satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神様達の日常記録 vol.10

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっております。さて、今回の登場人物の紹介をいたしましょう!



☆さくっと登場人物紹介のコーナー☆
アルフ:転生の神様。穏やかな性格でにこにこしながら、みんなを見守る優しいお方。怒ったところを見たことがない。

ファウス:力の神様。ずぼらな性格で部下である制御者達(特にフォース)からの信用度は低い。部屋がめっちゃ汚いことで有名。

ウィル:生命の神様。人懐っこい性格。フォースを本当の弟のように可愛がり、皆の頼れるお兄ちゃんでもある。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫であり奥様。誰にでも優しい性格。アルフさん大好き子猫。

フォース:制御者の一人で、最高位の色を制御する。クールな性格で制御者達のリーダー的存在でもある。ゲームは滅茶苦茶強い。

エレル:制御者の一人で色は青。底無しに明るく、トラブルメーカーな存在。ゲームは苦手。

ユウ:制御者の一人で色は緑。物静かな性格で真面目な青年。ゲームは普通の腕前。

ラウラ:制御者の一人で色は白。どこか皮肉屋で掴めない性格をしている。ゲームはそこそこやれる腕前。





★転生の神の怒り★
ここは天界。様々な神が住まう世界。
今日も世界のため、人々のため、神様は見守っている。そんな天界のとある場所。
誰が作ったのか、娯楽室のような休憩所で、おれは無言で白の石を引っくり返し、盤上を黒に染め上げていく。
目の前には、世界の滅亡でも迎えたのかと思うくらい、絶望した表情を浮かべる少女が一人。
「ほい。これで終わり。……おれの勝ちだな♪」
最後の白を黒へと変え、ニヤリと笑ってみせる。
目の前の少女こと、エルは口をあんぐりと開け、頭を抱えながら悲鳴を上げた。
「ぐあー!! なんで! なんで、また負けるの!? というか、酷いよ!! ぜーんぶ黒にすること、ないよね!?」
「お前が弱い」
「手加減してよぉぉ!!」
「してもあんまり変わらないと思うぞ。むしろ、一つ、二つ残ってる方が虚しくね?」
別におれだって、全部黒にしてやろう……とは思ってはいない。ただ、エルが弱すぎるから、結果的にこうなるだけで。
おれとエルの対戦を見ていたユウとラウラも、互いに感想を言い合っている。
「流石、フォース。容赦ない」
「あはっ♪ らしくはあるけどねぇ」
お前らもそっち側かい。
しかし、ラウラはにこっと笑いながら、おれではなくエルの方を見て、ぽんぽんっと頭を撫でた。
「でも、エレルちゃんもフォース君の慈悲でチェスからオセロにしてもらってるんだし、文句は駄目だよねぇ?」
「ラウラも意地悪だぁぁ!!」
あ、こいつエルに追い討ちしたいだけだった。性格悪いわ、やっぱ。
こうなった経緯としては。
おれ、ラウラ、ユウの三人で対戦(チェス)をしていたところ、エルが飛び込んできたのだ。そして、「私も遊びたい!」と仲間に加わった……まではいいが、チェスを知らないエルでも遊べるボードゲームはなんだとなり、オセロに変更されたのだ。
で、おれとエルで通算十戦のオセロ勝負と相成ったわけで。言うまでもないが、おれが十勝してます。
「おれとやるから、こうなるんだろ。ユウかラウラとやれば?」
「ラウラも強いし、ユウも強いもんっ!!」
誰とやっても勝てねぇじゃねぇか、それ。
わんわんと嘆き悲しむ(?)エルだったが、ぴくっと猫耳を動かすと、不思議そうに顔を上げた。
「……なんか廊下から聞こえてこない?」
廊下?
エルの言葉に、おれ達は廊下に続く扉を見つめる。獣人であるエルだからこそ聞こえたのだろうが、現在、人族であるおれには、何も聞こえてこなかった。
「うーん?……誰かが走って……いや、爆走してるかな?」
天界に住む人々は教養があるのか、廊下を走るという行為を滅多にしない。……ま、普通に考えて、神様が仕事しているかもしれない部屋の前を走る方がおかしいんだけども。
そういった事情もあり、誰かが走るなんて早々ない。つまり、だ。
「……何かあって、廊下を爆走してる人がいるってことかな♪」
そういうことになるな。楽しそうに言う必要はないが。
おれにも爆走する足音が聞こえてきた辺りで、なぜがミィの声も聞こえてきた。
「……ミィ?」
「ほわ? あ、ほんとだ! ってことは、ミィちゃんも一緒なのかな。はっ! 爆走さんと走ってるのかも!」
「あれれ? フォースくん、ミィちゃんの声に気づくのは早いんだねぇ?」
うるせぇ。たまたまだ。ニヤニヤすんな。
とはいえ、状況が掴めないままなのは確かだ。外に出てみれば何か分かるかもと思ったところで、休憩所の扉が大きく開かれた。驚くおれ達をよそに、乱暴に入室してきた人物──ウィルにぃは、周りを見渡し、大きく息を吐き出した。
「よかったぁぁ……みんないるぅぅ!」
「兄貴? どうかしたのか?」
「カルマァァ!!」
「え、おれ? は、はい……?」
「パスッ!」
は!? パスッ!?
兄貴の全力疾走に目を回しているミィを構わず、おれに投げて寄越してきた。
相当慌ててるのか、おれのことを『かーくん』ではなく、本名で呼ぶ辺り、ガチで余裕がないのだろう。
「みいぃぃぃ~……!」
「わっとと……大丈夫か、ミィ?」
「み、みぃ~……」
爆走&投げ渡しで、ぐるぐると目を回しているミィだが、とりあえず、怪我とかはなさそうだ。
「ウィル様! 何がどうなって」
「悪い、エレル! 説明している暇がない! とりあえず、全員、俺の言うことを聞け。カルマと離れずに固まっとけ!!」
兄貴が両手を合わせると、ぽうっと兄貴の周りが発光する。何かの術を発動させるつもりなのだろう。
状況が読めないが、兄貴があんな風になっているんだ。言う通りにした方がいい。
「な、何が起こってるの~!?」
「さ、さあ?」
「よく分からないけれど、フォースくんにくっつけばいいのかな~?」
いや、本当にくっつく必要はないのでは?
おれが反論する前に、三人がおれにぴったりとくっついた瞬間、ミィの鈴が鳴り響く。
そして、遠くの方で地響きが聞こえてきた後、どこからか強力な威圧感を感じた。
「ひゃあっ!」
「うっ!」
「……わお。これは笑えない」
強大な力を持つ神と対峙した瞬間。
深い深淵に触れた瞬間。
普通に生きていれば、まず出逢わないだろうそれらと邂逅した時に感じる本能か。
おれはそれを凄まじい悪寒として感じ取った。
動けない。動いてはならない。
そんな直感に、おれは忘れていた死への恐怖のようなそれを思い起こさせられた。
「うえぇん……マスターの本性、駄々漏れしてない?」
「うん。……だけど、それよりも凄い気がするけど」
「だね。似てるけど、違う気がするな」
いや、むしろ、あのマスターよりも恐ろしいプレッシャーだ。これはマスターじゃない。
「みぃ?」
ミィが不思議そうに「どうかしたの?」とおれを見上げる。いつも通りのミィ。
ミィはこれを感じていない……? おれを含めて、全員が恐怖し、動けずにいるのに?
「うげぇ~……ルフさん、めちゃ本気だよ! 待ってて。すぐに楽にしたげる……よっと!」
兄貴が術を発動させると、感じていた威圧感がふっと消える。その瞬間、エル達はその場に座り込んだ。
「はうぅ~……助かったよぉ~……!」
「ふぅ……ウィル様が相殺してくださったのですか?」
「まあねん♪ ごめんね? 急に驚いたでしょ」
「まあ、それなりに驚いたけど……それよりも状況が掴めなくて、理解できてないんだが。兄貴、何があったんだ? アルフ様の名前が出てたってことは、アルフ様に何か?」
「うーん。まあ、うん。そうね……あのプレッシャー攻撃はルフさんが原因だけど。それからかーくん達を守るために、俺も走ってきたわけで。……まあ、なんだ。とりあえず、現場、見てみる?」
はっきりしない物言いに首を傾げつつも、兄貴に言われるまま、その現場とやらに向かうおれ達。実際に見た方が早いと言われてしまえば、その通りにするしかない。

兄貴に連れてこられたのは、マスターの仕事部屋の前。
その部屋の中では、アルフ様がマスターの頭を鷲掴みにし、壁に打ち当てている。
「あ、あれ? アルフ様? なんか雰囲気が……」
「あはは。マスター、大変なことになってるなぁ~?」
「いや、これ、笑えないって。どういう状況なんだ?」
「……兄貴、これって」
「本気アルフ様は怖いってことだよ。俺も怖いもん。でもまあ、まだ手前なだけ、ましかなぁ」
あれで手前なんだ……?
部屋の中では、鷲掴みにされているマスターがプルプル震えながらも─恐らく、痛みによる反射─どうにかアルフ様に話しかけているところだった。
「ア、アルフ……? このマジなやつは勘弁してくれ。流石に痛すぎる……」
「あ? どの口が言ってるんだ。あんなことが起きておいて、『はい。すみませんでした』で、済むわけがないだろうが」
「起きた後は謝るしかできないだろ……その後は反省して、次から起こさないよう、努力するしかねぇもん……なので、少しでもいいんで、力を抑えてくれませんかね?」
「信用できるか。前にも被害はなかったとはいえ、今回、似たようなことが起きているのにか?」
アルフ様が更に力を込める。それにマスターは慌てて弁明する。
「悪かったって!! 今度は安全第一にしますんで! だから、これ以上は勘弁してくれぇぇ!!!」
……マスターとアルフ様が原因なのは分かった。そして、マスターが何かやらかして、アルフ様の怒りに触れたことも分かった。分かったけれど……
「根本的な原因は何?」
「ひいぃ~……ルフさん怖い。怖いです……!」
……おい、馬鹿兄貴。
「あう。ごめん。つい、昔のあれこれがトラウマとして蘇るところだったよ。……まあ、端的に申しますと、アホがりゅっちを怪我させたのが原因ですかね」
……はぁ!?
さっき、兄貴に渡されたときは怪我なんてなかっ……たのは、当然か。兄貴が即座に治したんだろうから。
兄貴曰く。
事が始まる前、アルフ様、ミィ、兄貴の三人(正確には二人と一匹)で資料運びをしていたらしい。もちろん、子猫のミィに資料は持てない─念力使えば持てるけど、そこまでする程の量は運んでなかったとのこと─ので、二人を先導するように前を歩いていた。
そして、丁度、マスターの部屋の前を通りかかった際、事件が起こる。
「タイミング悪く、あの魔窟の扉が開かれてしまってね。前を歩くりゅっちが巻き込まれちゃってさ。その時、りゅっちが怪我を~……っても、たんこぶ作っただけなんだけども」
「はうぅ~……大丈夫なの? ミィちゃん」
「み? にゃあ♪」
エルの問いかけに、おれの腕に収まるミィが「問題なし!」と元気よく一鳴き。ラウラも当然のように、「そりゃそうでしょ」と呟く。
「ウィル様がいたし、問題ないに決まってるよね。……でも、なるほど。それでマスターは、アルフ様の逆鱗に触れちゃったわけか♪」
ってことだな。
普段は仲のいい二人だが、ミィに何かあったのなら、アルフ様のお怒りスイッチを押してしまうのは目に見えている。その結果、離れたところにいたおれ達までも、あの威圧感に圧倒されてしまう事態になったと。
「ん~……けれど、変だなぁ? あの部屋、フォースくんの夏季休暇とやらの前に一度、片付けなかったかい?」
そだな。片付けたの、つい最近だったと思うが。
「さっすが、マスター! この短期間で元通りにしちゃったんだね!」
「さっすが~……じゃないけど。やれやれ……あの苦労はなんだったのさ?」
ユウの言う通りだよ。なんだったのだ。あの時間はっ……!
「ちっちゃなミィちゃんが、たんこぶ程度で済んだのは、ふこーちゅーのさいわいってやつだね!」
「まあうん。そうだと思うけど……あれ、どうすんだよ?」
室内は未だにバッチバチなアルフ様にしばかれるマスターしかいない。とてもじゃないが、止めに踏み込もうとは思えない険悪な空気だ。
同族の兄貴もかなり困った様子で、どうしようね、とおれに聞き返してくる始末。
「……そいや、アルフ様の威圧感……兄貴はともかく、ミィはけろっとしたな」
「にゃあ?」
「あぁ……それはりゅっちの鈴が理由だよ。それ、ルフさんの力が込められた鈴だから、ルフさん自身の威圧感も相殺できちゃうって訳」
なるほど。ミィが怖いもの知らずってわけじゃないのね。
「わは~♪ ま、りゅっちなら、ルフさんを恐れなさそうだし、そこも否定はしない。でも、けろっとしてた理由は鈴の力だよ♪」
「まあ、ミィがアルフ様の力に影響されないってのは分かった。で、どうするかは別問題だよな?」
「だね。いくらマスターの自業自得で、この事態を引き起こしたからと言っても、一応、僕らのマスターだ。流石に放置するのは気が引けてしまうよ」
ラウラの話も一理ある。どうにかこの場を納められないだろうか。マスターを救出するためというよりは、これを放置するのは、周りの迷惑になるかもしれないからだ。
アルフ様のお怒り原因はミィが怪我したからだ。しかし、現状、兄貴の力で怪我一つない。無事であると伝えたら、少しは怒りが収まる……なんて、都合よすぎる?
「なあ、ウィルにぃ? ミィに協力してもらって、どうにかんない……かな?」
兄貴は低く唸ったあと、おれの予想通りの返答をする。
「望み薄、かなぁ。……いつもの不機嫌ルフさん程度なら、りゅっちで一発だけど~……今回はねぇ……気が収まるまで放置が安定かな。それに下手に刺激すると、飛び火もしそうだからな。俺、死にたくないです」
や、流石に死にゃせんだろ……流石に。
「じゃあ、かーくんが止めに入る? すっごくオススメしないけど」
ちらりと扉の先をみる。
尋常ではない危険なオーラにそっと視線を外す。
「……おれも死にたくねぇかなぁ」
「死にはしないよ~……多分」
多分って言っているじゃねぇか! アウト!!
「つまり、マスターを助ける術はないってことです?」
「そだねぇ~……ごめんねぇ、ラウちーん」
「いいえ? 僕は格別困らないので、大丈夫です♪」
やっぱ、いい性格してやがるわ……
「そっと離れて、ルフさんの怒りゲージが下がるの待とっか~……そうすれば、りゅっちで機嫌なお─」
「ウィル!!!」
「はいっ!? なんでございましょうか、アルフ様っっ!!!」
突然、兄貴の名前を怒声混じりに叫んだアルフ様。そして、条件反射なのか、一瞬にしてアルフ様のもとへ傅く兄貴の姿。
あそこまで極められてると尊敬するわ。すげぇな、兄貴。
「今から掃除をする。お前も手伝え」
「お、あ……え? 掃除、ですか」
「あぁ。こいつの部屋の、な」
アルフ様が示したのは袋に押し込められ、てるてる坊主のように吊し上げられたマスターがいた。
……まぁた、面倒なことになってきたぞ?



~あとがき~
なっげくなってすんません。
相方にオチ要員として重宝され始めたファウス様。果たして未来はあるのか……(笑)

次回、大掃除。
周年記念に何してるんでしょう。彼らは??

一周年ぶりに制御者全員揃いました。
去年は……全員いなかったもんな。確か。

ではでは。