satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第199話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界での物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ルーメンおじいちゃんとのお話が終わりました。また明日って感じにな!
さてさて、今回はお部屋に戻って、一日のまとめって感じかな?


《Te side》
ラル達の待つ部屋に戻る途中、すっかり大人しくなっていたスイとセツが久しぶりに話しかけてきた。
『てぃー、どーだったー?』
『だったー?』
どうって?
『じっちゃのおはなし』
『いーちゃのおはなし!』
「どうって……別に」
あれを聞いたからといって、すぐに何かが変わるわけではない。十数年の軋轢をなめてはいけないのだ。すぐに父上との仲をどうにかできるとは思えない。
でも……
「ちょっとだけ、びっくりしたかな」
『ほあ?』
「ぼくの知ってる父じゃなかったってこと」
話に出てきた父上は、ぼくの知る人とは違った。ぼくの知らない一面があったということで。それはきっと、当然のことなのだ。
あの人のことなんて、知りたくないと思っていたはずなのに、今ではもう少しだけ、知ってみてもいいのかなと思い始めている。それは、ラルに事情を話したからなのか、ルーメンさんの話し方のせいなのか……ぼくにはよく分からなかった。
「だから、まあ……また明日、話を聞いてからこれからの判断するよ」
『ほあ!』
『わー!』
この返答にスイとセツはどこか楽しそうに声を弾ませる。
『てぃー、まえむきっ』
『ねー! いいことなのら!』
そうかな?
『るーとじっちゃのおかげら。ねー!』
『うんうんっ!』
えっと? 楽しそうなところ、悪いけど……まだ何も変わってないからな?
今だって、できるなら父と話したくはないし。会いたくもない。その気持ちはなんにも変わっていないと思うけど。
しかし、ぼくの否定的な意見はスイとセツには信じてもらえなかったようで、『えー?』と不思議そうな声が聞こえてきた。
『そーんなことないよ!』
『うりゅ。てぃー、ちょーっとかわったもん』
「変わった?」
『ねー?』
『ねー!』
具体的な話はなく、ただ変わったとしか教えてくれない二人。元々、小難しい話には不向きなのだ。感覚で話すタイプだから。
結局、二人の言う変化がなんなのか分からないまま、部屋についてしまった。ぼくは聞き出すのをやめて、ブレスレットで解錠する。
「ただいま~……」
「お? おかえり~」
「おかえりっ! パパ!」
「おっと……ただいま、雫。もう夜遅いのにまだ起きてたの?」
扉を開けた瞬間、二人のおかえりの声が聞こえてきたあとに、飛びこんできたのは雫だった。普段ならもう寝ているような時間のはずだけれど、ぼくを待つためなのか寝ずに待っていてくれたらしい。
「ん! ティールがね、げんきかなって。だから、みてから、ねるってきめてたのっ」
「そっか。……ありがとう。ぼくは大丈夫だから、もう寝な?」
「うん! ねるっ! おやすみー!」
ぼくのことをぎゅーっと抱き締めてから、雫は、ぼくが使う予定のベッドに潜り込む。
「きょうはね、ティールとねるのっ! だから、ボクここなの!」
「分かった。一緒に寝よう」
「はーいっ!」
雫は元気よく返事をしたあと、ペンギンのぬいぐるみを大切そうに抱いて、目を閉じる。さっきまで元気に話していたけれど、電池が切れたように大人しくなった。本当はかなり眠かったのかもしれない。
「……改めて、おかえり。ティール」
「ただいま、ラル」
ずっと黙ってぼくと雫のやり取りを見ていたラルが優しく笑って出迎えてくれた。椅子から立ち上がり、冷蔵庫の取っ手に手をかける。
「遅くなったけど、アップルパイ、食べるの?」
「食べる」
「即答か。ぶれないなぁ」
もちろん。アップルパイはいつ食べても美味しいんだよ?
「そういうことじゃ……ま、いっか。じゃあ、準備するから座ってて……その前に、着替えて」
はーい。

ラルの言う通り、部屋着に着替えて、ベッドから離れたテーブルとソファに座る。そして、彼女がアップルパイと紅茶を運んできてくれ、二人きりのお茶会がスタートした。お茶会っていうには、随分遅い時間だけれど。これがお酒なら晩酌と呼ぶんだろうな。
まあ、今から食べるのはアップルパイだし、飲むのも紅茶たけど。
「おっまたせ~♪ 念願のアップルパイだね」
「うんっ! いやぁ、楽しみにしてたんだよ。……あ、雫は食べた?」
「うん。先に」
「そっか。ならよかった。……と、君も食べてなかったんだね?」
ぼくの隣に座るラルも自分の目の前にアップルパイと紅茶を用意していた。
「一人で寂しく食べたくないっしょ?」
「? ぼくは気にしな……いえ。何でもないです。うっ……睨まないでよ~」
「お前が人の行為を無駄だと発言しそうになるからだよ。全く……私の優しさをなんだと思っているんだか!」
そ、そうですね……ごめんなさい。
冷蔵庫に入れられていたから、冷たくなってしまっているけれど、パイ生地はまだサクサクでどこかふわっとしていてとても美味しい。
このりんごとカスタードクリームの組み合わせもいいね。いやぁ、ほんと好きだなぁ~♪
「幸せそうだね?」
「うん~♪ 幸せ!」
「あーそうっすか。ま、ケーキ屋さんの限定商品だもの。美味しいに決まってるよね」
「もちろんこれも美味しいけど、ラルのアップルパイが一番好きだよ?」
これはぼくの本心なんだけれど、ラルはじぃっと疑うように見つめてきて、呆れたようにため息一つ。
「私の手抜き料理とお店の本気と一緒にしない方がいいよ? 罰当たりめ
「嘘じゃないし、嫌味で言ってる訳じゃないのに~」
「じゃあ、お世辞? ここで言われても帰ってから作らんぞ」
「違うってば。んもう……ひねくれてるな。素直に受けとればいいのに」
「受け取れるか!」
なんでさ。……やっぱり、ラルはよく分かんないや。
ラルはゆっくりと味わうつもりはないのか、すでにアップルパイが半分もなかった。紅茶を手にニコッと笑う。
「で、お話はどうだったの? ご感想は?」
「感想……ん~……想像と違ってた、かな? 話聞くだけかと思ってたんだけど、いつの間にかぼくの話を聞いてもらっちゃった」
「なんじゃそりゃ」
「学校とか仲間とか……ラルのこととかね。あ、もちろん、父上の話も聞いてきたよ」
「私の話ぃ!? 何話すのよ」
ぼくの家族の話よりも、自分が話題になった事実の方が気になったらしい。当然の反応だろう。
ここで本当のことを言ったとして、ラルはどう反応するだろうか。お前も似たようなもんだろーと怒られるだろうか。そんなこと教えないでよと困ったように笑うかな。
……どんな反応にせよ、ラルの機嫌はよろしくないだろうなぁ。
「まあ、色々だよ。大丈夫。変なことは言ってないから」
「……ふぅん。怪しいなぁ」
「怪しくないって。というか、ぼくが君の嫌がることするわけないだろ? そういう話はしてません」
「そこの心配じゃなくて……つか、飛躍しすぎじゃない?」
あはは。ごめんごめん。
むっと小さく頬を膨らませていたラルだったけれど、それもすぐになくなり、くすっと笑った。
「ま……いいや。思ったよりも元気に帰ってきたし。楽しかったのは事実なんだろうね。それが私の愚痴なのか、家族のことを聞いたからなのかは分かんないけど?」
あ、はは。……愚痴ったのバレてるんかい。実はどっかで聞いてたのでは……? ん?
「楽しかった? そんな顔してたかな」
「お昼にルーメンさんのとこで話を聞いてからずぅっと思い詰めてるような顔だったもん。それが今はあんまりないから」
「……そ、そう?」
そこまで顔に出ていたのだろうか。確かに、隠せてないなと思うところはあったけれど。
「私は君のパートナーだからね。よく見てるのさ」
「……恐れ入りました」
敵わないな。ラルには。
「あ、そうだ。今日、色々話してきたんだけど……明日もまた、行く約束してきた」
「……え?」
これはラルも予想外だったのか、驚いたように声をあげる。そして、少しだけ不安そうな色が見えて、ぼくは慌てて付け加えた。
「あ、大丈夫! これはぼくからお願いしてきたことだから。無理して行く訳じゃないよ。ぼくの意思で、父上の……父さんの話、聞こうと思って」
この言葉にラルは思案するようにほんの少しだけ目を細める。何を思っているのか、ぼくには分からない。
「あ、それに、チェスの勝負だってついてないから。それもある、けど」
「は? チェス?」
これまた意外だったのか、戸惑ったように聞き返してきた。
「うん。話しながらやってたんだ。……結局、ステイルメイトしちゃったんだけど」
「ステイルメイトねぇ……はは。よくやるわ」
? どういうこと?
ラルは何も言わずに、紅茶を全て飲み干し、席を立った。そして、強引に話を変えてくる。
「明日の予定だけれど、こっちに来たばかりだからね。ツルギ君の宣戦布告の件もあるし、仕事なんかは行かずに、ここに残ろうと思ってるんだけど、いいかな?」
「う、うん。分かった。……洞窟の件はまた今度考えるってことだね」
そゆこと、と楽しそうに笑った。多分、ツルギが自分に立ち向かってくるのが楽しくて仕方がないのだ。意識され、無謀にも挑んでくる姿が愛おしいのかもしれない。それは、ある種、歪んでいるように思うけれど。
「……あんまり、ツルギをいじめないでよ?」
「あはっ! いじめられてるのは私の方だと思うけれど? やってくるのはあっちだし」
きっと、彼女なりの愛情表現……なんだろうなぁ。素直じゃない、あの白狐君に向けての、精一杯の愛情表現なんだな。
こっちもこっちで、不器用なんだから。仕方のないパートナーだよ。



~あとがき~
ティール視点のラルはどこにでもいる普通の女の子に見えるんだけどな。ラル視点にするとここでも、色々考えてそうです。

次回、二日目!

ティールとルーメンおじいちゃんの話はまた今度です。

ではでは!