satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第225話

~attention~
『空と海』のキャラ達の学パロなif世界物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとルーメンおじいちゃんとの夜会話第二弾やり始めました。導入で終わったけど。
今回から、本格的に進めていきますぞ~


《Te side》
「……のう、ティールや」
いつも通り、他愛ない話をしながらチェスをしていると、ルーメンさんがその手を止めた。そして、じっとぼくを見据える。
「ちっと踏み込んだ質問をするが……お主、自分の両親をどう思っておるんじゃ?」
「……っ」
突然の質問に、思わず息を飲む。
初日にも似たような質問はされた。そのときは父上だけだったが、今回は両親ときた。
雑談の空気から一気に真面目な空気に変わり、ルーメンさんの表情にも真剣さが窺えた。だからか、必要以上に体が強張るのを感じる。
「あぁ……いきなり、すまんかったな。無理して答えんでもよい」
ぼくの様子を見たルーメンさんが、気遣うように穏和な声色で話しかけてきた。きっと、このまま黙っていれば、話題は違う方へと移るのだろう。何でもない話へと戻るだけ。
……それじゃあ、意味がない。逃げてばかりじゃ駄目だって。時間は有限だって……ラルが言っていたんだ。
ぼくは然り気無く、いつも空色のバンドがつけられている手首に触れる。そこにあるのをしっかり確認して、心を落ち着かせた。
大丈夫。ここにいなくても、君は近くにいる……そうだよね?
ティール? 大丈夫か? まだ聞くには早かったかの。また別の機会に」
「……いえ。少し、驚いただけです。いつか、聞かれるだろうと思ってはいたので」
えっと、ルーメンさんの質問は両親をどう思っているか、だったか。
最初は簡単に答えられそうな母上からいこう。……なんて、本人の前では言えないけど。
「母には感謝しています。色々、便宜を図ってくれましたから。自身の立場もあるはずなのに、ぼくを気にかけてくれているし、父との仲も取り持ってくれているので」
父上と会話が持たないときは、決まって母上が割って入ってくれて、気まずい雰囲気を吹き飛ばしてくれていた。
ぼくが甘え方を忘れて、拒絶してしまったときだって、母上は……母さんは、離れることなく傍にいてくれた。
母さんは一緒にいてあげられなかった頃を悔やんでいるのか、駄目な母親なんて言うけど、そんなことはないと思う。今は真剣に見てくれている……なんなら、少しだけ鬱陶しいくらいに。
だから、母さんには感謝している。あの頃、ぼくを見捨てないで追いかけて、捕まえてくれたこと。今も味方でいてくれることに。
「だから、その……同時に申し訳なさも感じるというか」
「ふむ?」
「家の仕来たりとは言え、十二歳で家を出て、ここに来たこと……とか」
仕来たりとして、修行に出るのに年齢は決まっていない。自ら申し出るのもよし。王から命じられるのもある。
しかし、それでも十二歳は若すぎると周りからも色々言われた。王子とは言え、世間一般からすれば、まだ子供の部類。親はもちろん、従者もなしに一人でやっていくには若すぎる、と。
母さんに初めて打ち明けたときは反対された。もう少し後でもいいんじゃないかって言われたけれど、ぼくが辞める素振りを見せないと分かった途端、「母さんも協力します。ティールは何にも心配しなくて大丈夫」と、ころっと意見を変えたのだ。
そのときは考える余裕なんてなかったけれど、雫と出会って、別れを経験して。そして、また一緒に暮らすようになって……そこで初めて、母さんがあのとき、どんな思いで味方になってくれたのかを考えた。
「まだ一緒にいたかったはずの母さんの思いを無視してるって状況があるので……父のことで心配もかけてるし……それらを引っ括めて、申し訳ない、かなって」
ぼくの話を聞いて、ルーメンさんは小さく「なるほどの」と呟いた。今が夜で、静かな部屋だからこそ聞こえるくらいの呟きだ。
「……次はライトをどう思うとるのか、聞いてもよいかな?」
さて、ここだな……問題は。
父上をどう思っているのか。一言で言えば、「分からない」が適切ではと思う。しかし、それは質問の答えになっているのかは微妙なラインだ。
父上のことを考えれば考えるほど、何が言いたいのか分からなくなるし、そもそも、どんな感情を抱いているのかも謎だ。純粋な好きとは違うし、嫌いとも……言えないし。母さんみたいに感謝とか申し訳ないとかそういうのも……違うような。
恐れ? 尊敬? 怒り……は、ない。多分。なら、なんて言うのだろう……?
……って、あぁ、またこれか。
よく分からない感情に振り回されるこの感じ、父上とあれこれ話さなきゃなんないときと似てる。手探りで話していく感覚。ぼくが苦手なやつ。
「無理にまとめようとせんでよい。思ったままを教えてくれんかの?」
「う……は、はい」
頭を抱えつつもどう伝えるべきかと考えていると、ルーメンさんは変わらず柔らかな笑みを見せた。安心させるようなそれに、ぼくも少しだけ肩の力が抜けた気がした。
「答えになっているかは微妙ですが……父のことをどう思ってるかは、自分でもよく分からないんです」
「ほう?」
国のために邁進する父上は、素直に凄いと思っている。いつだって国を第一に考え、そのために行動する父上。王様なんだから当たり前だと言われたらそれまでだけど……どんなときだって堂々としていて、主君として、盟主として誇りを持っている父上は、一種の憧れを感じている……と、思う。
その反面、父親としてはどう感じているのかが分からない部分が怖いと思う。元々、口数の少ない人だ。多くを語る人ではない。
だからこそ、ぼくをどう思っているのか分からないのが怖い。必要以上にスキンシップをする母さんとは違い、必要以上に距離を詰めてこないから。それに、表に感情が見えてこないから、どう考えているのかも読めない。
王として完璧な父上が、王子として未熟なぼくをどう思っているのか……そもそも、眼中にないんじゃないかってすら思えてきてしまう。
「王である父のことは、尊敬しています。……でも、父親としては……どう思ってるのか分かりません。もしかしたら、ぼくのことなんてどうでもいいって思ってるかもしれないって少しでも思っちゃうくらいです。……そんなこと、ないのは分かっているつもりなんだけど……」
分からないから色々考えて、想像するのは普通だろう。でも、父上相手に色々考えても、ぴたりとはまる答えが見つからないのだ。
ぼくはラルみたいに、ぐるぐる思考するのは得意じゃない。考えれば考えるだけ、頭の中がぐちゃぐちゃになって、それでも答えが見つからないのが辛い。
「父の本心が見えないことが怖くて、考えても見えてこないのが怖くて、考えるのも嫌になってしまうくらいで……そんな今に疲れちゃってる……んでしょうね。よくないのは分かってはいるんですが……って、これは質問の答えとは違うのか。ごめんなさい。関係ないことまで話して」
「よいよい。思ったままを教えてくれと言ったのはこちらじゃからな。……ふむ。そうか」
ぼくの話を聞いて、何やら考え込むルーメンさん。ゆっくりと自身の髭を撫でながら思案しているらしかった。
ぼくはその間、密かに一息ついていた。
ここまで話して、疲れないわけがない。友達とわいわい話すような雑談とは違う。
触れられたくない話題について話したからか、精神的に疲れてしまったのかもしれない。そこまで弱いつもりはないけれど、嫌なものは嫌ってやつだ。
ティール……お主は」
長い間思案していたように思えたが、きっと、そこまで時間は経っていないのだろう。
ルーメンさんは質問を投げ掛けたときのようにぼくをまっすぐ見つめてきた。そして─
「……『また、自分のことを両親は見てくれなくなるんじゃないか?』……そう、思っておるんじゃないのかの?」
─と、ぼくが言わなかったぼく自身の本心を言い当ててきた。



~あとがき~
どこまで続くんやろね。

次回、まだまだ続くよ、二人の会話!

いつかの回想でも、似たようなのは出した気がします。振り返りだと思ってくれれば!
とはいえ、そのときには出てこなかった思いみたいなものはあるので、合わせて知ってくれたらいいかなと。はい!
にしても、レイ学ティール君は繊細ですね。空海ポチャ君とは大違いやで(笑)

ではでは!