satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第234話

~前回までのあらすじ~
フォース&ラウラVSザゼル(紅)戦です。
こんなことになるなんて思いもしなかったぜよ。そして、短期間にアッピールしまくる紅さんに鳥肌です。
紅「うふふ」
フォース「まあ、短期間って言ってもね」
公開期間としてはご無沙汰です。まあ、敵軍のご無沙汰は黒やオパールなんだけど。オパールが一番出番ねぇぜ!
フォース「敵ながらかわいそ」
私もそう思う。


ラウラは自分が得意とする槍を手に馴染ませるように軽く扱い、楽しそうに笑った。
「んふふ。いいね。ようやく元凶をこの手で排除できるわけだ。フォースくんは優しいねぇ? 僕とは二度と会いたくないんじゃないかなって思っていたのだけれど」
「んなことないよ。ま、おれのイメージするお前がウザくないことを願うだけ」
「それはちょっと分かんないね~……さて、ご老人。幻とはいえ制御者二人を相手にするんだ。覚悟はしておきなよ、ね?」
一振りの剣を構えるフォースに対し、ラウラは槍を構える。そんな二人に紅……ザゼルは、不気味なほどに楽しそうに笑っていた。
先に動いたのはラウラである。槍を用いた突き技をザゼルに向かって容赦なく放つ。ザゼルはバイオリンの弓のような腕を器用に使って、攻撃をいなしていた。
「ご老人のくせによくやるぅ~♪ フォースくーん、サポートお願いね」
「はいよ」
ぱちんと指を鳴らすと、ザゼルの足元から鎖が伸び、意図も容易く相手の体を絡めとる。身動きのとれないザゼルに、ラウラは先程と同じように鋭い突き技を繰り出した。防御もままならない体勢で受けてしまったからか、簡単に吹き飛んだ。
「本体ではないからかな? なんだか手応えが薄いよ。これ、殺せはしないな」
「ここから追い出せばおれの勝ちってことだろ」
「ふふ。なら、こんなまどろっこしい手を使わずとも追い出せるでしょ? 君ならね」
ラウラの言う通りだ。変に戦わずとも追い出すだけなら簡単だろう。しかし、それをしないのは話す機会を得られる可能性があるからだ。
「女狐。ラルを手にして、あんたらのボスを復活させたとして、その先に望む世界があるのか」
ふらりと立ち上がるザゼルは、どこかおかしそうに肩を震わせながら笑う。
『そう。そのために不必要なものは消えてもらわないと駄目なの。まあ、普通の一般人はいいわ。今回の実験でどうとでもなりそうって知ったもの』
「どうにもならない人達はさようならって? 随分都合がいい話だね~」
『くすっ……都合よく仲間を利用した貴女に言われたくはないわねぇ』
「あらら。僕のこともご存知なのかな。僕は君を知らないけど」
『私はずぅっと我が主様と見ていたもの。この世界の行く末を。あるべき姿を。……ねえ、紅の制御者さん?』
「あん?」
『かつて、人の手で殺された貴方なら、分かるかしら。この世の中の不平等を』
フォース自身がまだ生を持っていた頃を思い出す。確かに、大人の悪意に踊らされ、その生を手放すはめになったのは事実である。
「んなの、仮に殺されてなくても分かるだろ。この世に平等なんてありはしない」
『……なら』
「だからって、おれは独りぼっちの世界に閉じ籠るつもりもねぇ。この世界は嫌いだがな、嫌いじゃねぇやつらが頑張って生きてんだ。それを手助けするのが年長者ってもんだろ?」
「あはは! ほーんと、理想ばっかり話してくるなぁ。そんな君が大好きだよ! 僕達のリーダーはね、君みたいな悪意の塊に負けちゃうような人じゃないの。……去れ、人の子よ。更なる深みは神の領域。我らは神に仕えし人形。その領域に踏み込むのならば、我らは容赦しない」
ラウラが構え、フォースもそれに倣う。これ以上の戦闘の命は保証しないとでも言うかのように、殺気を放つ。
紅はこれ以上の交渉は無理だと判断したのか、ザゼルから力が抜け、ばたりとその場に倒れる。しかし、不気味にもすくすくも笑い始めた。
『まあ、そうでしょうねぇ……でもね、あの方を手にするのは私。主様のために、この世界をあるべき姿に戻すために、必要な犠牲だもの。それは譲れないわぁ……それじゃあね、制御者さん。せめて、貴方の力尽きる頃に会いましょう?』
と、言い残し、これ以降は紅の声は聞こえなかった。
残されたのは、フォースとラウラ、そして、紅に取り残されたザゼルだけ。
「あの狐……後始末しろよ。何? おれがすんの?」
「さっさと追い出せばー? あんなの異物でしょ、あの老人は」
「そうだけど。どうせ、精神体だろうけど……荒っぽく追い出すと、あのジジィの自我、消し飛ばない?」
さっぱりしているラウラに困惑しつつ、問いかけるが、そんな彼女はにっこりと笑う。
「消し飛べばいいじゃん。悪者なんだし」
「あぁ、うん。……お前は昔からそういう奴だったな」
継承者の邪魔物は排除すべし精神に則り、フォースは結局、紅に向けて使わなかった剣を倒れているザゼルに向け、軽々と振り下ろした。
すぱん、と真っ二つになったかと思えば、ザゼルの体は霧のように消えてしまう。
残されたのはここの主であるフォースと、彼が作り出したラウラだけ。
「出口はあっちだよ、フォースくん」
「おう」
「ふふ。……また、話したかったらいつでも付き合うよ。悲しい自問自答に付き合ってあげよう~」
「……ま、そうなるよね」
フォースの意識で作り出したのなら、この会話もラウラならば、こう答えてくれるだろうという自己満足なものに過ぎない。彼女はもういないのだから。
「えー? 実は僕が生きてましたエンドがよかったかい? そんな奇跡、起きるわけないだろう。現実はいつでも残酷なんだよ?」
「うるっせ」
「つれないなぁ。……じゃ、ロマンチックに助言しよっかな? 君の中で生き続けるから心配しなくていいよ、とか言ってみようか?」
「お前、そういうの信じるのか?」
「いや? 死んだらそこで終わりだよ。僕みたいな誰の記憶にも残らないなお人形は特にね」
「……あっそ」
手元の剣を消し、フォースは踵を返す。ラウラの言う出口を目指すために。
彼女の横を通りすぎたとき、
「フォースくん」
と呼び止められた。フォースは足を止めるものの、振り返らなかった。
「なんだよ」
「留まるのは、大変だよ。思っている以上に、ね」
ラウラが何を言いたいのかは詳しく聞き返さなくても理解していた。これでも、何人もの継承者と共に過ごしてきたのだから。
「分かってる。でも……まだ、駄目だ。すぅを……あいつらを残しての退場は、まだ早い」
「あは。随分と変わったねぇ? 丸くなった?」
「言ってろ。……任せろよ、お前の元継承者が住む世界だ。ちゃあんと守ってやる。お前に代わってな」
「……ん。期待してるよ。リーダー」

ふわふわした感覚の中で、ゆっくり目を開けると、最初に飛び込んできたのは、ウィルの顔だった。
「! かーくーーん!」
「うわ、ちかっ」
思いの外近すぎて、フォースは堪らずウィルに平手打ちをかます。ぱしーんといい音が響く中、ウィルは呆気なく飛ばされる。
「いっったぁぁ!? 今の見た!? 起きがけに平手打ちですよ! 奥さん、あり得ますか!?」
ここに奥さんなんて一人もいないのだが、これは悪ノリの何かなのだろう。フォースは特に謝罪するでも、発言に反応をすることなく、辺りを見回した。
「すーくん! よかった! 起きてくれた!!」
「……すぅ? なんで泣いてんの」
どこかの横穴とようなところにいると把握したところで、自分の横でぽろぽろ涙を流しているイブが目に入った。なぜ泣いているのかが分からないのだが、とりあえず、フォースは彼女の頭を撫でた。
「だってだってー! 何回呼んでも起きてくれないんだもん! 私、すーくんを呼び戻そうとしても、上手くいかなくて、かといって、すーくんの中にも行けないし……!」
「……ふぅん。それは悪かったよ。ちょっと……悪い夢見てた」
「悪い夢……?」
「そ。んでも、もう大丈夫」
「……ほんと?」
未だ心配そうにするイブに、フォースはにやりと笑って、ぐしゃぐしゃと乱暴に撫で回した。
「きゃうぅぅ!? な、なにー!?」
「大丈夫だって。おれは一人じゃないからな」



~あとがき~
無理矢理納めた。
まとまり? なにそれ??

次回、謎の集落にまつわる話、まとめてまいります。
まあ、オーシャンとフォースの目的は達成してるしな。

前のピカとフォースの会話や、今回の紅の台詞、ラウラ、フォースの会話からわかると思いますが、彼に残された時間はあんまりないです。あ、いや、死ぬとかそういう話ではないですよ?(汗)
どこまで彼が抵抗できるのかは見守ってくださいませ。

ではでは。