satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第284話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界な物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は朝練風景をお送りしました!
まさかの、後編! 一話で終わると思っていたのに!(笑)


《L side》
私の腕からピョンっと飛び降りたネロは小さい声で鳴く。すると、ネロの影がニュッと伸び、中から『私』の影が出てきた。
「今からネロが出した影……『影ラルさん』と戦ってもらいます。この影はさっき、ネロがラルさんの身体能力を測って作ったから、ラルさんそのものなの」
ドールとはまた違う分身……みたいなものか。
「口で説明してもいいけれど……実際やってみて体感した方が分かりやすいと思うわ。ということで、簡単に打ち合ってみましょうか」
「あ、はい」
「そうだ。ラルさん、神器の力は使わないようにね? あくまで、今のラルさんの力で戦ってね」
あ、はーい……そりゃ、能力で底上げしたら特訓にならないもんね。
『安心せい。我は手を出すつもりはないからの。面白おかしく見学でもしておるさ』
面白おかしいかは分からないけどな?
さて、気を取り直して。
私が刀を構えると、影も同じように構える。私の動きを模倣してるわけではないだろうが、どう出てくるのかは気になるところ。ここは様子を窺うという意味合いも込め、軽く攻撃してみよう。
私が刀で攻撃すれば、影はそれを受ける。逆も然り。
相手が私だからなのか、ネロがそう操っているのかは分からないが、特にこれといった決定打もなく均衡を保ったまま、何度か打ち合う。まあ、そもそも倒す必要もないので、奇策に走るつもりもないのだが。
「……!」
「おわっ!?」
真正面からの攻撃を辛くも受け止める。思いの外、力強い攻撃に驚きはするものの、なんとか受け流した。
「ふふ、驚いた? 普段、ラルさんはそれくらいの力で攻撃してるってことなの♪」
……なるほど。自分程、やりにくい相手もいない。
こうして己の影と戦うことで、普段どれくらいの力を用いて、攻撃、防御、受け流しをしているのか実感する。
これがセラフィーヌさんの狙いなんだろう。大変分かりやすいです……!
「影ラルさんの性能も分かったところで、そろそろ私の指導も加えていきましょうね。これから、所々で止めると思うから、そのつもりで続けてくれる?」
「はい」
そこから何度かやり合い、自分の力が何たるかを思い知る。
くっそ! 思った以上に力込めてんな、私!! うぜぇ!
刀同士─一方は影そのものなのだが─が打ち合う音が響く中、セラフィーヌさんの声も響き渡る。
「そう! 全身の筋肉を柔軟に使って! 攻撃を受け流す動作では、もう少し腰を落とす!」
えぇ……と、どうすっかな。いや、いいや。とにかく、言われた通りに……!
影の横からの攻撃を刀で受け止める。そして、いつものように受け流そうとしたところで、セラフィーヌさんの待ったが入った。
「ラルさん、そこは少しきついかもしれないけれど、もう少し腕の力を抜いて、腕を引く感じに受け流すの」
んん~? これ以上力抜いたら突破されそうだけど……えぇい、ままよ!
普段やらないような動きに突破されないかと緊張しつつも、指示通りに受け流してみる。
「そう! その感じを忘れないようにね? じゃあ、今度は止めずにやってみましょう♪」
「……は、はい」
同じような角度で影が攻撃し、私は先程の方法で攻撃をやり過ごす。すると、普段よりも少ない力で攻撃を受け流せた感覚がした。
「はい、一旦ストップ」
セラフィーヌさんが両手を打つと、影の動きも止まる。そして、ネロに影を戻すように指示した。
「流石、ラルさん。飲み込みが早いわ」
「え……あ、ありがとうございます……?」
「ラルさんは耳にタコができるほど言われてるかもしれないけれど、やっぱり体力に問題があると感じてる?」
あぁ……それは永遠の課題だと思ってます。
「まあ、ラルさんの場合、普通の女の子よりはあると思うわ」
「……私の周り、超人しかいないので。それについていくには、私の力は足りてないなとは思います」
ティールやフォース君は持久力がある。男性ってのもあるだろうけど、単純に平均値が高いのだろう。それに並ぶには私の力は足りない。時折、雷姫の助けがあって、ようやく追いかけられるくらいなのだ。
「そうなのね。……けど、お父様やイグくんの言うことは気にしなくていいわよ。二人が脳筋なだけだから♪」
……ん?
にこやかな笑顔でちょっとの毒を吐きました?
「でも、今のままでは何にも変わらないから、別の部分で補いましょう」
脳筋発言に突っ込めないまま、話が進んでしまった。今更、掘り返しても脱線しそうなのでやめておこう。
「補う……それが今の特訓ですか?」
「そう。怪我をする前のリアちゃんみたいなあまり体力を使わない戦い方を身に付けるの。そのために、影ラルさんを使って、今の自分がどれだけの力を使っているのか示したってわけ」
「それはもう、嫌って程に体感しました」
「うふふ。そうでしょ? さあ、出だしの感触はよさそうだし、このまま続けましょう」
「はいっ!」
このあとも何度かセラフィーヌさんのアドバイスをもらいつつ、ほどよく力を抜くという特訓を朝練時間が終わるまで続けた。
「──今日はここまでにしましょう」
どれほど、自分相手に戦っていたのか分からないが、セラフィーヌさんの合図で思わずその場にへたりこんだ。
『見てて愉快じゃったぞ、マスター』
そりゃ、ようございました……! わたしは何が面白かったのか分かりませんけどねぇ?
「ふふ、よく頑張りました。お疲れ様、ラルちゃん」
この特訓の中で、『ラルさん』から『ラルちゃん』と呼ばれるくらいには親しくなれたらしい。
「きちんと汗を拭いてね? 風邪引いちゃうといけないから」
「は、はい。ありがとうございます」
「それと、この後、お時間あるかしら?」
……時間?
「大丈夫ですけど。何か?」
「昨日話したお手伝いの件、早速お願いしちゃおうかなって」
あ……そういえば、そんな約束したわ。
「分かりました。着替えたら伺います」
「えぇ、待ってるわ。……あ、急がなくていいからね?」

朝練終了後、着替えやら朝食やらをすませた後。
約束通り、セラフィーヌさんに指定された部屋まで向かう。仕事手伝いとだけ聞かされていて、それ以上は聞いていないが、私は何をさせられるのだろうか。
流石にとんでも無茶振りされるとは思わないが、あのルーメンさんの娘様だから、何があっても不思議ではないとも思ってしまう。
「……失礼します」
「いらっしゃい、ラルちゃん♪」
「あ、ラルさんだ~♪ また会いましたねっ」
部屋に入ると、セラフィーヌさんとツバサちゃんが出迎えてくれた。セラフィーヌさんはともかく、ツバサちゃんまでいるとは少し驚いた。
しかし、ツバサちゃんもいるなら、変なことはない……よな?
「それで、私は何をすれば……?」
「そうね、簡単に言うとモデルになってほしいの。私の手掛ける服の、ね?」
服……?
「お母さん、服飾の会社を経営してるんです! メリーメリーって名前の」
そういえば、この前も仕事終わりに会ったとき、仕事がどうのって……まさか、これ関連?
というか、学園の理事長でありながら、会社まで持ってるって何者よ……いや、私にとっては理事長でしかないんだが。
「メリーメリーもお父様……いえ、明けの明星が手掛ける事業の一つなのよ」
明けの明星が色んな産業に手を出してて怖い!! これが大規模ギルドのなせる技ということなのか。……いや、関係ないな。多分。ルーメンさんが凄いってことだろうな。うん。
話の規模についていけなくなりそうなので、これ以上は何も考えないことにしよう。
とにかく、今からセラフィーヌさんの指定する服を着ればいいのだ。メリーメリーの新作らしいが、様々な服がラックにかかっている気がするのは、見間違いではないだろう。
「そこに試着室もあるから、そこで着替えてね? まずはこれから!」
と、セラフィーヌさんが差し出してきたのはノースリーブのブラウスに大人しめのスカート。そして、パステルカラーのカーディガン。
手伝うと言った手前、嫌とは言わないが……まあ、どっかの誰かさんにフリフリのお姫様ファッションを押し付けられるより何百倍もましか。
服を受け取り、試着室で着替える。着るのに難しいものでもなく、数分で着替え終わり、試着室のカーテンを開けた。
「わあ……ラルさん、似合ってます!」
「ふふ、そうね♪ サイズは大丈夫そう?」
「えぇ、大丈夫です」
「ならよかった。それで、着てみてどうかしら? 実はそのカーディガン、冷感素材を使っているのだけれど」
あぁ、だからひんやりするのか。いや、ひんやりというか、そこそこ寒いんだが?
「とある魔物の毛が触るとひんやりしてて、その毛を糸に織り混ぜてるのよ。だから、普通の糸より重いかもしれないのよね」
「服の重さは特に気になりません。多分、普通の服と大差ないかと……でも、そうだな。屋外はともかく、屋内だと肌寒いかもしれません」
「あら……ツバサは平気なのよね?」
「うんっ! 肌寒いとかないよ」
いつの間にかツバサちゃんも私と同じカーディガンを羽織っている。私が着替えている間に渡されたのだろう。
「やっぱり、子供と大人とでは体温の関係で差が出ちゃうのね。糸と毛の割合を変えた方がいいわね」
私とツバサちゃんの経験を手元のノートにメモをするセラフィーヌさん。これが仕事なんだろうが、真面目な人だ。
普通の服だからだろうか。あるいは、着せ替え人形みたく遊ばれてる感覚がないからだろうか。いつもより心のダメージが少ない……
なんて、しみじみ思っているとツバサちゃんが嬉しそうにぱたぱたと耳を動かす。どうしたのかと首を傾げていると、彼女は満面の笑みで私を見上げた。
「えへへっ♪ ラルさんとお揃いですっ」
「……そうだねぇ」
あぁ、神様。こんな天使をこの世に産み落としてくださりありがとうございます。この場合、感謝するのはウィルさんになるのだろうか……それとも、転生の神とやらに感謝すべきなのか。いや、産んだのはセラフィーヌさんか。セラフィーヌさんとアルフォースさんに感謝すべき?
とにかく、誰でもいいや。ありがとうございます!
「よし! 次はこっちをお願いね、ラルちゃん」
楽しそうなツバサちゃんと、セラフィーヌさんを見て、私も自然と笑みがこぼれる。
今日はセラフィーヌさんの満足するまでモデルやっちゃいますか~



~あとがき~
今年最後のレイ学更新となりました。
久々にラルのツバサ大好きっぷりが見え隠れしました。

次回、お祭り前日譚。
つまり、女神祭編、スタートってわけじゃい!

朝練風景はこれ以上書きませんが、多分、残りの滞在日数中は、毎日やってると思います。ラルがどれだけ成長するのか……お披露目する日があればいいなと思います。あるのかね。あの、先生、ありますか??

ではでは。