satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第232話

~前回までのあらすじ~
預言者さんこと、アイトを発見し、外に出たいというお願いを叶えるべく、オーシャンとフォースは頑張ってます! ってな感じっすな!
これ、どの方向に行くのかさっぱりやで。終わりはふんわりあるんだけど。そこまでどうやって持っていこう……
フォース「出たよ。ふわっふわなやつ」
イブ「それもなんか久しぶりに感じるよね」
へへっ……照れるなぁ~
イブ、フォース「褒めてない」
あ、すんません……


数分、全力疾走をした後、私達の前に見えたのは夕日の光とそれを遮る何人かの影。それがこちらに対して友好的に見えるはずもない。
走り抜けるのは難しいと思い、私達は足を止める。アイトさんを預言者と持ち上げ、丁重な扱いをしていたのなら、無闇に攻撃はしてこない……はずだ。その願いが通じたのか、見えている影は近づくこともなければ、攻撃する素振りもない。
「あれ、ど、どいてくださいって言えば、どいてくれる、のかな」
アイトさんの戸惑いが混じったような言葉に、私は少しだけ考えてみる。
できるなら、争いなく和解したいのが本音。ザゼルさん達も悪意があってこんなことをしたわけではない……と思いたいのかもしれない。
「話し合いの場を設けるべきだとは思うけど、それは今じゃない。今はここを突破する」
「突破するのはいいけど、どうやって?」
チコちゃんの疑問に自信満々に答える。私の中での解答は一つしかなかったからだ。
「わざと攻撃を外すとか? こっちから仕掛けるのは気が引けるけど、元々はあっちが手を出してるもん。正当防衛だ!」
「考え方がフォースみたいだよ……? ずっと一緒だから、似てるんだなぁ」
え、あ、そうかな……?
まあ、確かに、ここにすーくんがいれば、この提案は私ではなくすーくんがしていたかもしれない。それを聞かされ、戸惑ったとしても、「やられる前にやれば問題ない」とかなんとか、にやりと笑いながら。……きっと、その言葉通りに実行する。今までもそうだった。だから、私もそうするだけだ。
「相手を混乱させるとか、ダメージが無さそうな状態異常にさせるのもありか。……でも、そんなの、使えないよね?」
「うん。ワタシは使えない」
「道具使う……には射程外だな。まあ、攻撃するなら、近づくし、別に構わない……けど」
不思議玉の中には、使用するだけで周囲の敵を状態異常にしてしまうという恐ろしい効果を持つ物がある。……あるにはあるんだけれど、発動範囲というのが決まっていて、遠すぎては意味がない。そのため、ある程度の近さが必要になってくるし、相手の強さによっては未然に防ぐのも可能なので、万能というわけでもないのが現状だ。すれ違い様に先制攻撃!……みたいな、不意打ちにはいいんだけれど、今回のこれには当てはまらないだろう。
投げてみてもいいけど、外れたらやだしなぁ~……
「あの、イブさん……さっき貰っていた銃で威嚇射撃してみては……?」
アイトさんからの提案に私はぽかんとしてしまった。びっくりした……わけではなく。
「その手があったのか……!」
「え、イブ、忘れていたの?」
「使わずにいられればいいなって思ってたから、頭の中で候補にも上がらなかった」
トレジャーバッグから取り出したのは、黒くて小さな銃。見た目よりも軽くて、実弾でもないから、反動もほぼないだろう。
ここから狙うにしても、相手は少し遠いし、私の腕で当てられるかは微妙なところだ。しかし、外すなら適当に上を向けるなり、わざと標準をずらしてしまえばいい。当てるのは難しくても、外すのは簡単なんだから。
「ねえ、イブ。それって普通の銃じゃないんだよね?」
「うん。すーくんが“強き力”を元に創った、創造の銃だよ」
「ってことはさ、この前のお祭りで使っていたような……エネルギーの弾を撃ち出すんでしょ? それって、自分が思い描く効果とかつけられないの?」
すーくんならできるんだろうけれど……私はどうなんだろう。一度もやったことがないし、そもそもこれを使ってみたのも、あのキルリア……いや、メタモンに撃ったのが初めてだった。しかも、それに関しては、無我夢中で引き金を引いたため、考える余裕なんてなかった。
「……分かんない。やったことないもん」
「そっか。それなら、敵を眠らせるなんてのもできたかもしれないんだけど……」
なんか、すーくんならそれくらいは読んで、そんな効果にしてくれてそうな気がする。するけれど、確信はない。でも、“強き力”は本来、私の力だ。……できるはず、だと思う。いや、できなきゃ、駄目なんだ。
「けど……やってみる。だって、当てなくていいんだもん」
この小さな拳銃はあくまでも見た目だけ。性能を決めるのは使い手。これが想像で創られているのは、よく知っている。そういう能力だから。
スナイパーが獲物を狙うように、地面に寝そべって、じっと集中する。
「周囲に催眠ガスみたいなのを発生させる……みたいなイメージを強く意識して……」
射程距離なんて関係ない。強く思えば、思い通りにいくんだ!
「撃つっ!」
パンっと思いの外、軽い音で打ち出された弾は、私の狙った通り、地面に当たったらしく、土煙が巻き起こる。そのせいで、出口の近くにいるはずの影は見えなくなってしまったけれど、狼狽えてはくれたはずだ。
「これで眠っていようとなかろうと、煙が邪魔してくれるはず! チコちゃん、ランプ消して走ろう! 一応、煙のところでは息止めてね!」
どっちにしろ今のは威嚇。思い通りにいかなくても、ここを抜けられればいいんだ。
二人に目配せをして、一気に走り抜けるために地面を蹴った。煙に突っ込む前に息を止めて、スピードを上げる。
走るのに必死で、周りがどうなっていたかは確認ができなかった。寝ていてくれたら……うん。いいなって思う。

森の中を走り、運よく見つけた横穴のようなところに私達は身を潜めた。一件落着もしれないけれど、とりあえずは心を落ち着かせられるところを発見できて、一安心した。
「な、成り行きだけど、大変なことになってきたね……んもう。親方も人が悪いよ! うん? 人じゃないか?」
ニンゲンではないけど、この際どうでもいいよ。
すーくんはまだ戻らない。五分なんてとっくに経ったはずなのに。
「そだ! どうしてアイトさんが預言者なんて呼ばれてたんですか? それに、どしてあんなとこに?」
「えぇっと……ここに来たとき、あの方々を見て、視えたものをお伝えし……あ、俺、占いが得意なんです。占星術ってやつで」
チコちゃんの質問にアイトさんは笑顔で答えてくれた。
その占いがよく当たるから預言者
「なんですかねぇ……? まあ、普通の占いではないから、ほぼ当たるんです」
何それ、すごい!!
そこからアイトさんは言いにくそうにかなりの間を空けるも、小さくもしっかりと最後まで言葉を紡いだ。
「……天空魔法の一つ、星魔法が得意なんです。星の力を借りて、未来を見通してます」
「魔法かぁ。魔法なら何でもありですからね!」
「イブ、適当な反応しないでよ……ま、その通りかもだけどさ」
私達の反応が予想外だったのか、アイトさんはきょとんとしていた。そして、慌てた様子で私達に詰め寄る。
「こ、ここには魔法はないんだよね!?」
「ないですよ。ないけど、私達のお友達に似たような子がいるので、格別驚きはないです。となると、アイトさんは別世界から来た……?」
そう考えれば、最初にアイトさんが言っていた言葉も頷ける。常識が通じないとか、いてもいいのか、とか。
「そういうことかぁ~♪ 特別な力を持ってても気にしなくてもいいんですよ。案外、そういう人たくさんいますから」
ピカさんもそうだし、ポチャさんもそうだし。それこそ、すーくんもそう。だからって、生きにくそうな様子なんてない。みぃんな、好きなようにここで生きてる。楽しんでるんだと思う。
「えぇっと……なんか、拍子抜けです」
「ここを出たら、私達の頼もしい先輩方をご紹介します! きっと、アイトさんのお悩みを解決してくれますよ」
「はい。……そうだと、いいな」
うん。きっと、大丈夫。
「と、話が逸れてしまいました。ごめんなさい。……それで視たものを伝えて、持ち上げられて。この力を無闇に教えては駄目だと。俺もここと自分のいたところとは違うって分かってたので、そうなのかなって」
反論もできずに、それに従った?
私が聞くと、アイトさんは困ったように頷いた。
「それに……これは占いでも何でもないんだけれど……あまり逆らったら駄目かなって思ったんです。嫌な感じがして」
「……嫌な感じ?」
なんだろう? 確かに、村の中は静かすぎて怖かったくらいだけれど、ザゼルさんは普通の雰囲気……いや、でも、アイトさんを幽閉していて、普通の雰囲気を出しているのも変な話か。
となると、なんだかきな臭くなってきたかも……?



~あとがき~
着地点はどこでしょう……(困惑)

次回、脱出したイブ達。フォースとは合流できるのか……?

段々、イブが覚醒してきてますねぇ……楽しくなってきました。
これからの成長をお楽しみにね(笑)

天空魔法という言葉に「……あれ?」と思ってくれたら嬉しい。アイトの出生はそこですよ!
答え合わせはきっちりやりますがね。

ではでは!