satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第241話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界であわあわしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルに何かが起きました。
そんなこんなで、幽霊がいるのでは!? と、一人で勝手にソワソワしているティール視点でお送りします。


《Te side》
ラルがいきなり、アンナさんの話がここ、『奇跡の洞窟』で起こったことなのではないかと言い出し、ぼくの中ではよくないものがぐるぐるしてしまった。
その結果、何かに躓いて、情けなくも綺麗に転んでしまった。非の打ち所がないと思うくらい、綺麗に転けました。
「い、いてて……なんなんだよ~」
いや、自分の不注意のせいだ。怪談話を思い出して、足元が覚束なくなったたけだ。恥ずかしいことに。
でも、こういうときに、良くも悪くも話しかけてくる相棒が何一つ言葉を発してこないのはなぜだろう。
「……ラル?」
気になって、後ろを振り返る。しかし、そこには誰もいない。……そう、誰もだ。
ぼくの不甲斐なさを見て、からかっているのだろうか。その辺の物陰に隠れている……とか?
そう思って、辺りを見回してみてもラルの姿は見当たらない。なんなら、気配すらも感じない。まあ、彼女が本気で気配を殺してしまったらぼくが見つけられるかは自信がないが……それにしたって、人気がなさすぎる。本当に、彼女はどこへ行ってしまったのだろう?
『るー、きえちゃった』
『てぃー、かちってやったら、るー、きえちゃったよ?』
……んん??
こいつらの話をまとめると、ぼくが転けた拍子に何らかのスイッチを押してしまったのだろう。それが原因で、ラルはここからいなくなってしまったと。
『てぃーがかちってしたの、あずがかちってしたのとおんなじ~』
『おんなじおんなじ~』
「お祖父様が? ってことは……」
アンナさんの話では、どんな流れだったろう。相棒と別れてしまった男……お祖父様は、ここで声を聞く、んだったか。どこからともなく、聞こえてくると言う謎の声。振り返っても、声の主が見当たらないやつ……!?
ぼくは慌てて、もう一度、辺りを見渡してみる。が、ラルの姿もなければ、声を発するかもしれない「何か」もいない。
……そもそも、スイッチを押して少し経ったが、声なんて聞こえてこない。ということは、アンナさんが話していた怪談はここではない? それなら、とっても嬉しいんだけれど。
──い…………まっ……──
聞こえて……こなかったら、嬉しかった、んだけどな。
「スイ、セツ。今、何か言った?」
ぼくは一縷の望みをかけ、愛剣に問い掛ける。こいつらのイタズラだと思いたいだけとも言う。
『う? なーにもいってないよ?』
『いってなーい!』
想像通りの答えが返ってきた。いや、できるなら、実はスイとセツでしたってのが一番なのだけれど。
だって、聞き慣れたスイとセツの声じゃなかった。分かってたさ。ついでに、ラルの声でも、雷姫さんの声でもない。
ってことはだ。……ってことはだよ?
「まって……まって……」
今度はハッキリと聞こえた。
声がした方を振り向くも、そこには誰もいない。あるのは、水辺とその周りに咲く花だけだ。つまり、ぼくに見えない何かがいる。それが幽霊なのか、実体のある敵の特殊効果的な何かなのかは分からない。いや、後者なら、少なからず気配がするはずだし、それなら、スイとセツが教えてくれるはず。
考えたくもないのに、頭の中では信じたくもない事実を明白にしていく。理解せざるを得ない。
『てぃー?』
『らいじょーぶ?』
……大丈夫かって?
「大丈夫なわけ、ない……!」
二人と話している間にも、不明瞭に聞こえてくる謎の声は止まらない。声は聞こえてくるのに、声の主は見当たらない。
前みたいに、実は幻術のせいでした!……という、展開にならないだろうか。知らないうちに幻術かけられて……いや、そもそも、幻術を使うような敵に遭遇していない。そして、イタズラ好きなラルも幻術使いではない。というか、こんな大事な仕事中にしょうもないイタズラするわけがない。
だったら……だったら、今の状況をどう説明できる?
幻術でもなく、スイとセツのイタズラでもなく、ラルが仕掛けた何かでもない。
どうにかこうにか、「原因は幽霊」という信じたくない事実を覆したい。が、考えれば考えるほど、それは無理であると思い知らされる。
と、ここまでが冷静に思考できたところ。思考した結果、冷静でいられるかはまた別問題である。
「────っ!!」
言葉にならない声を出し、できる限りこの部屋の隅へと移動した。もちろん、今のぼくにできるトップスピードで。
そして、フードを被り、且つ、両手で耳を塞ぐ。一応、効果はあるらしく、聞こえていた声は小さくなった。
『てぃー?』
『ぶるぶるしてるの? せっちゃ、なーにもしてないの?』
知ってるわ!! お前の冷気に震える程、ぼくは寒さに弱くない!!
……なんか、前にも似たようなやり取りをしたような。いや、どうでもいいけど!
「なんで、こういうときにラルはいないの……? いや、ぼくのせいか……ぼくの馬鹿」
知らなかったとは言え、謎のスイッチを押してしまったのはぼくだ。ラルは不可抗力でどこかへ飛ばされてしまっただけ。
どうしよう。ラルに何かあったら……ラルもお化けに襲われ……たとしても、彼女なら、ぼくみたいに怯えることはない。なんなら、真顔で退治してしまっているかもしれない。なら大丈夫か……
今は自分自身の心配をすべきか。これからどうする? 聞こえてくる声の正体を暴く? いやいや、視える目を持たないぼくにできるはずがない。今回はなぜか、声だけは聞こえてくるけれど……だからといって、対処できる手立てがない。できることなんて、この場からダッシュで逃げるくらいか?
……そうしようかな。うん、そうしよう。
これからの方針を決め、ぼくは恐る恐る耳を塞いでいた手を外した。
それと同時だった。背後に何かの気配を感じたのだ。
ううん。きっと、ぼくが一人でぐるぐる考えていたときから、少しずつ近づいてきていたのだ。それに、ぼくは気づけなかった。
ぼくが半ばパニックになっていたのもあり、武器に手を伸ばす動作にも入れなかった。
そして、その『何か』はぼくの肩にそっと触れた感触がした。そこで、ぼくの理性は恐怖に支配され、声となって爆発した。
「うわぁぁぁぁぁっ!!??」
「おおう……そこまで驚くとは。ごめんね? もしかして、私の声、聞こえてなかった?」
「え…………ら、る?」
「? うん。そうだけど」
ぼくの背後にいた『何か』は、お化けでもなく、魔物でもなく、ぼくの相棒ラルだった。
探検隊服に身を包み、綺麗なブロンドの髪もサイドでまとめている、さっきまで一緒にいたラルそのものだ。
「ほ、ほんもの……?」
「あの……なんで偽者だと疑われているのかさっぱりだけど、私だよ。お前の相棒でリーダーで美少女ラルちゃんだよ☆」
と、くるりとターンし、ウインクをする。それをぼくは黙って見ていた。数秒の沈黙後、ラルはキッと目を吊り上げた。
「黙るな! 突っ込め! 恥ずかしいだろ!?」
「ご、ごめん……色々あって、理解が追い付いてなくて」
「私もだわ!! あんなに分かりやすいボケをスルーされるとは思わなかったよ!」
そこかよ!?
……あぁ、でも、ラルに何もなくてよかった。大丈夫だろうとは思っていたけれど。
ぼくは安堵から特に深く考えず、ラルを抱き締めた。さっきまで滅茶苦茶怖かったし、不安だったのもある。
「な、何!? ちょ、ティール!?」
「……めっちゃ怖かった」
「そ、それは……その、心配かけてごめ─」
「こんなところで一人にされて怖かったー!!」
「……そっちかよ!! 私の心配しろ! お前の相棒が大量のゴーレムに囲まれてるかも~……みたいな!? そういう心配をしろや!!」
無理矢理ぼくから離れ、一気に捲し立てる。確かに、そういう可能性もあったのかと今更ながらに思った。いや、少しは考えたな。何かあるかもしれないくらいは。でも、ラルの言う具体的なものは全くで。
「ごめん。する余裕あんまりなかった」
「このやろー!!」
一人でいるときは嫌なことばかり考えてしまったけれど、ラルが戻ってきた途端、いつもみたいなくだらない話をするくらいには調子が戻った。
うん。やっぱり、ラルと一緒にいる方が心強いや。



~あとがき~
本当はもう少し書きたかったのですが、長くなりそうだったので、おしまいです。

次回、謎の声の正体とは!?

ティールの幽霊絡みのあわあわを書くのは何回目だろうか。ここまでポンコツにするつもりはなかったけどね……おかしいな。
まあ、いいか。おもしろい(?)し。

ではでは。