satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第282話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界な物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、スカイVSイグ&ソイル戦、後編をやりました。以上。
今回はその続きです。反省会的な。お話し会的な。そんなんです。


《L side》
嫌らしい笑顔を浮かべているであろう兄さんの顔を見たくないのか、単純に体を起こすのが億劫なのか。よく分からない感情のまま、私はティールの上から動けずにいた。
「ラ、ラル? 大丈夫?」
動かない私を心配してか、ティールがそっと私の背を叩く。それに対し、私はティールの胸に顔を埋める。
「だいじょばない」
「えぇ!? どこか痛い? 怪我した?」
「そうじゃなくて、気分の問題」
「……は?」
完全に呆れたような声が聞こえた気がする。心配して損した、みたいな。そんな感じ。
「えーっと、なんでぼくの上に降ってきたの?」
「イグの馬鹿兄貴に蹴られたからだよ」
「馬鹿兄貴て……でも、うん。色々と理解はした」
くっそが! 最後の選択をした私自身にもムカつくけど、イグさんの蹴りもムカつく!! わざわざ、ティールの上に乗っける意味よ! なくない!? なんでこうなった!
「わざとやりやがりましたね、イグさん」
「うん? 派手に吹き飛ばされるよりましだったろ?」
顔は見てないけど、声がニヤついてる! ニヤニヤしながら言ってる!!
「それに、ティールの上に倒れたのは偶然だって。たまたま、ティールがいたところに蹴っちゃっただけだ。気にすんな♪」
「わざとらしい言い訳すんな!! 嘘臭いんだよ!」
私は上半身を起こし、ニヤニヤ意地悪兄さんを睨み付ける。が、意地悪兄さんは怯みもせず、面白そうに笑うだけで。
「言い訳? 俺は事実を言ってるだけだぜ~♪」
その態度が嘘臭い! わざとらしいわ!!
「……あの、ラルさん? 口喧嘩はいいけど、そろそろぼくから降りてくれてもいいんだよ?」
「あ、ごめん」
私がティールの上から退くと、彼もまた上半身を起こし、ほっと息を吐く。
ティールこそ、怪我はしてない?」
「うん、大丈夫。ラルが倒れてきたときはびっくりしたけど、それだけだよ」
なら、よかった。
「ほら、二人とも立てるか?」
相変わらず、ニヤニヤしたまま、私達に手を差し伸べてくる。何がそんなに楽しいんだ。
「ありがとうございます、イグさん」
それを気にせず、素直に手を取るのがティールだ。よくもしれっとできるものだ。感心する。
「ほれほれ、ラルも~♪」
「その顔やめてくれたら、素直に助けを求めますけど」
「照れんなって♪」
照れじゃねぇよ。拒否だよ。
私の気持ちなんて露知らず。イグさんは半ば無理矢理、私の手を掴み、その場に立たせる。誠に不本意である。
ちなみに、これらのやり取りはイグさんとの模擬戦後、よくやってるやり取りでもある。誠に不愉快である。
「リア、いつものお茶を頼むわ~」
「はいはい♪」
離れたところで観戦していたリアさんに向かって手を振りながら、リアさん特製、体力回復茶……ルポ茶をお願いしていた。
この、なんとも思ってないみたいなお兄ちゃん特有の余裕な反応もムカつく。
「ほんっとうに楽しそうにやりやがって! この行為込みで楽しんでるんですか!」
「んなことないぜ~♪」
嘘つけ!!
痛くも痒くもないだろうが、私は少しでも反発がしたくてぽかぽかとイグさんを殴る。が、イグさんはぽかぽかと殴られてても全く気にせず、リアさんの待つ方へと歩き出す。
少しは反応しろよな……!
「ほら、ラル。そんなことをする前に雷姫さん拾わなくていいの?」
転ばされた際に落としてしまった武器を拾いながら、ティールが呼び掛ける。私も倒れるときに雷姫から手を離していたから、その辺に転がったままだ。
「しながらでも拾えるからいい! 雷姫! 戻れ!」
『我は犬になった覚えはないがの~? まあ、よいが』
何かぼやきが聞こえた気もするが、きっと気のせいだ。音も立てず、雷姫は私の中に戻る。
「もう、雑だな。……あ、そうだ。イグさん。試合中にラルに言ってたやつ、何だったんですか? 終わったら話すって」
「ん? あー……そうだったな。ラル、ここに来てから朝練に参加してるんだって?」
「え……そうですね。たまに、参加させてもらってます。あ、流石にルーメンさん相手は一回しかしてませんよ」
突然の質問にぽかぽかと殴っていた手を止める。質問の意図が分からなかったのだ。
え? 参加してる割には経験値上がってないなとかそういう嫌味を言いたいの? は?
「たまに、か。じゃあ、セラおばさんには会ってないのか」
「……セラフィーヌさん? 朝練時に?」
朝に会ったことはないけど……昼間なら廊下ですれ違いざま、挨拶程度は何度か交わした気がするが。
「あら、セラおばさまがいるのなら、ラルちゃんは機会を見て、ご指導を受けた方がいいかもね?」
私にルポ茶を差し出しながら、にっこりと微笑む。頭上に「?」を浮かべつつも、とりあえず受け取った。それは隣のティールも同じで、小さく首を傾げる。
「……ラルが、ですか?」
「えぇ。ラルちゃんはスカイのリーダーであり、頭脳担当。司令塔でしょ?」
一応は、そうですね。
「だが、ラルは他のメンバーと比べて体力ない方だろ? それがさっきの試合でも仇となったわけで」
……そ、そうですね。
でも、あれよ。男子はもちろんのこと、同姓でも、体力お化けなともや、長時間飛行し続ける体力持ちのクラウと比べられても困る。私は平均的な女の子ってだけです。……多分。
「もちろん、ラルちゃんが女の子ってのもあるわ。でも、前々から体力をつけた方がいいってイグに言われてたでしょ? さっきも言われてたし」
言われましたね。耳にタコができるくらいには言われ続けてますね。
「体力をつけるのが難しいなら、いっそセラおばさまから指導を受けた方がいいんじゃないかなって♪ おばさまは私の師匠だし、ラルちゃんとも戦闘スタイルが似ている部分はあると思うわ」
……え、リアさんのお師匠? セラフィーヌさんが?
私とティールが驚きで言葉を失っている中、イグさんが「ちなみに」と前置きして、話を続けた。
「探検隊を始める前、俺はルー爺から指導を受けてたぜ? あれって中学の頃か」
「えぇ。探検隊のイロハと戦闘を教わっていたのよね♪」
こわ。
イグさんがなんとなーく、ルーメンさんに似てる理由はそこにあるんだろうか。
「え、と……リアさんはともかく、イグさんは父親である団長さんから教わってるものだと思ってましたよ、ぼく」
「あ~……もちろん、親父からも教わってたぜ? だから、俺の場合はルー爺にも、だな」
やだ。二重生活しんどいやん。
「親父には武器の使い方を教えてもらって、ルー爺にはその応用を兼ねたスパルタ教育をね。そいや、親父も混じってたときあったな~」
イグさんにしては珍しく、遠くを見つめるような表情で語る。それはリアさんも似たようなもので、少し困ったように笑う。
「あの頃のイグ、しょっちゅうルー爺様とフェゴおじさまにコテンパンにされてたわねぇ。……ま、私も人のことは言えないけれど」
リアさんも、ということは……セラフィーヌさんにってことですか?
「そうなの。でも、コテンパンにというよりは……転がってた、かしらね? おばさま、避けるの上手なの」
あぁ、なるほど。攻撃が当たらなくて、地面に転がされていたってことか。私達もリアさん相手に戦っていたときは似たようなことになっていた気がする。
リアさんの二つ名は『舞姫』……どんな攻撃も華麗に避けてしまうからそう呼ばれていた。……そんな舞姫の師匠がセラフィーヌさんだった。
あぁ、そういうことか。
二人がセラフィーヌさんの指導を進める理由が分かった。
今の私の戦闘スタイルはリアさんから学んだものが多い。もちろん、今では私のオリジナルも多く含まれてしまっているから、昔のリアさんそのものとは言えないけれど。私の根底にあるものは、リアさんに教わったものがあるのもまた事実。
つまるところ、リアさんが私の師匠とも言えるわけだ。しかし、今のリアさんは過去に負った怪我が原因で武器を使って戦うことはできない。口でアドバイスはできても、昔みたいに、戦闘形式で指導することはできないし、実際にやって見せることもできないのだ。
そこで、リアさんの師匠、セラフィーヌさんが出てくるわけだ。リアさんに戦闘を教えたセラフィーヌさんなら、私の先生にぴったりだとイグさん達は考えたのだろう。
理屈は分かった。だが、それを受け入れるかは別問題だ。
当然だが、イグさん達とセラフィーヌさんの関係と、私とセラフィーヌさんの関係は違う。
前者は知り合い同士。後者は生徒と理事長。大した関係もないのに、指導を乞うのはどうなんだろうか。知らない相手ではないが、気軽にお願いできる人でもないだろう。というか、私がそんなタイプじゃねぇ。
剣技大会の賞品みたいな理事長の講義を受けられるみたいなやつがあるなら、また話は変わるけれど。生憎、それも私は当てはまらない人間である。
そもそも、セラフィーヌさんは暇じゃないだろう。顔見知り程度の私ごときに時間を割いてもらうのもなんだかなぁ。
「まーた余計なこと考えててんな~?」
何を思ったのか、イグさんが私の頭をぐしゃぐしゃっと乱暴に撫でる。
何が余計なことなんだよ。当然の思考回路ですけど!?
「うふふ♪ 色々考えちゃうのはラルちゃんらしいわね~♪」
考えるよね!? 考えるような相手だと思いますけどぉ!? え、私が間違ってるの? 私がおかしいの?
誰かに助けを求めたくて、ティールに目配せをする。それに気づいた彼は苦笑ぎみに助け船を出してくれる。
「ラルの気持ちも分かりますよ。ぼくも師事を受けるのは恐れ多いと思ってしまいます。セラフィーヌさんもお忙しいでしょうから」
「いやぁ? きっとセラおばさんなら大喜びで引き受けてくれると思うぜ? なぁ、リア?」
「えぇ。忙しいからこそ、ラルちゃんの申し出はおばさまにとって、願ってもないものだと思うわ」
ただでさえ忙しいのに、その上に別案件持ってこられるのは厄介では? 嫌がらせではなかろうか?
「あら、イグくんにリアちゃん?」
私達の背後から何やら聞き覚えのある声が。
声のした方を見てみれば、そこには片手にスケッチブックを持ち、こちらの様子を窺うセラフィーヌさんがいた。
……は、セラフィーヌさん!?
「セラおばさま、先日ぶりです♪」
「俺は久しぶりっすかね、セラおばさん!」
セラフィーヌさんの姿を見て、姿勢を正す私とティールとは違い、イグさん達はフランクに話しかけていた。そりゃ、付き合いの長いなら、そうもなるが。
「そうね。イグくんとは夏休み入ってからあってないし、リアちゃんとはこの前、学園で会った以来かしら。……あら? もしかして」
にこやかにイグさん達と会話を弾ませるのかと思ったら、セラフィーヌさんの視線がこちらへと移る。
「二人とも、ラルさんとティールくんの相手をしていたのかしら?」
「そうっすね♪ 主に俺がですけど。さっきまで二人相手に模擬戦してたっす」
「あらまあ、そうだったの♪」
ここは空気を読んでいなくなるのが正解か? 私達はこれで失礼しますとか言って、消えてしまってもよろしいか!?
「……そういえば、さっき私の名前が聞こえた気がしたんだけれど」
「あ、それはっすね~……あ、ちょうどいいや。実はおばさんに相談があって」
!? やめろやめろ!! さっきの話をするんじゃない!!
慌ててイグさんの袖口を引っ張るものの、完全に無視され、私の指導云々のくだりを簡潔にだが、全て話してしまう。
「わあぁぁ!! イグさんの馬鹿! なんでそういうことを本人の許可無しにするんだぁぁ!?」
「いや、お前に任せてもおばさんに聞く気ないだろ。俺が聞いた方が早いじゃん?」
そりゃ、遠慮ってもんがあるからね? いや、そういうことではないよね!
「私は構わないわよ」
「…………へ?」
驚きと困惑が隠せないまま、セラフィーヌさんを見た。セラフィーヌさんはほわほわした笑みを浮かべ、話を続ける。
「丁度、服飾の仕事も落ち着いてきて、時間に余裕がで来てくると思うわ。それに、明日から私もギルドの朝練に参加するつもりなの。その時でよければ、ラルさんのこと見てあげられると思う♪」
「え、いや、でも……セラフィーヌさん自身の鍛練もあるのに、私なんかの指導までよろしいのですか?」
「大丈夫。誰かに物事を教えるのは嫌いじゃないのよ?」
あ……そ、そうですか。
「そいや、セラフィーヌさんって、理事長になる前は普通の教師だったらしいよ。だから、何かを教えるのは得意なんじゃない?」
……そ、そうなんだ?
いや、それはそれだ。教わる側の気持ちの心配は誰がしてくれるの。
「それに……私自身もちょーっと溜まってきたから、発散したかったのよね」
発散? 俗に言うストレス発散的な話だろうか?
セラフィーヌさんはほうっとため息をつき、片手を頬に当てる。
「本当はキマちゃんやワイちゃん……あとはぐっちゃん辺りにでも会いに行きたいのだけれど、流石にそこまでの時間はないのよね」
なぜか頬を朱に染めつつ、聞き慣れない名前を口にする。セラフィーヌさんの知り合いだろうか。
どこかに思いを馳せるように切ない目をしていたのだが、気持ちを切り替えるためか、パンッと両手を叩き、ニッコリと笑った。
「でも、指導って形でも発散はできるから。とっても嬉しいわ♪」
さ、さいですか?
「ラル、セラフィーヌさんが今、羅列した名前は誰なんだろうね」
「知らん。知り合いなのは確かだと思うけど」
ストレス発散として体を動かしたい。そのために、キマちゃん、ワイちゃん、ぐっちゃんとやらが最適……だが、指導って形でも発散は可……戦闘がしたい、とも取れるのか?
なら、お三方は……戦闘相手として最適である、と言えるのだろう。
友人の名前なのか。精霊の名前なのか。はたまた……
「あ~……知り合いっつーか……セラおばさんが言った三つの名前、全部敵モンスターだ」
「「は?」」
「えぇっと……キマちゃんは『キマイラ』でワイちゃんが『ワイバーン』……ぐっちゃんは『グリフォン』だったかしらね」
全部、大型ボス級モンスターですが!?
そんな奴らに会いたいって、どんだけ戦闘狂なんだ。怖すぎるが?
そんな人の指導を受ける私は存命できるのか……恐ろしくなってきた。
明日からの朝練を想像して、震える私を慰めるようにティールが優しく背中を撫でてくれる。いや、むしろ「ドンマイ」という哀れみすらも感じる。
……色んな意味で辞退したい。辞退したい!!
「じゃあ、交換条件っていうのはどう?」
私の表情を見て、どう感じたのか、セラフィーヌさんがとある提案を持ちかけてきた。
「私がラルさんの戦闘指導をする代わりに、ラルさんは私のお仕事の手伝いをする……そういう交換条件。丁度今、手こずっている仕事があって、それを手伝ってほしいの」
それならお互い損はない、のだろうか。……いや、セラフィーヌさんが私より得しているような気もするが、それはそれか。
「まあ、手伝うのはいいですけど……私にできることでしょうか?」
「えぇ、もちろん。全然難しくないから安心して?」
「それなら……じゃあ、はい。分かりました。明日から、お願いします」
「ありがとう! こちらこそ、よろしくね?」
……明日の朝、怖いです。先生。



~あとがき~
長くなったけど、きりのいいところまでやりたかったんや。許してくださいっ!

次回、朝練とセラフィーヌさん。

本文が長くなったので、ここはさっさと終わります。あでゅー!

ではでは。