satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第309話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、もぐもぐアリアちゃんと対峙するスカイの二人! そんな感じですかね。
ラル「なぜ作者は困難な道を選ぶのか」
ティール「ここ、スルーしてよかったんだもんね?」
だ、だいじょーぶだぁ! ノープランだけど、なんとかなるさぁ!!
ラル、ティール「大丈夫かぁ……?」


《Te side》
なぜ、ぼくの相棒はこうも自信満々なのだろう。迂回した方が確実なのに。
泡を意図的に退かすことは可能だが、言い換えればそれくらいしかできない。下手に消しても、アリアの早撃ちの餌食になるだけで、なんの意味もない。
「まずは……ちょーっと失礼しますよ~?」
どう突破するのか説明する……のではなく、ずいっとぼくに近づいてきた。何をされるのかとドキッとしてしまうが、ラルはぼくのポーチに手を伸ばし、何かを取り出した。そして、取り出したそれを有無を言わさず、ぼくの耳につけてくる。
「……何、これ? ピアス?」
触ってみると、小さな何かが揺れるピアスを耳につけられていた。
というか、こんなのぼく、鞄にいれてたっけ? 記憶にないけど。
ティールのための装備品だから、私が勝手に入れてました。せっかくなので、ここで効果を試そうかなってね」
「……それってぼくを実験台にするつもりじゃあ」
これに対する返答はなく、代わりににこりと笑顔を返してくる。
こういうときは大抵、何かある。なんか起きる。え、怖い。
その笑顔にびくびくしているなんて彼女自身は思ってもいないだろう。いつもの調子で作戦を伝えてきた。
「まあ、やることは簡単だよ。ティールの能力で私をあっちまで運んでほしい。運ぶと言うか、ルートを作ってほしい」
それくらいなら、問題なく行える。ラルが通るときだけ、泡を退かせばいいのだから。全部をどうにかするより負担は軽い。
「なるほど。どんな風になってもいいの?」
「いいよ。別にまっすぐにルート開拓しなくてもいい。確実にノーダメージで進めるルートを用意してくれれば」
「分かった……けど、その後は」
ラルがどう渡るとしても、彼女の身のこなしならどうとでもなる。が、ぼくはそうもいかない。例えば、ぼくはラルみたいに屋根にひょいっと登って、あちら側に渡れない。そもそも、自分の能力を使って道を維持し続け、且つ、泡を避けながら反対側に渡る……なんて、滅茶苦茶面倒臭い……途中で泡に当たる自信しかないんだけど。
ぼくの言いたいことが分かったのだろう。ラルは笑顔のまま「そこは大丈夫」と一言。
「ここを突破する鍵は『私があっちに行く』ことだからね。ティールは私が運んであげる」
「ラル、が?」
意味が分からない。……分からない、けど。
「ラルができるって思ったんだよね」
「うん。でなきゃ、突破するなんて言わない」
自信たっぷりで余裕の笑顔。リーダーとしての顔つきに、ぼくは納得せざるを得ない。
「了解。ぼくは君のパートナーだ。信じるよ」
ぼくにできるのはラルの指示に従って、道を作ることだけ。その先は相棒の役目……そういうことなんだろう。
「任せて。必ず、抜けてみせるから。……私だってティールを信じてるもん」
「うん、知ってる。……ちゃんとその期待に応えてみせるさ」
そう。まずはぼくがラルをあちらへと進むためのルートを作らなければならない。無数の泡がふよふよと漂うここに、だ。
一つでも当たってしまえば、ラルは泡だらけになり、大幅なロスタイムとなる。ラルの言う最終作戦には間に合わない。
「……行ける?」
「私はいつでもOK!」
その場で軽い準備運動をしていたラルは元気よく答えてくれる。
その声にぼくも気持ちを切り替える。数回の深呼吸の後、右手を前に突き出す。
「スタートは三秒後で」
「了解。……雷姫、“身体強化”よろしく」
泡同士が当たらないように。
ラルに泡が当たらないように。
且つ、できる限り最短ルートを!
「──あやつり、“水遊び”!」
「しゃあっ!!」
まずは目の前の複数の泡を退かし、比較的泡の少ないところへラルを誘導していく。もちろん、周りの人が便乗できないよう、泡はすぐに元の位置へ戻しておくことを忘れないように。
アリアはどう考えて配置しているのか分からない。が、地面に近ければ近い程、泡同士の密度が高いのだ。もしかしたら、屋根伝いに精霊達が通るかもしれないと考えたのかもしれない。第一、捕獲する側のぼくらは足場の悪い屋根に上ってまで、精霊達を追いかけないから。
つまり、ラルを上へ誘導してあげれば、彼女は突破できる。
「ラル!」
「分かってる!」
何年、相棒やってると思っているのだ、と言いたげだ。まあ、それはこちらの台詞でもあるのだが。
ぼくだって、君の考えることくらい分かるんだから。
ラルは本来、精霊が通るための小さな足場を使い、上へ上へと上がっていく。そして、屋根へ上り、あっという間に反対側へと到着した。
うん。流石、ラル。君なら、そう通りたいと思うよね。
「スゲーな、あの嬢ちゃん!?」
「泡が勝手に避けてなかったか?」
「おい、坊主、何したんだ!?」
当然と言えば、当然の反応だ。何せ、どう頑張っても通れなかったここを少女が数十秒で通り抜けてしまったのだから。
それを目の当たりにした他の人達が一斉にぼくに詰め寄ってきた。そりゃ、彼女と一緒にいたのはぼくだし、そうなるとは思ってはいたけど。
「えーっと、ぼくは特に何もしてないです」
説明する義理はないので、適当に誤魔化しておく。……おきたいところなのだが、ここにいるってことは、どうにかして通りたいと思う人達の集まりな訳で。そんな人達が攻略法を知りたいと思うのは普遍の心理ってやつであって。
……つまり、何が言いたいかと言うと、ぼくに対する質問責めが止まらないってやつで。
「何かしたから、嬢ちゃんはあっちに行ったんだろ!?」
「あの泡、勝手に移動してたよな! 風の魔法でも使ったのか!」
「馬鹿! 魔法陣なんて出てなかったし、んなもん使ったら泡なんて割れちまうだろうが!!」
「あ、あはは……なんなんでしょうね~」
……ラ、ラルー! どうにかしてー!!??
と、思った瞬間。
視界が一気に光に包まれ、目を開けていられなくなる。その後、刹那の浮遊感を体感したと思ったら、すぐに落下する感覚に襲われた。
「わっ!?」
これは転送やワープする感覚によく似ていた。……つまり、ぼくはどこかにワープした、のか? いや、どこかってどこに。
いや、待て。落下する直後、視界の端にラルがいたような? それもぼくの真下に。というか、落下した割には痛みをあまり感じない気が……なんなら、温もりすら感じるような……?
「……流石に空から降ってきた男子を華麗にキャッチは無理だわ。フォース君やティールじゃないからなぁ」
という、苦笑混じりに彼女の声が耳元で聞こえた。
それだけでどんな状況なのか察する。
ぼくはなんらかの効果により、ラルの真上にワープ。そして、自然の法則に従って落下し、ラルを文字通り押し倒してしまった……のだろう。
それを理解するのに数秒かかり、大慌てで─ついでに顔を真っ赤にさせつつ─ラルから体を離す。
「……っ! ごめんっ!! ほんっとうにごめん! 怪我してない!?」
「うん。そりゃ、雷姫の“身体強化”があるからね。この程度で怪我なんてしないよ。それでも、ティールを受け止められなかったけどね~? 一応、頑張ってみたんだけど」
確かに彼女の言う通り、先程まで、ぼくに腕が回されていた。つまり、成功していたら、ぼくはラルに抱っこされてたかもしれない。
……いやいやいや、待って! 恥ずかしすぎるが!?
それ以前にお、女の子……ラルを押し倒して……そのとき、変なところ触ってないよな!? 大丈夫ですよね!!??
「それに座標がちょっとミスってたみたいだから。……うぅん。もうちょい調整しなきゃかぁ」
気にしてない!! 嘘だろ!
あ、まあ、うん。そうですよね。こういう事故は一度や二度じゃない。今までにも数え切れない程やってきている。今更、恥ずかしがる必要もないはずだ。
それなのに、こんなに意識するぼくってなんなの……っ!?
「? ティール?」
「な、何でもないです……はい」
「そう? なら……その、ですね」
と、気にしてないはずのラルが少し顔を赤らめつつふいっと視線を外す。そして、とても言いにくそうにぼそっと一言。
「……そろそろどいてほしいな~って、思ってたり?」
……あ。
ラルからの密着からは離れていたけれど、彼女の上からは退いてはなかった。四つん這いで彼女を見下ろして、あれこれ思考を巡らせていたために、完全に忘れてた。
ぼくは再び大慌てで彼女から離れ、土下座でもするのかと突っ込みたくなるレベルで謝罪した。
「ごごご、ごめんなさいっ!! 早く退けばよかったよね!!」
「あはは。いいよ♪ ティールに怪我なくてよかった」
「それは、こっちの台詞……本当にごめん」
「いいってば。いつもの事故だって。気にしてない」
そ、そうだよね。いつもの事故と変わらない……よな。
く、くそ……なんなんだ、これ。
「……なぁに? 滅茶苦茶、赤くなってるじゃん。もしかして、事故とはいえこーんな美少女と密着したのが嬉しいの? ほーう? いつも紳士なティールでもそういうの、嬉しいんだぁ?」
にやにやとどこか面白そうにぼくの顔を覗き込むラル。言い回しからして、完全にからかっていると分かる。分かってはいるけれど。
「ば……っ!? これはっ」
「ん~? 何かにゃぁ~?」
これは、多分、ぼくが君のことを……!
「? ん……あ、おふざけも大概にしないと、ショートカットした意味がなくなるな。ティール、立てる?」
ラルはおふざけモードをぴたっとやめると、すくっと立ち上がり、ぼくに向かって手を差し伸べる。いつもの優しい笑顔で、当たり前のように。
「……うん、ありがと」
「いえいえ♪ じゃ、行こうか。種明かしは移動しながらしてあげるよ」
「当然だろ。して貰わなきゃ困る」
「あはは! 怒んないでよ~♪ ちゃんとするから!」
けらけらと楽しそうに笑うラル。本当にラルはさっきのことを事故だと、いつものやつだと思っているんだろう。それで問題はない。というか、それが当然なのだ。問題があるとするなら。
……ぼくは、さっき何て言おうとした。勢いに任せて、何と言おうとした?
「…………くそ」
自分のことなのに全く分からない。何て言おうとした。
未だ熱の冷めない顔を手で覆いつつ、ちらりと後ろを振り返る。泡で埋め尽くされた大通りの先に、数名の大人達が変わらず立ち往生しているのが見えた。
もしかしたら、さっきのやつ、見られていたかもしれない。まあ、会話までは聞こえるはずもないけれど。
そう考えたら、今度は恥ずかしさが込み上げてきて、それを隠すため─やられた方は半ば理不尽だと思いつつも─、泡を操作して、大人達へ些細な妨害を図る。離れたところで悲鳴が聞こえて、間髪入れずに銃声も聞こえてきたところを見るに、誰かが泡に触れてしまったのだろう。
「鬼だな、ティール」
「……一応、彼らも敵だろ?」
「くふふ♪ 違いない。さて、行きますか」
「了解」
大丈夫。もう、いつものぼくだ。
この後、ラルの顔を見ても、どうかいつも通りに振る舞えるようにと願いながら、彼女の後ろについていった。



~あとがき~
おかしい。アリアちゃんの泡攻略の話のはずなのに、後半はいちゃいちゃしてる!
ここまでいちゃいちゃしてるのに、付き合ってねぇんだよ! おかしい!!

次回、ワープの種明かしと最終作戦の話。

今回はティール視点だったので、この事故をラルがどう思ってるのか分かりません。そもそも、ラルは基本的にポーカーフェイスなので、動じてないように見せるのはお手のものです。仮にそれができなくなって、恥じらいを見せてても、それすら演技だと思わせられる程、口が達者だし、本音を隠せる人なので、ラル以外の視点だとマジで見えない。悪女かよ。
いつゴールインすんだろね。この二人。
とりあえず、宣言しておくけど、レイ学世界線の二人にバッドエンドなんて存在しないので、二人の頑張り次第では末長く幸せになれます。やったね。
ってことで、ゴールインはいつなんでしょうね?(二回目)

ではでは。