satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第307話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でもふもふしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとティールも『神子探し』に参加することとなり、それに当たっての作戦会議みたいなことをしました。
今回はきちっと探しますぞ!


《L side》
雷姫の探知を頼りに精霊が二匹で逃げているエリアへとやってきた。
「! ラル、いた!」
ティールが指差した方向に白い影が二つ。そして、それを追いかける複数人の大人達がいる。
「あ、あれがツルギ達だったらどうしよう?」
「うーん……そんときはそんときだけど」
こんなあっさりと見つかって、捕まるような子達ではないと思う。まあ、偏見だが。
それに、ハンデの話もある。目の前の大人数名に簡単に捕まるとも思えない。一旦は様子見で適当に距離を保ちつつ、追いかけるの方が吉だ。大人達と一緒に妨害に巻き込まれるのもごめんである。
いざとなれば、雷姫の“身体強化”で大人達は追い越せるし、問題ない。
『マスター、屋根の上からも精霊の気配を感じるぞ』
雷姫に言われ、ちらりと上を見る。
そこにも一匹、白狐がいる。こちらをじっと見つめるだけで、逃げも隠れもしていない。
……一匹だけなら、現状、優先順位は低い。とりあえず、放置で。
「追いかけるだけじゃ埒が明かねぇ!」
追いかけていた大人の一人がさっと呪文のようなものを唱えると、植物の蔓でできたネットを作り出す。そのネットを狐達に向けて発射した。
『マスター、別の精霊が来る』
雷姫の言葉通り、物陰からいきなり飛び出し、狐達とネットの間に割り込んできた。そして、バチンっと大きな火花を散らしたかと思えば、ネットが一瞬にして焼き切れてしまう。
「んなっ! ね、猫ぉ!?」
「にゃう」
突然の猫の出現に思わず大人達も足を止めた。にんまりと笑った黄色の猫はじりじりと詰め寄ってくる。
それはどこか、レオン君を思わせる不適な笑み。となると、あれは……?
「にゃふふ~♪」
「お、おい……なんか狙われてねぇか? つか、この猫、バチバチ言ってね?」
「え、猫の癖に……? ってぇ!?」
仲間の言葉を確かめるためなのか、そっと猫に手を伸ばした一人がすぐにその手を引っ込めた。
「こ、この猫、電気纏ってやがる! 強めの静電気くらいの威力だけど」
それは意味があるのかないのか分からないけど、まあ、好んで触ろうとは思えないか。
「にゃん?」
「こん?」
と、もう一匹が狐達に近寄って、こてんっと首を傾げる。それに倣って、狐達も首を傾げた。
「……にゃう♪」
何がどう会話が成立したのかは不明だが、後から現れた猫もにんまりと笑い、先に出てきた猫─分かりにくいので、先に出てきた猫をイチ、後の方をニイとでも呼ぶ─と合流し、二匹で大人達を追い詰めていく。
イチとニイはそれはもう楽しそうに大人達を狐から遠ざけようとしている。
この場では攻撃は使えない。だから、大人達としては攻撃して追い払うこともできない。……と、なれば。
「なんで俺達が猫に狙われてんだ!?」
「い、一旦引くぞ! この状況じゃあ、神子様を狙うなんて無理だ」
「せっかく見つけたのに……いって!! 近づくな!! 地味に痛い!!」
と、慌てたご様子でその場を立ち去っていく。猫達もこれで諦める……はずもなく。
イチとニイの目がキラリと光ると、「遊んでくれ!」とでも言うように全力疾走で大人達を追いかけていく。
「なんで着いてくるんだよぉぉぉぉ!!!???」
「立場が! 立場がおかしいって!!」
「にゃおぉぉぉんっ!!」
「みゃあぁぁぁんっ♪」
ご愁傷さまです。
後ろの方にいた私らには目もくれず、二匹の猫は大人達を颯爽と追いかけていってしまった。
ふと、狐達のいた方向を見てみるも、あんな茶番を眺めるほどお馬鹿さんではないようで、とっくに姿を消していた。
「レ、レオンらしい精霊だったね?」
「そだね。ま、あの二匹だけとは限らないし、私達も目をつけられないように─」
『マスター、ちと手遅れじゃ』
えっ?
どこからともなく現れた新たな猫。イチとニイと変わらず、にやりと笑う。
「にゃん」
「え、あれ、ぼくらを狙ってるのか……?」
「にゃんっ」
ティールの言葉に返事をし、それが当然のように彼に近づいた。ティールは驚きつつも、鍛えられた反応速度で猫の飛び付きから逃れる。伊達に探検隊を五年も続けてはいないということだ。
しかし、猫の方はその一回で諦めるはずもなく。
「にゃんっ!」
「ひえぇっ!? なんでぼくばっかり!!」
再びティールに飛び付こうとしては、それを彼が避ける。そして、猫がまた飛び付き、それを避ける。……それを何度も繰り返し、いたちごっこ状態になってしまった。
「ラ、ラル! 助けて~!!」
「いいなぁ、猫に好かれる人生。ティール、得してるなぁ」
「絶対に違う! レオンのせいだよ! レオンの意思がそうさせてるんだってー! って、いったぁ!?」
いくらティールの反応がよくても、相手は小さく小回りの利く猫。そう何度も避けられる相手ではない。
また、直接触らなくとも、電気が通れる程の近さまで寄ってしまえば、静電気は発生する。ティールはそれの餌食になってしまったと言える。
ティールは強めの静電気を受け、猫から必要以上に距離を取り、何の意思か魔具である懐中時計を構える。
「攻撃技は違反行為だぞー」
「防御のための構えだよ!!」
「にゃおーん♪」
一発、ティールにお見舞いして満足したのか、今度は私の方を見る。今度はお前の番だ、とでも言いたいのか。
『マスター、どうするのだ』
「ふっふっふ……私のこと、無視してるのかと思っちゃってたよ、猫ちゃん。さあ、かもーーん! 私は逃げも隠れもしません! おいで~♪」
「はあ!? 頭、バクってんの!!??」
『……マスター』
ティールの突っ込みと雷姫の呆れ声は無視し、飛び付いてくるであろう猫を両手を広げて、正しくウェルカム状態で迎え入れる。
猫は猫で「覚悟しろ!」とでも言いたげにキッと睨むと、勢いよく飛び込んできた。もちろん、広げていた両腕でキャッチしてやる。
「よっと……んふふ♪ 可愛いやつだな? ほれほれ~♪」
「にゃ、にゃあ? にゃ……にゃにゃ~ん♪」
私の反応に戸惑いつつも、猫は撫でられて気持ちいいのだろう。すぐに幸せそうに喉を鳴らし始めた。
短毛種ながらも、触り心地のよいもふもふ感。そして、程よく鍛えられている身体。身体だけで言えば、野生の猫って感じだが、毛並みは完璧に家猫並みに整えられている。
「よきかなよきかな~♪ 短毛種は短毛種のよさがある! 気持ちいいもふもふだ~♪」
「なう~ん♪」
「え、な、なんで?」
「私に雷属性の攻撃なんて無意味だよぉ。雷姫ちゃんのエサだ、エーサ♪」
雷姫は電気を操れる。その能力を使い、本来、私が受けるはずの電気を雷姫が自動的に吸収してくれているのだ。
もちろん、これは雷姫を装備しているからこそできる芸当だ。雷姫なしだと、普通に私も静電気は受けてしまう。
「ズ、ズルくない……?」
「何を仰いますの。私は自分の武器の能力を生かしてるだけだよ? ティールだってスイちゃんやセツちゃんの力、使うでしょ?」
「いや、使うけど……そういうことなの? っていうか、そういうことできるなら、ぼくを助けてくれてもよくない?」
「いやぁ、猫に追いかけ回されるティール、見てて面白くてさ?」
「意地悪……っ! 鬼!!」
いや、それは言いすぎだろ。
『……ふむ。まずまずじゃの。我としては、マスターを食らう方が好みだ』
うん。怖いこと言わないでね。
「にゃにゃにゃんっ!!」
「げっ!? なんかいっぱい来た!?」
どこかでレオン君が見ていたのだろうか? 私を倒すべく多くの猫をこちらへ寄越してきたのかもしれない。
「合計七匹。……あれを一度に近づけられたら、いくら静電気並みの攻撃力とは言え、ちょっとあれだな」
「ラル、流石に逃げよう」
「だねぇ~……? いや、でも、七匹の猫が同時に飛び込んでくるのは魅力的では……?」
「魅力的じゃないっ! 行くよ!」
ティールが強引に私の腕を掴み、一気に走り出した。撫でていた猫は肩に乗せ、とりあえず、ティールに従って走っていく。
「なんでその猫は大人しくラルに従ってんだ!?」
「ん? もうちょっと撫でられたいんだよね?」
「にゃっ!」
と、元気よく肯定。なんて可愛いんでしょう。よしよし、ブラッシングもしてあげようね!
「敵のくせに!? ラル、これに制限時間あるの忘れてないよね!」
「大した時間はかからないよ。私の鍛えられたブラッシング力を舐めないでほしいな?」
「何言ってるか理解できない!」
無駄話をしながら逃げてはいるが、先程の大人達の例がある。あの子達がレオン君の精霊である以上、ただ逃げる私達を諦めてよそに行くとは考えにくい。
ちらりと後ろを振り返ってみると、当然のように私達を追いかける猫軍団。あの数を短時間で引き離すのは難しいが、時間をかけて撒くことは可能だ。しかし、ティールの言う通り、これには制限時間がある。はてさて、どうしたものか。
数秒だけ考え、一つの答えに辿り着く。
……うん。手っ取り早く、懐柔しちゃおっかな?
逃げていた足を止め、くるりと振り返る。突然、足を止める私にティールも驚きつつも、その場で立ち止まった。
「ちょ、ラル? どうしたの?」
ティールは一定距離離れてて。私があの猫ちゃん達をどうにかして見せるから」
「でも、ラルだってさっき」
そう。一匹で強めの静電気。それが七匹同時に襲いかかってきたら、嫌だな、とは言った。
しかし、それはあくまで雷姫の力を借りなかった場合の話だ。
私は肩に乗る猫をそっと撫でる。私は感じないだけで、この猫はずっと私に対して電気を放っていた。それを雷姫が無効化──それを喰らい続けている。
「雷姫、この子だけの電気で満足してないよね?」
『当然』
だよね。……信じるよ、私の愛刀の力を!
私は目一杯両手を広げて、七匹全員を受け止める覚悟を決める。
「さあ! 私に飛び込んでこーーい! んでもって、全員、もふもふさせろー!!」
「もふもふ!? いや、趣旨変わってんだが!?」


白フードを被り、猫の仮面をつけた人物がどこからか現れた。そして、仏頂面で一点を見つめる青年に話しかける。
「ありゃあ? やっぱ、駄目か~♪」
「君のせいだからね。責任取ってくれないと困るんだけど」
猫の仮面の人物──レオンはそれを外し、ニコニコ笑いながら、ティールの言葉を否定した。
「いやいや~? それは濡れ衣ってやつだって。俺だって想定外だったぞ。ラルに電気効かないなんて知らなかったし?」
「そこじゃなくて」
ティールは見つめていた先、そこには彼のパートナーであるラルがいる。
彼女は現在、レオンが呼び出した精霊達に囲まれ、心底嬉しそうに戯れ──もとい、猫達のもふもふを堪能していた。
「ラル相手に小動物を襲わせた責任取って」
「にゃはは! あれも予想外♪ 俺としては上手く呼び出せたんだぜ? 魔法や技に対して強力な電撃を、人間相手には静電気程度の電撃を使い分ける雷猫……だったんだけどな? どっちにしても、ラルには無意味だったみたいだな♪ いや、ある意味、効果覿面……かな?」
電撃は効かなくとも、彼女にとっては“もふもふ”攻撃が何より効果抜群だったらしい。レオンが描いた計画とは全く異なるものの、スカイの二人にとっては十分な足止め行為となった。レオンとしては、嬉しい誤算となったわけだ。ティールにとっては、全く嬉しくないだろうが。
「まあ、俺の仕事は参加者達の妨害だし? 今回は許してくれ、な?」
「……確かに、そうだけどね」
「にしし♪ 俺はそろそろ別のとこの妨害行ってくるわ♪ んじゃあな!」
「このイベント中、二度と出会わないことを祈ってる」
「それはティールの運次第だな~♪」
レオンは再び仮面をつけ直すと、猫のような身のこなしで屋根を伝い、その場を立ち去った。ティールはそれを無言で見つめていたが、すぐに手元の懐中時計に目を落とす。
「……大幅なタイムロスだな」
──『神子探し』終了まで、残り一時間。



~あとがき~
長いけど、書いてて楽しかった。満足!(笑)

次回、神子探し後編。
……になるといいな!

え。時間経ちすぎじゃね?? って思われるかもですが、そもそもラルとティールは出遅れ組。そこから更に、作戦会議~猫精霊達と戯れまであるので、そこそこ時間が経ったと思ってくだされ。
ってことは、それなりに猫と戯れてるってことです。誰だ。時間限られてるから効率的にやらねばと作戦立てたやつ。戯れるんじゃない!

この話、私がやりたくて、相方の許可もいただいてそれなりに加筆してます。楽しかったです。久々にラルがもふもふに埋もれるところを書きました。いつの間にか私の中で、彼女はもふもふマスターになってた……そんな称号与えたつもりなかったんだけど、まあ、いいか。

ではでは。