satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第305話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃっとしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、神子二人による舞による演舞が終了しました。いえ~い!
が、ラストにミルティアからの新たな伝言(?)を聞き、ラルが若干の動揺を見せていました。
まあ、それはそれとして。
ラル「えっ、放置されるの」
少しだけ! 少しだけだから!!
ラル「作者の少しだけは信用できねぇぇぇ!!!」


《L side》
ミルティアの言伝てに関して、現状、私から何かできることはない。この件は一旦、置いておこう。
「……ふむ。もうそろそろ、ラル達の出番かの?」
は? 出番?
ルーメンさんに聞き返そうとした瞬間、お腹の底まで響くほどの音で太鼓を打ち鳴らすシエル君に思わず、ステージへと視線を移した。
すると、ステージに更なる変化が起こっていた。
ステージの両脇……もっと言えば、ステージを形作る噴水から水柱が二本吹き上がっている。その水柱はステージすら突き抜け、約三メートル程の高さを保っていた。
水柱にはステージ同様、薄い膜が張られているのだろうか。小さな足場のようなものが見えていた。
そんな水柱が出来上がると、ツバサちゃんとツルギ君はお互いにハイタッチを交わし、魔法で宙を蹴りつつ、軽やかな足取りで水柱へと昇ってしまう。
「ここまで、私達の『神子神楽』を見ていただき、ありがとうございました!」
「皆様に僕達の『祝福』の加護が少しでも届いていることをお祈りしています!」
と、双子は息ぴったりでぺこりとお辞儀。
数秒の後、顔を上げた二人は満面の笑みを浮かべている。舞のときとは違い、いつもの笑顔。……いや、なんなら、どこか楽しそうにすらしていて。
「そして、ここからは……」
「皆様お待ちかね……!」
「「『神子探し』のお時間ですっ!」」
二人ともパッと両手を広げ、楽しそうに『神子探し』の開催を宣言する。
あの……いや、別にお待ちかねしてないが。何、神子探しって?
……なんて思っているのは私だけなのだろうか。周りの観客達は大盛り上がりで大歓声を上げていた。なんなら、雄叫びを上げてすらいる。
え、私が知らないだけ? 私だけが置いてかれてますか!?
ティール、神子探しって何……?」
「……ぼくも知らない」
あ、圧倒されてたのは私だけじゃないみたいです。よかった。
「『神子探し』は神子が二人いる年にのみ行われる催し物だよ。所謂、ゲームみたいなものかな?」
困惑する私達にアルドアーズさんが優しく教えてくれる。
二人いる代だけ……ってことは、基本的にはやらない催し物ってことですか?
私の質問にアルドアーズさんはゆっくり頷く。
「代替わり時は三年間、先代神子と当代神子の二人になるから、そのときはやっておったはずだ」
となると……例えば、ルーメンさんからセラフィーヌさんに代わるときに三年間、やってたってことか。そして、当代の神子は双子で元々二人だから、毎年のように開催されている……或いは、される予定なのだろう。
り、理解はした……が、結局、『神子探し』は何をする催し物なのかが分からない。言葉通り解釈するなら、神子を探す……んだろうか?
思考を整理させていると、ルーメンさんが高らかに笑い始める。
「ふぉっふぉっふぉっ♪ さて、ここからはお主達の仕事の時間じゃよ」
仕事の時間。……そうだ。ルーメンさんから言い渡された最後の依頼はなんだった?
「ワシからの最後の依頼じゃ。……お主らはワシの可愛い孫達を捕まえられるかの?」
……残っていた依頼。それは、神子の捕獲、護衛。ツバサちゃんとツルギ君の捕獲、護衛が最終依頼。
つまり、この『神子探し』とやらに参加し、二人を捕まえ、守ることが依頼内容……!?
いや、待て。落ち着け? 捕獲はそれで当てはまるけれど、護衛は当てはまらないよな?
どういうことなのかちゃんと説明してほしい。
……という意味を込めて、目の前のおじいちゃんを見つめてみるが、ニヤニヤと笑うだけで説明は一切してくれない。
くっそが! 何か企んでる! そういう顔してる!!
い、一応、口にしてみるか。期待はしてないけれど。
「……ルーメンさん? ご説明はしてくれないのでしょうか?」
「ほっほっほっ……♪ それはツルギ達がちゃーんとしてくれるさ」
あんたの! 口から聞かせろやっ!! 依頼主だろーーがっ!!!
文句不満は山積みだが、それを口にしては埒が明かない。私は心を落ち着かせるために何度か深呼吸をし、ステージへ視線を戻す。
ティールもまた、困惑した表情を浮かべたままだが、私と同じようにステージを見る。
「では! ただいまより、『神子探し』のルール説明を行います♪」
「ルールは単純明快! 制限時間内に街中を逃げ回る《白い狐》に化けた僕達を捕まえること!」
この前、イグさんと街中で聞いた「走り回る」ってやつ、これのことだったのか。
二人から説明されたルールを大まかにまとめると、覚えておかなければならないのは三つ。
一つ、制限時間は二時間。その間にダミーとして精霊召喚された十数匹の白狐から神子の二人を見つけ、且つ、捕まえなければならない。
二つ、捕獲の際は、デバフ、妨害、索敵等の捕獲に関する技、魔法、術の使用可。
三つ、悪意のある工作、攻撃系統の技、魔法、術使用は直ちに騎士団に取り締まり案件となる。
こんなところだろうか。
しかし、二つ目の捕獲に関する技や魔法、術使用に関しては、あまり期待はできない気がする。双子は魔法耐性が強いと予想できるし、となれば生半可な妨害は意味をなさないだろうな。
「また、私達はまだまだ子供です。先程の舞で体力をかなり消耗しちゃいました。……なので、ハンデを設けさせてもらいます」
「ハンデ内容は簡単。今回の舞の演奏をしてくれた演奏者達の妨害です」
「妨害内容は演奏者達ごとに違いますので、お気をつけを。……あと、妨害に巻き込まれないようにお気をつけくださいね?」
つまり、参加者に不利な妨害をツバサちゃんサイドも行っていくらしい。
となると、ますますこちらの妨害はハードルが上がるってものだ。捕獲しようと仕掛けた罠を演奏者達がささっと解除してしまう可能性が高い。
普通にしようと思ったら難易度、高くないか? これ。
アラシ君は……事前に聞いている通りなら、この後は騎士団の仕事に戻るだろう。となると、アラシ君個人からの妨害はない。少なくとも、こちらが攻撃的にならない限りはアラシ君は手出ししてこないと言える。
レオン君は雷属性の妨害。
アリアちゃんは水系統の妨害……あるいは食べ物を使った妨害もあり得る。いや、どんな妨害だよと思うけども。
ミユルちゃんは植物を使った妨害。
シエル君は空からの妨害、或いは空中から探そうとする参加者への妨害。
……こんなところか。
ここまで考えたところで、私はほうっと息を吐き、にこりとルーメンさんに微笑みかける。この期に及んで、笑って誤魔化されんぞ。
「ルーメンさん」
「む? なんじゃ、ラル?」
「状況はある程度、理解しました。捕獲とは、これに参加して二人を捕まえればいいと。でも、護衛ってなんですかね。それだけがさっぱり分からないんですが」
「うむ。まあ、そりゃそうじゃの~♪ すまぬな。実のところ、最後の依頼、あれは悪戯心が働いてしまってな~?」
あぁん!?
衝動のまま、ルーメンさんに掴みかかろうと一歩踏み出したところで、ティールに羽交い締めにされる。
「落ち着いて。勝てっこない」
「うるっせえぇぇぇ!! 一回殴ってもよくない!? 殴ろうとしても許されると思う!!」
「許されないから。……ごめんなさい、ルーメンさん、話をどうぞ」
ぐぬぬぬぬ~……っ!
「ほっほっ♪ 実際にお主らに受けてもらいたかったのは、洞窟の調査、及び石の採取の方。……神子の捕獲、護衛はついでみたいなものでな? ほれ、神子の捕獲だけ書いてもおもしろ……いや、変に勘ぐられる可能性もあるじゃろ。護衛とつけておけば、色々と誤魔化せるかなぁと思うてな~♪」
なぁにが面白くないって!? そして、何を誤魔化すつもりだったんだ!!??
「じゃから、最後の依頼については失敗したとしても咎めはせんし、何ら問題はない。……しかし、今後を考えるに孫達を捕まえた方が後々よいと思うんがの~?」
……何言ってんだ、このおじいちゃん。意味が分からないんですが。
と、ここまでの一連の流れを黙って見ていたアルドアーズさんが小さくため息をつく。
「相変わらず、ルゥは若い子らを騙すのが好きらしい。悪趣味だなぁ」
「なぁに……若いうちに色々と経験しておくべきだと思うとるだけじゃよ?」
「経験、ねぇ……?」
そう呟くと、訝しげにルーメンさんを見るも、アルドアーズさんはそれ以上、何も言わなかった。あの様子から、何度も似たようなやり取りはしているのだろう。
……経験とかそういう問題か、これは?
本部ではなんとも醜い争いが繰り広げている中、会場では参加者達のボルテージが最高潮に達していた。
そんな彼らのための説明をある程度終えたツバサちゃんは、にっこりと笑いながら人差し指をぴんっと立てる。
「──では、『神子探し』を開始……する前に、一つ補足させてください♪」
「今回、上手く僕達を捕まえた参加者には更なる祝福を授けます!」
「その祝福は一年間、ほんのちょっぴりいいことが起きる……そんな細やかなものではありますが、是非とも頑張って私達を捕まえてくださいねっ!」
補足説明を終え、二人は互いに目配せをすると、ほわっと二人の周りが白く淡い光に包まれ始める。
「それでは、大変お待たせしました……」
「ただいまより『神子探し』の……」
「「──始まりですっ!!」」
開始の合図と共にツバサちゃんとツルギ君は複数の白狐(精霊)達を召喚し、本人達の体も狐へと変化させる。
散り散りになってその場から駆け出していく精霊達に混じり、二人も街中へと消えていってしまった。
参加者達もまた、街中へ消えていった狐達の後を追いかけ、各々走り出していく。
「すっごい勢いだったな……ちょっとびっくりしちゃった」
「うふふっ♪ そうでしょ? ほら、ティールくん達も急がないと遅れちゃうわよ?」
「えっ」
「確かに。……お二人とも頑張ってあの子達を見つけて、捕まえてくださいね♪」
「えっっ!?」
なぁんで私達も参加する流れになってんだ。
いやまあ、依頼として捕獲を受けてしまったし、これに参加するのが道理なのかもしれんが。……失敗してもいいと言われてしまったし、真面目になる必要性も……いや、待て。
失敗してもいいとは、つまり、その可能性も少なからずあると思われている。私達では簡単に捕まえられないのでは、と思われている。……かも、しれない。
もちろん、そんな風に思われてない可能性だってある。あるけれど、少しでもそう思われるのは、いただけない。
そんなの、私のプライドが許さない。
「……ティール」
「うん?」
「スプランドゥールでの最後の仕事、行くよ」
その言葉にティールは私からそっと離れる。そして、どこか嬉しそうににっこりと笑った。
「うん。了解だよ、リーダー」
よし。じゃあ、早速だけど、どう動くか。
最短ルートを模索するなら、しーくんに索敵を任せて、私達が捜索に出るルートだろうか。となると、しーくんと合流して……
「おぉ! そうだった、ラル!」
「? はい、なんですか?」
「このイベントで雫の力を借りるのは禁止じゃ♪」
満面の笑みで何を言っておられるのでしょう、このおじいちゃんは。
「雫の索敵能力の高さについては知っておる。それを使われたら、他の参加者達が勝負にならんじゃろ? 公平を期すためと思って協力しておくれ?」
仲間の力を借りることが不公平だってのは、暴論やろがい!!
「それに、主らならば、雫の力を借りずとも捕まえることは可能じゃろう?」
ルーメンさんの挑戦的な笑みに何も言えなくなる。やってみせろ、と言わんばかりである。
あーあーあー!! やってやる! やってやろうじゃないの!!!
「ルーメンさん! アルドアーズさん!! しーくんがここに来たら、ここで待っているように伝えくださいっ! 行くぞ、ティール!」
「は、はーい……行ってきます、ルーメンさん。お祖父様。雫のこと、お願いします」
私は雷姫がきちんと装備されているか確認しながら、本部を出る。私に数秒遅れて、ティールも本部を出てきた。
「うむっ♪  頑張るのじゃぞ♪」
「雫くんのことは任された。二人とも、気を付けてなぁ~?」
と言う、二人からの労いの言葉(?)を背に私達は多くの参加者から遅れながらも街へと繰り出した。
やってやる! 見てろよ、こんにゃろー!!!


──ラルとティールが出ていった本部にて。
セラフィーヌとアルフォースもそれぞれの仕事のためか、数分前に本部を出ていき、残されたのはルーメンとアルドアーズの二人のみとなる。それでも、すぐに誰かはやって来るのだろうが。
つかの間の親友二人のみの空間。しかし、それに嬉々として浸る程、付き合いは短くない。
アルドアーズは隣でまったりと茶を啜るルーメンを一瞥し、呆れた様子で問いかける。
「ルゥ」
「なんじゃ? アズも茶、飲むか? そこに茶やらなんやらがあるから勝手に飲んでよいぞ~」
「では、遠慮なく。……ではなくてだ。先程は口を挟めんかったから黙っておったのだが」
静かにお湯を注ぐ音の後、再び、アルドアーズが口を開いた。
「二人のあの様子、あの『ジンクス』についてを知らんように見える。お前、話しとらんな?」
「おん? お~……そういえば、そうじゃった。いやはや、うっかりうっかり♪」
嘘つけ、わざだ、と思う。思うが、アルドアーズが知るルーメンという男は、こういう場面はあくまでシラを切る男である。突っ込んだところで、意味がないのを知っている。
「まあ、あくまでジンクスじゃ。後でも問題はなかろ?」
それはそうだ。しかし、ラルに言ったあの言葉は確実にジンクスを意識していたはずである。それなのにルーメンはわざと伝えなかった。
「……本当にお前という男は性格が悪いと思う」
「ほっほっほっ……お互い様じゃ」
「はん。……お前程ではないよ」
出来上がった茶を一口含み、ルーメンの隣に座る。
そして、先程、血気盛んに出ていった二人─主に血気盛んだったのはラルのみだが─を思い出す。
「ま、なるようになるか。……頑張れ、ティールや」



~あとがき~
長いけど、きりがいいところまでやりたかった。許してくれ!
そして、まさかの護衛任務はやらなくてもいいってよ。私も!! びっくりだよ!!!

次回、神子探し開催。

舞披露ら辺は真面目モードだったのに、ここにきて一気にいつものレイ学雰囲気に戻ってます。
やっぱ、はちゃめちゃしてる方が楽しいし、お偉いさんに振り回されるラルを書くのは楽しいっす。もちろん、真面目ラルも好きだけどな。
んでもって、ラスト部分は入れるか悩んだんですけど、入れちゃいました。それとなく大人な雰囲気なおじいちゃん二人。無邪気にじゃれ合うだけじゃないんだぜ!?(笑)

ではでは。