satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第231話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル嫌いなツルギ君にラルがどんな人なのかを教えていたティール。しかし、最終的にはラルが好きなのか否か問答が始まったとさ。
ティール「ルーメンさんと言い、ツルギと言い、なんでこうもラルとくっ付けたがるの」
血は争えん……そういうことだ。
ティール「祖父と孫ってそういうことぉ!?」


《Te side》
何か考え込むツルギの近くで、ふわふわと漂うスイとセツは、ツルギの名前を呼ぶ。その声に顔を上げ、こてんと首を傾げた。
『つるちゃ、てぃーはるーをあいらぶゆーらとおもてるのら??』
「うん。僕はそう思ってるよ」
ちょ、本人の言葉は!? 意思は無視なの!?
「お前ら、いい加減に」
『てぃー、うるさーい』
『せっちゃたち、つるちゃとおはなししてるのー』
「うるさ……!? お前らに言われたくないけどな!?」
ぼくらがギャーギャー騒ぐ中でも、ツルギはじっと考え事をしていた。そして、ぼくを見上げて、「例えばだけど」と前置きをした。
「ラルがティール以外の男の人と付き合うとか、結婚するとかって話になったらどーするの?」
いきなり、話が飛躍している気がするのは気のせいだろうか。いや、一応は繋がってるのかな。恋愛的な意味の好きってやつに。だとしても、なんでそんなことを聞かれるのかは分からないが。
「……どうって、どうもしないけど」
「ほんとに? 心からおめでとうって言えるの?」
「そりゃあ、ラルが望んだことだ。ラルが幸せなら、受け入れるだけだよ。だから、おめでとうって言うかなぁ」
「それ、ちゃんと考えた? 想像してよ。ラルがティール以外のやつと結婚するところ!」
「そ、想像!? 必要ある?」
「しないとダメ」
あ、はい……
有無を言わせないツルギの空気に思わず、頷いてしまった。
ラルが誰かと結婚するところを想像すればいいのかな。えーっと……?
純白のドレスに身を包み、普段は流れるようなブロンドの髪を綺麗にアップにしたラル。そんな彼女が幸せそうな明るい笑顔を見せる。けれど、それはぼくに向けられたものではなくて。ぼくではない、誰かに向けられたもので。ラルが幸せそうなのを離れて見ているぼく、か……
──それは、嫌……だな。
「ほらね。ちゃあんと考えれば、答えは出てるじゃんか」
「……え?」
「今、ティール、はっきりと『嫌だ』って言ってたよ?」
ツルギに指摘され、無意識に発していたと気づいた。慌てて、口を覆うものの、出てしまったものは取り消せない。
今、ぼくは、嫌だって言っていたのか? もしそれが本当なら、矛盾する。ラルが望んだことなら、幸せになれるのなら、祝福できると言ったはずなのに。それと真っ向から否定しているようなものだ。これじゃ、まるで……
『すいちゃも、るーがてぃーじゃないひとと、いっしょ、やだー』
『せっちゃもやー! てぃーも、やなのねー?』
「みたいだね。それが答えだよ。ティール」
……ぼくは、ラルを好きだって? 友達じゃなく、仕事仲間でもなくて、一人の女の子として……女性として、好きだと?
それを自覚した途端、脳内が混乱するのと同時に、顔が熱くなるのを感じた。
待て待て待て……落ち着け。こんなの言いたくはないけど、ぼく、王子だよな。そして、ラルはどこにでもいる─かは、怪しいくらい個性的ではあるが─普通の女の子だ。流石にそれはどうなんだ?
いや、両親も似たような境遇ではあった。今更、気にするような問題ではないかもしれない。でも、きっと嫌な思いはさせてしまう。それも、考えられないくらい、たくさん。それなら、この気持ちは黙っていた方が身のためというか、ラルの幸せに……さっき、ぼく以外の人といるのは嫌だと言った手前、かなり複雑だけども。
「くふふ♪ ティール、赤くなったり、青くなったりして、面白いねー!」
「はい!?」
「にひひ♪」
な、泣いてたツルギが楽しそうにしてくれてて何よりだけども……なんだけども、なんだろう。この、してやられた感。
「……身分差で迷惑かけるかもって思ってるんなら、その心配はいらないんじゃないかな?」
まるで、ぼくの心を読んだようなことを言う。戸惑うぼくを放置し、ツルギは楽しそうに笑った。
「だって、『愛』とか『友情』の前に、そんなの障害にもならないもん。大昔の陸の国がそうだったからね!」
……それって、どういう?
しかし、それ以上は何も言わず、ツルギはぴょんっとベンチから立ち上がる。こちらを振り返り、再び楽しそうな笑顔を浮かべる。
「僕、ラルは嫌いだけど、ティールは気に入った! ティール、優しいし、僕の話に共感してくれたから。それに、反応も面白い」
「はいぃ!? 素直に喜べない! え、反応が面白いってどういうこと?」
「そーゆーとこっ」
……えぇ?
詳しく説明せず、ニカッと少年らしくも、どこかツバサの面影を感じる笑顔を向けた。
ティール、僕の話を聞いてくれてありがと!」
「あぁ、うん。それはいいんだけど……」
「さっきのラルに対するそれは、少しずつ、考えてみたらいいよ。……僕、色々話したら、眠くなってきたから戻るね! おやすみー!」
え……あ、え!?
最後の方は完全にツルギのペースだった。いまいち、理解できないまま、一人にされた気がする。
とはいえ、今ここでうだうだ考えたとして、何かいい答えが浮かぶ気もしない。
「……ぼくも、帰ろう」
誰に宣言するわけでもないけど、そう呟いてベンチから立ち上がった。
いつもよりも遅くなった帰り道は、ツルギに遭遇した以外は特に何かがあるわけでもなく、無事に部屋の前に到着。
自分の腕につけてあるブレスレットをかざして、扉を解錠する。そして、二人が寝ていたときのために、ゆっくりと開けた。
部屋の中心の電気は消されているみたいだが、奥の方ではぼんやりと明るい光と、ゆらゆら動く影が見えた。
「ただいま」
「おかえりぃ……遅かったねぇ?」
髪を緩く二つ結びにし、眼鏡をかけたラルが手元の書類から目を離さずに、質問を投げ掛けてきた。
テーブルの上にいくつか散らばる書類。仕事の書類か?
「ちょっとね……色々話し込んじゃった」
ルーメンさんとではないけど。
「ふーん。まあ、いいけど。早く寝ろよ」
淡々とした返答。少しだけ仕事モードだな、これ。
「分かってる。……ね、ラル?」
「んー?」
「……ラルは、さ」
ラルには色々、聞きたい。ルーメンさんのところで考えた、将来についてとか。ツルギに言われた気持ちのこととか。けど、それを口にする勇気はなかった。
「どしたん」
「ううん。大したことじゃ、ないんだけどさ。……ぼくと、一緒に探検隊するの、好き?」
だから、脈絡もない質問が出てきてしまった。流石のラルも意図が読めないのか、少しだけ眉をひそめる。
「は?……いきなり何よ」
「なんとなく」
「……前にも言ったけど、私はティールが必要とするなら一緒にいるよ」
「……ずっと?」
ラルは、黙って頷く。
「私はティールの味方。だから、私は君のしたいことの手助けをする。それがリーダーとして、パートナーとして……親友としてやれることだと思うから」
そう、だよな。ラルはそういう人だ。
「何があったのか知らないけど、ティールはティールのしたいことをすればいいんじゃないかな。私はそれに付き合うだけ」
「相棒だから?」
「そぉね。私のだぁいすきな相棒のためだからね」
と、そこでラルはようやく顔を上げ、ふわりと笑う。優しくて、暖かな笑み。昔からそれを見ていたはずなのに、ルーメンさんやツルギにラルのことを言われたせいだろうか。不覚にも、ドキッとしてしまった。
「? なぁに? じっと見ちゃって。何か他に言いたいことでもあるの?」
「あ。……な、何でもない。ラル、君もほどほどにして、早く休みなよ?」
「ほーい」
あの二人にあんなこと言われなきゃ、気にしないのにな。……これから、普通でいられるだろうか……?

次の日。探検用の装備に身を包んだぼくは、ソファに寝っ転がるだらしない相棒を見下ろしていた。
「ラル、仕事」
「行きたくねぇっす……」
あのあと、ラルは結局、ソファの上で寝落ちしていたらしい。ぼくが起きた─今日は雫に起こされた─ときからずっとソファでぐでっとしていた。朝食を食べ、雫がお祭りの練習に行った後もこんな感じである。一応、ラルも探検用の装備なのだが……そこまで準備して、行きたくないとはなんなのだ。
……はあ。ぼくの心配は杞憂だったのはよかったけど。
「ラル! いい加減にしろ!!」
「いやぁぁ!! 今日は仕事する気分じゃなぁぁい!!」
「知るかぁぁぁ!!!」
無理矢理ラルを立たせて、ずるずると引っ張って歩く。すれ違う人達が見ているのも気にせず、淡々とギルドの出入り口まで引っ張った。
「あ、ラルとティールじゃん」
ぼくらの名前を呼ぶ声が聞こえて、そちらを見てみると、そこにはアラシとツルギがいた。彼らと出会ったからといって、ラルのスイッチが切り替わるなんてことはない。ぼくに引っ張られるがままの体勢である。
「今から仕事なのか?」
「まあね。一応、やる気を見せてくれない相棒と行く予定」
「なるほど……いつもの生徒会室でだらけるラルじゃねぇか」
アラシが呆れつつ、ちらりとラルを見る。その視線に気づいたラルもアラシをちらりと見上げ、どこか不満そうに口を開く。
「だってぇ、この前のやつでやりきっちゃってさぁ」
メインの仕事もまだですが!?
ティール、どんな仕事行くの!?」
ぴょこっとアラシの影から顔を覗かせたのはツルギだ。昨日のあれのおかげなのか、キラキラした眼差しを向けられる。
「え? えぇっと……討伐が二件、素材採取が一件、お尋ね者退治が一件」
「そんなに受けて大丈夫なの?」
「一応、これで通常くらいの量だよぉ。同じところの依頼もあるし……」
ぼくが答える前にラルがのんびりと答える。すると、ツルギがキッと目をつり上げた。
「むっ。ラルには聞いてない!」
「うへ~? 当たりがつよぉい」
「そんなことない。いつもどーりだし」
「ほう? 今まで、ティールは眼中なかったくせによく言いますねぇ、少年。……なるほど? 昨日、遅かった理由はそういうことなのかな、ティール」
えぇっと……黙秘権行使しようかなぁ、なんて。
「あは。……それが答えか」
不敵に笑うラル。そして、ぼくの手からするりと抜け出すと、何事もなかったように歩き出してしまった。彼女が何をどう捉えたのかは分からない。分からないが……
「ちょ、置いてかないで欲しいんだけど!?」
「うっせ! お前は一生、ツルギ君をもふもふしとれ!!」
そこなの!? っていうか、どこに嫉妬してんだ、君は!?



~あとがき~
ティールはツルギ君に気に入られた模様。

次回、今回のメインの一つでもある洞窟探検のお話です。
なので、またラルとティールメインのお話になるのではなかろうか! なかろうか!!

ラルはツバサちゃんに懐かれ、ティールはツルギ君に懐かれる。これは、前々から決まっていたことではあります。初回で大した会話を交わしていない二人でありましたが……
今後、ティール&ツルギコンビが楽しそうにしているところがあるかは、相方の采配次第ですね。

ではでは。