satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第237話

~前回までのあらすじ~
無理矢理まとめ回始めてます。
キアがオーシャンの仲間になり、ピカの提案により、ライブが運営する図書館へ住むことになりました。
そんなこんなで、今回はまた少し時間が経ってます。仲間になった日の夜ですね。


フォースは夜の海岸を黙って歩く。じゃくじゃくと砂と砂が擦れる音と、寄せては引いていく波の音だけが彼を包んでいた。
周りに誰もいないのを確認すると、どこからか取り出した結晶を無造作に空に放り投げた。月明かりに照らされ、光を乱反射させながら、結晶もまた、自ら光を放っていく。
結晶が砂浜にざくっと突き刺さると、魔法陣が展開され、光のスクリーンを創り出した。
「よう。久し振り」
『そうだな。お前から連絡してくるのは何年ぶりだろうか?』
そのスクリーンに写し出されたピカチュウは右目を包帯で覆い、使いもしないだろう煙管を片手で弄んでいた。どこかフォースを挑発するようににやりと笑う。
その挑発にフォースは乗っかることにした。理由は一つ。そういう気分だったからだ。
「したくてしてる訳じゃねぇし。つか、まだくたばってねぇのかよ、イオ」
イオと呼ばれたピカチュウは一瞬だけきょとんとしつつも、再び楽しそうに笑う。
『ははっ♪ 残念ながら。“代替わり”はまだ先らしい』
「はよ代われ。数百年前からお前だろ。三代目はいつになるんだよ。百年後?」
『ごもっともな意見だ。だが、初代が代わることを許してくれなくてな。まだしばらくは“イオ”のままだよ。……それで? 用件は』
世間話をするような空気から一転、声のトーンが一つ落ちる。フォースもそれに合わせて、悪ふざけをやめ、本題を切り出した。
「……お前の世界の住人を見つけた。が、帰るつもりはないらしい。心がそう言ってる」
『そうか。お前がそういうなら、真実なんだろうな。……確か、天空魔法の星使い……だったか? 俺の専門外だが』
「そーですか。魔法なんておれの常識を越える代物だ。何でも一緒」
イオの住む世界は、フォース達のいる世界とは別物だ。所謂、平行世界と呼ぶべきなのだろう。平行世界同士は密に関係し、どこかにズレが生じると、他の世界でも何かが起こる。普段は干渉し合うことのないのだが、世界を揺るがすような大きな『何か』には、どの世界でも何らかの異変が現れる。だからといって、何ができるわけではない。
イオの世界は魔法が常識の世界。そして、アイトが操る力も魔法の一つだ。つまり、アイトが本来いるべき場所は、こちらではなく、別世界ということだ。
とはいえ、本人に戻る意思がないため、フォースもどうにかするつもりはなかった。例え、イオと連絡手段を持ち、仲介者として役割を果たせる立場にいたとしてもだ。過干渉である必要はないし、元々、フォースには関係のない話である。
「言いたかったのはそれだけ。お前から何かあれば聞く。聞くだけしかしないけどな」
『相変わらず、偏屈だな? まあ、いいが。とはいえ、こちらから特筆すべき事はない。……なんて、言えたらよかったんだがな』
「そうなるだろうな。こちらの世界でも異変が出始めている。そっちにも影響がないわけがねぇ」
『大したことはないんだがな。うるさい羽虫が増えた程度の変化だ。……そちらの世界で問題が生じているのだろう?』
「そうなんじゃないの? おれには関係ないけど」
『ご謙遜を。渦中にいるくせに』
イオは創造の魔法を操る。ある意味、フォースと似たような力を持つ。占いや未来予知なんかは専門外のはずだが、時折、ぴたりと物事を言い当てる。
顔に出したつもりはないフォースだが、イオは何を見て判断したのか、すくすくと小さく笑う。
『変わったな。お前は』
「は?」
『俺の体感だけど、刺々しさがなくなった気がするよ。いい人に巡り会えたのか?』
イオの指摘は間違っていない。イブやチコに始まり、ピカやポチャ、ギルドのメンバーやトレジャータウンの人達。ここに来てから関り合いを持つようになった人々の存在はある。知らず知らずのうちに、過去の自分からどこか変わった。そうさせた、一番の原因は─フォースにとってはかなり認めたくはないが─ピカの存在が大きい。彼女に会っていなかったら、今でもウィルや鈴流と会えてなかったからだ。
そんな事情をイオに話すのは嫌だった。だから、フォースはいつも通り、ぶっきらぼうに答えることにした。
「何寝惚けたこと言ってんだ。はっ倒すぞ」
『おっと怖い。力を司る神に仕えるお前に勝てるわけがないんだから、よしてくれ』
「よく言う……一番、戦闘経験があるくせに」
『それこそ、お前に言われたくはない』
「あっそ。お褒めいただき光栄でございまーす」
『フォース』
「今度はなんだよ」
『やられるなよ。それと、仮に大きな何かが動いているのだとしたら……きっと、あいつも動くんだろ?』
凛として冷静に話していた創造の長は、ただの青年に戻り、困ったように笑った。
『勝手な願いだけど、コスモ……いや、ピカを頼む。俺はあいつに助けられたから。……本当なら、俺が助けに行ってやりたいけど、できないからな。お前に頼むことにするよ』
「……おれがそいつと関り合いがあるって? どこでそんな話を」
イオにピカとの関わりを話したことはない。そもそも、イブの制御者としてこちらに来てから、連絡を取ったのもこれが初めてなのだ。だから、イオがフォースとピカの関係を知る機会なんてあるはずがない。
『お前んとこの神様がこの前、メロエッタ様に仰っていた。俺はその又聞きで知った』
「マスター……! マジで一回、死ね!」
『そう言ってやるなよ。……そういうわけだ。頼んだぞ』
「だぁれが引き受けるか、そんな話!!」
『引き受けるよ。お前もピカに絆された一人だろ? あいつには人を惹き付ける何かがあるんだ。影響されないわけがない。お前が変わったのも、ピカの存在が大きい……違うか?』
初めから、というよりは、変わったと感じたときからイオは知っていたのだろう。知られたくもない関係性を推察したのだ。そして、全否定しようにも、全て本当のこと。そのため、フォースは何も言えなかった。そんな彼が珍しいのか、イオは心から楽しそうに声を上げて笑った。
『……じゃあな、フォース。今度、連絡するときは俺……“イオ”じゃないといいな?』
「もっと可愛げのあるやつと話したいねぇ……! じゃあな!」
イオとの通信を切り、フォースは結晶を拾い上げる。結晶はフォースの手の中できらきらと輝いていた。夜空に瞬く星のように、幾重にも。
「……イオによろしくされなくったって」
そのあとに続く言葉は宙に消え、呟いた本人すら届くことはなかった。



~あとがき~
短いけど、終わり。

次回、海からの来訪者。
本編パートではない。何が言いたいかわかるね? 何でもない話だ!!←

大切なお知らせです。
この空海、次回からまた不定期更新(多分、月一)に戻ります。なんでって?
ストックが! 心もとないからだよ!!(泣)
いい感じに終わりが見えたら、また定期更新に戻します。はい……!

皆様、覚えてますでしょうか!!(二回目)
私の手掛けるポケモン二次小説、『Fantasy world』より、イオ君です! ひっさしぶりぃー!! とはいえ、F.Wと空海では時系列がずれるんですよね。ちょびっとだけ。
なので、F.Wの話があって、空海があってって感じです。これで、F.Wで何かあってもイオの無事は保証されると言うことだな。他? 知らん((
イオとピカの関係はあちらで……って言いたいけど、全く手をつけてないんだよな(汗)

ではでは!