satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第134話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き勝手してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
模擬試合とはいえ、真剣勝負をしていたアラシ君のところに、ラルが殴り込んでしまいましたね。空気読め!?
ラル「ふふん♪ 勝負の世界はいつでも予測不能なことが起きるものよ!」
アラシ「それでお前のあの行動が許されると思ったら大間違いだからな!」
ラル「ごめーん♪」


《A side》
俺は兄貴から休憩を言い渡され、道場の隅っこへとラルを引っ張る。兄貴は観客と化していたイツキ先輩達を一度に相手するらしく、そっちへと歩いていった。
「……で? 色々話が変わったけど、お前は何しに来たんだ? 生徒会の仕事……なら、部長呼ぶか。俺じゃなく」
「そうだね。部活のことならアラシ君じゃなくて部長君呼ぶ。……そうじゃなくて、ツバサちゃんの話をしに来たの」
ツバサの?
兄貴と先輩達の木剣同士が激しく打ち合う音が響く中、俺は思いがけない人物の名前に首を捻る。そして、ラルの表情ががらっと変わったことで、嫌な予感がした。
「二週間もツバサちゃんに会えてないんだよ! 気が狂うわ!! 二週間! 半月! もう駄目! もう無理だよ!?」
「ツバサは魔力風邪で休みだって言ったろ……え、それの話をするためだけに乗り込んできたのか? 嘘だろ!?」
「嘘じゃないよ。実際に来たじゃん。現実」
「いやいやいや!? そういうことじゃなくて!」
「あー!? くっだらねぇ理由で来てんじゃねぇよって顔してる! 下らなくなんてないよ! 私にとっては生死の関わる話だよ。精神的な!」
知るか!!
さっきまで、兄貴と一緒に真面目な話を俺にしていたくせに、なんだこの落差!?
はた迷惑な理由でこっちに出向いてきたみたいだが、ティールやフォースはこいつに説明しないのか。魔力風邪のこと、知らない訳じゃないだろうに。
「あー……ラルはさ、そもそもなんで魔力風邪ってもんがあるのか知ってる?」
俺の問いかけにラルは少しだけ思案し始める。が、こいつの知識の中では見つけられなかったのか、にこっと笑って、首を傾げた。
大丈夫か、こいつ。
と、ここで盛大に何かが折れる音が聞こえ、俺とラルは同時にそちらへと目を向けた。そこには兄貴とイツキ先輩達がいて、兄貴以外は綺麗に倒されている。そして、兄貴がやっちゃったみたいな表情を浮かべていたのだ。それだけで、俺達はなんとなく察した。
「兄貴……誰かの木剣、折りやがったな」
「……あう。イグさん、そこは容赦なく折っちゃ駄目だよ。試合は全力でもいいけどさ」
「あー……話を戻すぞ。……魔力風邪っつーのは、魔法使用者の魔力増幅、安定させる役割がある……のは、知ってる?」
「それは……似たようなことを前に聞いた気がする」
気がするだけかい……
魔力風邪発症中、俺達の中にある魔力を貯めておく器の大きさを拡張させる。その作用で体の節々に痛みが出るのだ。その際、元々体内にあった魔力は一度放出する必要があり、放出したあと、器の安定化、そして、再び魔力を対内に戻すという流れである。
「もう一度、魔力を戻すときに一気に戻るから、高熱も発症するわけ。普通の魔力回復するのとは訳が違うから」
器の大きさが発症前とは大幅に変化しているのもあり、体調にも変化が出るのだ。
「なるほど? 魔力の放出、器の安定、魔力回復の工程を経て、発症前と後で変化があるわけか」
「そういうこと。特にツバサの場合、元から魔力が多い分、時間かかるってわけ」
魔力放出に一週間かけたとして、誤差は生じるものの、元通りになるには、大体一週間かかる計算になる。だからまあ、来週には登校してくるとは思うけど。
「関係ないけど、あいつら双子らしく、ツルギも魔力風邪発症中らしいけどな」
「どんなとこでシンクロしてるのよ」
双子マジックじゃね? 知らんけどさ。
「熱は大分落ち着いたらしいが、今も微熱続きだから様子見なんだと。まあ、近いうちに完治するだろうっておばさ……理事長が言ってたよ」
「ふぅん……なんだか難しいねぇ」
次の日には忘れてそうだな、ラル。
話を聞いて、とりあえずは納得はしている様子だが、しゅんとしてしまった。そこまでツバサに会えないのが残念なのだろうか。俺の知ったことではないけど。
「話した通りだから、生徒会の仕事でもしてツバサの登校を待つんだな」
「そうしたいけどさぁ……もう早急にやらなきゃなんないお仕事なんてないんだよ~」
……マジかよ。え、なんで?
俺の疑問をよそに、ラルはどこからか取り出した端末を軽く弄り、何かを確認すると大きなため息をついた。
「ツバサちゃんが来るまで学校来る意味もないし、サボろっかなぁ……出なきゃなんない授業も大したことないし、イグさんの座学もないし……サボってもバレないだろし」
サボりはバレる。絶対に。
「むー……ツバサちゃん成分足りないんだもん。やる気メーターもゼロ通り越してマイナスだよ」
俺の言葉にラルは小さく頬を膨らませて抗議してきた。そんなことを言われても、俺には全く関係ないのだが。
「だからってうちに殴り込みに来るなよな。……とにかくだ。俺から話せるのはこんなもんしかないから、早く戻るなり帰るなりしろ」
「アラシ君まで私に冷たい……」
よく分からないが、誰かに冷たくあしらわれた後だったらしい。大方、フォースとかだろうけど。
「んじゃあ、今度の休み、お見舞い行ってやれよ」
どこから話を聞いていたのか、先輩達を相手を終えた兄貴がこちらに近寄りながら、とんでもない発言をかましてきた。
確かに、魔力風邪はウイルスが原因で引き起こしているわけでないから、見舞いに行ったところで他人に移る心配はない。ないけど、微熱とはいえツバサは病人なわけで……
「聞いたところによると、ツバサ、家の中を歩き回ってるって話だし? 熱もほぼ下がっているなら話もできるだろうし? アラシ、休み暇だろ。付き合ってやれよ」
は、はあぁぁぁぁ!? なんで俺が!? こいつのために案内しなきゃなんないんだ!?
俺の抗議は丸っきり無視され、ラルは再び、端末に目を向ける。
「今度の休みって……私とティールで仕事ですね。山岳地帯のダンジョン調査。前々から決まってた仕事で、代わりもいないですよ」
「ほぉら! ラル達は仕事だって! それなら諦めるしかないよな! な!?」
俺の必死の呼び掛けに、流石のラルも苦笑気味である。そんなの関係あるか。ここは同意を得なければ、地獄しかないんだから!
「……まあ、ねぇ。ティールにツバサちゃんのお見舞い行きたいから仕事を後回ししよう、なんて通じないから」
ほらね!! じゃあ、なしってことで!!
「ラル、そこの情報収集はもう終わってるのか?」
「終わってますよ。数日後には行くんですもん」
いまいち話の繋がらないような質問に、ラルは素直に答えた。その答えを聞いた兄貴はにっと笑った。
え、なんかヤバイ流れなのでは……?
「じゃあ、俺が代わりに行ってくるよ。その情報さえ貸してくれれば問題ない。ラルの集めた情報だしな~♪ 報告書も俺がまとめて提出しておくし、その際に発生した報酬はお前に渡す。これならいいだろ?」
「…………えっ!? な、なん……イグさん!? どうしたんですか、そんなに親切にしてきて! こわ!? 何企んでるの!」
「企んでなんかないって! この前の大会ではおっきな借りができただろ? ここはどーんと兄ちゃんに任せろよ。な?」
「あ、あぁ……そういう。それなら納得です」
……待て。そうなると、ラルを連れていけと。ツバサん家に。案内しろと。そういう話に戻ってくるのか!?
「そりゃそうだろ。お前、ツバサん家には数え切れないくらい行ってるだろ? 送り迎えだってしてるわけだしさ。何がそんなに嫌なんだよぉ~?」
「……兄貴、俺が嫌がってる理由知ってて言ってるだろ」
「ん~? 知らないなぁ~?」
このっ……人の気も知らないで!! この兄貴は!
「ツバサも二週間、ラル達に会えなくて寂しがってると思うんだけどな~?」
そ、それは……そうだろうけど。
この学園に入ってから、ツバサは本当に楽しそうにしている。ラル達にもよくしてもらっているみたいだし、そんなあいつが会えないのを気にしてないわけがない。その証拠に魔力風邪発症直後、学校行くんだと暴れたわけで。
俺はちらりとラルを見る。
ラルはこの状況にどう動くべきなのか考えているようで、俺と兄貴の様子を窺っていた。
……これ、ラルを説得すれば、まだ逃げ道があるのでは?
「なあ、ラルだってツバサのお見舞い、行きたいだろ?」
うわぁぁあ!!?? 兄貴!?
出方を迷っているのラルに対して先手取られた!
「えっと、まあ……行けるなら、行きたいですけど。仕事もさっきの条件でイグさんが行くなら、こちらに損はないわけですから」
「だろ? だからさ~……」
にやにやと楽しそうな兄貴に何かを耳打ちされるラル。当然だが、俺からでは何を言われたのか分からないが、兄貴からの言葉を全て聞いたラルは釈然としない表情を浮かべつつも、俺の両肩をがっつり掴つかみ、上目遣いに俺を見てきた。
「お願い、アラシ君……! ツバサちゃんのお見舞いに付き添ってください……! 見知らぬ私が行っても追い返されるのが関の山なので!」
え、ちょ……!?
「OKもらえるまで、ついて回るよ! アラシ君に! ストーカー並に!」
どういうお願いの仕方!? 脅し!?
「いいのかぁ? このままついて回られると、色々面倒なことになるぞ? ラルの尋問は怖いからな」
ボソッと兄貴が呟く。
え、何これ……断ったら何されるか分からないとかそういうやつなのか? 兄貴までラルの味方?
「ツバサの家には俺から言っておくから。案内してやれ、我が弟よ~」
くっそ!! 覚えてろ、兄貴のやつ!
「わかった! 今度の日曜! 付き添ってやるから! これでいいか!?」
ラルと兄貴の言葉─主に兄貴からの重圧だが─に耐えきれなくて、俺は結局頷いてしまった。
「ほんと!? ありがと、アラシ君っ!」
頷いたのを見たラルは俺から呆気なく離れ、満面の笑みを見せた。この笑顔も何か裏がありそうで恐ろしくも思うが……考えるだけ、精神力が無駄になりそうなのでやめておこう。
そして、この場で一番楽しそうなのは、何を隠そう兄貴であった。なんなんだ、この大人気ない兄さんは……



~あとがき~
イグニースお兄様には誰にも勝てない。そういうことだ。

次回、ツバサちゃんのお見舞いへゴー!
久しぶりな彼女達も登場です。

ラルの態度がふわふわしているのは、探検隊としてのお仕事を全うすべきなのか、お兄様に甘えてしまうかで揺れまくってるからです。
最後の方も迷いつつも懇願してますね。あれで、アラシ君から「無理! ダメ!」と言われていたら、引き下がったかもしれません。
まあ、その場合、ラルは学校へ来なくなりますが←

ではでは!