いました……(願望)

フォースが力を使って、武器以外を創り出すのはここが初めて? 前にやったことあったかな。覚えてませんね。
とまあ、彼は武器以外もぱぱっと創れちゃいます。無機物に限りますし、おっきいものは無理ですね。家とかそういうのは無理。あくまで、自分が持てるとか、扱える程度の物なら出せると思ってくれれば!

ではでは!