satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第229話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、謎の影にびびりまくったり、その影がツルギ君だったり、ツルギ君がバタンキューしてしまったり。色々ありましたね。
そんなこんなで、二人のお話です。


《Te side》
一応、ツルギが目を覚ましたことで、控えめに漂っていたスイとセツがパッと嬉しそうに飛び出してきた。
『よかたー!』
『つるちゃ、おきたー!』
「ふぇ!?」
ツバサにもスイとセツの声は聞こえていたから、きっとツルギにも聞こえるだろうと思っていた。その予想は間違ってなかったらしく、いきなり話しかけてきた二人にビクッと体を震わせた。
「うるさいぞ、スイ、セツ。ツルギはさっきまで気を失ってたんだからね?」
『むうー! でもでもー!』
『おきたの、うれしかったんだもーん!』
あーはいはい……そーですか。
「ごめんね、ツルギ。こいつら、悪い奴らじゃないから、許してあげて」
「その、きらきらしたやつと、水がしゃべったの……?」
……あぁ、知らないのか。まあ、普通は知らないのが当たり前だよね。そもそも、ツルギの前でこいつらが話すのは初めてか。
「うん。こいつらは聖剣で、水を司る水泉と氷を司る雪花だよ。ぼくはスイとセツって呼んでるけどね」
説明しながら、スイとセツを剣に戻す。ついでに、しばらく黙ってろと心で念じておく。二人から返事はないけど、口を出す空気でもないと思ってくれたのか、しんと気配が静まった。
ぼくはスイとセツを帯剣しつつ、首を傾げた。
「……それはそうと、改めて聞くけど、大丈夫?」
「あ、うん。……冷やしてくれて、ありがと」
「ううん。たまたま通りかかっただけだから」
いつも、ラルに攻撃的な態度だったり、果敢に襲い掛かるツルギを見慣れているせいか、しおらしい彼を見るのは変な感じだ。
それに、どこか元気がないようにも見えた。ぶつけたところがまだ痛むのか……或いは、別の理由があるのか。
「ツルギ、本当に大丈夫? どこか痛む? それとも何かあったの?」
「う……べ、別に」
あ、この言い方、何かあるやつだな。
ぼくの言葉に返答はするものの、すぐ視線を地面に落としてしまう辺り、何か思うことがあるのだろう。どこか自信無さそうにぽつりと呟く。
「その……練習してる技が上手くいかなくて……ちょっと、落ち込んでるだけ」
あぁ、さっきのかな?
「それにしては落ち込み過ぎなんじゃ? 失敗もさっきの一回だけだろ。あ、でも、ぼくの知らないところで何度も失敗しちゃってるのかな……?」
それにしては、服の汚れも見当たらないし、体も先程ぶつけたところ以外に傷一つない。それに、ルーメンさんのところへ行くときにもここは通ったが、そのときは誰もいなかったはず。なら、ツルギがここで特訓を始めたのも、少し前なのだろう。一時間くらいか?
「それを抜きにしても、いつも傍にいるヤスさんとヒデさん抜きで夜に特訓ってのも、変な感じするんだよね。それに、ツルギ、この時間の特訓は今日が初めてでしょ?」
「……え」
「ここに来てから、ぼく、ここを通るけど、ツルギを見かけたのは今日が初めてだから」
「う……」
これ、多分、何かを隠しているな。
明確に顔や態度に出ているわけではない。けれど、血は争えないというものだろうか。ツバサ程ではないにしろ、そこそこ顔に出てしまっている。
「何か困ってるなら話、聞くけど……?」
「……」
駄目元で問い掛けてみるも、あまりいい反応は返ってこない。ちらりと横目でぼくを見たかと思えば、すぐに目線を逸らしてしまう。
ぼくを無視するつもりはないみたいだけれど、話すつもりもない……か。
フォースなら、勝手に心を読んでいる場面か。ラルなら、言葉巧みに聞き出してしまいそうだ。そして、今のツルギに必要な言葉を投げ掛けてくれるんだろう。
ぼくは心も読めないし、話を聞き出せるような話術も持ち合わせていない。できることなんてないので、ここから立ち去るのも手ではある。しかし、今のツルギを放置して部屋に戻るわけにもいかない気もする。せめて、落ち込んでいる本当の理由が分かればいいのだが……うーむ。
「こういうのはラルの仕事だよ~……ラルがいたらなぁ」
「……っ!」
「……? ツルギ? どうし……え、どうした!?」
何がきっかけだったのかは分からない。分からないが、いきなりツルギの目に大粒の涙が溢れ始めた。
「えっぐ……うぐ……うぅ~!」
わぁ……マジ泣きだぁ……ぼく、何かしましたっけ……?
「えーっと……ベンチ! とりあえず、ベンチ座ろっか! ね?」
大号泣中のツルギを手を引き、近くのベンチに座らせる。こんなの誰かに見られたら、誤解しか生まないが……誰も来ないことを願うばかりである。
雫が泣いたときみたいに、泣き続けるツルギの頭を優しく撫でる。落ち着くまで撫でていれば、泣き止んでくれるだろうか。雫の場合は、少しすれば落ち着くのだけれど。
泣いている理由も分からないので、何て声をかけていいかもさっぱりだ。
しばらくの間、無言でツルギの頭を撫でていると、次第に落ち着いてきたのか、声をあげて泣くことはなくなってきた。
「うっく……ぐすっ……」
「どう? 落ち着いた?」
「……うん」
目を真っ赤にしつつも、話ができるくらいには回復してくれたみたいだ。今なら、泣いた理由を話してくれるだろうか?
「それはよかった。……でも、本当にどうしたの? いきなり泣き始めたのもそうだけど、普段のツルギはもっと積極的というか。……こう大人しくするタイプじゃないよね?」
「……」
……あ、答えてくれない感じですかね。
流石にここまでくると、なんか居づらいな。一人にしてくれって意思表示なのかな。それなら、今からでも立ち去るけど……気になって、この後、寝られる気がしないぞ。
「………………だもん」
「……え?」
ツルギはどこかふて腐れたように、何かをボソッと呟いた。本当に小さい声だったせいで、肝心な部分が全く聞こえなかったけれど。聞き返す前に、再びツルギの口が開く。
「だって、悔しいんだもん……っ! 毎日、ラルに勝負しても、簡単にあしらわれるから。……そりゃ、ラルの方が年上だし、僕より戦う力も、技術も上だよ。でもさ……悔しいんだよ。僕だって……僕だって、ツバサにかっこいいとこ、見せたいんだもん」
ん~……なるほど?
まあ、どこから仕掛けてもラルはツルギを簡単にあしらっているのは確かだ。正面はもちろん、死角から飛び出してきたとしても、ひょいっと避けてしまう。そして、「ツルギ君は、まだまだだねぇ?」なんて、にやりと笑っているもんな。それを見ていたツバサも、「流石、ラルにさんですっ」と目を輝かせる場面は何回かあったような……そういうことね。
泣き出した理由も、ぼくがラルの名前を出したせいか。名前を聞いて、彼女の顔が浮かんだのだろう。
「だから、今日から夜の特訓を始めたってこと?」
「……ん」
勝ちたいという欲求と、妹にかっこいいと言われたい……兄としての威厳を保ちたいという承認欲求みたいなものか。だからって、あんな無茶なスピードで特訓するのはいかがなものか。
「……ラル、仕事嫌いでサボり魔じゃん」
「へ?」
ツルギの中で何かのリミッターが外れたのか、むすっとした表情でラルの悪口を言い始めた。
「それに、隙あればツバサをもふもふするし……誘惑魔だし……ムカつくことしか言ってこないし」
あ~……パートナーとしてフォローしてあげたい。ラルはそんな人ではないと。……でも、無理。全部、事実だから。フォローしきれません。できませんって。
「……それなのに、そんなやつなのに、探検隊として、優秀ってなんだよ。実力は本物ってなんだよ……! この前の仕事、ギルドの人達にめっちゃ褒められてたし!」
あ、無駄にドロップ品集めたやつかな。全部、ギルドで換金したって言ってたからなぁ。
「ラルの実力が本物だから、ツバサはラルのこと、かっこいいって言うんだ。僕だって言われたいのに……!」
「……おっと?」
永遠とラルの愚痴が始まるのかと思ったけど、結局はそこに戻るみたいだ。
「あのラルから一本化取って、ツバサにかっこいいって言われたいのに!! なのに、ツバサが見てるとこで、ラルから一本取るどころか、逆に取られまくるし……だから、ツバサには、カッコ悪いとこばっか見られちゃうし……なんなんだよ!!!」
ラルが「負けてあげない☆」と宣言してたからだと思います……なんて、言えない。それに、ツルギ相手に全力で構えることはない。かといって、見え透いた手加減はラルはしないだろう。
……そんなの、今のツルギに言ったら火に油だ。黙っていよう。
「だ、だから、僕は……悔しいんだよ……っ!」
口を挟む暇がなかったのもあるが……一気に捲し立てたツルギは肩で息をしつつも、一応、言いたいことは言い切ったらしい。
この様子だと、ぼくがラルのパートナーという事実は忘れている……かもしれない。
「……あ!」
「ん? もしかして、まだ言い足りない? それなら、ぼくでよければ聞くよ?」
「じゃなくて、ティール……ラルのパートナーだよね……?」
「えーっと。……そう、だね?」
「ラルの悪口、言っちゃった……ティール、ラルのパートナーなのに……」
やっぱり、忘れていたんだね。いいけどさ。



~あとがき~
ラルに対する嫉妬心に溢れるツルギ君とそれを黙って聞く、彼女のパートナーのティール君でした。

次回、ツルギ君とティールの夜会。お次はティールのターンです。

夏休み編でラルがツルギ君を淡々とやり過ごすシーンを書いてはないですが、一日に何回あるんでしょうね。ラルのことですから、お遊びにしか感じてないのでしょう。
ラル「わははー! 甘い甘い! そんなんで私に勝てると思うなー!(゚∀゚)」
ツルギ「うがー!!( ゚皿゚)」
みたいなのが毎日なんでしょうか……ツバサちゃんや雫は素直に「ラル(さん)すごーい!」で笑ってそうですが、他の方々は「またか……( ̄▽ ̄;)」って感じなんすかね。

ではでは!