satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第108話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびり青春する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ぱぱーっと閉会式やりました。
今回で本当に終わるんじゃないかと思ってます。
いや、こんなんたらだらしてもしんどいだけですもんね!! さっさと終わらせます!! はい!


リアに起こされ、若干はっきりしない頭を無理矢理動かしながら制服に着替えた。ラルが寝ている間にリアとツバサが手当てをしたため、包帯やガーゼが当てられている。とはいえ、顔に傷はないため、制服のブレザーと黒タイツを着用してしまえば、全く分からないのだが。
「あ~……しんど」
『だから、言うたのじゃ。あそこまでする必要はないと』
呆れ気味の雷姫の声にラルも苦笑する。
彼女自身、あそこまでやるつもりはなかったのだ。少なくとも、フィールド上でミユルと取引をするまでは。
「あの辺はテンション上がってたんだよぉ。手加減もしたし、全力じゃないしって思ってた」
『あの妖精に絆されたか?』
「いんや。……そうじゃなくても、何かしらやってた気はするよ。“雷龍”はやり過ぎだとしてもね。さて、さっさと行かないとティールが殴り込みに来そうだから、早く戻ろう」
探検隊時の服をまとめてバッグにしまうと、それを持って更衣室を出る。そして、耳にイヤホンをつけ、インカムをオンにする。
「もっしー? 聞こえてます?」
『おー……ようやく起きたか。寝坊助~』
フォースの人を馬鹿にしたような冷やかしが聞こえてくる。反論したくなるが、彼の言う通りであるため、ぐっと我慢した。
『おはよ、ラル。ちゃんと起きてる?』
フォースの後に聞こえてきたのは相棒のティールだ。こちらは少し心配そうな声色だった。
「起きてるけど、帰ったら爆睡するわ。……来客の退場は進んでる?」
『まあ、滞りなく、ね。生徒会の三分の一くらいはそっちの見回りに回してる状態だな。で、同じように誘導とゴミ拾いに人員割いてる感じ』
『救護室では十数人くらいで片付けしてる。大がかりな片付けとか細々した清掃は後日やるから、まあ、来場者が全員いなくなった辺りでこっちも切り上げるって感じでいいと思う』
「よし。それでいくかぁ……ティールは私と合流して、学園内の見回り。フォース君は屋台の後始末よろしくぅ」
『了解。救護室出るから、更衣室の前で待ってて』
『へいへい。片付けさっさと終わらせるわ』
二人との通信を切り、全体へと範囲を広げてから再びマイクのスイッチを入れる。
「私からの連絡が遅くなってごめんねぇ。現状は把握した。こちらからの変更はないから、現状維持のまま、各自お仕事よろしく。何かあれば個別に連絡を。……もう一度繰り返すわ。このまま、各自の仕事を続けてね。任せたぞ~」
普段の指示出しよりも気の抜けたものになったが、本人は全く気にしていない。最後だというのもあるが、単純に疲労によるものでもある。
全体の通信が終わり、顔を上げるとティールがこちらに駆け寄るのが見えた。すぐに合流すると、ラルは出口へと向きを変える。
「んじゃ、行くかぁ」
「了解。ま、流石にこんな最後に問題を起こそうとする人もいないよ」
「だよね~」
テンションが上がって問題を起こされそうだが、そこは生徒会の見回りと、誘導が効果を成しているようで、毎年、大きな問題は全くないのが現状だ。しかし、それが今年も大丈夫であるという保証にはならない。だからこそ、二人も外に出て、目を光らせる必要がある。
探検隊という肩書きを有効に活用して。

ラルとティールが見回りへと向かう同時刻。
周辺のゴミ拾いとその分別を行っているユーリ達は、臨時で備え付けられていたゴミ箱の撤去を行っていた。
「ぐあー! 色々しんどぉい! 何これ! めっちゃ帰りてぇ!」
イツキが別のところから回収してきた大きなゴミ袋を両手に抱えて戻ってくる。仕事をしたくないという愚痴ではなく、単純にゴミが多くて嫌だ的なニュアンスの文句をユーリにぶつける。そして、彼から返ってきたのはたった一言。
「一人でやるからじゃん」
ごもっともである。イツキもこれ以上何か言うこともなく、黙ってゴミを地面に下ろす。
ユーリの頭上では尻尾をパタパタとさせながら、辺りを見回す白狐が鎮座している。ミユルとの試合で、重度の麻痺を受けてしまったユーリを治すために、ツバサが呼び出した精霊、“クラルナール”である。通称、くーちゃん。ラルとリリアーナが勝手に言い出した名前である。
「……その、くーちゃん、いつまでいるの?」
「さあ?」
大会中の警備の時もユーリの後ろを懸命についてくる様子は、一部の観客の中で可愛らしいと少しの騒ぎになっていた。しかし、それも決勝のゲストとして登場した、ラルとフォースの話題性に勝てるはずもなく、観客の興味はそちらに移ったようだった。白狐は自分がどう思われていたのか全く興味ないようで、最初から最後までユーリの目が届く範囲に居続けた。
「! こんっ!」
何かを見つけたのか、白狐は一鳴きすると、ぴょんっとユーリの頭から降りる。そして、何かを咥えてすぐに戻ると、ユーリにそれを差し出した。
白狐が持ってきたのは、落ちていた割り箸である。ユーリ達がゴミ拾いをしていたから、気を利かせて持ってきてくれたのだろう。
「おー? くーちゃん、ゴミ拾いできるの? 偉いな~?」
「こんっ」
「普段のイツキよりは真面目に働いてくれてるよ」
「何……俺に対して一回はトゲ刺しとかないと気がすまない? いじめ?」
ユーリは割り箸を袋に入れると、白狐を優しく撫で、手慣れた手つきで肩に乗せる。そして、ちらりとイツキの方を見る。
「こうやって言っておけば、いつか改心するかなぁって」
「改心とか必要なくね? 俺はいつだって真面目ですぅー!」
「……えぇ? どの辺が?」
「なんだよ、その疑いの目!!」
「なら、今度のテストは期待してていいんだね」
「おう。実技はいいぜ! あ、ペーパーテストは期待するなよ!?」
「勉強しろよ。自称、真面目さんなんだろ」
「こん?」
ユーリとイツキの会話に狐は小さく首を傾げるものの、考えるのをやめたのか、甘えるようにユーリにすり寄る。それに、ユーリは首元を優しく撫でることで応えた。
彼女の─と呼称するのが正解なのかは疑問だが─額の宝石が変化しているのに気づく。側に置いておけと渡されたときは黄色だったのに対し、現在は濃いオレンジに変色していた。
「……もう大丈夫ってことなのかな」
「くぅ?」
再び、こてんと首を傾げる。
「色変わってるから?」
「多分ね。粗方吸収したんだと思う」
「ふーん? そういうもんなの? ユーリも似たような精霊、呼び出せるんじゃね? デバフ回収専用精霊!」
「無理だよ。それって裏を返せば治癒魔法の一種だろ。僕には治癒の適正がないから、精霊が呼び掛けに応じない」
精霊は主の適正にあった効果を持つものが呼び出される。ツバサが治癒に長けた白狐を呼び出し、ユーリが幻術やデバフ所持効果に長けた狼を呼び出すのが何よりの証拠である。しかし、『白』のツバサならば、他の精霊も呼び出せるかもしれない。
「ユーリさーん! イツキさーん!!」
手を振りながらパタパタと駆け寄ってきたのは、“クラルナール”の主、ツバサである。主の姿を見た白狐は、ぴんっと耳を立て、ユーリの肩を降りる。そして、嬉しそうに彼女の元へと走り寄った。
「もうそろそろデバフ治ってるかなって思ってくーちゃんの回収に来たんですけど……うん。ちゃあんとオレンジ色ですね!」
白狐を抱き抱えながら、二人に近づく。ユーリの予想通りに色の変化が経過を表していたらしい。
「くーちゃん、戻っていいよ」
「こんっ」
ツバサの言葉に元気よく返事をすると、するりと彼女の腕から抜け出し、ユーリの足元でくるくる一周する。そしてもう一度、元気よく鳴くと、ぽんっと消えてしまった。その代わり、狐の額と同じオレンジ色の小さなひし形の石が地面に落ちていた。
「くーちゃん、なんか落としてったぞ……? 忘れ物?」
「お前じゃないんだからんなわけないだろ」
「これはユーリさんが受けていたデバフ効果を閉じ込めた石ですよ。そうですね~……封じたのは麻痺だから……麻痺石。『パラライズ石』ですかね?」
石を拾ったツバサは、今ここで名付けたパラライズ石をユーリの方へと差し出した。
「原理は魔力石と変わりませんが、麻痺を付加するだけの限定的な石です。封じてるのがあの重度の麻痺なので、効果は絶大だと思いますよ」
「なるほど。じゃあ、それを他の魔法と組み合わせることで幅が広がりそうですね?」
二人の会話についていけていないイツキは途中で考えるのをやめたらしい。一人寂しくゴミの分別を再開していた。
ユーリとツバサの会話は続く。
「はい! その通りですっ!……これ、ユーリさんにあげます。ユーリさん、デバフ専門だから、有効活用してくれると思うので」
「いいんですか?」
「もちろん」
ユーリがツバサから『パラライズ石』を受け取ったところで、二人の魔法談義は一段落する。
お互い、仕事に戻る空気だったが、ある人物が近づいてくるのが見えた。緑色の長い髪を揺らし、魔術科女子制服を着た少女だった。
「? ノフェカさん……?」
「みーちゃん!」
「あら、ツバサちゃんもここにいたのね?」
ふわりと緩やかな笑みを見せるミユルは、ツバサからユーリへと目線を動かした。
「実はユーリくんに用があって探していたの。……少しいいかしら?」
「ええ。構いませんよ」
「渡したいものがあって。……これなんだけれど」
そう言ってミユルが取り出したのは、入賞者に与えられるセラフィーヌ理事長の講演会参加チケットだった。
「これ、アリアちゃんのなんだけれど、彼女、興味ないみたいなの。それで、興味ある人に渡してくれって……でも、行きたがってたシルはもう持ってるし、アラシくんもレオンくんも興味ないみたいで」
「それで、僕、ですか?」
「もらってくれるとありがたいわ」
さっきから貰ってばかりだなと思いつつも、ユーリはチケットを手に取る。なぜ、自分なのか不思議に思うが、大して意味がないと深く考えるのをやめた。
「みーちゃん、みーちゃん! みーちゃんは何してたの?」
「ん? 皆とおんなじよ。校内のゴミ拾い中♪ 途中から、ユーリくん探しに変わっちゃってたけれどね。ちなみに、シルは上よ」
ミユルに言われ、その場にいたユーリ達は空を見上げる。すると、何頭かの竜が頭上を飛び交っていた。
「ゴミ運んだり、機材運んだりしてくれてるんですね。竜族は」
「自由解散だけれど、案外残ってるのよね」
「成績反映されますし、各所のアピールにもなりますから」
ボランティアとして参加する生徒は自主性を買われ、プラスにしてくれるのだ。所謂、内申点というものである。そのような邪推で参加しているのが過半数だろうが、中には善意で参加している生徒ももちろん存在する。
「中途半端な人はそれなりに反映されます。……イツキ、動け」
「動いてますー!! 生徒会に加盟してる時点でプラスだから、その加点方式関係ないし!」
黙々とゴミの分別をしていたイツキが耐えきれずに反論する。しかし、すでにユーリはイツキではなく、ツバサとミユルの方に向き直っていた。
「生徒会だからって、引かれるときは引かれるますので、お気をつけください。ツバサさん」
「はっ! はいっ! じゃあ、あーちゃんのところに戻りますね! アラシとレオンに任せっきりですので……そういえば、ラルさん、大丈夫でしょうか」
ツバサが最後にラルを見たのは、ふらつきながら着替えに行ったのが最後だった。声は先程、通信機を使って聞いたものの、やはり、姿を見ないと心配になってしまう。
「大丈夫でしょう。いつもあんな感じですから」
「ラル先輩、すること大胆だよな~♪ 俺はそういうの好きだな。ほら、噂をすれば」
イツキが指差す方角に制服姿のラルとティールがいた。見回りだからだろうか。ラルの腰には刀、ティールの腰には一つの剣が装備されていた。
そして、ティールの手にはずるずると引きずられている一人の男がいた。
「えーと……何か……したんだろなぁ、あの男の人」
「で、ですね。ラルさんとティールさんで捕まえたんでしょうか?」
「流石、会長と副会長。……僕、あの人受け取ってくる。ここは任せるよ、イツキ。ツバサさんも戻った方がよろしいかと」
「おー……えっ」
戸惑うイツキを放置し、ユーリはラル達の元へと行ってしまった。考えるでもなく、このゴミ仕分けに飽きたのだろう。
「そうですね! じゃあ、イツキさん。また学校で!」
「あら。じゃあ、私も他のところに行こうかしら。それじゃあね、イツキくん♪」
ユーリの言葉を素直に受け取ったツバサと、ユーリの意図を読んだミユルがそれぞれの方向へと行ってしまう。
「…………マジかぁ」
ため息をついても、仕事が減るわけでもない。ユーリの代わりに近くにいた仲間に声をかけ、さっさと仕事を終わらせる他ないのである。
それぞれの仕事が終わる頃には、日も沈みかけ、月と星が主役となる時間帯に差し掛かっていた。



~あとがき~
いい締め方が分からなかったので、誰かいい案教えてください……(笑)

次回、久しぶりです。休日回!
ラル視点でやるぞい。

前回と今回で小ネタ集でした。
出てこなかったフォース(声は出てたけど)やリリアーナ等々はネタがなかったってことですね。
すまぬ。いつかスポットを……!

ユーリがもらったパラライズ石の出番はあると思います。いつかね。
で、セラさんの講演会チケットネタが今後あるのかは謎ですね。……私は特に思い付かないので、ご想像におまかせします的なやつかもしれません((

ではでは。