satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第292話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で茶目っ気溢れる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル、ティール、雫の三人でお祭りを見て回るぞ~……とぐるぐるし始めてます。
やりたいことを詰めただけで、順序立ても得にしていない謎構成になってます。ゆるっとご覧ください。


《L side》
次にしーくんが指差したのは、とある輪投げ屋。決められた数の輪っかを渡され、何点取れるか競うものらしい。
動かない的に投げるだけなら誰だって満点狙えるだろうと思うのだが、ここのお店のは動かない的ではなく、動く的なのだ。しかも、得点の高いもの程、不規則な動きをしていた。
「……しーくん? これ、本当に私がやるんですか」
「うん! やって?」
あう!? 我が天使の無垢な笑顔に逆らえない! お断りできない……!
「ま、ラルなら楽勝だよね。がんばれ~」
程よく棒読みな応援やめろ! くそ! やってやる!!
私は半ば投げやりになりながらも、輪投げの人にお金を支払い、輪っかを受け取る。
使える輪っかの数は五個。点数は十点が最高得点。つまり、五十点が満点となる。
どう動かしているのか知らないが、不規則に動くとしても、動く範囲には限りがある。それなら、ある程度の予測は可能だ。
私は懐から眼鏡─見通し眼鏡をちょいちょいっと改造したお手製アイテムの一つ─を取り出すと、それを装備して、一つの輪っかを構える。
「……そこっ!」
私が狙いを定めた先には十点の的が。からんっと乾いた音を鳴らしつつ、そこへと収まった。
こんなんに時間をかけても仕方がない。さっさと投げて終わらせてやる。
「せやっ!」
ある程度、狙いを定めてから残りの輪っかを一度に全て投げた。それら全ては全部、同じ的に吸い込まれるように入っていく。
「おわー!! ラル! まんてんだ!」
「君、一時期は投擲武器も嗜んでたもんね。その腕は健在ってことだ?」
「現役探検隊を舐めんじゃないわよ。このくらい楽勝だわ」
「狙いを定めるだけなら誰でもできるけど、最後の予測は誰でもは無理じゃない? あと、現役探検隊でもあの芸当は無理だと思うよ」
不規則に動くように見える的にも、どこにどう動くか考えれば、ある程度の予測はできると思うけどね。
「ラル、ボクみたいにたんち、じょーずだもんね!」
「しーくんのと同等には語れないよ。あと、これは単なる予測だし。……それで、しーくんの見たかった私は見れた?」
眼鏡を外し、にっこりと笑う。
しーくんは満足そうに頷き、パッと明るい笑顔を見せる。
「うん! やっぱり、ボクのパパとママ、すごい!」
「そだろ~? もっと自慢していいよ、しーくん♪」
「あぁ、もう。そうやってすーぐ調子乗るんだから。でも、どうして雫はぼくらの得意なこと……っていうのかな、それを見たかったの?」
何気ない質問だったが、しーくんはなぜかしゅんっとした様子で答えていく。
「おやすみするまえ、ほいくえんのおともだちと、おはなししたの。みんなのおとーさんとおかーさんのはなし」
しーくんの話をまとめると、だ。
しーくんの通う保育園にて、親の仕事の話になったそうな。よくある親の職業自慢というやつだ。そこで、しーくんは当然ながら、私とティールの自慢をした。二人は探検隊をしていて、とっても強いんだ、と。
しかしまあ、保育園の子達は私達を単なる高校生……もとい、ただのお姉さんとお兄さんにしか見えてなくて、そんな風には見えない、と言われてしまったらしい。……むしろ、ティールは王子様でそんなことしないとかなんとか言われたそうだ。なぜ、ティールだけそういう見え方をされているかは、今は置いておこう。
まあ、確かになと思う。保育園へ迎えに行く私らは学生服だし、あれで凄い探検隊なんだぜ!……と言われても、子供の心情的には嘘だとなるかもしれない。なんなら、大人ですら、私らを舐め腐る奴らはいるわけで。
「みんなに、いっぱいいわれて、ふあんになったの。ラルとティールをしんじてないわけじゃないよ! でも、みんなにおはなしできなくて、わかんなくなっちゃって」
否定的なコメントにしーくんの気持ちが負けてしまったのだろう。もしかしたら、上手く説明できなかった自分を責めているのかもしれない。
「そっかそっか。じゃあ、今度はお友達の前ですんごいところ、見せてやらないとな~♪ 何したらいいかな? ティールと試合でもしてみよっか?」
「する必要ある? さっきみたいに的当てとかして見せたら凄いってなるって」
「そうかな? ま、しーくんは何にも気にしなくていいよ。お友達に嘘つきだって言われたんなら、その子を連れてきたらいい。その子の目の前で私達の強さを証明してあげるからさ。ね、ティール?」
「……ま、そうだね。それで雫の信用を得られるのなら、ぼくは構わないけど。危ないのは禁止ね」
あはは。そだね~♪
「ラル、ティール」
「しーくんのパパとママはちゃあんと強いよ。で、そんな探検隊スカイは皆強いってことだ! はい、解決!」
「強引だな~……けどまあ、皆強い、は同意する。ぼくらだけじゃなく、雫もその一員だからね?」
「……うんっ」
私達としーくんの関係は複雑で特別だ。それを万人に知ってもらう必要はないし、理解される必要もない。
ただ、こんな家族の形もあると知ってもらえるだけでいいと思う。そこに理解も得られたらラッキーくらいの気持ちでいいのだ。
ま、個人的には誰に理解されなくとも、私とティールとしーくんの三人がそれらを認めて、理解していればいいと思うけどね。

再び、街中をぶらぶらしつつ、散策していたときだ。
「……んぐ? ね、ラル」
ティールに肩車をされながらチョコバナナを頬張っていたしーくんが少し先にある曲がり角を指差す。
「あそこから、へんなかんじする」
「ほう。変な感じとは?」
「うーん? なんだろ。くろいもやもやーみたいなの。わるいひとがいるのかも」
黒いモヤモヤ、ね?
もし、しーくんの言うことが本当なら、アラシ君に連絡案件かもしれないな。しかしまあ、実際に見たわけでもない。それだけで連絡するのもお手数お掛けします、というやつで。
「じゃ、ちょっと見に行くか」
「は? いや、ラルの見に行くは見るだけですまないだろ」
すむすむ。なんにもなければ、見に行くだけですみますよ~♪ ティールとしーくんはそこにいてね。
心配そうな─或いは、何かやらかしそうという不安な─表情のティールは放置し、私はしーくんが指差した曲がり角を覗いてみる。
そこで、酔っ払い達によるだる絡み現場に遭遇した。
詳しく明記するのもあれなので、端的に言えば、酔っ払い達が一人の女性を囲み、「お姉ちゃん可愛いね~♪」ってやつである。ナンパである。
一方、言い寄られている女性は酔っ払い達の勢いに圧倒されているのか、恐怖で声も出ないのか、子犬のように震えてしまっている。
……これは殴ってもいいやつだな。いや、実際には殴りませんけども。
「こんにちは、おじさま達。楽しそうで何よりですが、お相手、大層嫌がってるのでは? あ、それとも、私はお邪魔?」
もしかして、女性の方が誘い出し、酔っ払い達を成敗する的なシーンなのかもしれないと一応、聞いてみたのだが……私の言葉に女性はこれでもかと首を横に振る。完全否定である。じゃあ、助けるか。
私はぽかんとする酔っ払い達を横目に女性の元へ歩み寄り、安心させるように微笑むと女性の手を包むように握った。
「大丈夫ですか? あの通りの先に私の友達がいるので、一緒に行きましょ」
「は、はい……!」
「あんだぁ? おじょーちゃん、大人の話に首突っ込んじゃあ、いけねぇなぁ?」
ナンパは大人の話なのだろうか。いや、彼ら的にはナンパではなかったのだろうか。
「それとも、おじょーちゃんが、俺らを楽しませてくれんのかぁ?」
「さあ? とりあえず、こういう強引なお誘いは女性に嫌われますし、やめた方がよろしいですよ?」
「んだとぉ! ガキが舐めた口聞いてんじゃねぇぞぉ!」
うわぁ……! 話が通じねぇ!! 流石、酔っ払い!
勢いに任せ、酔っ払いAが私に殴りかかってきた。仕方がないので、その拳を受け止め、ぐるんと投げ飛ばしてやる。Aさんは何をされたのか理解できてないのか、目を丸くしながら、私を見上げていた。
「あは。ガキ相手に手を上げるのもどうかと思いますよ、おじさま? あ、その他のおじさま方、逃げないでください? お姉さんを困らせてたんですから、同罪ですよ」
その辺に転がっていた小石を拾い上げ、おじさま達に向けて素早く投げつける。もちろん、怯ませるために投げたもので、怪我はさせない程度に、だ。
投げられた小石に一瞬、驚いたのか足を止める酔っ払いBさんとCさん。その隙に二人の手を掴み、勢いよく後ろへと引っ張ってやる。酔いもあるのだろう。おぼろ気な足取りのまま、数歩後ろへ下がると、情けなくその場に尻餅をつく。
「あ~……逃げられると面倒だな。……警備隊の人達が来るまで、麻痺か気絶でもさせるか。雷姫!」
愛刀の名前を呼び、何もないところから電気をバチッと光らせると、すらりと妖しく輝く刀を出現させる。そして、雷姫を使って麻痺させようかとおじさまの一人に刀を向けた……のだが。
「……は、嘘ぉ?」
刀を向けられ、何を思ったのか、三人とも勝手に意識を手放したのである。
酔ってたから、幻覚でも見たのだろうか? そうでなければ、刀を向けられた程度で気絶とかあり得んだろ。まあ、手間が省けていいけど。
せっかく出した雷姫だったが、とりあえず、手元から消しておく。そして、女性の方を振り向いた。
「やれやれ。……改めて、お姉さん、大丈夫ですか?」
「は、はい! あ、あの、ありがとうございました……!」
いえいえ、ご無事で何よりです。
「ラル、終わったぁ?」
角からひょっこり顔を出すティールとしーくん。事が終わるまで、大通り側にいたらしい。まあ、我が天使にこんな野蛮なところを見せるわけにはいかないので、ティールの判断は正しい。
「うん、終わったよ~♪」
「……あぁ、確認だけじゃなくて、揉め事もラルが片付けたのね。で、連絡は?」
「……連絡? してないよ?」
「先にしてあげなよ。主にアラシのために」
そだな。酔っ払いおじさまを放置するわけにはいかないもんな。
「いや、だから、先にしてあげてって話ね?」
聞こえませーん。
ということで、アラシ君には事後報告だ。やってしまったもんは仕方ないのである。
「やほやほー! アラシ君?」
『……ん。ラル? 何かあったか?』
「うん。酔っ払い達がお姉さんを困らせててね。場所は北西エリアなんだけど」
『分かった。じゃあ、近場の警備隊をそこに向かわせる。お前の言動からして、そこまで大事じゃなさそうだから、数人で大丈夫そうか……』
おや。この返答、現在進行形だと思ってる?
「あ、事はもう終わってるんで、おじさまの回収だけお願いしてもいいっすか」
『……は?』
「三人、いい年したおっさん転がってるから、回収よろしく。あと、私の代わりに説教とかしてくれると助かる。する前に気絶しちゃってさ~」
『俺、見かけたら連絡だけして、何にもしなくていいって言わなかった?』
アラシ君の不満が通信機越しに伝わってくる。言う通りにしろや、という圧も感じなくはない。
「覚えてるよ。でも、恐怖に震えるお姉さんを放置するのは同姓としては許せなくて?」
『ぐ、そ、それは……』
「アラシ君だって、ツバサちゃんが変態おじさんに絡まれてる現場を見たら、連絡だけして他人に任せたりしないよね。それと一緒」
『……ぐ。ズルいだろ、その質問』
「まあ、そういうことだよ。ってことで、後処理は任せるね? じゃあね!」
『あ、ちょ! ラル!!』
文句を言いたげなアラシ君だったが、きっと彼も忙しい身だ。さっさとこちらから切ってあげよう。
……よし、報告も完了。あとは警備隊の人達が来るまで、このおじさま達を見張ってればいいかな?
ティール、しーくん。このお姉さんと大通りで一緒に待っててくれる? こんな変態おっさんと一緒なんて嫌だろうし」
「了解、リーダー」
「うん! お姉さん、ボクたちといっしょにあっちいこ? あのね、ボク、おいしーチョコバナナ、しってるの!」
先程まで怯えていた女性はしーくんの無邪気な笑顔に安堵したのか、思わず小さな笑みを溢した。
それを見たしーくんもまた、嬉しそうに笑い、楽しそうにお姉さんの手を引いていく。
……にしても、こんなところに出会すとはね。あるわけないだろ、と思っていた部分はあったのだが。
ま、これも楽しいからいいんだけどね?



~あとがき~
ラルさん。屋台で遊ぶより、悪者退治の方が生き生きしてませんか?? だって、今回の字数が多めだもの(汗)

次回、まだまだやるぞ、三人の屋台巡り。

今回は悪者退治をきちんと描写しましたが、この後も描写はなくとも、いくつか首突っ込むと思います。だって、ラルさん、楽しいって言っちゃってるもの。
それを全て事後処理する可愛そうなアラシ君です。忘れていたけれど、こういう役回りでしたね、彼。

ではでは。