satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第191話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で楽しむ物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル達に変に(?)絡んできた男がいましたね。一体誰なのか。
今回はあれだ。ご飯食べます。ご飯。


《L side》
私はカズキさん、ハルさん、ツルギ君のやりとりを黙って見ていたアラシ君をつつく。
「え、何……?」
「置いてけぼりな私らに説明せんかい」
「俺!? い、いや、いいんだけど」
君が近くにいたからね。説明してくれるなら誰でもいいんだけれど。
「えっと、ツルギから注意受けてるちょっと怖そうな人がカズキさん……カズキ・キザカさん。んで、ツルギと一緒になって怒ってるのが、ハル・サクラギさんだな。二人ともここのギルドメンバーで古参なんだ」
年齢的にも、ブライトさんをライトと呼んでいる辺り、そんな気はする。少なくとも、ブライトさんがここに修行していたときからこのギルドにいたってことだもんね。
「カズキさん、あの見た目だから結構、誤解されんだよな。あ、性格はいい人だから、安心しろよ。……んで、二人とも商人兼冒険家で、基本、ソロなんだけど、たまにコンビ組んで仕事してるんだと」
ほんほん。説明ありがとう!
ついでに付け加えるならば……
ティールのパパとお知り合いって感じだね。仲もよかった……のかもしれない」
「だな。……俺も今、知ったけど」
アラシ君からの簡単な説明を聞いている間も、ツルギ君によるお説教は止まらない。
「ダメだぞ! カズキおじさん! おじさん、顔怖いんだから、ラル達に誤解されたでしょ!? 特にラルは女の子だから、気を付けないとダメ!」
おやおや。私の心配かな。こんなの日常茶飯事でもあるし、大丈夫なんだけれど。
「若、それはあんまりっすよ~」
「うるさい! 誤解されてたのは事実」
「う……それはぁ」
「ともかく、すみませんね~? カズキさんが突っ走ったせいで、変な誤解を生んでしまって。話は親方から聞いてます。ラルさんにティールさん、そして、雫くん、ですよね。ほんと、すみません」
カズキさんの説教はツルギ君に任せることにしたのか、ハルさんがこちらを振り向き、ペコッと頭を下げる。それを見たティールも、姿勢を正して、同じように頭を下げた。
「こちらこそ、早とちりしてしまって申し訳ありません」
「いやいや。カズキさんの顔が怖いのと言い方の問題ですんで……お詫びにこれ、あげますよ!」
ハルさんが差し出したのは透明のビニールの袋に入ったケーキの箱だった。大きさ的にワンホールサイズのケーキだろうか? それとも、何ピースものケーキが大量に入っているのかもしれないけれど。
私の前に立っていたティールが戸惑いつつもそれを受け取る。何が入っているのか見えないけれど、ティールは中身が分かったのかパッと顔を輝かせた。
そして、それだけで私も、中身がなんなのか想像できた。多分、ティールの大好物の一つだ。
「それ、最近できたケーキ屋のアップルパイなんすよ。しかも、期間限定のしっとりふわふわアップルパイってやつ。よかったら食べてください」
やっぱり。
分かりやすくティールの機嫌が直り、とても嬉しそうだ。ここは断るところだよ。社交辞令的にも。
ハルさんがケーキを手渡したところが見えていたのだろう。ツルギ君に怒られていたのだが、ぎょっとして若干焦りつつ抗議する。
「あっ!? ハル! それ、俺の夜食……」
「迷惑かけたんすから、これくらい当然っすよね? カ・ズ・キさん?」
「…………はい」
「わあ……ありがとうございます!」
ハルさんの圧に渋々頷くカズキさん。ちょっと申し訳ない気もしなくはないが、ここは素直に受け取るべきなのだろう。というか、ティールは受け取る気満々だし。
「カズキおじさん! 僕の話は終わってない!」
「は、はい! 若!! すんません!」
「初対面の人と話すときはハルおじさんと一緒にいること! 勘違いさせるから! いいね!?」
「き、気を付けます……」
十二歳に怒られる中年おじさま。インパクトすごぉい。
とりあえず満足したらしいツルギ君がふうっと息を吐いたのだが、ここで何かに気づいたのか勢いよくこちらを振り向く。そんなツルギ君と目があった。
「べ、べべ別にラルのためじゃないからな!? ギルドのい、威厳? ってやつがあるから! そのために! 怒ってただけ! お前の心配なんてしてないんだからな!? 勘違いするなよ!」
繕うのが少し遅い気がするよ、ツルギ君。けれどまあ、その言い訳に乗っかってあげますか。
「分かってるよ。ギルドのためだよね」
「そ、そうだよ……分かってるなら……」
「妹のツバサちゃんにもかっこいいところ見せたいよね。だから、私を庇うような言い方したんだよね~? お兄ちゃん?」
「う……」
ちょっと焦ったように言い淀む。本心をここで言われるとまずい、みたいな。あぁ、可愛いなぁ。フォローしてあげますか。
「でもまあ、嘘でも嬉しかったよ。ありがとう、ツルギ君」
「うぐ……だ、だから、そんなんじゃないんだってばっ! ラルの馬鹿! 分からず屋! 行くよ、リラン!!」
照れなのか、恥ずかしさなのか、顔を赤くしつつさっさと食堂の方へと行ってしまう。呼ばれたリランもツルギ君の後を追いかけた。
そんな兄の態度に妹は、腰に手を当てて、プンプンしていた。
「んもー!! ツルギ! ラルさんにそんな態度ダメでしょー!」
「あぁ、いいのいいの。気にしてないから。……私達も早く中入ろ。ね?」
「むぅ……ラルさんがそう言うなら」
不満そうではあるものの、私の言葉に素直に頷いた。そして、カズキさんとハルさんに別れを告げて、先に入ってしまったツルギ君の後を追いかけるように私達も食堂へと入った。
ここのギルドの夕食はバイキング形式になっているらしく、様々な料理が並んでいた。
もちろん、私達が泊まるホテルの方にもレストランはあるのだけれど、探検隊の仕事で来ているのと、こちらならツバサちゃん達とも一緒に食べられるからと、ギルドの食堂を選んだのだ。
各々が好きなものを取り、空いているテーブルに着席。色々あったけれど、一日目の夕食スタートである。
ツバサちゃんはクリームシチュー、ツルギ君はビーフシチュー。アラシ君はカレーをメインにチョイス。リランはお肉を頬張っている。
私は鶏肉の照り焼き、ティールは魚の照り焼きをメインに、しーくんは中華類をちょこちょこ選んでいた。
「基本、ここの食堂を利用できるのは、ギルドメンバーとアラシやラルさんみたいに、じいじから許可をもらっている人だけなんです。朝と夜はバイキング。お昼は日替わり定食が三種類あるので、その中からチョイスです!」
ツバサちゃんがクリームシチューを美味しそうに食べながら、食堂の説明をしてくれる。
「でも、朝とお昼だけは有料ですけど、一般の方も利用可能なんですよ~♪」
「あと……食堂の話とは関係ないけど、じいちゃんのギルドのやつら、みんないいやつらばっかだから。なんか分かんなかったら聞けばいいんじゃない」
ツバサちゃんの正面でビーフシチューを食べつつ、ぶっきらぼうに話していく。完全に私達の心配してくれているけれど、それを悟られたくはないらしい。
「ツルギ、その態度は失礼だと思う」
「い、いいんだよ! 別に!」
「ツルギ~?」
「ツバサちゃん! 怒らない怒らない! せっかく楽しいご飯の時間なのに、もったいないよ?」
「う~……ラルさん、優しすぎです。ツルギにがつんと言っても大丈夫なんですよ?」
「いいんだよ。生意気なお子様相手は慣れてますから。うちの悪戯狐なめんな~?」
「はは……まあ、ツルギよりもある意味、手強い相手ではあるよね」
苦笑を交えつつも、ナイフとフォークを器用に使って、優雅に食べるティール。そんなティールの近くに激しく主張する妖精二人。
「てぃー! さかな! さかなたべるー!」
「せっちゃはね、はっぱ! はっぱー!!」
「却下。黙って見てろ」
とりあえず、ご飯は死守しているらしい。どこまで持つんだろ。あれ。
それはさておき。
「アラシ君は私達とおんなじ扱いなんだね? ここに部屋でもあるとかと」
「んなわけねぇだろ。俺はルー爺の孫でもねぇし、メンバーでもないし。……ここにいる間は昔、親父が買った家の方に寝泊まりすんの。んでも、飯だけはガキの頃からここで食べてたから、ルー爺の許可証も持ってるってだけ。ほれ」
アラシ君がポケットから取り出したのは私達がもらったブレスレットと似たようなものだった。ただ、デザインがアラシ君に合わせたものになっていて、全体的に赤っぽい。
「レオンも似たような理由で許可証持ってるぞ。つか、ツバサの幼馴染み達は皆持ってる」
ポケットから出したはいいけれど、しまうのが面倒になったのか、さっと左手にはめる。そして、再びカレーを食べ進めた。
「ラル~♪ このおまんじゅう、おいしーよ!」
「あんっ!」
……ところで、ここのバイキング、種類豊富すぎない? なんでもあるんですけど。怖いわ。色々。

和気あいあいとした食事会が終わり、今日はここでお別れとなる。寝泊まりの関係で、お城に残らないアラシ君もいるし、食堂前でさっさと解散である。
「ラル!」
「? なあに、ツルギ君?」
「明日! 負けないからな!! 絶対! ぜぇぇぇったい! 負けないから!」
宣戦布告か。いやぁ……清々しいねぇ。何も言わずに不意打ち狙いをしない辺り、潔いとも言えるが。
「いいよ。寝込みを襲わない限りは相手したげる。何回でもどうぞ? まあ? 君がルーメンさんのお孫さんだからとか、子供だからとか、しょうもない理由で接待なんてしない。やる以上、絶対に負かす」
「うわ。ラルってば大人げな~い……」
お兄様の! 教えなんで!?
挑発的に笑って見せると、少年の勘に触ったのだろう。キッと睨み付けてきた。
「むぅ~!! 言ったな!? その言葉、覚えてろよ!」
という、捨て台詞と共にばーっと走り去ってしまった。そして、遠くの方で立ち止まり、
「おやすみっ!!!」
と、思い出したように叫んで、再び走ってしまう。ぽかんと見ていた私達だったが、ツバサちゃんがハッと我に返り、私たちに向かってペコッと頭を下げる。
「で、では、おやすみなさい、みなさん! 待ってよ、ツルギー!」
二人の白狐ちゃん達の背中を見送り、アラシ君と共に苦笑いした。慌ただしい兄妹である。
「……んじゃ、俺も帰るわ。あーでも、俺は明日、騎士団の方に行く用事あっから、お前らと会うのは明後日になるかな?」
「じゃあ、明後日に。仕事、頑張ってね、アラシ」
「おう。サンキューな」
「んふふ。ナイト様は忙しいねぇ? おやすみ~♪」
「一言余計なんだよ! おやすみ!」
赤くならなくてもいいのにぃ? 可愛いな。今時の男子達は~?
「ばいばーい! アラシお兄ちゃん!」
「あらちゃー! じゃーねー!」
「またあそぼーねー! あらちゃー!」
「お、おう……まあ、うん。機会があれば、な」
妖精二人の言葉には目を逸らしたものの、アラシ君も軽く手を振って帰っていった。
さて、私達もお部屋に戻らないとね。



~あとがき~
少し長いんですが、きりがいいところまでやりたかったんす。

次回、部屋に戻ったラル達。のんびり(?)します。

睨み利かせていたはずなのに、アップルパイでころっと落ちちゃうティールはチョロい。んまあ、その前の言動で怪しい人じゃないって分かっていたのもありますが。
相方に「アップルパイでころっといっちゃうティールってチョロすぎない?」と言われました。弁明したけど、私もそう思う。

ではでは。