satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第133話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で切磋琢磨してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から新しいお話の序章みたいな感じで始まってます。今回の主役は……ツバサちゃんでしょうかね? まだいないけど。
他にも新キャラさんが続々と出てくる予定です! お楽しみにー!
まあ!? 今回はいつものメンバーしかいませんけどね!(笑)


《A side》
何でもない放課後。俺はいつものように剣術部に顔を出し、稽古に勤しんでいた。
ここ最近はツバサが魔力風邪を引いた関係で、あいつを生徒会室へ送り届ける任務もなく、直接こちらに行くようになっていた。だからなんだって話だが、レオンも似たようなもんだ。
そんなごくごくありふれた日常の中で、俺は剣術部コーチであり、俺の兄貴であるイグニース先生と剣を交えていた。もちろん、訓練だから真剣ではなく、木剣だ。
兄貴は自分の得意武器である大剣を構え、俺は双剣を構える。何度か撃ち込んだあと、兄貴の目がすっと細くなり、攻撃を仕掛けてきた。
大剣は物が大きいが故に動作も大きくなりがちだ。だから、しっかり観察していればどのような太刀筋で仕掛けられるのかは読める。……はず。
「ふっ!」
斜め上からの斬撃を俺は体を捻って回避。すかさず、双剣による反撃に移るが、それも兄貴には読まれていたようで、大剣や身のこなしだけで器用に捌かれていく。
反撃の糸口も見つからないまま、半ば膠着状態のまま、二人の競り合いが続く。俺はこの状況に若干、焦りを感じているものの、兄貴は余裕だ。いつもの笑顔で軽くいなしている。
「おほ~♪ さっすが、イグニース先生。弟にも容赦ないですねー!」
俺達の模擬試合は先輩達の見世物になっているのか、イツキ先輩の声が聞こえてきた。ちらりと様子を窺うと、普段からイツキ先輩と稽古しているグループの人達が見物していた。
「コーチ! コーチが勝てば俺達は明日、イツキから昼飯強奪できるんす! よろしく頼みまーす!」
「アラシー! ほどほどによろしく! 俺達はイツキに奢りたくねぇんだ!!」
ほどほどってなんすか! 人の真剣勝負にほどほどって!
どうやら、この模擬試合に明日の昼飯を賭けているらしく、イツキ先輩は俺に、残りの先輩方は兄貴にベットしているみたいだ。
俺の信用のなさが……分かるけど。仕方ないんだけど。いっつも兄貴に吹き飛ばされてるから、しゃーないけど!
しかし、それならなぜイツキ先輩は俺に賭けたのだろう? 大穴狙いってことなんだろうか。ギャンブラーだな、先輩。
「待って? 初耳。アラシとイグニース先生で賭けてたの? 俺、負け一択じゃん!?」
「イツキ先輩!?」
大穴狙いとかでもなんでもなく、単純に好き勝手言われていただけだったらしい。つーか、イツキ先輩! あんたもか!!
「うらっ!」
つい先輩方のやり取りに気をとられていると、兄貴からの容赦ない一撃が降ってきた。辛くも紙一重で避けると、俺は兄貴を睨み付ける。
「あっぶねぇな、兄貴!」
「んなこといわれても、今は勝負中だろ? つか、よそ見している暇があるなら、俺に反撃してみろよな~?」
ぐっ……できてたらとっくにしてるっての!
兄貴はニマニマと腹立つ顔で俺を挑発してくる。いいだろう。その挑発に乗ってやる。
双剣は手数が最大の武器。兄貴がいなせないくらいのありったけの数を叩き込んでやる。まずは、一撃!
俺が大きく一歩を踏み出すのと、道場の扉が大きな音を立てて開けられたのは同時であった。
馬鹿でかい音が響けば、人はそちらに意識が向くというもので、俺も例外なく出入り口へと目を向けた。
「たのもおぉぉぉ!! とりあえず黙ってアラシ君を出しやがれですよ!!!」
は!? 俺!?
……この声、ラル、か?
「……よっ!」
「へっ!? ちょ、ま、あに─」
兄貴の声と少しの攻撃の気配に慌てて振り向くものの、眼前に迫る大剣の対処なんてできるはずもなく。
俺は呆気なく道場の入り口付近まで吹き飛ばされたのだった。幸か不幸か、情けない格好ではあるがラルを出迎える形となる。
「およ。ダイナミック出迎えだね、アラシ君。私的には普通に来てくれてもよかったんだよ?」
俺を見下ろすラルは、今の状況を一瞬で判断したのか、にやりと笑っていた。その表情が嫌に鼻について、強く打ち付けた背中の痛みなんて一瞬で吹き飛んだ。フラフラながらも立ち上がり、俺はラルをキッと睨んだ。
「誰のせいでこんな目に遭ってると思って……!」
「んなもん、よそ見したアラシが悪いぞ~? いらっしゃい、ラル♪ お前が来るのは久しぶりか?」
はあ!? よそ見だと!?
ラルの姿を捉えた兄貴はフレンドリーな笑顔ととんでも発言をしながら、こちらに近寄ってきた。ついでに、突然の出来事に固まった生徒達に稽古を再開するように促して。
「こんにちは、イグさん。今年は体験入部期間中に一度だけ来ましたよ。……今日はここにいるんですね。探検家のお仕事してるのかと」
「それもあるにはあるけどな~♪ たまには部活のコーチらしいこともしないとだろ?」
「それで実の弟をいじめてるんですか。……できるお兄ちゃんは辛いですねぇ」
「いじめじゃなくて、愛の鞭だ。お前も知ってんだろ?」
ニヤリと笑う兄貴にラルはふっと笑う。そして、ペコッと頭を下げた。
「ええ。嫌ってほどに。また近いうちにお願いします。愛の鞭ってやつを」
「もっちろん。いつでもいいぞ~♪ 可愛い妹の頼みだしな♪」
……何、にこやかに談笑してやがんだ、この二人!
俺が苛ついてるのを感じ取ったのか、ラルは兄貴の腕をつんつんとつつく。
「お兄ちゃんの評価待ってますよ、弟君が」
「ん? あーそうだった。ま、俺相手によそ見したのが敗因なのは変わらないけどな~♪」
また、よそ見って……!
「よそ見したつもりなんてねぇよ。ただ、ちょっと音に気をとられて油断して……」
「だから、それが命取りなんだって話をしているんだ。今回は木剣だからよかったものの、これが刃同士の戦いなら、お前、死んでるぞ。……それにな、アラシは左からの攻撃に弱いって何度言えば分かる? そろそろ学習しろよ」
……っ!
兄貴から笑顔が消え、真面目な顔で、真剣な声で俺に告げる。確かに、あれが本当の戦場なら、今この瞬間、俺はこの場に立っていない。
「あら、容赦ない」
「あはは♪ それが愛の鞭だからな♪」
ラルの一言に兄貴から真剣の色は消え、いつもの笑顔が戻る。
んでも、あれはラルが突然入ってきたからで、俺の名前叫んだからであって……原因はラルにもあるわけだろ? 理不尽だろ。
「ラルがあんな風に乗り込んでこなきゃまた違う結果になってかもしんないだろ。なんなんだよ、お前は……!」
もう八つ当たりみたいな勢いの俺の言い分に、ラルは少しだけ考える素振りを見せる。そして、パッと明るい笑顔で笑った。
「まあ、私も空気読めてない登場しちゃったね。それについては謝るよ。……でも、イグさん相手に油断は駄目でしょ? この方、手加減は知ってても、容赦はないからさ」
そ、それは……
「戦いにおいて、目の前の敵から意識を逸らしてしまうのはご法度。人相手……正確には知性のある相手とやりあうときは特にね。どんな手を使ってくるのか分からない以上、細心の注意を向け、周りの状況把握は基本中の基本。……ですよね、先輩?」
「よくできました~♪ ただな、この場ではイグさんでも、先輩でもなく先生だろ?」
「んふふ。知らなぁい!」
何が起こるか分からない場での戦闘もあるってことか。……ラルの言葉も一理ある、よな。めっちゃ悔しいし、今回は全面的にラルが悪いんだけど。
けどまあ、油断したのは俺だ。納得はいかないが、負けた事実と油断したのは変わらない。
現役二人がが言うと、重みっつーか現実味が違うな……やっぱ。



~あとがき~
殴り込みしたラルが悪いと思います。
すまんね、アラシ君。

次回、ラルとアラシ君のお話。
視点はそのままです。

ちろっと出しましたが、イツキも久しぶりでしたね。まあ、多分もう出ませんが。

ラルとイグさんの模擬試合なんてやる機会はなさそうですが、ラルもこてんぱんなやられます。惜しいとこまではいきそうだけど、体力が持ちそうにないかな。ラルの場合。なので、ティールと二人がかりでようやく勝利が見えるくらいの実力差はあるのではと。
イグさんとタイマンはれるのは、うちではフォースだけなんじゃないかなと思いますね。まあ、やつに「やる気」の三文字はないので、一生実現しないし、のらりくらりとやり過ごしそうです。

ではでは。