satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第156話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で冒険してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
のんびりわいわいと屋敷探検中でしたが、敵襲(?)を受けてしまう二人。ラルの咄嗟の判断で分断しました。階段から落とされてますね。
ティール「酷い」
ラル「ごめんて」
ティール「一人にしないでって言ったのに」
ラル「あ、そっち……?」
みたいっすね。
視点はティールっす!


《Te side》
初め、何をされたのか分からなかった。上の確認へ行ったラルが慌てて戻ってきたかと思えば、体をふわっとした感覚がぼくを襲っているのだから。理解しろって方が無理な話だ。
そして、スローモーションのように遠ざかるラルを見て、落とされたのだと気づいた。どうにかして、落下の衝撃を抑えなければと、スイの柄を握り、液体に変化させる。そして、能力で上手く位置を調整し、その小さなプールへ飛び込んだ。
「……っ! ぷはっ! ありがとう、スイ」
よく、あの数秒間の世界で、ここまで対処したな。偉いぞ、ぼく……! もう二度とできないけど!
『にひひー! いーんだよー!』
スイを剣に戻し、いつも身に付けているポンチョも脱いだ。スイから作られた水でびしょびしょで、気持ち悪い。スイが剣に戻ったからといって、濡れた全身が乾くわけではない。
「だからって、刀身が短くなるわけでも、軽くなるわけでもないんだよな。変なの」
『すっちゃ、へんじゃないもーん! てぃー、ひとりになっちゃったねー? どーする?』
……あっ。そうだった。
「こんなところで一人にされても困る……! ラルは!?」
『るー、きっと、うえだよ!』
そ、そりゃそうか。
階段を駆け上ろうとするが、ほんの一瞬、ぼくの視界に何かが横切る。それのせいでぴたりと動きが止まってしまい、よせばいいのに、反射的に横を見てしまった。よせばいいのに。
「……何、あれ」
『ふにゅ?』
ラルと見回ったときには見かけなかったはずの半透明な方々を視界に捉える。皆一様にボロボロな服装で、ゆらゆらと生気のない動きで漂っていた。それも一人二人ではない。大量にいる。
「がっっっつり幽霊屋敷じゃん!! 大量にいるじゃん!? ラルの嘘つきー!! ばかぁぁー!!」
『ほわわ!? てぃー、おちつくんら!』
スイはそう言うが、そんなの無理に決まっている。幽霊だよ!? どう対処するべきなの。いや、できないって言ってるじゃないか。フォースじゃあるまいし!? 無理無理無理!!
『ウフフフ…』
不気味な笑い声が後ろから聞こえてきた。たまらず、後ろを振り返ると、至近距離に真っ白なお顔を近づけてきた女性の幽霊様がいらっしゃった。あり得ないくらい口を歪ませ、にやりと楽しそうに笑っている。怯える人間が面白くて仕方がないとでも言いたげに。
「ぎゃあぁぁぁ!! 無理だっつんてんだろぉぉぉ!! セツ!」
ぼくは叫びながら、バックステップで幽霊から離れる。幸いにも追いかけては来ず、その場でただただ、不気味に笑うのみだ。
『ほいなー! どしたの~?』
「もうどうしたらいいのか分かんないよー! ええい、とにかく、斬る! この世の未練とか知るか! 斬ってここから抹消してやる! お前らも手伝えぇぇぇ!!」
スイとセツを構え、訳のわからないことを口走る。もう、ぼくの頭はキャパオーバーだよ!!
『にゅ。ゆーれーに、ざんげきはむぼーらよ?』
『ほわ? てぃー、ないてうー?』
知るかぁぁぁ!!! もう心は号泣しとるわ、ばぁぁかぁぁ!!
「“絶花雪月”!」
『ほよー』
『ほんきらぁ』
セツに冷気を纏わせ、スイと一緒に連撃を放つ。本来は一つの剣でやるものだけれど、両手に持ってるんだから、一緒にやっても同じだ。
野原をのびのびと跳ねる兎のように軽やかに動くイメージをしながら、全ての斬撃を繰り出した。
「じゅーれんっげきっ! だぁぁ!!」
『てぃー、まったくてごたえないよ』
『すぶりなのら』
知ってるぅぅ!! 斬ってる本人が実感してるからな!! いや、斬れてないけど! 実体のない相手に何やってんだろう、ぼく!?
でも、フォースみたいに話術でどうにかできるはずもなく、ラルと雷姫さんみたいに消す方法なんて知らない。できそうなのは、話すことだけれど、話が通じる相手ではなさそうだ。だって、ずっと笑ってるだけだもの。言葉が一つも聞こえてこないんだけど。
『う、ウふ、ウフフフ……さア、こっチにオイで』
「誰がお前らの誘いに乗るもんかぁぁ!!」
言葉らしい言葉が聞こえてきたものの、それはそれで怖かった。会話なんて無理でした。
両手を大きく広げ、ぼくに抱きつこうとする幽霊達の隙間を掻い潜り、近くの部屋へと飛び込む。そして、スイ達を鞘に納めつつも何かを考える余裕もなく、立派なデスクの下に隠れた。
『てぃー? かくれるの、いみあうのー?』
「知らないよぉ……何でこんなことになってるのさ。ここ、どこなの」
『みゅーん……ごほんいっぱいよ~?』
なら、書斎かなんかなんだろうな。願わくば、ここが聖なる場所的な何かで、幽霊様が入れない部屋だと嬉しい。
ラルともはぐれるし、というか、ラルはどこに行ったの。ぼくを一階に残して─というか、落としてという方が正確かもしれないが─彼女はどこへ。
ふと、ずっと通信機が入りっぱなしだったことを思い出した。ぼくのパニック具合も筒抜けだったし、なんなら、ラルの約束を破って叫びまくっていたのだけれど、あちらからの返答は何一つない。
「ね、ねえ、ラル? 聞こえる……?」
改めて呼び掛けてみても、返答はなかった。ぼくの絶叫に嫌気が差して、通信機を切った……なわけないだろう。そもそも、絶叫一発目で怒られている。普段なら。
……となれば、通信できない状況なのか。
「信じてるよ、相棒」
ラルはぼくを落とす直前、こんなことを言っていた。なぜ、今更?
『てぃー、おちついたー?』
「……なあ、スイ、セツ。お前達は何も感じなかったのか? あんなにたくさんの魂があって、気配とかなかったの? 専門外だからわからない?」
『りゅ……? なーんもわかんないよ? でもでも、もしいるなら、けらいわかる! せっちゃは?』
『みゅー? しやなーい。ここはなんもないよねー? もし、いるなら、ぴーんてなるよー? ゆーれーいるとこ、さむさむだもーん』
なのに、わからなかった?
一つ、二つと深呼吸をして、思考をリセットさせる。目を閉じて、さっきまでの出来事を思い出す。
……よく考えろ。ラルがいつも言っているじゃないか。考えろって。
「……初めは何もいなかった。それは、ラルも言っていたし、スイもセツも何も言ってこなかった。多分、雷姫さんも……なら、いないのが正解なんだ。じゃあ、さっき見たものは? いないのが大前提なら……ぼくの見たものは、嘘……?」
……そうだ。そう考える方が自然なのだ。ぼくはラルやフォースみたく、視える目を持っていないのだから。ここで運良く第六感解放なんて、都合よすぎる話だ。きっかけも何もないのに、視えてたまるかって話である。
「……そう考えれば、納得がいく。それっぽいのを見せる手段があるんだから」
『? てぃー?』
スイの呼び掛けは無視して、デスクの下から這い出てくる。そして、この部屋の扉を見つめると、タイミング良く、数体の幽霊が扉や壁をすり抜け、にたりと嫌な笑みを浮かべて突っ込んできた。
「まんまと雰囲気に飲まれてたよ。だから、初歩的な罠にかけられたのか。……お前ら、幻だな。幻術。単なるデバフ攻撃」
エストポーチから、小さな小瓶を取り出し、中身を一気にあおる。そして、再び扉を見つめたときには誰もいなかった。扉を開け、廊下を見渡すも何の気配も感じない。
「あれを仕掛けた敵がいる。その敵にラルが気づいて……二人して何重にも幻術を掛けられないように、ぼくを逃がした……そういうことなのかな。あは。……やってくれる」
ぼくは階段の下まで戻ると、濡れたせいでずっと張り付いていた前髪を掻き上げ、スイとセツを構える。
「ぼくのパートナーに手を出すなんていい度胸しているじゃないか。……ただですむと思うな」



~あとがき~
怖がって叫んだり、冷静になって静かに怒ったり……忙しいやつですね。

次回、敵に捕まったラルの安否とは!
何度でも言おう。シリアスなんてない。

曖昧なものが苦手なティール。
きっちりしたい真面目な彼っぽいですね。
ちなみに。
幽霊の対処法は、ラルとフォースで違います。ラルは何でも斬っちゃう雷姫を使いますし、フォースはしっかり捉えるために会話でどうにかしようとします。もちろん、二人とも逆のこともしますけどね。ラルも話でどうにかしようとするし、フォースも力でねじ伏せることもあります。
どっちにしろ、ティールの専門外ではありますね。

ではでは!