satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第235話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でもんもんとしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、一旦仲間と別れたラル。一人で黙々と調べ物してます。
今回もその続きです。


《L side》
情報を隠す理由については、情報が少なすぎて絞りきれない。
単に知られたくないから?
神に関する情報開示が危険だから?
そもそも、資料が残っていない? 或いは、ミルティア自身がこの世に残そうとしていなかった?
思い付くままに理由を描いてみたけれど、どれも、しっくりこない。
神に関する詳細を隠すのは分かる。ミルティアが女神で、人ではない。それを大勢に知られるのは危険だと判断した。全うな理由に思える。
しかしだ。それにしたって、少なすぎるというものだ。
ミルティアに仕えていた家系であるという情報をツバサちゃんに開示している以上、いつかは自分のルーツを知る手段がいる。それなのに、ミルティアに関する詳細がないのはどうなのか。
まあ、この資料室はギルドメンバーも使用する。他人に見られないように隠しているとするなら、理解できる。……納得はしないが。
「いや、それにしたって、ミルティア自身を隠す必要はない……だって、ケアルは仕えていただけ。情報を隠す必要なんてない」
あ、待て?……主の知られてはならない情報を隠蔽した、と言われたらそれまでか。ふーむ。
私は背もたれに全体重を預け、天井を見上げる。どこにでもある天井を見たところで、私の知りたいものが降ってくるわけではない。
私はなんとなく、ゆっくりと目を閉じる。
「あーぐちゃぐちゃになってきた。……整理するか」
ミルティアの資料はある。少ないながらも、女神に関する情報はあった。しかし、どれも断片的で、詳細は載っていない。
ミルティア自身ではなく、周辺の情報は多くの資料に載っていた。家族、経歴、政策、土地、王としての功績、残された子孫が何を残してきたのか……まあ、それらも詳しいことは不明のままだが。
今、明確に真実だと言えるのは、ケアル家がミルティアに仕えていたこと、この地を救ったという逸話があること。そして、複数の資料に載る程の大雑把な情報達。
私の知りたいミルティアに関する詳細は不明なまま。ある意味、収穫はないと言える。
謎として残るのは、大まかに二つ。
なぜミルティアの情報がない?
隠蔽しているとしたら、その理由は?
ルーメンさんに聞いたところで、はぐらかされそうだ。アルフォースさんを攻める手もなくはないが、あの人は口が固いタイプ。知っていても教えてくれないだろう。まあ、直系ではないアルフォースさんが知っているかは微妙なラインだが。
ツバサちゃんやツルギ君はどうだろう。少なくとも、ツバサちゃんは何も知らなそうだったが。ツルギ君が知っていたとして、私に教える義理はないな。どちらにせよ、無理か。
「はー……手詰まりだぁ」
「何が?」
頭上から声が降ってきて、パチッと目を開けた。そこには不思議そうに私を見下ろすティールがいた。
「……ティール」
「ん?」
「近いです」
このまま近づいてキスでもされるのかなって思ってしまうくらいに近い。最近、こういうのが多いなあと楽観的に思う反面、ティールの天然っぷりに活を入れたくなる。
こういうのを! 女の子にしてはならんと! 何度言えば分かる!?
……なんて、こんなところで言えないので、今回は私の心に押し止めておくけれど。
「あ、ごめん。なんだか難しい顔で唸ってたから、熱でもあるのかと」
「さっきまで元気やったやろがい」
「そうだけど。君、隠すの上手だから」
……そうかな?
私が疑問視しているような表情を浮かべたせいか、彼は困ったように「そうなの」と少し強めに言ってくる。
「で? 何を調べてたの?」
「ミルティアのこと。でも、知りたいことはなーんも出てきませんでした」
「へぇ? ラルにしては珍しいね。あぁ~……だから、手詰まり?」
私は黙って、不満タラタラに頷く。ティールが労うように、私の頭を優しく撫でてきた。その行為に甘えつつも、思考を巡らせようとする。……が、もう集中力が切れたのか、てんで動いてくれなくなった。
「……駄目だ。考えるの疲れた。あ、ティールが来たってことはお昼? 食べに行こっか。しーくんは?」
「手分けしてラルを探してた。その辺にいるんじゃないかな。見てくるよ」
「ほーい。じゃ、漁った資料戻してくる」
「了解。……そだ。……ねぇ、ラル?」
私から離れ、しーくんを呼ぼうとしていたティールだったが、くるりとこちらを振り返る。
「詰まったときは前提を変えるといいんじゃないかな。前提っていうか、別のことに目を向けるみたいな。……アドバイスになるか分かんないけどね」
「別のこと……ねぇ」
「資料が駄目なら、人を頼るとか。手段を変えると見えることもあるんじゃないかな」
まあ、別視点からのアプローチも有効だろう。とはいえ、残念ながら、その周りの人も頼れないって結論に……?
「……ティール。信用のある情報の定義ってなんだろう」
「え? そりゃあ、資料自体が信用に足るかどうかとか……あとは、複数の資料に書いてある……かな。別の資料に同じことが書かれていれば、信憑性はあるよね?」
ティールの言葉を受けて、広げていた資料を片っ端から漁っていく。目につくもの全て、目を通して、情報の再インプットしていく。
ティールの言った定義に従うなら、ツバサちゃんから聞いた、『ケアル家がミルティアに仕えていた』という情報は信用に値しない。
なぜなら、どこの資料を見ても書いていなかったからだ。もちろん、ミルティアにスポットを当てていたから、出てこなくても不思議ではない。だが、今回に限っては、ミルティア周辺の情報が多く出ている。すなわち、それを匂わせる情報がないのはおかしい。
では、出てこない理由とは。……ツバサちゃんが教えてくれたものが間違っているから。
しかし、嘘がつけないツバサちゃんが私達を欺くために嘘をついたとは思えない。だから、私も無条件で信じたし、それを前提に情報収集も、その後の推測も行った。そして、完全に行き詰まった。
しかし、ツバサちゃんから聞いたそれが誤情報だとすると、分かることがある。
なぜ、彼女に嘘をついた? そのような必要があるのはなぜ?
その問いの答えとして、最も近いものは「ケアルは支えていたのではなく、直系の子孫そのもの」だろう。それをツバサちゃんに知られたくなかった、或いは、一時的に隠す必要があったのだろう。ツバサちゃんに嘘を教えたのは、ルーメンさんなのか、理事長なのかは、大して重要ではない。
よくよく考えれば、この城も元はこの地を治めていた王が住む場所だったはずだ。それをケアル家が所有している時点で、疑うべきだったのかもしれない。仕えていただけで、城を継承するとは思えない。継承するならするで、経歴に書かれているはずだから。それがないってことは、そういうことなのだろう。恐らくは、だが。
……とはいえ、これはあくまで推察の域を出ない。確信を得るにはまだ、足りない。
「ラルー!」
「え、あ、しーくん……!」
「急に考え事始めるんだから。……もう終わったかい?」
しーくんを連れてきたティールは飽きれ顔。そりゃそうだ。資料戻すわ~とか言っておいて、一つも戻していないんだから。むしろ、散らかしている。
「ごめんて。今、資料戻すよ」
「手伝うよ。半分貸して?」
「ぼくも! おてつだいっ」
ティールとしーくんの手助けもあって、大量にあった資料達は元の場所へと戻された。手伝ってくれたしーくんの頭をわしゃわしゃっと撫でてあげていると、軽く肩を叩かれる。
「で? 何か分かったの?」
「まあ、ティールのお陰で一応は」
「そっか。少しでも進展したのならよかったよ」
あれを進展と呼んで言いかは謎だ。……手詰まりから抜け出したのは確かだが。
「けどまあ、それでも確信はないから、また時間があるときに調べ直すよ。分かったら教える」
「了解。そのときは手伝うから、なんでも言って」
おー? なんでもは大きく出ますね。なら、こき使おうかな?
「それは怖いなぁ……いやまあ、ぼくにできることなら、なんだってするけどさ。……よし、ご飯食べに行こう!」
ひょいっとしーくんを抱き上げ、資料室の出口へと向かう。私もその後ろについていく。しーくんを抱っこして歩く姿が休日のパパっぽくて、内心ほくほくしていると、ふとあることを思い出した。
「ねー? ティール」
「んー?」
「知ってたら教えてほしいんだけど、『ブレスガーディアン』って聞いたことある?」
実は資料を片っ端から漁っていたとき、時々目にした単語の一つだ。これも例に漏れず、詳細は不明。時間があれば、ブレスガーディアンとはなんぞやを調べたかったのだが、ミルティア自身を指す言葉ではないみたいで、結局、未調査のままに終わってしまった。
「ブレスガーディアン、か。……ごめん。聞いたことないな」
「じゃあ、世界の常識ではないね。それだけ分かればいいや」
名前から推測するに、何らかの守護者なのだろうか。しかし、ミルティアを守る精霊を指すのか、ミルティアに仕えていた人を指すのか、はたまた、全く異なる存在なのか。何れにせよ、今、それを知る手段はない。
また今度だな。うん。
「あー疲れた。甘いもの食べたーい」
「ボクもたべるー! アイス!」
アイス、メニューにあるかなぁ……?
三人で今日のメニューが何なのか話しながら、ツバサちゃん達の待つ食堂へと向かう。
そして、本日のメニューにアイスはなかったが、プリンはあったので、ありがたく頂戴したのだった。



~あとがき~
久しぶりにラルの思案回でした。
地の文を沢山書いた……(笑)

次回、ラルとツルギ君の話。
初日だけがっつり書いたあれです。

書いてて、若干迷走した感じがします。大丈夫だろうか……?
まあ、なんだ。とりあえず、色々調べたけど詳しいことはわからんわってことと、ツバサちゃんが言っていたケアル家がミルティアに仕えていたという情報が誤りだったということが分かっていればいいと思います。はい。

ではでは。