satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第155話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界を探検してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から、ラル&ティールのお屋敷調査のお話をしてます。お化け嫌いなティールくんでっす。
ティール「お化け屋敷とかホラー小説とかそういうやつは平気なんだけど」
彼の平気な塩梅は分かりにくそうですが、作り物は平気なのですね。この辺は作中でも説明あるかな。なくてもいいけど(笑)


館内はしばらく人がいない割には綺麗だった。埃っぽいだとか、そういう濁った空気というか、そんなものは感じなかった。雰囲気がそれっぽいから、大して気にならないせいかもしれないが。
いかにも古びた洋館の入り口。そこには広いエントランスがあり、左右に廊下が続く。そして、目の前には二階へと続く階段。確認しなければならないところは多そうだ。
「フォース君みたいにお化け様に敏感じゃないからなぁ。雷姫使ってもいいけど、こんなんで力消費するのもアホらしい。……一つ一つ確認してくか」
本当なら、手分けして見ていく方が効率的なのだけれど、ビビりなティールと離れられるほど、私は冷徹にはなれない。時間はかかるが、どうせ明日は休みなのだ。二人で一緒に見ていけばいいだろう。
「なんでそこまで冷静でいられるの」
「幽霊とか平気な女の子なので。ごめんね! 可愛げのない女の子でー!」
「何に対してキレてるの……?」
うっせうっせ!
持ち主が言うには、電気も水道も一旦止めているらしいので、光源は自分でつけるしかないのだ。私はバッグからペンライトを取り出し、辺りを照らしつつ、奥へと進んでいく。
右手奥の部屋を開けると、備蓄庫なのか、雑多に箱が敷き詰められていた。軽くライトを当てて辺りを観察。特に怪しい気配は感じないし、雷姫も静かだ。だからまあ、何もいないんだろう。多分。
ティール、いそう?」
「スイもセツも静かだから、この部屋にはいないと思う」
ほいよー
こうした地道な作業を淡々とこなし、見回りましたが不審な影はありませんでしたと報告しよう。それでなんかあっても知らん。専門外だ。個人的に霊媒師でも呼んでくれ。
次はお隣かな。
「おっ邪魔しまーす!」
「し、静かに開けようよー!」
ティールの忠告は無視し、ばーんと豪快に開けた先の部屋は食堂らしかった。長いテーブルとたくさんの椅子が等間隔に並べられていて、立派な暖炉も完備されていた。まあ、暖炉は恐らく飾りだろうが、お金持ちのお家って感じがする。ティールの家もこんな感じだったか。
「いや、ティールん家の方が広いか……?」
「ぼくの実家と比較しないで」
「えへへ~♪ ごめーん。ところでさ、夏休みに帰ってこーいって話はどうなったのー?」
「こんなとこでする話!?」
こんなところだからこそ、いつものどうでもいい会話をするんでしょうが。
私は一応、テーブルクロスをめくって、ティールと一緒に下を覗いてみる。当たり前だが、誰もいないし、気配もない。幽霊の『ゆ』の字すらない。
「ま、まあ、いいか。そういうことにしておくよ……で、実家に帰る話だっけ。前に話した以上の特に進展はなく、未だに帰ってこいコールが続くだけだよ」
「……今回、諦めないね。セイラさん」
「ラルもそう思う?」
セイラさんはティールのお母さんのお名前だ。つまり、海の国の王妃様。このお方、ティールのことが大好きで、「いつ帰ってきますか~?」的な連絡を度々ティール本人にしているらしい。そして、息子の彼の答えは決まって、「帰る予定はありません」である。普段なら、「あら、残念」で終わるところなのだが、今回はそうもいかないらしい。
「ん~……実は大切な公務があるんじゃない? ティールも同席してほしい、みたいな?」
「それならそう言うだろうし、その前に父上から連絡来るでしょ。そういうの一回もないから」
あら、そうなの。
ティールはお飾り暖炉を覗きながら、小さくため息をつく。ティールのお家事情は複雑で、あんまり踏み込めない。こればっかりは本人の気持ち次第だから、私も深く関わっていいものなのか疑問だ。
「例の夏休みの仕事は言った? 今度、連絡あったら探検隊の仕事があるから無理だって伝えてさ、期間も分からないって言っちゃえよ」
「それもそっか。そうしよ~」
……って、こんなことを言ってしまってもよいのだろうか。ごめんなさい、セイラさん……!
このあと、食堂もぐるりと確認したものの、怪しい影も気配もなく、私達は食堂をあとにする。
いつもみたいな他愛ない会話でいつものティールに戻るかと思ったのだが、全くそんなことはない。廊下に出た途端、何か不安に感じたのか、ぴたりと私の腕にくっついてきた。
「……ティールさん。あなた、霊感ないじゃないですか。零の感で零感じゃないですか。なんでそこまでビビるんすかね?」
そして、それは女の子が好きな男の子にするやつだから。決して、イケメンな男の子がブルブル震えながら、目の前の女の子に助けを求めるシチュエーションじゃないからね。分かります?
「見えないからこそ怖いってやつだよ……対処の仕様がないだろ? そういうの無理なんだって」
「見えないから対処もないと思うんだけどね~」
「見えない恐怖が嫌なの! 分かってよ~!」
いやいや、分かるさ。漠然とした恐怖は恐ろしいものだからな。
「……ラルの言うそれとぼくのこれは違う気がするよぉ……とにかく、離れないでよ。一人でどっか行こうとしたらあれだよ……あの、怒るから!」
「はいはい。……これ、ティールにお熱なファンの子達が見たら、ドン引き案件だよねぇ」
「? 別に気にしないけど」
……ちょっとからかうか。
「なんかうご……」
「!? え、何!? やめてってば!!」
私が言い切る前に、彼は私の後ろに隠れてしまう。予想以上の反応に、罪悪感がひしひしと沸き上がってくる。これ以上言ってしまうと、泣き出してしまいそうだ。
「……ごめん。気のせいだ。普段以上に早いね、ティール……バトルの反応速度もそれくらいだったら最強なんじゃない?」
「冗談だろ。……普段からこんな風に動いてたら心臓持たない……」
ティール、私達、一階の二部屋しか見てないよ。まだまだ行くぞ」
「心臓持たないぃぃぃ!!!」
安心して。最悪、骨は拾ってやるよ。

とはいえ、小さな物音でティールが滅茶苦茶にビビるという小トラブルを何度か引き起こしたくらいで、一階は特におかしな点はなかった。淡々と館内を見回り、再びエントランスへと戻ってきた。ここから階段を使い、上へと行かねばならない。
「もう、全部が怖い!! なんなの! なんかムカついてきたよ!?」
知らんよ。
どんなものでもビビって反応しまくるティールは、一階を見回るだけで精神力を消耗しまくったのか、テンションがおかしくなってきている。一周回って怒り始めてきた。そろそろ、帰らないとティールがかわいそうになってきたよ。
「上を見たら終わりだよ。あと半分だよ~」
「は、はんぶん……ハンブン……!」
「そうそう。半分。ま、これが王道パターンなら二階に何かあるとか、隠し部屋が! とか急展開を迎えるんだよね?」
「いらないから。そういう期待してないから。すっと終わるのを皆、希望してるから!!」
皆って誰やねん。
「さあさあ、幽霊屋敷探索も後半戦だ~♪ ゴーゴー!」
「だから! そういうことを言うなってば!」
ちぇ~……せーっかく人が楽しい探検にしてあげようとしてるのに。分かってないな~?
テンションがおかしくなってきているティールだが、私の手は離さない辺り、恐怖心は本物なのだろうと思う。
ここまで騒いできて今更ではあるが、一応は階段からの敵襲も視野に入れ、慎重に階段を上る。一階には人の気配もなく、幽霊の気配もなかったが、どこにどんな仕掛けがあるのかは分からない。何がトリガーになるかは誰にも分からないのだ。
と、意識を集中させようとした瞬間、ほんの僅かだが、物音が聞こえてきた。慌てて、階段の途中だが、その場にしゃがみ、再び意識を集中させる。
ティール、この先は通信機で会話しろ。叫ぶなよ。……仮に大声で叫んでみろ。私の耳が死んだあとにお前を殺す」
「え、あ、……了解だけど……なんでこのタイミングでぼくを脅すのさ?」
ノリ。
お互い、耳についている小型通信機のスイッチを入れ、小声で話し始める。さっきまでのおふざけモードはオフである。残念だけれど。
「微かに、何か聞こえてきた。気のせいならいいんだけれど……ちょっと確かめてくる。ティールはここで待機して」
「まっ! ま、まってまって。こんなところで一人にしないでよ……!」
「大丈夫。ティールの見える範囲にいるから」
ずっと繋いできた手を離し、私は一人で階段を上りきる。少しだけ顔を出し、様子を窺うも、広い廊下が続くだけだ。一階と大して変わらない。
……気のせいだったのか?
ちらりとティールの様子を見るが、あれは完全にびびってる。使い物にならないなぁ……いっそ、あそこに置いて一人で確認に走る? それとも、雷姫を使って探りを入れる? 何のために一つ一つ確認してきたのか分からないが……
「……っ!?」
突然、ぞわりと嫌な感覚が私の全身を駆け巡った。何かとは形容できなかった。漠然とした何かを感じたのだ。何かされたのではないか。或いは、何かされるのではないか。そんな勘のような何かで。
「……ティールっ」
「わっ!……な、何? 何かあったの!?」
ほぼ転げ落ちる勢いのまま、ティールの下へ戻り、どうすべきなのか考える。
何をされた? するなら、なんだ。あの短時間でできることはなんだ? 考えろ。攻撃ではない。殺気は感じなかった。ならば、何を……?
ふと、顔を上げた先に見えたものを見て、何を受けたのかを確信した。次に取る行動も。
「……信じてるよ、相棒。受け身しっかり取れよ」
「! ラ、ラル!!」
ティールを突き落とすことだった。
次の瞬間、私の意識も暗転した。



~あとがき~
別にシリアスしませんよ。

次回、雰囲気に飲まれまくっているティールがぼっちに! 大丈夫なのか!! パートナーを助けられるのか!?

言いたいことはないっすね。
ティールのキャラ崩壊がやばいけど、それくらいですもんね。ね?

ではでは!