satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第217話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で働く物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、誘拐事件解決&二日目終了となりました! ようやくだ!
今回から、少し経って、ようやく仕事する気になった(?)スカイの二人のお話です。視点はティール。なんか面白そうだからです。


《Te side》
スプランドゥールに滞在し始めて数日が経った。初日から馬鹿みたいに情報が溢れるわ、二日目には連続誘拐事件に巻き込まれるわ、三日目にはその事情聴取されるわ、散々な目に遭っている。いやまあ、正確には事件に巻き込まれたのはぼくではないから、実質的な被害はないし、事情聴取も大したことは聞かれてない。多分、ラルの方が悲惨だと思う。彼女がどう思っているかは置いておいて。
そして、ここ数日で日常化していることがある。……ツルギによる襲撃だ。初日にラルに対して襲います宣言していたから、格別驚いてはない。挑まれるラルは涼しい顔して対応しているから、苦になっていないみたいだし。
そのツルギの襲撃は、一日に一回……というわけでもなく、何度も諦めずに突っ込んでくるのだ。ぼくだったら早々に心が折れるところだが、ツルギに「諦め」の言葉はないようで、ところ構わず襲いかかってきていた。
ある時は、ギルドの通路から飛び出し、刀を振りかざし……
「かぁくごぉぉぉ!!!」
「はぁ……だから、殺気を消せって」
「いってぇぇぇ!!??」
と、斬撃を軽く避けたラルに足をかけられ、派手にすっ転んだり。
またある時は、中庭の木の影から飛び出してきて不意打ちしてきたり……
「不意打ちになってないぞ、子狐君。ちらちら可愛い尻尾が見えてたよ」
「ふぎゅっ!?」
と、ツルギの突進をさらりとかわしてチョップされたり。
何回やり取りされたのか覚えてないし、ぼくのいないところでも襲われているらしいので、あれだけれど、今のところツルギは全戦全敗らしい。
ラルを慕っているツバサも、最初はツルギの行いに目くじらを立てていたのだが、今では周りの大人に「あれはツルギの修行」という建前を信じて、怒ることもなくなった。
もちろん、ツルギにそんなことは言えない。だって、毛嫌いしているラルから指導されていると妹に見られている……なんて、ねぇ。
あと、ぼく個人的なことで言えば、夜にルーメンさんのところへ通っているのも日常化していた。ま、特別何かあるわけじゃないし、ツルギみたいなハードなこともされてはない。単なるチェスと雑談目的だ。
……そして、今の今まで、チェスの決着はついていない。ここまでくると、遊ばれてるんだなって感じ始めるこの頃である。

さて、今日も今日とて、ホテルの一室でだらだら過ごす……と思っていたのだが、あの仕事嫌いなラルから「今から仕事行くぞ」と依頼書二枚を突きつけてきたので、洞窟ダンジョンへとやって来ていた。
「ホテルぬくぬく生活も捨てがたいけど、流石に堕落してきて不味いので、探検隊になるぞ!」
なるぞってどういうことだろう。スイッチ切り替えろとかそういう意味かな?
ぼくらはダンジョンの入口で、軽い作戦会議ならぬ情報共有をしていた。入る前に把握しておかなくてはならない情報なんかを擦り合わせるため、いつもやっていることだ。まあ、ミーティングみたいな感じかな。
「あの、なんでそんなにやる気なの? この暑さでよく元気になれるよね」
元気なラルとは違い、ぼくは夏の暑さに若干……いや、そこそこやられてしまっている。情けないけど、暑さにはどう頑張っても勝てそうにないのだ。まあ、目的地は洞窟。外よりはましだろうけども。
ぼくの質問にラルは、楽しそうに笑う。
あ、この笑い方は基本、よくないことを考えているときのラルだ。
「この前の戦利品の一つはを試したくてだな! 掲示板見てたら、よさそうな依頼があってテンション上がってるのよ♪」
この前の……戦利品?
ぼくが首を傾げるのも構わず、バッグから取り出してきたのは一つの玉。ガラス玉にも水晶玉にも見えるそれは、使い捨ての結晶タイプのアイテム。チームに効果を発揮するのもあれば、敵に効果を発揮するのもある。ラルが取り出したのは分類的には後者の方で……敵を自分達のところへ引き寄せる効果を持つ、『呼び寄せ玉』だ。所謂、罠系アイテム。
ちなみに、ぼくと二人の時に使うのはやめろと釘を指したばかりのやつだ。
「……あの、リーダー? この前伝えたはずの言葉は届いてなかったのかな?」
「本日の依頼は二つ! 今から挑む洞窟に現れるボスのドロップ品回収と近くの森林ダンジョンでの魔物討伐!……ってのは、理解している?」
すみません。ぼくの質問は無視?
とはいえ、依頼内容はなんとなく把握している。
この洞窟に潜むモンスターから『王者の角』と呼ばれるドロップ品を回収すること。
そして、魔物討伐は特定のモンスター……そこにいるはずのないはぐれモンスターを退治すること。
ぶっちゃけ、暑さで頭回ってないときに読んだので、詳しい内容は覚えてない。しかし、何も考えてないようで、実は滅茶苦茶考えているラルのことだ。ぼくらにできない依頼を引っ張ってくるはずもない。そこは信頼している。しているけど……
「ボスドロップなら、呼び寄せなんて必要ないよね? はぐれ魔物退治だって、呼ぶ必要ないし。どこで使うの?」
「洞窟の道中で使うに決まってるでしょ! せっかく来たんだよ!? 金目になりそうな品物採って帰る!」
え、なんでそんなに切羽詰まった感じなの? そこまでお金に困ってないよね? え?
「はぁ……いいかい、ティール君」
と、肩を掴まれ、ぐいっと顔を寄せてくる。もう少し近づいたらキスしてしまうんじゃないかって距離だけど、彼女はそんなことお構い無し。いけないことを話すみたいに声を潜めた。
……って、周りには誰もいないんだけどね。
「今回はフェアリーギルドを通してない依頼だ。つまり、稼げば稼ぐほど手元に入る。分かる?」
「……いや、受けた依頼は二つだけだよね。ついでにドロップ品お金にしよってのと、依頼をどこで受けるかは関係なくない?」
「はっ……依頼解決ついでにお金稼ぐのが悪いってか!」
多分、彼女は手に入れた道具の効果を試したくて試したくて仕方がないのだ。その言い訳を考えてるだけに過ぎない。
勢いよくぼくから離れ、大袈裟に反応を見せる。正論ぶつけられて焦ってるんだろうな。ラルらしくもない。
「そこまで言ってない。でも、支離滅裂なのは気づいてね」
「ぐぬ……はいはい! そーですよ! 私はこの道具の効果を試したいだけですよー! いいじゃない! 使ったことないんだもん。新しいおもちゃ手に入れたら、遊びたいでしょ? それと一緒!」
そのおもちゃに付き合わされるぼくの身にもなってもらいたいけどね。
「分かったよ。そもそも、やるって決めたラルを止められるとも思ってないし……じゃ、そろそろ行こっか?」
「ふふ。私の意思を尊重してくれるティールが好き! よっしゃ! いっくぞ!!」
……尊重じゃなくて、諦めてるだけだよ。
稼げる時に稼ごうぜ……というのが建前にあって、彼女の本心は新たに購入した罠を試したい……そんな、私欲まみれのやる気しかない。やる気があるのはいいことだけれど、理由がなぁ……
「その仕事に対するやる気を普段も保てたらいいのに」
「え? それは無理だよ。スタンダードな私は仕事なんてやりたくないもんね!」
……このやろ。
楽しそうなラルの後ろに着いていき、ダンジョンへと足を踏み入れる。
洞窟内は想像通り、外よりも断然過ごしやすく、ぼくはそっと胸を撫で下ろした。
仮に湿気なんかでムシムシしてたら、更に調子狂うところだったよ。よかった、そうならなくて。
「うし! やりますか!」
「……了解」
笑顔を浮かべウキウキ気分のラルと、夏の暑さにうんざり気分のぼく。
いつもなら、探検楽しいって笑顔になれるけど、流石にしんどいかも。
そんなぼくの考えを悟ってなのか、目の前に現れる敵は全てラルが一撃で倒していた。目の前でなくとも、ぼくの背後から出てきた敵ですら、ラルは逃さずに倒していく。その素早い抜刀術と狩人のような鋭い目付きに、仲間であるぼくですら、ほんとちょっぴり、恐怖を覚えるくらいだ。敵が倒れた途端、パッと笑顔になるところが特に怖い。
そして、鼻歌混じりにやられてしまう魔物達に同情してしまう。
ごめんなさい。今のラルは誰にも止められないんです……!
ティール? どうかした?」
「あ、いえ……なんでもないです。気にしないでください」
「? なぜ、敬語……?」
……今の君がなんか怖いからだよ!?
とは言えないので、何でもないよという意味を込めて、微笑んでおく。
ぼくもそろそろ、きちんと戦おう。そうしよう。そうでなければ、ラルの無双が止まらないもんね。うん……!



~あとがき~
終始、まとまりのない感じになりそうなお仕事編(夏休みver.)です。

次回、敵ラッシュタイム!
やる気十分なラルとげんなりしてるティールのコンビによる共闘。お楽しみに。

ここのお話はスプランドゥールに来てから少し経ってます。もっと言えば、あの連続誘拐事件から二、三日経ってると思ってくださいな。そんな感じなので、最初の方にちょっとしたダイジェストみたいなのが入ってます。書いてないけど、こんなことあったんだよ(ティール視点)みたいなね。はい。

ではでは!