satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第202話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどんぱちしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、なんか知らんけどルーメンおじいちゃんに手合わせやろうぜと言われたラル。
二人の手合わせからですね。
ラル「……なんで?」
さあ?


《L side》
簡単な準備運動を終わらせ、私は真っ直ぐに流れる髪を一つにまとめて、ルーメンさんと向き合う。本当に楽しそうに笑っておられる。私はこんなにもブルーなのに、だ。
そんな私達を見守るのは、ツバサちゃんとリラン、地面から抜け出したツルギ君とヤスさんの三人と一匹のみだ。周りには他の人達もいるけれど、それぞれ朝練の真っ最中で私達を気にする様子はない。
「別に私のことなんて構わなくていいのに。隅っこで勝手にやらせてもらえればよかったのに……なんでぇ?」
『よいではないか。このような面白そうなこと、逃す方が惜しいというもの。……あの老体、楽しませてくれそうじゃ♪』
くっそぉ……楽しそうにしやがって!
私の中にいる雷姫は大層楽しそうにしておられる。雷姫がルーメンさんよりも強くても、私はついていけないと思うのだが。
『ふふん♪ まあ、この場で負けても得られるものはあろう? 本気は出すまいよ。パートナーにどやされる』
まあ、ねぇ。ルーメンさんと模擬戦したなんてティールに知れたら、大変なことになりそうだけれど。それに、無茶なことしたらしたで、寝起きの彼の心臓を止めかねない。となると、ある程度の制限の中でやった方がよいだろう。全力でもどうせ勝てないのだ。
過度な属性強化、大技は封印かな。力もそこまで寄越さなくていい。
『承知した』
「いつでもよいぞ~♪ お主から攻撃してきなさい♪」
のほほんとしやがってぇ~……私もそれくらいの余裕がほしいわ!
「……もう。どうにでもなれってやつよ。これは。……来い、雷姫!」
雷姫を抜刀する構えをし、刀を腰のベルト位置に出現させる。腰を低く保ち、いつでも走り出せるような体勢をとった。
未知なる相手と挑む場合、相手の牽制しつつ、戦いの中で情報収集を行うのが私のスタイルだ。しかし、それはティールや仲間の援護があってこそ成立するもの。今は私一人だけ。それすらも通じない。
ツルギ君との戦いもきちんと見ていたわけではない。ただ、豪快な土属性魔法を使う魔法使いできっと接近戦が得意って情報しかない。
雷と土は相性最悪。こんなの、どうしろってんだ!?
……まあ、私にできることなんて限られている。なるようにしかならない。ここで思考し、考えるのはやめよう。雑念になる。
何度か深呼吸をし、息を吐く度、無駄な考えを外に出していく。そして、雷姫に電気を帯電させていった。
「……っふ!」
頭も心も空っぽに、十分に帯電させたところで、私は雷姫を抜刀し、勢いよく地面を蹴った。その瞬間、雷姫の“身体強化”を発動させて自身のスピードを上昇させ、ルーメンさんの背後を取る。
そして、上から雷姫を振り下ろした。これで目の前の敵は討てる……本来ならば。
「っ! やっぱ駄目か!」
私の攻撃を読み、ルーメンさんはこちらを向かずとも雷姫を受け止めてきた。グローブ越しとはいえ、右の拳のみで。
刀を受け止められた衝撃で、帯電していた電気の火花が散るものの、あまり動じた様子はなかった。
防がれたと悟った瞬間、私はルーメンさんから距離をとった。魔法の反撃を警戒したのもそうだし、体術を使われると、逃げ道がないのもある。仮にそうなったときの力の差が歴然としている。
「よくもまあ、刀を拳で受け止める。……一応、斬るつもりで襲ったし、痺れさせるつもりだったんだけどなぁ?」
普通の刀でも、魔具でもない雷姫をあんなあっさりと止められるとは……それは流石にないんじゃないっすかねぇ? 心折れますよ。私でも。
「……ふぉっふぉ~♪ その若さでこれだけの攻撃力を引き出すとは……流石、若くして神器に選ばれるだけはあるの?」
「あ……ありがとうございます?」
なんだ、これ。褒められたのか?
……しかし、今の一撃で判明した。
この現段階で、ルーメンさんは何かしらの身体強化をしている。いくら、伝説の冒険家で経験豊富な人だとしても、真剣を拳で受け止め、纏わせていた電撃を受けてなお、平然といられるのは、何らかのバフ効果を疑わざるを得ない。
しかも、ただの雷属性の攻撃ではない。抑えてあるとはいえ、雷姫の電撃だ。私単体で繰り出すよりも威力はある攻撃を涼しい顔で受けて見せたのだ。
ケアルの血筋は魔法特化した一族。となると、ルーメンさんの得意魔法は土属性と身体強化魔法……? いや、決めうちするにはまだ早いか。落ち着け。
『ほう? あの狼男すらも痺れ動けなくさせる我が電撃を耐え凌ぐとはの……ますます面白い老体じゃ♪』
……なんでこのおばあさまはこんなにも楽しそうなのだろう。狼男ってイグさんのことかな。
「さて、今度はこちらから仕掛けるとするかの」
ルーメンさんはツルギ君のときと同じように、両の拳を地面に勢いよく突いた。それと同時に、私の周りの地面から地鳴りが響いてきた。
どんな魔法なのか不明だが、恐らく私を捕らえるための魔法。 地面が柔らかくなる感覚はないため、地面から岩を出現させるつもりなのだろう。それならば、やることは一つ。
「いくぞ!」
『うむっ♪』
雷姫の電撃で突破するのみ。
素早く雷姫の刀身に電気を帯電させ、それを放出するのと同時に、横一文字に刀を振るう。
突き出てきた岩を一太刀で凪ぎ払い、私はルーメンさんの目の前に飛び出した。
私に突破されたというのに、まだ余裕そうで、楽しそうに笑っている。
「ほう。あれを斬り伏せるか♪」
「今度こそ届かせる!」
『ふふん♪ まだまだいけるぞ、マスター?』
了解!
雷姫の“身体強化”で反射神経と攻撃速度を上げて、ルーメンさんに連続で斬りかかる。しかし、それは相手も同じ。ルーメンさんはこちらの攻撃を的確に受け流し、いなしていく。時折、こちらに拳による突き技をしてくるものの、私も完全に見切ってかわしていく。
何度かのやり取りの後、ちらりと見えたルーメンさんの拳の構えで、私は攻撃を中断し、後ろに飛び退いた。
「今のを捉えるとは思わんかったぞ?」
「雷姫の強化で色々底上げしてるので……ま、殴られたくはないですから、距離を取りますよ。そりゃ」
……とはいえ、ぎりぎりだった。逆に言えば、雷姫の“身体強化”をしていなければ、あそこでやられていただろう。
体術戦覚悟で接近し、雷姫を打ち込んでみたけれど、あまり効果がないように思えた。むしろ、攻撃を耐えられ、体力を奪われるのはこちらだ。遠距離に切り替えるか? しかし、それにしたって、最善ではない。
乱れた息を整えつつ、クリアにしていた脳内を思考で満たしていく。今までのやり取りで得られた情報と、今の私にできることを考慮し、最善を見つけなければ。
本気にやるつもりなんてなかった私だが、いつの間にかやる気になっていた。軽い手合わせとはなんなのかと思いたくなるくらいに、奥底が熱くなっている。
勝てるなんて思ってないけれど、もう少し……あと少しだけ、目の前の『赤獅子』に挑戦してみたい。そんな好奇心が沸き上がってきていた。
「戦術を変えてみるかいの~♪」
ルーメンさんは拳同士を合わせたあと、かっと目を見開く。
「破っ!!」
覇気と共に拳を力強く地面に打ち付けると、私の周りの地面がモコモコと盛り上がり、何かを造り出していく。それは私の身長も越えた、土ゴーレムとなった。ゆっくりと、しかし確実に捕らえるため、胸のコアをきらりと輝かせてゴーレム達が私を囲い始める。その数は五体。
「放置すると囲まれちゃう。……なんてね。どう? 雷姫」
『もう終えておる。いつでも放つがよい』
流石、私の愛刀様。
どんな方法でも、召喚されたゴーレムには『コア』と呼ばれる石が存在する。そのコアを破壊すれば、単なる土へと還るのだ。ただし、契約しているゴーレムのコアは取り外しができるらしく、基本、主が所有する。リアさんのソイルもそのタイプで、そうなってしまうと、契約者の持つコアを奪わない限り、ほぼ破壊不可能な人形となる。
今回の場合、召喚されたゴーレムのコアは全て、胸の位置に配置されていた。つまり、契約していない雑魚。この場凌ぎで造り出した人形。
「ゴーレムのコアは硬いけど……まあ、雷姫なら余裕だよねっ!!」
『当然』
雷姫の電撃を刃に纏わせ、攻撃力そのものを上げる。その太刀で、五体全てのコアを破壊する。コアを破壊されたゴーレム達は形を保てなくなり、雄叫びを上げながらぼろぼろと崩れ去った。
「ナイス、雷姫。次は──」
……なんだろう。どこか引っ掛かる。何が引っ掛かった? 違和感? 何に対して。
頭の隅っこに何かが引っ掛かって、意識がほんの少しだけ思考の海に引っ張られた。だからだろう。気配察知も疎かになり、反応が遅れた。
「ワシのゴーレムをさも簡単に破壊してしまうとは……『雷獣』の名は伊達ではないの♪ じゃが──」
『マスター!』
雷姫の警告と同時に後ろを振り返る。
そこには拳を引き、ニヤリと笑う『赤獅子』がいた。
「その油断は命取りになるぞ。ラル」
下から突き上げるようなボディブローによる攻撃が来る。
そう推測した瞬間、私の中で様々な可能性が浮かんでは消えを繰り返す。
雷姫の“身体強化”で避けられる? 否。間に合わない。急所は外せる可能性はある。
では、防御姿勢を取るか? 否だ。それも間に合わない。ダメージ軽減は可能。でも、数秒は確実に立ち上がれないと予測できる。
なら、せめて、身体強化で防御力を上げるしかないか? それしか、できることがない。
「くそっ! 雷姫!」
「はぁぁ!!」
凄まじい気合いと共に放たれる拳に私は襲いかかってくるであろう痛みに構え、後方に飛ばされる……と、思いきや。
「ってぇ!?」
構えていたところとは別の場所に痛みを感じた。それも、思っていた以上に痛くないやつが。
「探検隊とはいえ、十代の嫁入り前の娘。本当にしてしまうほどワシも鬼ではない。……もうちっと視野を広げんとな?」
「あ、あえ……?」
あの……何、されました……? 私。
『デコピンなるものじゃな』
で……ですよねぇぇえ!!!
おでこを押さえつつ、二、三歩後ろへよろめくとがくっと膝をつく。
ボディブローというか、引いた右拳はブラフかよ。……完全に引っ掛かった。悔しい……!



~あとがき~
とりあえず、終わりっす。
一話に収まってよかった!

次回、手合わせの分析と反省とアドバイスの話。

ラルの戦闘は大会振りですが、一人での戦闘はここが初めてですね。
まあ、ティールやフォース単体なんかも描写したことないですが……機会があればね。やろうかね。

ここの戦闘、プロット時とは多少変えております。変えてるって言うか、追加してますね。一話まるっと戦闘したくて。
でも、そのせいで若干長くなると言う矛盾……なぜだ……!!

ではでは。