satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第286話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で探索してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
イグさんとラルのデートが決まりました。
くそぉぉぉ!! 羨ましいな、くそぉぉぉ!!
ラル「厄介オタクがいるぞぉ」
うるせぇぇぇ!!


《L side》
トンカチの音や祭りの準備で街は大いに賑わっていた。
普段も活気溢れる街ではあるが、今日は一段と賑わっているように思える。明日、行われる祭りのお陰なのだろう。
「こうして見ると、準備は佳境って感じですね」
「そりゃあ、街一番のイベントって言っても間違いないからな♪ 街の人達も総出で張り切ってるんだよ」
まあ、そうだろうな。
街の人達は誰もが楽しそうに明日の準備に励んでいる。こうした協力があってこその女神祭なのだろうな。
……それはともかくとして、だ。
私はなんでこの人と街を歩いているんだ。……リアさんに言われたからだよ、畜生。
「なんだぁ? お前が俺と兄妹デートしようって言ったくせに不服そうな顔してるな?」
「言ってねぇです。デートしたいなんて! これっぽっちも! 言ってねぇわ!! 私一人でもいいって言ったのに、リアさんが心配だからって……!」
「実際問題、土地勘のある俺といた方がスムーズだぞ」
ぐぬ……!
手元の小さな紙袋に目線を落とした。これにはリアさんに頼まれた茶葉が入っている。
イグさんの言う通りだ。この賑わいの中、一度も行ったことのないお店を探すのは一苦労だったろう。これを買うにも、そこそこ時間をかけていたかもしれない。
「現にラル、店までの道間違えそうになってたし、俺がいて助かったろ?」
「ぐっ……うっせぇです。それは、あれですよ。旅の醍醐味ってやつです」
「んなこと言ってると、ギルドに帰れなくなるぞ~」
「それはない! あんな目立つやつ、方向分からなくなるわけがない!!」
「あっはは! それは言えてる~♪」
くそ。そういうところが嫌いなんだ。
「なんだよー? この前の模擬戦、まだ根に持ってるのか? それとも、勝手にセラおばさんに指導頼んだことを怒ってる?」
どれだって言われれば、全部だよっ!!!
……はあ。リアさんの頼みじゃなかったら、イグさんと一緒に買い物なんてしないのに。絶対に、しないのに!
「──このくらいで大丈夫そうかぁ?」
ふと、声のした方を見上げると、魔法を使って足場のような物を作っている人を見つける。ギルドの人ではなさそうだから、街の人、だろうか。
「いいんじゃねぇか? ルーメン様から言われている規定だとそこが限界だからな」
「んじゃ、他の奴らも誘って強度チェックするか!」
「よし。一応、強度もあるが……途中から走り回ったりするからな、そこも含めて確認よろしく!」
……何を作っているんだろう。普通に見れば、階段上に作られている足場なんだけど。何のための足場なのだろう。祭りに必要そうなのは会話から推測できるが、何に使うのかまでは分からない。
私が歩みを止めたからだろう。イグさんが不思議そうに問いかけた。
「ラル? どうかしたか?」
「イグさん、あれってなんですか?」
「ん……? あぁ、あれか~♪ 祭りのための休憩スペース作りってところかな?」
休憩スペース?
「毎年、大勢の人がここにやってくるのさ。陸の国だけじゃなく、海や空からも、な? もちろん、ちゃんとした休憩スペースはあるんだが、そこでは収まりきらないんだよ」
ふぅん。臨時の休憩スペース作りなのか。……それにしては、走り回るとかなんとか言っていた気が。
「あとは、あれだ。祭りの最後に花火が上がるから、それの鑑賞スペースにもなるぞ」
……それ、走り回る云々関係ないよな。
「理由はそれだけですか?」
「おう。それだけだけど?」
嘘だ。
はっきりと分かる。休憩スペースにしろ、鑑賞スペースにしろ、街の人の言う「走り回る」というキーワードにイグさんは触れていない。つまり、まだあの足場には何らかの役割が存在するはずだ。
しかし、それを問い詰めたとしてもイグさんは教えてくれないだろう。教えるつもりがあるなら、最初に教えてくれるはずだから。
なら、聞くだけ無駄。しつこく聞いたところで、おもちゃにされるのがオチだ。
よし、さっさと帰ろ。

現状、関係者のみしか立ち入らないギルドは日の高い時間帯でもがらんとしている。
だからだろう。入口付近に立つリアさんとしーくんを遠くからでも見つけられたのだ。
「二人とも、おかえりなさ~い♪」
「ラルー! イグおにーちゃーん! おかえりー!!」
しーくんは私達の姿を見つけると、パーッと駆け出してお出迎えしてくれる。そんな愛しの天使を受け止めるべく、私はその場に膝を着き両手を広げた。
「んー! しーくん、お出迎え、ありがと~!」
「えいっ♪ どーいたしましてっ!」
迷いなく私の胸に飛び込んできたしーくんをぎゅーっと抱き締める。
そんな私の横で、イグさんは小さく首を傾げ、しーくんに遅れて近くへ寄ってきたリアさんに話しかけていた。
「珍しいな、リアがここで出迎えるなんて」
「ふふ。実はイグ達が帰ってくる少し前まで、子供達をお見送りしてたの。二人とは入れ違いだったみたいね」
もうしばらく、しーくんを堪能していたいけれど、お使いの品を渡さなければ。
私はそっとしーくんから離れ、リアさんに紙袋を差し出した。
「リアさん。これ、頼まれていたものです。確認をお願いしても?」
「ありがとう、ラルちゃん。急にお使いなんて頼んでしまってごめんなさいね? でも、お陰で助かったわ」
いえ、まあ、暇でしたし。
……やっぱり、イグさんを人選したのは実は嫌がらせではと思ってしまうのだけれど。いや、リアさんは本当に善意でイグさんと行った方がいいと言ってくれていた。悪意があったのは、イグさんだけだ。多分。
「ん~? なんだ、ラル~」
私にじとーっと見ていたのに気づいたイグさんが、これまたニヤニヤしながら問いかけてくる。そんな彼の問いに答えず、ふいっと視線を外した。
「なんだ、反抗期か~?」
「うっせぇわ」
貴方に対しては年中反抗期だよ。
ふと、どこからか楽器の音色が幽かに聞こえてくる。それは笛だったり、太鼓だったり、和楽器の音色や管楽器や金管楽器のような洋楽器の音色の混じる不思議なもので。
急に黙る私を不思議そうに見ていたが、リアさんとイグさんも楽器の音色に気づくと、納得がいったようにふわっと笑う。
「……あぁ、ツバサちゃん達が練習しているのね」
「みたいだな。そういえば、雫」
しーくんに頼まれたのか、ひょいっと抱き上げ肩車をしていた。イグさんの肩の上で元気よく返事をし、手を上げる。
「雫も明日は精霊役で参加するんだろ? ちゃんと役はこなせそうか?」
「うん! いっぱいいーっぱい、れんしゅーしたから! だいじょーぶ!」
「おお~♪ それは楽しみだ!」
「ん! ボク、ちゃーんとおしごと、かんすい、するの! みててね!」
「任せとけ~♪ 雫の勇姿はちゃーんと見てるからな~♪」
くっ……自信満々なしーくんが可愛い……どこで完遂なんて言葉を覚えたんでしょう。賢いしーくんも素敵……!
……それにしても、だ。
数日前、ミユルちゃんとシエル君がこちらへやって来た辺りからこのような楽器の音色が聞こえるようになった。どんな楽器があるのかまでは流石に分からず、辛うじて太鼓だけははっきり聞き分けられる。ぶっちゃけ、私自身、音楽に精通しているわけではないから、これ以上の判別ができないだけかもしれない。
先日のアラシ君やレオン君の言葉から、彼らによる演奏なのだろうというのは察しがつくが、それにしては、聞こえてくる音色の数と彼らの人数が合わない気がするのだ。
私が知らないだけで、アラシ君達に他の協力者がいるのだろうか? それとも、なんらかの手段でアラシ君達だけで演奏しているのだろうか?
ちなみに、この疑問の答えは、イグさんやリアさん、舞の練習をしているしーくんは知っている。が、何度か聞いてみたものの、一向に教えてくれないので、すでに聞くのをやめていた。
「さて、私達はそろそろ行きましょ……っと、いけない。ラルちゃん」
「はい! なんでしょう?」
ギルドを見上げていた私にリアさんはそっと可愛らしい包装紙に包まれた何かを手渡してきた。
感触からして、何かの茶葉、だろうか?
「これ、最近完成した夏バテ防止用の紅茶のティーバッグ。元々、夏バテ防止にいいんだけれど、それは更に改良したやつなの♪ アップルティーみたいな風味のする紅茶だから、ティール君と一緒に飲んでみて?」
「うわっ……ありがとうございます! 凄く助かります! って、アップルティー風味のってことは……もしかして」
ティール用に作ってくれていた、のだろうか?
リアさんは私が口にしなかった疑問を肯定するようにそっと頷き、小さく笑う。
「この季節のティールくん、お仕事がない日はずっとぐったりしているもの。ラルちゃんも大変でしょ?」
「あ、はは……五年も一緒ですし、もう慣れちゃいました。けど、本当にありがとうございます。これ、試してみますね」
「えぇ、ぜひ♪」
ティールも羨ましいものだ。こうして気にかけてくれている先輩がいるのだから。
……まあ、私にも言えることかもしれないが。



~あとがき~
しれっとデート終わっちゃった。
くそう、ラルめ。羨ましすぎる!

次回、ティールを迎えに行きます。
もしかしたら、久々にとある人達に会えるかも。

本当はイグさんとラルのデートシーンをたくさん書きたかったんです。でも、ラルは楽しくデートしてくれないので、書くのをやめました……
いつか、イグさんが楽しそうにデートするシーンを書きたい……!

ではでは。