satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第188話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で回想してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルの思考整理回でしたね。
さてさて、今回はティール視点でティールの過去についてお話ししていきます。
真面目だぞぉ(笑)


《Te side》
ラルの提案でギルド探索をすることになったぼく達。ここに滞在し、施設を使う以上、万が一迷ったら大変だからということらしい。
昼、ツバサにも案内してもらったけれど、そんなのはほんの一部。ラルは入れそうなところには片っ端から入るつもりだったようで、躊躇いもなく、部屋を覗いていったのだ。そして、さっと確認して閉める……を繰り返した。
それをずっと横で見ていたぼくとしては、なんだか、悪いことしてる気分になる。
「武器庫とかおもろかった~……それに、図書室みたいのも使えそうだね」
図書室というか、資料室かもしれないけれど。何か調べたいのかな?
ぼくらはあちこち歩いた結果、昼間にやって来た、修練場兼中庭へと行き着いたみたいだ。この時間、流石に人はまばらで、ぽつぽつと武器の練習をしていたり、鍛練している人が少数いるくらい。
「粗方回ったな。夕食までここで時間潰すか」
「! なら、ここであそんでもいい?」
たくさん歩いたはずなのに、雫はなぜか元気一杯だ。楽しそうに笑って、早く遊びたそうにラルを見上げていた。
「いいよ。でも、あんまり離れないで、私達の見えるとこで遊んでね?」
「はーい! スイ、セツ! いこー!」
「おー!」
「やたー!!」
ありがたいことに雫は、スイとセツも連れてってくれた。もういっそ、ずっと連れてってくれないかな。
ぼくとラルはお互いの顔を見合わせると、小さく笑い合った。ラルも雫の底無し元気メーターには苦笑気味だ。
「私らは座って休憩タイムだな」
「そうだね。ちょうど、ベンチもあるし」
二人で近くのベンチに座って、少し離れたところで楽しそうにしている雫とスイとセツを見守る。
時間帯は夕方とはいえ、今の季節は夏だ。日が沈むのはまだ先。なんとなく明るい外は昼よりは涼しくなっているものの、過ごしやすいとは言えなかった。
「あっつ」
「これで暑いって言わないでよぉ……お昼はもっと暑いんだからさ?」
そうなんだけども。
「楽しみだね。探検」
「うん? ま、行ったことのないダンジョンだもんね。ぼくも少し、楽しみだよ」
なんて言ってみるが、ラルはじっとぼくを見つめた。そして、にやりと悪戯っ子みたいに笑う。
「嘘だぁ! 少しなんてあり得ないよ! この探検馬鹿が!?」
「……そ、そうだね。ルーメンさんの部屋ではちゃんと考えてなかったけど、今思うと、滅茶苦茶楽しみです……!」
悔しいけれど、その通り。ラルよりも探検に対する意識は強い方だ。今日は色々ありすぎて、実感湧かないけれど、未知の場所に行くって考えたら、わくわくしてくる。
「にしし。正直でよろしい♪」
「はい。鯖読みしました」
「んなとこ読まんでよろしい」
確かに。そこそこの付き合いだもんね。誤魔化す必要なんてないか。
「……ねえ、ティール?」
「うん?」
ラルはちらっとぼくの方を見る。様子を窺うように、それはほんの一瞬で。
「……なぁに? ラル」
「ちょっと真面目な話してもいいっすかね」
「え……あ、うん」
「私はティールのこと、それなりに知ってるつもりだよ。どんなのが好きとか、嫌いとか。癖とか思いとか……色々。だからこそ言うんだけど、今のティール、結構しんどそうなのよ」
「……そ、そうかな」
ルーメンさんの部屋で写真を見たとき、話を聞いたとき、そして、夜に誘いを受けたとき。どれもこれも、過剰なまでに反応していた。もちろん、ツバサ達の前ではそれなりに堪えていたつもりだけれど、隣に立つラルを騙せるほど、ぼくは大人になれなかった。
「元々、親に関連する場所ってだけで、気後れしてたじゃない? そこから、まあ、色々事実というか、見せられて。整理しきれてなかったかなって。見てて、思った」
「そうだね。……親の全部を知ってる子供なんていないからさ。お祖父様や両親が過去にルーメンさんと一緒にいたってのは気にならなかったよ。ならなかった、んだけど……」
ルーメンさんが父上を語る姿はとても楽しそうで、ぼくの知らない父がいると思ったら、なぜか分からないけれど、凄く怖くなった。それと同時に、ルーメンさんと親との関係を知って、今のぼくはどうしようもなく、親の行為に甘えていると知った。
「……親と向き合えなくなって、ぼくは国を出たかった。子供が簡単に出られるわけないから、仕来たりって名目で……逃げてきた。けど、それもある意味、あの人の手のひらだったって思ったら、心の中がぐっちゃぐちゃになったんだ」
「……レイ学がケアル家の運営だから?」
「そう。選んだのは偶然。でも、きっとどれを選んでも、父上の知る範囲内だったと思う。そりゃ、そうだ。ぼくは王子で、一国を担う、未来の王だから……逃げられるわけなかったんだ」
逃げたかったはずのものから、逃げられてない。なんなら、ぼくが煙たがっていた人に守られていたなんて。
そもそも、逃げ切れるなんて、思ってもなかったけれど。ただ、離れれば、見えるかなって思ったんだ。あの人の……父上の思いが。考えが。でも、この五年、何にも見えなかった。それどころか離れた時間の分だけ、あの人と離れていくだけで。
「ね。……ぼくが、あの人を避ける理由、聞いてくれる?」
「いいけど……いいの? 私に話しても」
「うん。ラルだから、いいかなって。……それに、今、吐き出さないと……どうにかなりそうで」
「いいよ。聞く」
ふわっと優しく笑うラルを見て、少しだけ心が軽くなった気がした。ラルなら、相棒なら、受け止めてくれる気がして。
「……ありがと。と言っても、他人から聞けば、すっごい下らないと思うんだけどね?」
ぼくも、ほんの少しだけ、心から笑えた。

少しだけ、昔の話をしよう。
昔から、父上との関係が悪かった訳ではない。幼い頃は好きだったし、なんなら、仕事ばかりの父でも、ぼくの自慢で憧れですらあった。
「とーちゃ! かーちゃ! おしごとー?」
ティールか。……あぁ。今から出てくる」
「ちゃあんとお留守番、しているんですよ? 帰ってきたら、たっくさん、遊びましょう」
王として城の中で淡々と仕事をしている日もあれば、視察と称して何日も帰らない日もあったし、別国に出向くことも多い。そういうときは大抵、母上も一緒に行く。
「うん。いってらっしゃい!」
それが日常で、普通だった。
もちろん、寂しさはあるけれど、それはほんの少しだけ。二人が帰ってきたら嫌というほどにすぐに構ってくれたから。
帰ってきたら決まって、三人で話をしていた。離れていた時間を埋めるように、基本的には、母上がいっぱい喋るだけだけど。
「今回行ってきたところはそりゃあもう、凄いんです! きらっきらしてました!」
「きらきら?」
「石の話か。……ティールは興味ないだろうに」
「あー! ブライトったら、馬鹿にしてますね!? ティール、そんなことないもんね?」
「ぼーけんのはなし、だぁいすきだよ!」
「でっしょー!? ほら、ティールはブライトみたいに意地悪言わないんですよーだ!」
「いや……冒険と言って」
「じゃあ、今回見つけてきた鉱石の話しますね!!」
「おい。セイラ……?」
「黙って聞く!」
「あいっ!」
「……う、うむ」
母上は色んな話を聞かせてくれた。行ってきた街並みとか、風景とか。会った人の話とか。冒険も、母上が大好きな鉱石の話もたくさん。ぼくが探検隊をやれているのは、きっと、母上の影響。
そんな母とは対照的で、父上から何かを聞くことはなかった。けれど、傍で何も言わなくても、静かながらも……楽しそうにしていたのは伝わった。そんな他愛ない時間がぼくは大好きで。ずっとそんな時間があればいいなって。
……でも、それは続かなかった。
お祖母様……サフィア様が亡くなってから、がらっと周りが変わってしまった。ぼくが五歳の頃の話だ。
元々、お祖母様は病気を患い、ベッドにいることが多かった。ぼくが産まれる少し前かららしい。
でも、正直な話、お祖母様は病気なんて感じさせないくらいに元気な人で、ぼくが両親と会えなくて寂しいときに、一緒にいてくれたのもお祖母様だった。
「内緒よ?」なんて笑いながら、部屋抜け出して、家の中を冒険したり、時に外に出てみたり。……お祖父様は気が気じゃなかったみたいだけれど。
そんなお祖母様が亡くなり、目まぐるしく変わったのだ。当然だ。元王妃の死去があったのに、変わらない方がおかしい。お祖母様の件が関係しているのかは分からないけれど、お祖父様も、ふらりといなくなることが増えた。影ながらに支えていた人が二人もいなくなり、城の中も慌ただしくなった。
当然、両親もその対応に追われ、バタバタしていた。子供のぼくに構えなくなるくらいに。
ちょっと会えないだけの時間のはずが、いつまで経っても会えない時間に変わってしまった。
多分、ここからだ。親との距離感が掴めなくなったんだ。
忙しそうにして、いつもとは違う空気に、ぼくは「ぼくを見て」と言えなくなった。昨日まで、していたはずなのに。
甘え方を忘れ、一歩後ろから見ているだけの時間が長すぎて、期待しなくなって。半年くらいだろうか。
ティール! やっと時間作れたの。少し、お話ししませんか?」
なんて、母上に話しかけられたけれど、ぼくは何も言えなかった。分からなくなって、首を振った。嫌だと、そう伝わるような仕草をした。
今にして思えば、「今更、期待させるようなことをしないでくれ」そんな気持ちだったんだと思う。どうせ、また、すぐにいなくなるくせに、と。ぼくのことなんでどうだっていいんだと、思ってしまったんだ。
このときの母上……母さんはどういう表情だったんだろう。



~あとがき~
お、終わらねぇだと!?

次回、ティールの追憶(後編)です。

なんでもないことでも、人が違えば、なんでもあることに変わるんですよね。
なんかそんな話です。
ま、真面目だぁ……(笑)

ではでは。