satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第240話

~前回までのあらすじ~
セイラが楽しそうに振り回していたり、旦那と息子の関係性を心配したりとそんな回でした。
さて、今回はがらっと雰囲気が変わって、真面目なお話をする三人にスポットを当てます。親方に真面目な話ができるのかってところは置いといてな。


ポチャ達と別行動をするピカは、プクリンギルドにある親方部屋にて、海の国の国王を交えた緊急会議を執り行っていた。本来であれば、四天王達が話し合いの場として使用する中央の島で、かつ、他の四天王達をも交えるべきである。しかし、早急に話をするべきというプクリンの判断の下、四天王補佐であるピカと、四天王の一人であるプクリン……そして、海の国の長、ブライトの三人のみで話し合いの場を設けたのだった。
「まずは、遠くまでご苦労様! 大変だったでしょ~♪ というか、護衛がいるもんだと思ってたよ?」
相手は王様であるというのに、プクリンは普段通りの話し方であった。とはいえ、これが通常である。ブライトも気にする様子はなく、小さく首を振る。
「護衛なんて連れた日には、到着が遅れてしまう。……できる限り早くというのが、そちらの希望だったはずだが?」
「うん♪ ご協力感謝だよ~♪ んじゃあ、話をしよっか。ピカ!」
「はい。親方」
プクリンに促され、ピカは二人に向かって話を始める。
「親方も仰いましたが、私からも。ここまでのご足労感謝します、ブライト王。事前に知らせた通り、本日は数日前に発生した闇絡みの事件についての共有と現状の把握。それを踏まえて考察をできればと」
「あぁ。理解している」
「あら。それは話が早くて助かりますわ」
「よそ行きピカの話し方は、いつ聞いても面白いね~♪」
「……親方、少し静かにしていてくださいませ?」
どこにいても、誰と話していてもプクリンプクリンである。それが彼の良さではあるが、今はただ単に邪魔でしかない。
気を取り直して、ピカはブライトに向き合う。なるべく、茶々入れてくるプクリンは無視しつつ、である。
「事件の概要はご存知のようですので、説明は省きますね。……結論から申し上げます。とある集落に住む全員に多かれ少なかれ、闇の侵食である症状が見受けられました。そして、我々は始まりに過ぎないと考えています」
「……ふむ。その根拠は?」
「夏祭りにおいての襲撃事件です。それには裏で手を引く人物がいました。……この先の意見は、その人物と対面した私の主観ですが……その人、その人が率いる団体が、本格的に動き出していると思われます。それが今回の事件。そして、これから似たようなことは増えていくと思います」
「なるほど。今回の件は自然発生ではなく、人為的に引き起こされた、と。ピカさんの言う、その団体とやらに」
「……えぇ。恐らく」
実際の現場を見たわけではないが、イブ達の話、キアこと、アイトの話……そして何より、紅と対峙したフォースの話を踏まえれば、簡単に今回の答えに辿り着いた。
善意な人々に闇を植え付ける実験。その実験台にザゼル達は巻き込まれた。もちろん、心の隙間にアイトの力を自分達だけで使えたら、なんて欲があったために、利用された。しかし、そのような欲はある種、誰にでもある感情の一つでしかない。
「誰でも持つ欲が何倍にも膨れ上がり、その欲は悪へと染まる。……ブライト様、これは多分、陸だけの問題ではないのでは?」
「……正解だ。我が国やルフトが治める空の国でも似たような話は聞く。……理由なき暴動、事件がな。幸いにも死者がいたという話は聞かないが……このまま放置するわけにもいかない。……しかし、だ。この件に関して、解決法はあるのか?」
その問いに、ピカは答えられなかった。
簡単に言うのであれば、元凶を叩けば、この人為的な闇の侵食は収まる。しかし、それが簡単でないのは、この場にいるピカが一番分かっていた。
「闇に打ち勝つには強い心を持てー!……みたいな、今時びっくりの根性論が一番の有効打なんだよね~♪」
沈黙を破ったのはプクリンだった。いつもみたいに明るく前向きな声で、何でもないように話した。彼の言葉にブライトは小さく笑う。
「なるほど。我を強く保て、か。分かりやすい対処法だ」
「でしょ~♪ 自分に自信を持ち、欲に負けない。光を失わない。そんな夢みたいな、希望論みたいなことが一番の特効薬。……あは。一番、作るのが難しいお薬だね」
「違いない。……きっと、それを作れる人はこの世にはいないだろう。誰でも欲はあるからな」
「そだね。きっと、これには終わりがない。……だから、むずかしー問題だと、ボクは思うなぁ」
トップに立つ二人には、多くの人々を守る義務がある。だからこそ、対処法がない今は歯痒く思うのだろう。希望を捨てるな、という夢物語だけでは意味がない。
何か、行動を起こさなければ、負の連鎖は止まらない。終わらないのである。その連鎖を断ち切るには、どうすべきなのか。ピカはずっとそれを考えていた。夏祭りの際、紅と対峙したそのときから、ずっと。
元凶を叩く。その方法を。
「ピカ」
「……はい?」
「君は、どうするつもりだい?」
「どう、とは」
「過去二回、この世界を救った英雄は、どうするのかなって。……ボク達は、期待してもいいのかな?」
「へ? 期待……?」
質問の意図が見えてこず、ピカは思わず聞き返してしまう。それにプクリンは答えなかったが、代わりにブライトの苦笑が返ってきた。
「それは大きなプレッシャーを背負わせる問いではないか? とは言え、私からも問おう」
「は、はい!?」
「今回の件……そして、これには大きな何かを感じる。数年前に起こった……世界を変えてしまうくらいの、大きな何かを。その再来を思わせる。……しかし、過去にそれを覆したのは貴女だ。そんな貴女に私達は希望を託してもいいのかな?」
「……私に、ですか?」
「そう。そして、ピカさんが信頼する仲間に」
ピカは自信を持って、もちろんですとは言えなかった。過去のそれらは、対処法を知っていたから、それをやり遂げる思いで貫き通しただけのことだった。しかし、今回は何をすべきなのか導いてくれる人はいない。かつてのパートナーだったジュプトルや、夢の番人であるクレセリアのような助っ人なんていない。
それでも、ピカのやろうとすることに変わりはない。それをずっと思案していたのだから。
「私は英雄ではないですよ。そんなに強くないですから。……ないけど、黙って事の顛末を見届けるつもりはないです」
「ふふ♪ ピカらしいね~♪」
「うるさいですよ、親方。……ブライト様。もう少しだけ、考えさせてください。この先の行動については……まだ、まとめられなくて」
「いや、いいんだ。少し、意地悪な問いをしてしまった。……だが、それほど、貴女に期待しているということを知っておいて欲しい。過去の偉業とは、そういうものなのだ」
昔にやったから、今回もと期待するのは普遍の心理なのだろう。状況も、環境も何もかもが違ったとしても、それを理解するものはいない。
「分かっています。……私には頼もしい仲間がいますから。それだけは、何があっても変わりません」
そして、ピカの抱く思いにも、何ら変わりがないことも、彼女自身がよく分かっていた。



~あとがき~
お? なんか真面目だぞ??

次回、話は戻りまして、イブ達へ!
セイラの面倒を見るポチャ達です。

さらっと流したけど、この辺りからなんとなく物語は動き始めてる感じするね。メインの方な。
いやぁ……動くの遅くね??

ではでは!