satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第185話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、仕事の話が終わり、部屋の話になり、雫が三人一緒を望んだところで終わりました。それがどうなるのか、ですね。
そして、今回で一旦、ルーメンおじいちゃんの部屋からの脱出を! 試みたいよね!
うん。閉じ込められてるわけじゃないけどね……(笑)


《L side》
一緒の部屋がいい、と。私とティールとしーくん、同じ部屋だと。そう言いましたか、雫さん……?
しーくんがふんすと鼻を鳴らし、「いい提案でしょ!」みたいに誇らしげにしている。そりゃあ、本当の親子なら一緒の部屋でもおかしくはない。普通だと思うけれど、私達は……既成事実もなければ、お付き合いしているわけでもない、単なる友人関係。親友同士である。同姓ならここまで悩まなくていいのに……世間の目とやらは厳しいもので。
「……どうする?」
「同じ部屋だったとしても、抵抗はないよ。ティールは?」
「抵抗感? 特にないよ」
じーっとこちらの様子を窺うしーくんの視線に耐えつつ、私とティールとでこそこそ会議を繰り広げる。
ちなみに、その様子を微笑ましく見守る大人二人。助けてほしいけど、介入するつもりはなさそうだ。
「ないけど……自宅じゃないし、人の目が気になると言いますか」
「だよね~……人の目怖いもん」
「それ……説明する?」
「え。説明……ねぇ」
「む~……」
無理。あんな無垢な幼児に「私達は特別な関係じゃないから、一緒の部屋は無理なんだよ」なんて言えるか? 私は言えません!!
ティール、言える? 本当の家族とは違うから別々の方がいいんだよなんて」
「え……い、言えるわけない」
私らが会議をしている中、しーくんがルーメンさんに向かって質問を投げ掛けていた。
「おへや、なんでもいいの?」
「もちろん。ワシらはどちらを選んでもいいように、準備はできておるからの。お主らで決めてよいぞ」
「じゃあ、ボクはパパとママといっしょがいい! だって、ながいおやすみのとき、ふたり、いえにいないんだもん!」
あう!?
「こんなふうに、いっしょなの、はじめてだもん。だから、たのしいたび、したいんだもんっ!」
うぅぅ!! ごめぇぇえん!!
「し、雫……そのくらいにしてあげて? ラルのライフはもうゼロだよ……?」
確かに、泊まりで家族旅行みたいなのも、今までになかった。近場で遊ぶとかならよくやっていたけれど、仕事とは言え、こうした旅行っぽい遠出は今回が初めてだ。
「ボク、いっしょがいい。……ダメ?」
「駄目じゃないです。三人一緒がいいですよね。せっかくですもんね。……はい。お願いします」
「君の折れる音が聞こえた気がする」
ばっちり折られたわ……原因はしーくんのうるうる上目遣いです。あれに耐えられる人は人じゃないと思います。はい……
「……パパは? ボクと、ママといっしょ、やだ?」
「え、あ、ぼくも……雫とラル……ママと一緒がいいです。はい。……あの、ルーメンさん。それでお願いしてもいいですか?」
「うむ。それでは、三人一部屋で手配しておこう。荷物も先に運び入れておくからの~♪ アル、頼むぞ?」
「ふふ。承知しました。三人部屋なら、部屋はこちらですね♪」
くすっと小さく笑って小さなメモ用紙を差し出す。部屋番号が書かれていて、きっとこの番号が私達がしばらく滞在する部屋なのだろう。
それにしても、ティールもしーくんのうるうるにやられ、完全に意思が折れたな。世間体がなんだ。もういいよ。周りからティールと付き合ってる通り越して、夫婦に見られてもいいわ……そういうことなのよ。我が天使、雫様のためならば、安いもんだ。別に嫌じゃないし……変な男も寄ってこないと思えば一石二鳥……うん……
「ラル、別のことでダメージいってない?」
「これからはもう少し、しーくんと旅行行こうかなって……家族っぽいこと、しようかなって……うん」
まさか、長期休みの過ごし方を指摘されるとは考えてもなかった。これは反省しないとなぁ……
と、部屋の件が片付いたところで、私はずっと気になっていたことを思い出した。
「ルーメンさん、最後に一つだけ、よろしいですか?」
「む? 仕事のことかの?」
「いえ。仕事ではなくて……いや、間接的には関わるのかな? その、今回のような優遇対応の件です。それの理由についてお聞きしても?」
この話を受けてから、寝泊まりの場所の提供や、街の滞在中の食費は出すとか……その辺が気にかかっていたのだ。いくらなんでも待遇がよすぎる。まさか、ツバサちゃんの友人だから、という理由でここまでするのも変な話である。私達は今までにフェアリーギルド以外のところから仕事を貰い、受けてきたこともあるが、ここまでの対応をされた記憶がないのだ。
「理由か……まあ、いくつかあるんじゃがな。一つ、大きな要因としては、このギルドの規則にあるからかのぉ」
規則、ですか。
「代々、ここの親方を勤める際、守るべき約束事のようなものじゃよ。昔から言われとることで、『特定の探検隊に依頼するときは、手厚い歓迎をせよ』とな?」
……ほう。
「冒険とは時として、命のやりとりがシビアなものになるじゃろう? 自らの命を守るために多くの時間と金をかける……それが探検隊達の負担となる。おかしな話じゃよ。金を稼ぐ手段の一つとして探検隊をしとるはずなのに、命を守る手段を得るために、お金をかけねばならんとはな?」
時として、探検という行為は利益を生まない。安全を多額のお金で得てしまうと、その分の利益はなくなるからだ。
まあ、ある程度の妥協は必要だけど、その妥協で死んでしまっては元も子もない。難しい線引きである。
「だから、この『明けの明星』では、その重荷を減らすために、依頼中に必要であろう食や休める場所を提供しておるんじゃ。そこで浮いたお金で少しでも安全に冒険してもらうためにの?」
少しでも生き残れる可能性を上げてほしいから、少しでも力になれるように依頼した側が負担する、のか。これは歴代の親方さん達が受け継いできた思いの現れなのだろう。
特定と決めているのは、ほいほい保障するわけにもいかないから?
「そうじゃな。この規則に当てはめようとする際には、かなり慎重に人選しておる。いくらこちらが保障すると言っても、好き勝手されても困るからの~」
このスプランドゥールは周りと比べて物価は高めだ。観光地でもあり、探検隊、冒険家達の街で人口も多いからだろう。きっとそこも影響しているんだろうな。
私達もお金に困る程の貧困層ではないけれど、節約できるなら節約したい。そのありがたい規則とやらに甘えてしまうのもいいのかもしれない。
「では、お言葉に甘えて……今日からしばらくの間、お世話になります」
「うむ♪ 滞在中、ギルド内の施設は好きに使ってくれて構わんよ。それと、ここにいる間はこれを持っていなさい」
ルーメンさんが手渡してくれたのはブレスレットだ。乳白色の石がワンポイントとして使われており、その石には星と三日月のマークが掘られていた。そんなブレスレットを私達一人一人に渡してくれる。
「それを見せれば、食堂や施設利用なんかが無料になるんじゃよ。つまり、ギルドの関係者だという証明となるわけじゃ」
なるほどねぇ~……許可証ってことか。失くさないようにしよう。
「星と三日月……ここのギルドのシンボルマークですね?」
「そうじゃよ。よくわかったの~?」
「ギルドの存在は前から知ってましたから。それに……さっきの写真にも載ってました」
ギルドメンバーの集合写真だから、ギルドのマークも載っていたんだろう。私はそこまで見えなかったけれど。
私はルーメンさんからもらったブレスレットをどちらにつけようか少しだけ悩んだ。とは言え、すでに左手には空色のバンドをつけている。同じ手でもいいけど、気分的に片っ方がうるさくなるのが嫌で、右手につけた。
ティールも似たような理由─私と同じ空色のバンドが右手についてる─なのか、何もついていない方の左手につける。しーくんには左手につけてあげた。
「よし。これで大丈夫だね」
「ありがと、ラル!」
どういたしまして。さて、次は隣で待ってるツバサちゃん達と合流するかな。そこから……どうしよう。部屋かな。部屋行くか。
「おっと。最後によいかな?」
なんとなく、お開きな空気だったから、立ち上がろうとしていた私達をルーメンさんが引き止めた。他にも言い忘れたことでもあるのだろうか?
「これは単なるお願いとして聞いてほしいんじゃが……ティールよ」
「は、はい? なんですか?」
「いつでもよいんじゃがな……夜、ワシと少し話せんかな?」
「ぼくとルーメンさんとで、ですか?」
「そうじゃ。なぁに、そんなに身構えんでもよい。この老いぼれの相手をしてほしい。それだけじゃよ」
そして、仕事とは関係のないことで、無理にとは言わない、というのを強調した。これはあくまで、『お願い事』だと言う。
唐突な話にティールはこの場での判断はしかねるらしく、少し思案するように考え込む。そんなティールをルーメンさんはちらりと様子を窺うように見据える。
「じゃが、ティール……もし、お主が家族……特にライトのことを知りたいと思っておるなら、ワシの話相手をしてはくれんかの?」
「……っ!」
「返事は急がん。もし、話をするつもりがあるのなら、夜八時以降にワシの部屋に来るか、アルに言っておくれ。……期限は滞在中、かの? その間ならば、いつでもよいぞ♪」
ルーメンさんはブライトさんと仲がいい。月一で会うくらいには。それなら、今のティールとブライトさんの仲も知っているはず。ルーメンさんは、二人の仲を悪化させるつもりはないだろう。そんなことをしても、二人のためにはならないし、なんなら、ブライトさんとも険悪になる可能性があるからだ。なら、とうにかよくしてあげようとしている……?
問われた本人は、黙ったままだ。返事は急がないと言うし、ここで「時間のあるときに」なんて答えられるほど、今のティールに余裕はない。
「今の申し出は……その、考えさせてください。……失礼、します」
ようやく出た言葉は、消えそうな程小さなもので、足早に部屋を退出してしまった。そのあとをしーくんが慌てて追いかけた。
「ラルよ」
「はい」
ティールのことを見てやってはくれんか? きっと、お主が適任じゃろう」
「……言われなくても、そのつもりです。ティールは、彼は私の大切なパートナーですから。では、失礼します」
ルーメンさんのアルフォースさんに一礼すると、私も部屋を出た。
ルーメンさんも人が悪いなぁ……けど、あれくらいしないと、向き合わないのかもしれない。なら、私は……私のするべきことは……?



~あとがき~
やだ。最後、真面目じゃない。
え、やだぁー!

次回、部屋に行きます。

チームではラルが一番権力ありますが、こういうところでは雫に逆らえないラルとティール。痛いところを突かれ、うるうるにやられました。親バカかな??(笑)

そして、ティールの話も近々やります。
ぼんやりと出ていただけですが、出しますんで。この話の中で出しますんで! はい!

ではでは!