satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第161話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でバトルしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から初々しい(?)ラルとティールの過去編をお送りしてます。いや、分かってる。メインはイグさんを出すことだと。リアさんと会わせることだと! んでも、もう少し先だと思います。はい。
ラルは物静かな感じだし、ティールはちょっと幼いですね?
ラル「今とは逆転だな!」
ティール「何があったんだろうね、ぼくら」
とはいえ、今でもクールなラルはいるし、どこか子供っぽいティールも健在だけどね!


発火石というものがあるらしい。石炭の一種らしいが、高火力な炎を長い時間継続して燃えると噂されている。見た目も黒くて石炭と間違えてしまいそうなくらいだ。そんな発火石、岩山やら渓谷やら、とにかく岩が転がっているようなダンジョンに発生するアイテムの一つ。
つまり、定期的にポップするモンスターと同じで、定期的に発生するアイテムの一つなのだ。そのため、安価で取引されるし、需要もある。
「さてっと……これだけ集めればいいかな? 数指定なかったよね?」
本人曰く、親の影響で石に詳しくなったというティールのお陰で、意外にもスムーズに進んだ鉱石集め。彼の持つ袋は何でもないただの袋だが、それにはたくさんの発火石が詰め込まれている。
「いいんじゃない? というか、すっごく重そうだね。……運べるかなぁ」
「大丈夫。ぼくらの鞄は異次元収納機能のある鞄だから! 魔法ならこれすら必要ないけどね~」
ふうん? 世の中にはそんな魔法もあるのね。
「あはは♪ たっくさんあるよ。便利な魔法。ぼくらには使えないけどさ」
私はバッグの口を開け、ティールの持つ袋をしまう。明らかに容量オーバーだろと突っ込みたくなる比率だったけれど、何の問題もなく、バッグはスリムなまま。本当に不思議なものだ。
とりあえず、依頼はこれにて完遂。周りにモンスターの気配も人の気配もないから、バッジで帰れる場面ではある。
ティールはバッジのマップ機能を立ち上げ、私達が通ってきた道を確認していた。
「うーん。思ったより奥まで来ちゃったね? どうせなら、奥地まで行ってみる?」
「まあ、そうだね。時間もあるし、せっかくの探検だもんね。踏破してみよっか」
「やった♪ 程よく見て回ろうね」
探検好きだなぁ……いいけどさ。
周りに広がるのは、岩の壁とちろちろと流れる水だけ。森の中にある渓谷ではなく、岩山の渓谷だから、本当に見通しもよく、迷うことはなさそうなところである。だから、初心者向きだとか言われているのだろうけれど。
マップを表示させつつ、ダンジョン内を歩いていく。私達が一歩進めばマップ内の道も一歩明らかになる。つまり、足を踏み入れない空間は、何も表示されず、空虚なままだ。
「ここまで来ると、地図を完璧にマッピングしたくなるよね……意味ないのは分かってるんだけれども」
「分かる。時間があれば端から端まで見たいよね。ダンジョンは入る度に地形が変わるから、この地形は二度と拝めないから」
「……はぁ。私にもティールの探検馬鹿が移ったかもしれない」
「えー! いいじゃん。一緒に楽しもうよ~♪」
いや、楽しんではいるけれど……なんて言ったら、調子に乗りそう。黙ってよ。

しばらくは幸運にもモンスターも出てこず、二人で談笑しつつ奥地を目指していた。
しかし、遠くの方で遠吠えのような声が聞こえてきた。その声に私は足を止める。ティールにも聞こえていたらしく、同じく歩みを止めた。同時に、ティールの愛剣のスイちゃんを抜く。
「……なんだ。今の」
「何か、聞こえた、よね? スイ、分かる?」
ぐぬぬ~……ちょっととおいのらぁ……でも、がおーてこわいけらいらよ~』
かなりアバウトな説明だったが、この先に敵がいるという認識は間違っていないようだ。警戒するに越したことはない。
地の底から這い出るような声の持ち主は、その雄叫びと共に段々と近づいてきていた。とてもじゃないが、走って後退できるほど、ゆっくり来てはくれないらしい。
ティール、隠れよう。このまま逃げても追い付かれるかも」
「……了解」
小さな小道に入り、岩壁に張り付くように周りの様子を窺う。目の前には大部屋。他モンスターもアイテムも落ちていない、閑散とした部屋だった。
ティールに倣って、私も短剣をホルダーから抜き取り、構えておく。
「……グオォォォ!!!」
「ひゃっ……な、何あれ。でっか!」
大きな角が二本生え、強靭な四足を持つ、悪魔みたいなそのモンスターは、禍々しいほどに赤く光る目で辺りを見回していた。私達の何倍も大きい。あんなの、初めて見た。
「あ、あれ、ベヒーモスじゃない? なんでこんなところにいるんだろ。あいつのすみかはこんなところじゃないはずなのに」
ベヒーモス? 目の前の怪物の名前?
「そうだよ。あれは、ボス級のモンスターだから……高ランクの討伐対象モンスターさ。今のぼくらじゃ勝ち目ないな。……それに、な、なんか興奮してるし、我を忘れてるっていうか」
部屋に入ってきたベヒーモスさんは低く唸り声を上げ、ぶんぶん頭を振っている。確かに、正気ではない気もするが。
「うぅ~……戦闘するのは死ぬようなもんだよ。……ラル、緊急脱出しよ。転移用の道具は?」
「それはずっと入れてあるし、あると……ん? いや、待って。ないわ。ごめん」
「えっ」
ついさっき、人に譲ってしまったのだ。あれ一つしか持っていない。
「……あげちゃったの?」
「お困りの方がいらしゃったので……つい」
「それは、偉い……けど、この状況下では最悪だよ。ターゲットされてなければ、バッジで逃げれるんだっけ?」
「確か……! ティール、回避!」
「うわっと!!」
ベヒーモスの明確な殺意の視線に私達は、隠れていた小道から飛び出した。飛び出した瞬間、ベヒーモスの前足が振り下ろされるところだった。
「あっぶな! ティール、無事?」
「な、なんとかね。どうする? 今、タゲとられたよね、絶対」
「……だねぇ。ありゃあ、化け物ですよ。……とりあえず、攻撃して隙を作るしかない。戦闘準備!」
「了解! ぼくが前に出るから、後ろから指示出して!」
「了解。……鉤爪攻撃くるよ!」
ティールから離れつつ、ベヒーモスのモーションから、次の攻撃の予測を立てる。私達を襲った際の初撃にも使った、前足を振り下ろしてからの爪攻撃だろう。
私の予測通り、ティールに狙いを定めて前足を振り下ろしてきた。一瞬、受けきれるか思案したようだが、無理だと判断したらしく、前へと走り出し、ベヒーモスの下を駆け抜ける。鉤爪攻撃から逃れたティールは、スイちゃんといつの間にか握っていたセツちゃんを構え、後ろ足に斬撃を食らわせると、一定の距離を取った。
ティールの攻撃、効いてる気がしないなぁ。ヤバイヤバイ。どうするどうする……」
「グオォォォ!!!!」
強靭な足にたった一撃与えても、なんの意味もないらしい。それどころか、ベヒーモスの神経を逆撫でしてしまったのか、地面が揺らぐほどの咆哮を繰り出すと、ゆらりと尻尾を揺らした。
ティール、尻尾来る! 下がれ!」
「尻尾の凪ぎ払い!? いやいや!? 回避間に合うわけないだろ!!」
と、文句を言いつつも、二つの剣で防御姿勢を取る。足で避けられないと悟ったからか、少しでもダメージを軽減しようとしたのだ。
ベヒーモスの尻尾による凪ぎ払いは狙い済ましたようにティールにヒットする。防御していたとはいえ、巨体から放たれた攻撃を踏ん張れるはずもなく、ティールは横へと吹き飛ばされた。
ティール……っ!」
『げほっ……けほ……うぇぇ。……だ、だいじょぶ。一応、生きてる……から。あーくそ。いってぇ……このままだと、走馬灯見るって。絶対』
通信機からティールの声が聞こえてきた。叫ぶ元気はなくても、話す元気はあるみたいだ。しかし、今のティールに前に出て戦えってのは酷な話。たった一撃であの有り様だ。……かなり、絶望的なのではなかろうか。今ある手札を考えてみても、私にできる技や技術で倒せる相手ではない。私よりも剣技に優れているティールであのやられようだ。私にできるはずもない。
なら、今持っている道具でどうにかできるか? 回復薬はあるが、敵を妨害するための道具も気休めにもならない。つまり……このまま二人で脱出する手立てが残念ながら思い付かないのだ。
……なら、二人での脱出を諦めるしかないな。
心でそう割り切ると、短剣をくるりと回す。そして、ベヒーモスをじっと見据えた。
壁際でぐったりしているティールに利口なベヒーモスは狙いを定めていた。動けない相手から仕留めてやろうとするのは知性のある証拠だ。
「私の相棒を簡単にやらせるか! “まもる”!」
私がトップスピードで駆け抜け、ティールとベヒーモスの間に割り込むと、透明で、あるかどうかも分からない壁を作り出す。しかし、この壁はベヒーモスの鉤爪をしっかり受け止め、弾き返した。敵が体勢を崩した隙を狙い、バッグから回復薬を取り出すと、ティールの口に突っ込んだ。
ティール、ここから離脱して。外に出たら、ギルドに連絡してほしい。その時間くらいなら私が稼げる」
「んぐぐぅっ…………っぷはぁ! り、離脱って……ラルは? 一人で戦うの」
「誰かが囮をするしかないからね。私がやる。ティールよりは動けるし……私、速いから。いざってときは逃げ切ってみせる」
私の命令にティールは何か言いたげだったけれど、今の自分の状況を見て、顔を歪ませる。そして、悔しそうに小さく頷いた。
「……けど、条件がある。逃げてくるって約束して。それと、スイを置いてく。ぼくに返してね。絶対だよ」
スイちゃんを差し出し、ゆっくりと立ち上がる。回復薬を使ったからといって、怪我全てが治るわけではない。あくまで、歩ける程度には回復しただけなのだ。
「……了解。よろしくね、スイちゃん」
『うり! よろしく! るー!』
短剣をホルダーにしまい、スイちゃんを構える。ようやく体勢を整えたベヒーモスは今度は私に狙いを定めたらしい。ギロリと睨んでくる。
「行って。ティール」
「了解」
ティールは、おぼつかない足取りではあるものの、ダンジョンの入口方面へと向かう。ある程度離れれば、ターゲットは外れ、バッジのシステムが起動するはずだ。そうすれば、ティールの命だけは助かる。
「……さて、やるか」
仮に私がここで死んだとしても、問題はない。誰も私を知らないのだし、私も誰も知らないのだから。けれど、ティールは違う。家族がいる。帰るべき家があるんだ。ならば。
「危険な役目は私がやるべきだ」



~あとがき~
ラルの性格は昔も今も変わりません。

次回、ラルVSベヒーモス
……ってやりたいけど、戦闘シーン嫌なので、いい感じに終わらせよ……(笑)

ティールと二人だから、いつものラルですね。今よりも爪の甘く、考えがどこか稚拙なラルちゃんではありますが。
ちなみに、この辺のスカイは二人の他にムーンが仲間になっています。空海でいう、ソル君ですね。出てくる気配ゼロですが。
今回でも出てくる……出てくる……ところは……あったかなぁ。あると、いいね……!

ではでは!