satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第242話

~前回までのあらすじ~
最後の案内先である図書館へとやってきました。何気に、最近はちょこちょこ出てくるライブの図書館です。
まあ、今回の視点は図書館ツアーしてるわちゃわちゃ組ではなく、男子二人の話なんすけどねー!


イブ達とセイラが図書館ツアーで和気藹々としている頃。
フォースはポチャを図書館の外まで連れ出し、くるりと向き直る。そこには困惑の色を隠せていないポチャがいる。説明もなしにここまで連れ出されたのだ。戸惑わない方が可笑しい。
「ど、どうしたの? 急に」
「急って訳でもねぇけど……単刀直入に聞くわ。お前、どう思ってるわけ?」
「どうって……何を」
「お前の親とか、現状とか。その辺?」
本人に聞く必要はどこにもない。能力で聴いてしまうのが手っ取り早いのだ。だが、フォースはそれをしなかった。能力で勝手に見聞きし、それらを知るのは違う気がしたのだ。回りくどくとも、本人の口から真意を聞き出したかった。……否。聞いてみたいと思った。
ポチャにとって、この話題は触れてほしくないのは、分かっていた。浜辺でブライトに対する態度やセイラの話から、上手くいっていないのは想像に難くない。
それでも、はっきりさせておく必要があると感じた。セイラがどうにかしたいと思っている。そして、恐らく、ポチャのパートナーのピカも同様に。
ならば、フォースにできることは一つ。ポチャの真意を聞くことだ。ポチャ自身、どうしたいのかで、今後の立ち回りも変わる。だからこそ、必要な情報なのだ。
「突然だなぁ……それを聞いて、フォースはどうするつもりなの?」
「お前の返答次第でどうとでもなる。何かするかもしれないし、何もしないかもしれない」
「それ、答えになってる?」
「少なくとも、おれの中では現段階での答えとして成り立ってるよ。お前だって、母親が子供に会いに来たとか、観光目当てだとは思ってないだろ」
フォースの言葉にポチャは反応を示すことなく押し黙った。図星なのだろう。
そして、どこか思案するように空を見上げる。どこまで語ろうか考えているのかもしれないし、どう誤魔化そうか考えているだけなのかもしれない。どちらにせよ、フォースはポチャが何かを話すまで自分から切り出すつもりはないが。
しばらくの沈黙後、ポチャは空から目を離し、ちらりとフォースを見る。
「……フォースが単なる興味本位でこんなこと、聞くわけがないよね。他人の家族の問題なんて、君が一番触れなさそうな話題だ」
「まあね。……実際問題、ペンギン相手だから聞くだけ。別の誰かだったら、んなこと聞く気なんてねぇわ」
「そっか。……それは、ぼくを大切な仲間だって思ってくれてるってことかな。そうだと嬉しい」
それにフォースは答えなかった。単純に照れ臭く感じたのが理由だった。今まで、継承者以外にここまで踏み込んだ経験がないのもあるし、ポチャの素直な言葉に多少面喰らったのもある。
「えっと……フォースが知りたいのは、ぼくが今感じてるものが何なのか……なのかな?」
「そうだな……他はその答えを聞いてから言う」
「分かった。正直、親に対しては何も思ってないよ」
彼の答えは思っていたより意外だった。
セイラはともかく、出会い頭に喧嘩になりそうな雰囲気であったブライトに対しては、何らかのマイナス感情が飛んでくるものだと思っていたからだ。『嫌い』『苦手』『劣等感』……この辺りのものを想像していたのだ。
「父上は何も言わない人だからね。幼い頃は苦手意識がなかった訳じゃないけど、今は離れてるし。……ま、面と向かって話そうとすると、色々言いたいことが出てきて、喧嘩腰になってるのは認める」
「自覚あったんだな」
「一応はね。母上もおんなじ。昔みたいに今でも子供扱いしてくるのは好きじゃないけど……それが愛情なのは理解してる。……だから、二人のことは嫌いじゃないってことは確かだよ。これが、両親に対する気持ち、かな? でも、二人はぼくの親である前に、国の王と王妃だ。そこに劣等感は少なからず感じているよ。ぼくはブライト王のようになれない。セイラ妃みたいに愛される人ではない……って思ってる。その気持ちが劣等感を生んで、結果的に関係が悪くなってるんだろうね」
ポチャはポチャで、自身のことを客観視はしていたのだ。なぜ、二人に冷たく当たってしまうのか。どのように感じているのかを分析できていたのだ。できていて、どうすればいいのか分からないでいる。……そのような状態なのだろう。
「ぼくは、未来の王に相応しい人になるために国を出た。……まあ、あそこから出るための建前ではあったけど。それに、変わりたいって思いがあったのも事実」
「変わりたい?」
「うん。流されるような毎日から逃げたくて……父上のような強い人になりたくて、国を出た。外の世界なら、臆病なぼくを変えられるって思ったんだ。……実際は、ピカに会うまで全くだったな」
「……なるほどね。つまり、父親であり王でもあるあの人に、胸を張ってぼくは強くなりましたってのを見せつけたいと?」
「そこまでは言わないけど……でもまあ、そうかも。認めてもらいたいんだろうね。一種の承認欲求……かな?」
王子としての自分が未熟であると自覚しているからこそ、今のポチャ自身を見てほしいと思っている。家を出て、ここまで成長できたと見てほしい。認めてもらいたいと。
それは、幼子が親に褒めてもらうために努力するようなものなのだ。王族という特殊な立場で、普通な家庭環境になかったポチャだからこそ、子供っぽい理由ながらも今でもそう感じているのだろう。
「そもそも、お前はティール王子になりたいの? 探検隊のポチャになりたいの?」
と、確かめるために問い掛ける。その問いに戸惑いの色を隠せないポチャに、フォースは続ける。
「お前があの二人を嫌ってないのは分かった。現王とその王妃に未熟な王子である自分の存在が嫌いなのは分かった。……そして、お前が今の自分を認めてほしいと感じているのも理解した。でも、終着点はどこだ? お前は何に成る?」
「それは」
「未熟な王子が外での経験を経て、立派な王子に成りましたって言いたい? それとも、新しい道そのものを認めてもらいたい? ポチャ、そこを履き違えると取り返しがつかなくなるぞ」
今のポチャには恐らく、二つの道がある。
いつかは国へ戻り、指導者となる道。
祖国を捨て、一人の探検家となる道。
これは大きな決断になる。一度、選んでしまえば、片方はほぼほぼ閉ざされる道になるからだ。
話を聞く限りだと、その辺はあやふやに聞こえてきた。王子として認めてほしいのか、一人の人として認めてほしいのか。
だから、ここではっきりさせておく必要がある。面と向かって話すために……関係を進めるためには、必要な決断だ。
「今のぼくを認めてもらいたい。それは、王子ではなく、探検隊としてのぼく。……ピカの傍で、一緒にこれからもずっと探検隊をするって……彼女の傍にいるって決めたんだ」
ポチャは迷いのない瞳で力強く答える。
恐らく、初めは立派な王子になりたい気持ちも少しはあったのだろう。だが、ポチャは自分自身で居場所を見つけたのだ。王子ではなく、探索隊の一員のポチャという居場所を。
「ははっ……いいね。その『声』」
「ぼくの本心だからね。……まあ、これを素直に言えたら苦労はないけどさ」
「ん? 素直に話す必要はないんじゃねぇの?」
「え?」
不思議そうに首を傾げるポチャに、フォースは不敵に笑う。
「簡単だ。素直に話ができないんなら、直接ぶつかるしかないってやつだよ。バトルでコミュニケーション取ってこい」
「……えぇぇぇ!!??」



~あとがき~
久々の更新。前回更新、去年の五月だって。ほぼ一年ぶりじゃねぇかぁぁ!!??
ってことで、今やってるのはポチャのお話です。よろしくな!

次回、フォースの提案を聞いたポチャが取った行動とは?
……ってところまで書けたらいいね!(汗)

ポチャとフォースは男の子同士ってのもありますが、いいコンビだなぁって思います。
フォースって(一応)面倒見がいいので、誰とでも組ませられる感じではあるんですけどね。あと、メインキャラの男子組なので、仲良しではあります。
ま、好きなコンビはたくさんいるんですけど! 案外、ポチャ&フォースも好きっす。くだらない男子のノリとか書けますし。空海で書いた記憶ないけど(笑)

ではでは!