satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第198話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話しする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ブライトの不得意が息子にばれたって話です。まあ、ブライトも隠してた訳じゃないと思うけど。開き直って見せていた訳でもないと思います。
今回はまた別の話を聞かせてくれるそうな。
ティールの母、セイラも犠牲にな。
セイラ「あらら?」
ティール「……悪い顔してるなぁ、作者」


《Te side》
「……もう一つ、やつの恥ずかしい話を教えてやろう♪」
「……え?」
にやりととても楽しそうな笑顔─ラルもよくやる例のやつ─を見せるルーメンさん。
「一度だけ、血相を変えて、うちに来たことがあっての?」
うちってことは、このギルドに?
「うむ。その頃、ライトは修行期間を終えて、セイラさんを連れ、国に帰っておったんじゃよ。そして、お主が産まれる前の話じゃが、セイラさんがライトに対し、怒ったそうでの」
母が父に……?
ほんわかして、いつも明るい母だ。「怒りますよ!」なんて言っていても、どこか楽しそうにしているような人で。さっきも言ったけど、母が父に対する小言も、最終的には「ブライトったらしょうがないですね♪」と笑って許しているくらいなのに。
「喧嘩の詳しい内容はワシは知らないんじゃがの。大方、ライトがセイラさんに何かしたんじゃろうなぁ~……そこでセイラさんが耐えきれんで、大喧嘩。『実家に帰らせていただきます』という置き手紙を残して、うちに来たんじゃ」
「なっ……!? え、母上の実家、ここじゃないですよね……? 確か、陸の国の……北の方だったはず。……ぼくは数えるくらいしか行ったことないですが」
それとも、ぼくが知らないだけで実はここの生まれなの……?
なんて、心配は無用だったらしい。ルーメンさんは大きく頷いたからだ。
「ワシもそう聞いておる。じゃが、セイラさんは嬉しいことに、ここを第二の故郷だと言ってくれとっての。それに、海の国からセイラさんの実家はかなりの距離がある。そちらよりも、こちらの方が何かと楽じゃ。ここにはセラもおったし」
あ、理事長……ね。確か、母を慕っていたとか?
「うむ。お姉様と呼んでおって、セイラさんを実の姉のように慕っておったわい。セイラさんも可愛がってくれておった。だからまあ、セラに癒されに来たのも一つの理由かもしれんの?」
ラルがツバサをもふもふするとの同じ理由だろうか。母上も可愛いもの好きだし、一回、ラルと会わせたときも、彼女に抱きついていた。何かに癒されたいという気持ちを持つのは何ら不思議なことではない。
ま、ラルみたいに可愛い子を可愛がりたい! なんていう、人種が近場にいるとは。……灯台もと暗し……恐るべし。
「そして、ライトはライトで、セイラさんの置き手紙を見つけて、慌ててこちらに来た……というわけじゃな♪ あいつの第一声が、『うちのセイラはどこですか!?』と、珍しく声を上げておったわい。なかなかに焦っておったぞ♪」
「父は父でルーメンさんのところだとすぐに判断できたんですね」
「いんや? 何年か後に聞いたときは、実際、迷ったらしい。二つあるし、と」
できてなかったんかい。
「しかし、ワシがセイラさんにうちに気軽に来れるようにと、選別に渡しておいた転移用魔道具の存在を思い出して、こちらに来たと言っておった。一応の、冷静さはあったんじゃな」
「……なるほど。しかし、信じられません。温厚な母が父に怒鳴るなんて。結婚したてで、不満溜まってたんでしょうか?」
「む? ライトとセイラさんの付き合いは友人関係も合わせると長い。今更、ライトの駄目な部分に目くじら立てんじゃろうな~♪ セイラさんはそこまで器小さくないのは、ティールも知っておろう?」
ん~……そうですよね。
でも、そのときの母はらしくもなく、感情爆発させてるんだよな。……うーん、なんだろ。分かんないや。
「……実はな、ライトが迎えに来て、さっさと仲直りしておったんじゃよ。セイラさんも好きで喧嘩した訳じゃないからの。……じゃが、セラがセイラさんの体調の変化や感情の起伏の変化に気付いておって、二人が帰る前に医者を呼んでの。……あとは、言わんでも分かるかの?」
……もしかして。
「ぼく、ですか?」
「正解じゃ。妊娠の初期症状で、普段なら流してしまえるような些細なことでも喧嘩に繋がったんじゃよ」
なるほどね……
「いやぁ、喧嘩を引き起こした原因が、『おめでた』じゃろ? 二人の喧嘩騒ぎを聞き付けて集まっておったギルド連中も散々、茶化しておったわ! 当然じゃな。ライトとセイラさんは、子を成すほど、愛し合っていたんじゃからな~♪」
それを二人の子の目の前で言いますか。滅茶苦茶、恥ずかしくなってきたんですけど。
「当人からすれば、もっと恥ずかしいと思うがの~♪ 今でもこの話をしようとすると、ライトからもセイラさんからも全力で止められる」
「そ、そうなんですね。ルーメンさん相手にそれだと、ぼくに教えるわけないですよね。……父と母に、そんな出来事があったなんて知りませんでしたから」
「二人が赤面した話じゃから、例え息子相手でも、言うに言えんだろうて。いやはや、あのときの二人は面白かったぞ? メンバー総出でいじり倒してやったわい♪ ライトは相変わらず、堅い表情じゃったが、顔は赤くしておった」
と、とても楽しい一日だったんでしょうね……
「セイラさんの変化に気付けんライトをセラが叱ったり、二人の熱愛っぷりを茶化したり、楽しかったぞい?」
う、うわぁ……
……でも、そうか。そうだよね。父上も王である前に一人の男……ぼくの父であり、母、セイラの夫。どこにでもいる、普通の一面だってある。
それを知っていたはずなのに……どこかでそのことを蔑ろにしていた。王である父親しか、見てこなかったから、自然と抜け落ちてしまっていたのかもしれない。
そんな、当然なことも。
「……さて、そろそろ終わりにするかの」
不意にルーメンさんが壁にかけられた時計を見上げて、そんな提案をしてきた。気づいたら、とっくに九時を回っていて、あと十数分で十時になりそうである。
「あ……え? あ、もうそんな時間……でも、まだ、どちらもチェックしてませんよ? となると、お互いに引き分けせんげ……ん?」
意味深な笑みを浮かべるルーメンさんの視線の先には、二人で対戦していたチェス盤がある。ぼくも、そちらに目線を移した。
あ……待て。これは……?
ぼくの手番だけど、動かせる駒がない。相手はキングだけだが、このキングをチェックできる駒がぼくにはないから。
この場合、チェスは引き分けとなる。
「……ステイルメイト」
「うむ。『ステイルメイト』じゃな、ティール?」
たまたまか? チェスは引き分けが比較的起こりやすいゲームではあるため、意識して引き分けを引き起こすテクニックは必要だ。それがステイルメイトなのだが……でも、それをする意味が分からないけれど。実力はルーメンさんの方が上だろうに。それに、ぼくもそこまで考えて駒は動かしていなかったから、たまたま……なのか?
「む? どうかしたかの? ティール?」
「……いえ」
チェス盤とルーメンさんを交互に見ていたからか、不思議そうにしていた。しかし、すぐに楽しげに笑い始めた。
「今宵はこんな年寄りの相手をしてくれて、ありがとうの、ティールや。楽しかったわい♪ 今晩は、部屋にてゆっくり休むがよかろ」
「あ……はい。こちらこそ、遅い時間までありがとうございます。……それに、両親……いや。父の、話も。ありがとうございます」
「気にせんでよい。昔話に花を咲かせるは年寄りの特権じゃからな」
昔話、か。
「……あの、ルーメンさん」
チェス盤を片付け、再びデスクの引き出しに仕舞おうとしていたルーメンさんがこちらを振り返る。
「その、時間があればでいいんですが。……また、明日、来てもいいですか? その、父の話、もう少し聞きたいので」
敵を倒すための情報を、だよね。ラル?
ぼくの言葉にルーメンさんは少し驚いたように目を瞬かせる。その視線に耐えきれなくて、ぼくは慌てて付け加えた。
「あ、そ、それに、チェスも! ステイルメイトで終わってしまいましたし! 本来であれば、仕切り直しの場面ですから。……きちんと、勝敗つけたいです」
「……そうかそうか。もちろん、よいぞ。この時間ならば、仕事は終わっておるからの。いつでも来なさい」
快く承諾してくれたルーメンさんにぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます。……では、また明日。今日と同じ時間に伺います」
「うむ。では、気をつけて部屋に戻るんじゃぞ~♪」
フレンドリーに手を振るルーメンさんに、手は振れないので、もう一度軽く頭を下げ、忘れないようにスイとセツを持って部屋を出た。
ここに初めて来たときのぼくとは、ほんと少しだけ変われたような、そんな気がした。



~あとがき~
200話手前で一日目は終われそう。

次回、部屋に戻ったティールと部屋で待つ仲間達の話。
一日目、締め括ります。

ティール誕生秘話(?)でした。誕生というか、できたというか。
喧嘩した結果、おめでた発覚というルートです。ある意味、大勢の前でおめっとさーんと言われるのはいいことです。仲良しですね。愛されてますね、ブライトとセイラは。
喧嘩のきっかけはほんの些細なことだと思います。ブライトが構ってくれんとか、ブライトが仕事ばっかだとか、ブライトが~……みたいな。そんなんだと思います。はい。

ではでは。