satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第242話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールが一人であわあわしているところをお見せしました。
というか、一高校生がお化けにあわあわするってどうなんすかね。……前にも言ったかな?(笑)
今回から視点は戻ってラルちゃんです~


《L side》
「あっ! そう言えば……ラル、どこに行ってたの!?」
何かにビビったり、私との再会を泣く程─実際は泣いてないが─喜んだりしていたティールだったが、突然、ハッと思い出したように問い掛けてきた。
「どこって……どっかの誰かさんが押したスイッチのお陰で、入口まで戻されたのよ。正確には、ここのフロアの入口か」
「う。ごめ……え、でも、なんでこんなに早く戻れたの?」
「あぁ……どっかのアホが押したものと同じものが入口にもあったのよ。だから、短時間で戻れた……試してみようか?」
「あの、君、結構根に持ってる……?」
それなりにな! だって、相棒の危機かもしれないときに呑気に隅っこに座り込んでたのだ。恨まない方がどうかしている。
私は飛ばされる前に立っていたところへと戻り、床を指差す。
「ここに描かれている魔法陣が飛ばされた先にもあったの。見たことがない仕掛けだけれど、多分、場所固定のワープスイッチみたいなもんかな」
予め指定された場所へと移動できるみたいなものだろう。ダンジョンにしては珍しい罠があるものだ。
「なんなら、試してみる?」
「え」
私は困惑しているティールの手を引いて、二人で魔法陣の上に立つ。そして、先程、ティールが盛大に転けた辺り目掛けて、お手頃な石を投げてみる。
石が地面に落ちる音とカチッとスイッチの押されたような音が聞こえたところで、視界が暗転。一瞬にして、入口へと戻ってきた。
「うわ……本当だ」
「でっしょー? んで、ここのスイッチは~……これだ」
再び、スイッチを押して、白い花が咲く場所へと戻ってきた。まあ、これに何の意味があるのかは分からない。また最初からやり直しかよー!……と探索者をイライラさせたいだけの罠なのだろうか。或いはここへショートカットできる裏道なのだろうか。
……うーん。両方かもしれない。そもそも、入口のワープに気づかなければ、やり直しになるのだ。見つけられたらラッキーくらいなのだろう。多分。
「……で? 蒸し返すみたいで悪いけど、ティールはどうして、何にもないところでぶるぶるしてたわけ? 怖いとか何とか言ってたけど」
「はっ! そうだよ! 声! 声が聞こえてきたんだ! あのアンナさんの話のやつみたいなのが!」
興奮気味に私の肩を掴み、ティールの身に起こった奇妙な現象の説明を受けた。
要約すると、私とはぐれた直後、誰もいないはずなのに声のみが響いたと言う。それを彼は幽霊の仕業だと思って、ビビってたとのこと。
「幽霊ねぇ……そんな気配ないから安心しろ」
「でも、はっきり聞こえたんだよ……?」
ティールが嘘をついているとは思わないが、今は特に何も聞こえてこな……
──おま…………しは……つけ──
……おっと?
「ほらほらほらー!! さっきとは違うやつ! 別の幽霊だよー!!」
いや、だから、何も感じないってば。
そう説明しても、確かに声は聞こえている。その事実だけで、ティールは完全に冷静さを失っていた。がっちり私をホールドして、ぶるぶる震え始めている。ついでに、声を聞かないためか、永遠に喋り始めている。
めっちゃ、動きにくい……! そして、うるせぇ!
あぁ、もう。動けないのなら、頭を動かすしかないか。
声が聞こえてきたとは言え、やはり幽霊の類いの気配は全く感じない。つまり、これは幽霊の仕業ではない。ならば、なんらかの仕掛けがあるはず。
では、私達はここで声がする前、何をしたか。
答えは、ワープスイッチを押した、だ。恐らく、これが原因。つまり、ここでティールや私が押したスイッチは、罠を起動させるだけでなく、声を再生するみたいな役割もあるのだろう。
では、あのスイッチが再生ボタンだと仮定する。ならば、どこかに再生機……スピーカーのようなものが存在するはずだ。しかし、それらしきものはない。……ここにあるのは、少しの水辺と白い花だけ……と、いうことは。
ふむ。……信じがたいが、スピーカーの役割を果たせるものは、あれしかないという結論に至るわけか。
私から離れないティールを引きずりつつ、私は白い花に近づいた。その花をよくよく見てみれば、トランペットの口に似ている。蓄音機の部分というか、音を出す部分に。
ティール、一回黙れ。そして、ここにしゃがんで、よく聞いとれ」
「うん……?」
私とティールはこの白い花の近くにしゃがみ、そっと耳を澄ます。
『──お姉さま! みてて、みてて~!』
花から無邪気な少女の声が聞こえてきた。それに続くように、女性の声も聞こえてくる。
『セラちゃん!? そんなに近づいたら危ないよ! って、これはー!!』
『お前ら、少しは落ち着け!』
と、二人の行動を制止するような男性の声が聞こえて、この花からは何も聞こえなくなった。
「……えっと?」
「これが喋ってたってことよ。あ、いや、違うな……この花が聞いていた声を私達が再生させた、と言った方が正しいのか。多分、そういう性質を持つ植物なんだと思うよ。録音再生できる、花みたいな?」
「んな、機械みたいな花が実在するの……?」
んなこと言われても、実際に目の前にあるから信じろ。よかったな、幽霊じゃなくて。
「そ、そうだけどさ。っていうか、今聞こえてきた声の主って……父上と母上だよね?」
私は無言で頷く。
スイちゃんとセツちゃんがブライトさんとセイラさんとも来たことがあると言っていたから、そこに驚きはない。驚きはないが。
「声にあった『セラ』ってのは、理事長の愛称だったはず。つまり、ブライトさんとセイラさんは、当時幼かった理事長とここへ来ていたってことかな」
ってことは、スイちゃんとセツちゃんは理事長ともお知り合いの可能性がある。ツバサちゃんが二人の声を聞くのだ。母親である理事長に聞けてもなんらおかしくはない。
ティールも同じことを考えたのだろう。花から目線を外し、自身の腰に帯剣される二人をちらりと見下ろす。
「……おい、スイ、セツ。お前ら、んなこと一言も言ってなかったよな? え? まさかとは思うけど、理事長とも知り合い……?」
『うゆ。しりあい!』
『しりあい!』
「ぼくが学園に入学してから一回も聞いた記憶がねぇ……!!」
「仕方ない。スイちゃんとセツちゃんだもん。多分、聞かれないと言わない」
「そうだけど! そうなんだけど!!」
まあ、真面目なティールが、理事長と会うときに剣であるスイちゃんとセツちゃんを連れるわけがない。だから、今までは感動の再会場面がなく、二人もわーわー騒ぐことがなかった……と、思う。多分。
さて、話を戻そう。
ティールがびくびくしていた声の正体は幽霊ではない。この花が記録した音声であった。ついでに、声の主は若かりし頃のティールの両親とセラフィーヌ理事長だった、と。
「謎が解けてよかったね。ほら、そろそろ先に進もう。思いの外、ここで時間取られたわ」
「はーい」
……そういえば、この花の再生方法は分かったが、録音はどう行っているのだろうか。ブライトさん達の音声を聞くに、この花の存在に気づいていた素振りはなかった。つまり、また別に方法があるのだろう。まあ、分かりやすい仕掛けと言えば、ワープスイッチが押されたときに、再生と録音を同時に行っている、とか。
仮にそうなると、私の相棒の醜態がどれかの花に記録されている可能性がある。……ってのは、言わないでおこう。ティールの尊厳に関わる。いや、やつに尊厳があるかは置いておいてだな。
私はあの不思議な花について考えるのをやめた。これ以上考えても、憶測の域を出ない。あれこれ考える必要はないと思ったのだ。あんまり、意味ないし。
「それにしても、ブライトさんとセイラさん、随分と理事長に振り回されてたね?」
「ん? あぁ……そだね。そういう話はルーメンさんから聞いてたけど、なんか予想以上だったな。父上、結構苦労してたんだなって」
「何て言うか……絵に描いたようなお転婆少女って感じだったね。理事長」
「あ、はは……うん。そうだね」
理事長的には、このお転婆時代をどう思っているのだろう。こんな時代もあったと笑って流せるのか、恥ずかしいと顔を赤らめるのか……うーむ。聞いてみたいが、そんな機会があるはずもない。……とりあえず、保留で。
思いがけない収穫(?)もありつつ、私達は第一目的地である、中間地点へと歩を進めた。
ここまで長かったんだし、目的地まで、あと少しだろう。ようやく、一つ目の依頼が果たせそうだ。



~あとがき~
単なる通過地点のはずなのに、ここまでが長いな!?

次回、中間地点到着!
ラル達は一つ目の依頼を無事に達成できるのか?

このお花について、相方と色々話して設定もある程度決めてるんですが、公開するところがないですね。残念。
全部終わって、ルーメンさん辺りが話してくんないかな……まあ、そんな機会も必要性もなさそうですが。

ではでは。