satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第210話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界できゃっきゃっしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
はい。観光してます。今回もメンバーは減りましたが、ラルとティールの二人で、続けてやってきます。観光と書いて、デートと読みます。本人達はそんなこと思ってませんがね。


《L side》
何度も言うけれど、観光地としても有名なスプランドゥールでは、その観光客向けのお店もたくさんある。私が入りたいと思う可愛い雑貨屋なんて、そこら辺にごろごろしているわけで。
「なにこれ……!」
「仕掛け細工を施した小物入れです。可愛いでしょう?」
「はい! これ、いいですね!」
ふらりと立ち寄ったお店では、工芸品なんかを扱うのか、どことなく歴史を感じるお店だった。取り扱っている商品も雑貨からアクセサリーまで幅広い。私達の他にも何人かお客さんはいて、若いグループからご年配まで。こちらもなかなかに幅広い。
私が見ていたのは、手品で使うような仕掛けのある小物入れだ。手順通りに、飾りやネジや箱の向きやらを変えないと開けられない、みたいなやつである。一種の宝箱みたいだ。謎を解かないと開けられない。知ってる当人でなければ開けられない……なんだか、ロマンを感じる一品だ。
今時、魔法の魔力パターンで本人確認だとか、科学の力で指紋とか網膜認証とかあるけど、こういうのも面白いと思う。まあ、本人でなくても、手順さえ覚えていれば、誰にでも開けられるのだけれど。
「解除手順が少ないものもございますよ。お値段もその分、リーズナブルになります。……ごゆっくりご覧ください♪」
簡単な案内をしてくれた店員さんは、一通りの紹介をしてくれ、さっと別のところへと行ってしまった。別の仕事があるのか、私がびしっと決めないと悟ったのか。どちらにせよ、私は様々な仕掛け細工の虜になっていた。
「うわぁ……めっちゃいい。めっちゃ欲しい!」
「ラル、語彙力なさすぎじゃない?」
私と店員さんの話を、後ろで黙って聞いていたティールだったのだが、私の表現力の乏しさに呆れたのだろう。ため息混じりに話しかけてきた。
「だって、お前! これの凄さが分からないとか本当に人間か!?」
「人間だよ。……ラルほど、興奮はしてないけど、凄いとは思ってるよ?」
「声に興奮が感じられない!!」
「ラルほどしてないって言ったよね!?」
そうだね。ティールはリンゴに興奮する人種だったな。ごめんね。リンゴ関係ないところに付き合わせて。
「勘違いしないで!? リンゴしか興味ないわけじゃないから!……で? 気に入ったから買うの?」
う……んと。
確かに滅茶苦茶欲しいと思う。思っているのだけれど、学生が観光のお土産として買うには少々……いえ、かなり値の張る代物。リーズナブルですよ、と言われたとて、それもなかなかのお値段。大きな声でいくらです、とは言えないけれど、イネお婆さんのところのアイス、一生食べられるのだろうってくらいのお値段である。
「学生には厳しいよ。この値段は」
「まあ、工芸品だからね~……でも、ここに来た記念品だって思ったら、それくらい出してもよくない?」
それくらい、ねぇ。私には「それくらい」ですまない値段なのだけれど。
「……たまにティールの金銭感覚を疑う」
「え。そ、そう? クラウよりはましだと思うけど」
そのお方は比べたら駄目な人なので。
せっかく、観光地に来たのだから、何か形に残るようなものは欲しい。いやまあ、この地に来た理由は仕事なんだけれども。なんだけれども、夏休みだし? 高校生最後の夏休みだし? 浮かれたっていいじゃんかよ~……という不純な気持ちは大いに存在する。
だからこそ、スプランドゥール観光をしているわけでして。
ぐぬぬ……」
たくさん並べられた仕掛け細工の小物入れ達をじぃっと見ていく。簡単にこれくださいとは言えないけれど、すんなり諦められるほど、私は大人でもないらしい。
「ラルにしては滅茶苦茶に悩むね」
「うっさーい! 安い買い物じゃないもん。そりゃ悩むよ。普通はな!?」
「ふーん。……じゃ、ぼく、あっち見てるから。決まったら教えてね」
好きにしろ!
淡白な相棒は無視して、私はにらめっこを再開。自分のお財布と目の前の喉から手が出るくらい欲しい物と数分間、会議を重ねた。
結論から言えば、財布の紐はきつく閉めとけというどこからか聞こえてきたお告げに従い、今回は諦めた。
きっぱり諦められたかと言えば、そうでもなく、結構、未練がましくではあったのだが。

「なんだ。結局、買わなかったんだね」
何も買わなかった私とは違い、小さな袋を持って出てきたティール。彼がこういうところで、何を買ったのか気になるところではある。しかし、どうせ石がどうのという話になりそうなので、聞くのをやめた。きっと、セイラさんへのお土産とかだろう。この仕事のあとに帰るのだから。
「欲しかったさ。けど、あーゆーの、作れるかもですし……?」
多分、できっこないけど。時間をかければ、できそうではあるが……いや、そもそもの仕組みを知らない。その研究から始めなければ。……待て待て。何年かけるんだ。私は。それなら、買った方が早いわ。
「それはそれで負け惜しみに聞こえる」
「うっさいわ」
「じゃあ、これあげる。君の求める物じゃないけど」
と、手渡してきたのは、先程のお店で買ったであろう小袋だ。
「……これ、セイラさんへのお土産なんじゃ?」
「母上に? ないない。ただでさえ、鉱石コレクションで埋まってるんだよ? 残るようなお土産は持ち込まないって決めてるの」
なるほど。しかし、仮にこれが鉱石でなくとも、愛する息子からの手土産なんて捨てられないだろうな。セイラさんだもん。
「……なんで私に」
「このあとも自分へのお土産、買わなそうだから」
……そ、そんなことは。……うん。ないとは、言い切れないかもしれない。
「あと、いつもお世話になってるお礼みたいなもんだよ。……それに昨日……結構心配、かけちゃったし」
最後の方は言いにくそうに、そして、消えそうなくらい小さな声だった。それでも私の耳にはきちんと届いてきた。
「そんなこと気にしてたの?」
「ラル、あんまり言ってくれないけど、きっと、今までにも、色々考えてくれたんだろうなって。ラルには関係ないはずなのに、自分のことみたいにさ」
言うもんでもないだろう。そんなのは。
「そんなところが、ぼくは嬉しかったんだ。……ありがとう、ラル」
「なっ……! 急に何よ。怖いなぁ」
「あはは♪ それ、気に入らなかったら捨ててもいいよ」
いや、流石に捨てねぇわ。
袋を開いてみると、小さな紙の包みに入ったものが入っていた。大きさは手のひらに乗るくらいで、そこまで大きなものではないから、アクセサリーとか、だろうか。
「ここで開けていい?」
「うん。構わないよ」
包みから出てきたのは簪だった。和風テイストなスプランドゥールっぽいアクセサリーである。
太陽の光に当てられ、きらきらと輝くビーズや花のチャームがとても可愛い。
「そういうの、好きだろ?」
「ん。好き……だけど」
こういうこと、ほいほいやるプレイボーイにはならないでほしいんだが。イメージ的に。
と、言いたかったけれど、言うのをやめた。しかし、顔にそれとなく出ていたのだろう。ティールが少しの呆れ顔を見せる。
「あのねぇ……相手が君だからなんだけど? 変に疑わないでよね」
「おっと……それは、君のこと愛してるからこそ、とっておきのプレゼントなんだぜ☆……的な、キザな男の台詞の前フリかぁ!? どこの王子様だよ!」
「なわけないでしょ! というか、そんな王子様見たことないけど!?」
私も見たことはない。そんなんいても、ウザいだけっしょ。
……あれ? 相手が私だから、というのは、どういう意味なんだろう。ここで、「なんで私にならこんなプレゼントをするって言い切るの?」なんて聞いたところで、「なんでだろうね?」とか言って、楽しそうに笑うだけなのだ。こいつは。
ティールは、女の子にプレゼントをするという行為が、どういう意味合いのあるものなのか、分かっているのか。受け取った女の子がどれほど、それに期待してしまうのか。それらを理解しているんだろうか? 完全に恋愛感情を抱かないと確信があるわけでもあるまいに。
……まあ、分かってないんだろうなぁ。困った王子様だこと。
「ラル?」
「なんでもない。……ありがとう、ティール。これ、大切にするね?」
「……っ! あ、うん!」
なんだ。その間は。
「ご、ごめん。変な意味はないよ! ただ、その……いきなり、あんな風に笑うから、びっくりしただけで」
はあ!? いつも笑わない無表情だと言いたいのか!? 失礼な!! その時代は私の中でとっくに過ぎたわ!
「そうじゃなくて……可愛かったってこと」
……本当に、こいつは。無自覚だろうが、よく言ってくれるじゃないの。
「……ティール、自覚しろ。その辺の男よりもいい男なんだということを自覚してくれ」
「え、あ、ありがとう……?」
そういうことじゃないんですけどぉぉ!? 褒めてねえし!
……あぁ、もう。ここで、一から説明したらどうなるんだろう。この純粋で素直で、真っ直ぐなティールに……私の気持ち全部、言ってしまったら、どうなるんだろうか。私は貴方に恋してます、なんて一言を。今、ここで言ってしまえたら。
なんてね。……できるはずがない。
私は名もなき村人Aで、ティールは一国の王子様。そんな二人が結ばれる……王道かつ、素敵な夢物語が叶うほど、世界は優しくないのだ。
もしかしたら、簡単に壊れて、今の関係が失くなるかもしれない。それなら、私は……
「っていうか、私はいつでも可愛いし!? 笑顔弾ける美少女様なの! 今更、動揺してんじゃねぇ!」
「えぇ!? なんで怒られるんだろ、ぼく。というか、自分で自分を美少女って言うの、虚しくない?」
「事実だもんね! 虚しくなんかないもんね!」
この気持ちは、私だけの秘密にする。ティールにも、教えてあげない。
「ほら、次行くよ。時間は有限! 待ってくれない! どんどん行こうー!」
「ちょ、感情の起伏、激しくない!? あー! 待ってよ、ラルー!」
ティールがいつか、王子様の役目を果たすために、この関係をやめたとしても、私はティールが一番。それだけで、充分なのだから。



~あとがき~
ティールに翻弄されるラル、貴重です。
まあ、ラルはラルでしてますけどね。お互い、自覚はしていません。

次回、ラブコメっぽい雰囲気から一転します。なんか起きます。(適当)

ラルは自分のことになると奥手というか、結構慎重です……あれ、いつもかな?
まあ、なんでしょうね。根底にティールと仲良くいたい、どんな形でもいいから、一緒にいたいという気持ちがあるので、それが壊れるかもしれないことに踏み込みたくないのです。友達や相棒関係でも、仲良くする、一緒にいる、という目的が果たせるので、それ以上は望まないようにしている。そんな感じです。あとは身分高いティールとそれ以上は望めないという謙虚?もありますが。

そいや、ラルの気持ちばかり描写してますが、ティールもラルのことは大切に思ってます。どういう意味で大切にしてるのかは、私から言わないけど(笑)
まあ、ところどころに行動に出ててるので分かるかな。というか、今回の反応とかでも分かるよね。
はよ、結婚すればいいのにね、こいつら←

ではでは。