satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第283話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で特訓してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとセラさんの特訓が約束されちゃいました。いえーい。
ってことで、始めるぜぃ。


《L side》
イグさんと模擬戦を行った次の日。
つまり、約束の朝を迎えてしまったわけで。いろぉんな意味で、恐怖しか感じていないのだが、お願いしますと言った手前、やっぱりいいです、なんて言えない。
……ここは腹を括るしかないのだろう。
未だ夢の中なティールとしーくんを起こさないようにそっとベッドから抜け出した。そして、動きやすい服装にパパッと着替え、朝練の行われる中庭へと向かう。
中庭にはすでにギルドメンバーの方々が集まり始めており、その中にはツバサちゃんとリランの姿もあった。
「ラルさん! おはようございますっ」
「あんあんっ!」
「おはよう、ツバサちゃん。リランも」
朝なのに滅茶苦茶元気なリランの頭を撫でてやりつつ、ぐるりと辺りを見回してみる。
どうやらまだセラフィーヌさんの姿はないらしい。まだ来ていないのだろうか。
……昨日はイグさんに半ば強引に約束を取り付けられて、あれよあれと当日を迎えてしまった。あの人の押しに弱いとはいえ、本当によかったんだろうか。
「ラルさん、どうかしました? もしかして、調子悪いんですか……?」
「くぅ?」
いけない。そこまで深刻そうな表情をしていたつもりはなかったのだが、ツバサちゃんとリランに心配をかけてしまったらしい。
「うんにゃ。体調は良好だよぉ?……心配してくれてありがとうね」
うん。体調は、な? 精神的には昨日から休まってない。
とはいえ、そんな話を彼女にしたところでなんの意味もないので、とりあえず笑顔でツバサちゃんの頭を撫でてあげる。
「えへへ……大丈夫なら、よかったですっ♪」
久しぶりに撫でられて嬉しいのだろうか。幸せそうに笑うツバサちゃんを見て、私までなんだかほんわかしてしまう。
「あら、朝練にはまだ少し早い時間だけれど、二人とも起きるのが早いのね?」
「ツバサー! なんで先に行っちゃうんだよ! 部屋まで迎えに行ったのに!」
動きやすそうな天狗装束風の和服姿のセラフィーヌさんと、ツバサちゃんと色違いのパーカーを着たツルギ君がこちらへとやって来た。
「あわわ……ごめんね、ツルギ! リランが早く行くって催促が凄かったから、無視できなくて早めに来ちゃったの」
ぐぬぬ……リランの仕業か」
妬ましそうにリランを睨むが、当の本人─人ではないけど─は理解していないようで、こてんと首を傾げている。
『そういうところが駄犬の駄犬たる所以じゃの』
と、どこか呆れたように雷姫が呟く。これを通訳する必要はないと思うので、私の中に留めておこう。
私はセラフィーヌさんの方へ向き直り、ぺこっと頭を下げた。
「おはようございます、セラフィーヌさん。今日はよろしくお願いします」
「おはよう、ラルさん。こちらこそ、今日からよろしくね?」
未だに私なんかのために時間を割いてもらうのは申し訳なさが凄いんだけれど……いや、セラフィーヌさん自身は「いいわよ♪」なんて言うけれどね? 言うけれどもね??
「何度も申し訳ないんですが、本当に私なんかのために時間を使ってもいいんですか……?」
「もちろんよ。それに、こうやって生徒に戦闘を教えるのは久しぶりだから、とっても楽しみにしてたの♪ だから、気にしないでちょうだい?」
気にしないでってのは無理だと思うけど……でもまあ、これ以上、聞くのはやめよう。
「あ、でも、少し待っていてくれる? ここ最近、デスクワークばっかりで体を動かすのが久しぶりなの。準備運動をしてからでもいいかしら?」
「はい。終わるまで待ってますので、ゆっくりどうぞ」
セラフィーヌさんがどのように指導するかは分からないが、いきなり激しい運動は体を痛めるだろうし、少し位は慣らしておいた方がいいに決まっている。
「ふふ、ありがとう。じゃあ、早速行ってくるわね」
……ん? 行く?
セラフィーヌさんがくるりと方向転換すると、離れたところにいると思われる人物に向かって、大きく手を振りながら駆け出していく。
「お父様ー!! ちょっと準備運動に付き合ってー!!」
準備運動相手にルーメンさんチョイスなの!? 嘘だろ!
『親があれならば、子もまた然りなのだろ』
……そういう、ことなんだろうか。
願わくば、我が愛しの天使、ツバサちゃんに戦闘狂の片鱗が現れないことを祈る。ツルギ君はもう手遅れのような気がするので、気にしないでおく。

「お待たせ! それじゃあ、始めましょうか」
状況を説明するのも疲れる程、激しい激しい『準備運動』を終えたセラフィーヌさんは、なぜかとっても元気になって帰ってきた。
ルーメンさんとセラフィーヌさんの準備運動はフィールドに大きなな爪痕を残しつつも、無事に終了した。ちなみに、フィールドはルーメンさんがきちんと直しているので、他メンバー達の朝練にはなんの支障もない。
ツバサちゃんとツルギ君も私達とは別のところで朝練をするようで、私達の近くにはいない。つまり、私の近くにはセラフィーヌさんと黒猫の精霊、ネロしかいない。
こうやって一対一ってのも貴重な体験である。なんなら、今年入って始めてかもしれない。
「? ラルさん、どうかした?」
「いえ、なんでもないです」
「そう? なら、まずは……ネロ、お願い」
セラフィーヌさんの言葉にネロは一鳴きして答えると、私の目の前でちょこんと座る。そして、ちらりと腰に下がる雷姫を見た。
「にゃお」
『……む?』
「にゃ~……にゃあ、にゃあん」
『それは……我に問うておるのかえ?』
雷姫の問いかけに、ネロはニコッと笑って頷く。
「にゃ~お」
『ふむ。……まあ、一度だけと言うのであれば、我が許可してやる。貴様はあの駄犬より賢いようだ』
ネロはリランと比べられたことを鼻で笑い、ふいっとそっぽを向く。が、すぐにちらりと雷姫を見た。
『ふふん♪ なかなかに分かっておるでないか。黒猫よ、主とは話が合うようじゃ』
「にゃっ!」
よく分からないけれど、意気投合していて何よりだよ……なんの話をしているのか分からないけれど。とりあえず、これからの訓練に必要な話だろう。多分。
『待たせたな、マスターよ。早速じゃが、そこの黒猫を抱け』
「へ? いきなり何を」
『理由はすぐに分かる。早うやれ』
なんなんだ……えぇっと? ネロを抱き上げればいいの?
「あの、セラフィーヌさん。ネロちゃんをだっこしても……?」
「えぇ、いいわよ。むしろ、こちらからお願いしたいわ♪」
どうやら、状況を理解できていないのは私だけらしい。ネロをだっこしたとして、何が起きると言うのだ。雷姫に許可しないと駄目ってどういうこと? え、色んな意味で怖い。
困惑しつつも、だっこ待ち体勢のネロちゃんをそっと抱き上げる。
こうして触るのは初めてだが、見た目どおりとっても綺麗な毛並みをしている。長毛種ではなく、短毛種なのだろうか。毛並みはふわふわでなく、さらさらとした肌触り。もふもふマスターとしては、これもまた癖になりそうである。
「にゃあ」
「? ネロ?」
ゆっくりと私の顔に近づいてくる。愛玩動物がよくやる甘えの行動なのかと思って、特に何もせずに待っていると、口許に何かが当たる。同時にもふもふした物が当たったような。
『黒猫、本当にギリギリを攻めるとはな』
「なふん」
『そこはパートナーの物だからの。いくら黒猫といえど、我が許さん』
は? 何の話だ。
『マスター、安心せい。唇にされたわけではない。故に、ふぁーすときす、なるものに数えんぞ♪』
いや、そんなに得意気に言われましても。
……て、ファーストキス!?
「ネロ、どんな感じ?」
「なう~ん」
「ふむふむ。……じゃあ、予定通りのコースでいきましょう♪」
いや、置き去りにしないでください!? 誰か、状況を説明してくださいませ!
『マスターは今、黒猫に接吻をされたんじゃ。身体能力を測るために、な』
接吻……キスか。だから、ファーストキスとかわけの分からないことを。
しかし、ネロが雷姫に話しかけた理由は分かった。
身体能力を測るため、ネロは何かをしたのだろう。恐らく、自身の魔力か魔法か何かを私に施す必要があった。それをするために、予め、私の中にいる雷姫に許可を取ったのだ。私に得たいの知れない『何か』が入れば、雷姫が過剰に反応するから。
『さっきも言うたが、ふぁーすときすに数える必要はないぞ。唇にされたわけでもなし、黒猫もメス。問題なかろ?』
「心配要素はそこか!? 馬鹿なの、雷姫さんはお馬鹿さんなのかなぁ!? 猫ちゃんにキスされたくらいでファーストキスカウントしないからね!? つーか、私は気にしないけど!?」
『マスターはしなくとも、パートナーはするやもしれんじゃろうて』
知るかよ! あいつにとってキスなんて慣れた行為だろうし!?
「ごめんなさいね、ラルさん。ネロが急にキスなんてするからびっくりしたでしょう?」
「あぁ、いえ。……確かに驚きはしましたが、不快ではないので大丈夫です。むしろ、何度されても私にはご褒美みたいなものなので、お気になさらず」
可愛いもふもふにキスされた、なんて嫌がる必要がどこにある? 否である。むしろ、受け入れるべき行為だろう。何度だって来い!
『マスターのそういうところも大概じゃの』
「? 何の話?」
私の問いに雷姫は答えず、スッと消えてしまった。何だったのだろう?
「……さて、これで準備は整ったわね。指導の方を始めましょう♪」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
「こちらこそ♪ さあ、ネロ? よろしくね」
「にゃお!」
……また、ネロ?



~あとがき~
え、ラルとセラさんの特訓話、二つに分けなきゃあかんのん??(滝汗)

次回、ラルとセラさんの朝。後編。

久々にラルの変態ぶりが出てきた気がする。
もふもふマスターってなんだ。いつそんな称号得たんだ……?(困惑)

ではでは。