satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第311話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃっとしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はティールが突然ワープした理由だったり、双子捕獲作戦の話をしたりしました。そんなラルの目の前に一匹の狐ちゃんが!
ということで、今回で『神子探し』は終わると思います。
ラル「……神子探しは?」
そう。神子探しは。


《L side》
私は白狐と目線を合わせ、ふっと笑って見せる。そして、ゆっくり両手を広げ、こちらに来るように促す。
それを見た狐は私の突然の行動に戸惑い、辺りをキョロキョロを見回す。これが自分に向けられたものなのか判断しきれないと言ったところだろうか。
大丈夫。これはあなただけに向けたもの。安心して飛び込んできていい。
「だから、こっちにおいで?」
この言葉が聞こえていたか定かではない。それなりに距離があるし、本当は聞こえていなかったかもしれない。それでも、狐はその言葉に返事をするように一鳴きすると、突起物から飛び降りた。そして、一直線にこちらへと駆け寄ってくる。
と、ここまでは予想通り。後はこの場に片割れがいるかどうかだが。
「コンッ!!」
──いた。
どこから飛び出したのか、もう一匹が強めに一鳴きする。駆け寄ろうとする相方を止めようと慌てて出てきたのかもしれないし、手を広げ誘い出したように見えた私を威嚇したかったのかもしれない。
けれど、君が姿を見せた時点でチェックメイトだ。
「これで捕らえた!」
「!?」
噴水から絶え間なく流れる水を操り、ティールは水の檻を作り出すと、そこに狐を閉じ込めた。閉じ込められた狐は驚きのあまり、体を強張らせ、逃げる素振りすら見せない。その隙にティールは狐を掴み、能力を解除するのと同時にそっと抱き上げた。
「捕獲完了、と」
「流石、ティール。こっちもOKだよ」
ティールの捕獲劇に目もくれず、一目散に私のところへ駆け寄ってくれた狐ちゃんはしっかりと私の腕の中に収まっていた。私に甘えるように顔をすりすりと寄せてくる辺り、大変可愛らしい。
「あーん! このまま堪能したーーい!」
「やめろ。時間切れになる。……君、ツルギだろ?」
「むぅ。ティールのけち。……さて、あなたはツバサちゃんだよね」
うぐぅ……っ!」
「ほえ?」
私達の呼び掛けが変化が解けるトリガーだったようだ。先程まで可愛らしい白狐達が見慣れた狐族の姿になる。
ティールに抱っこされるツルギ君はどこか悔しそうにし、私に抱っこされているツバサちゃんは未だ現状を理解していないようだけれど。
「……とにかく、これで依頼は無事完了ね」
「ここまで色々あったけどな」
「まあねん♪ ふっふっふー……見たか、ドSジジィめー! こちとら、やってやったぞぉぉ!!??」
「……それをここで誇るのは微妙じゃない?」
うるせぇ!
ツバサちゃん達が姿を明かしたところで、観客達は─丁度、噴水広場付近にいただけかもしれないけれど─歓声を上げ、割れんばかりの拍手を私達に送る。
「……?」
疲労からなのか、はたまた素なのか。現状把握ができていないらしいツバサちゃんはこてんと首を傾げたままだ。そんな姿も大変愛らしいのだけれど。
「……! ズルいぞ、ラル!!」
ほわわんっとしている妹とは対称的にいち早く状況整理を終えたらしいツルギ君。彼は目を吊り上げながら、私をビシッと指差した。
「疲れてるツバサを油断させて、誘い出したんだろ!! 最低だぞ、この誘惑魔!!」
まだ言うか、それ。そして、その文句の付け方はどうなんだろう。論破してくれって言ってる? しちゃうよ、論破。
「心外だなぁ。この催し物って君達を捕獲することが目的よね。それなら、ルールの範囲内であれば、どんな方法でも問題ないんじゃないかな?」
「う……そ、それは……っ!」
「現に私はツバサちゃんに攻撃なんてしてないし、洗脳の類いを使ってすらいない。ただこっちに来てくれたらいいな~って思いながら手を広げただけですけど? それの何が狡いんでしょう? なぁにが最低だってぇ~?」
「むうぅぅっ!!!」
ツルギ君は頬を膨らませ不機嫌そうにするだけで、これ以上の反論はしてこなかった。
ふふん、この程度で私に勝とうなんて百年早いわ! 出直してきなさい!
膨れっ面のツルギ君をあやすようにティールがぽんぽんっと頭を撫でる。そして、呆れた様子でこちらをちらりを見た。
「ったく。ラル、もう少し言い方ってもんがあるよね? 何が楽しくて年下言い負かしてるのさ」
「仕掛けてきたの、そっちですが? 私は被害者だよね?」
「そこに関しては何も言えないけど、言い方は変えられるでしょ? ツルギだって疲れてるんだし、余計なことさせないで」
お前はツルギ君の保護者か何かですか。私よりツルギ君が大事なのかっ!?
そして、ツルギ君はティールに抱っこされている状況が嬉しいのか、耳と尻尾を控えめながらも揺らしている。これでは、私のところへ駆け寄ってきたツバサちゃんを悪く言うのも違うだろう。
「分かった。百歩譲って、言い方が悪かったとするよ。でも、ツルギ君もツバサちゃんのことは言えないよね? 尻尾、揺れてるし。つまり、ティールに捕まえてもらって嬉しいってことだろ」
「んなっ!? そ、そんなことないやいっ! め、滅茶苦茶、悔しいし!?」
言葉と態度が合ってないのですが、それは。
「……あっ!! ラルさん達も『神子探し』の参加者でした!」
ありゃあ? それ、今更気づいたのか。まあ、気づいたところでこちらの勝ちなんだけれどね。
時間ギリギリとはいえ、双子を捕まえたことで『神子探し』もここで終了だ。
二人を地面に下ろすと、ツバサちゃんは「こちらへ」と笑顔で手招きしてくる。
「始まる前にお伝えした通り、お二人に祝福を授けますので、ステージに上がってください♪」
……あ、そういえばそんなこと言ってたかも。とは言え、舞を披露したときのそれとは別物なのだろうか。
周りの観客……もとい、参加者達も噴水広場に戻りつつある中、私達はステージへ向かう。その移動の際、そんな質問してみると、ツバサちゃんはにこっと笑う。
「そうですねぇ~……それよりもほんの少し強めなやつだと思ってくれれば!」
強めのやつ。
「強めって言ったって、大層なもんじゃないよ。効果は一年間続くんだけど……なんだろ……? 道でよく小銭拾うとか」
そ、それは運気上がっているのでしょうか……?
「あとは……ティール達で言うと、ダンジョン内のレアドロップ率がちょっと上がるとか、そんなもんだよ」
ツルギ君は平然と言っているが、それだけを聞くとそこそこよいのでは!?
「あの、ツルギ君」
「な、なんだよ」
「その祝福でティールの方向音痴、解消されますか。不運体質、どうにかなりますか!?」
「ラル!?」
「え! えっと……方向音痴は分かんないけど、不運なことからなら、少しは遭遇しにくくなる、と思う?」
アバウトな質問をしてしまったために、ツルギ君も首を傾げながら答えた。それでも、少し位は希望を持ってもいいというお話を聞けただけでも満足です、私!
「……でも、あれだぞ。一年間だけだぞ?」
あぁ!? 一年間だけかぁぁ!!
「ラル! なんか恥ずかしいからやめて!?」
何が! ティールに関することですが!?
……という、どうでもいい会話をしながら、私達はステージの中央へと移動してきた。『神子探し』のスタート宣言したときに出ていた水柱はいつの間にか姿を消し、最初のステージの状態に戻っている。
「では、これから『神子の祝福』の祈祷をしますので、こちらに立っててもらえますか?」
と、ツバサちゃんは自分達の正面に立つように促してきた。私とティールはそれに素直に従い、他の観客から背を向ける形でツバサちゃん達の正面に立つ。
「それでは……今年、『神子探し』を達成したお二人に」
「『神子の祝福』を授けましょう」
双子は再び取り出した神楽鈴をチリンと鳴らす。そして、声を揃え、唄を紡ぐ。
それは舞の時よりも短いものの、私達に聴かせるため、丁寧にゆったりと神楽鈴を鳴らしながら奏でられていく。
すると、鈴の音色に合わせ、どこからか淡い光がふわりと現れ、私とティールの体を優しく包み込んでいった。その光は長く続くものではなく、二人の唄が終わりを迎えると共に光も消えてしまった。
「これで、一年間『神子の祝福』がお二人をお守りするでしょう」
「どうか、今後のお二人に幸あらんことを」
ツルギ君とツバサちゃんの締めの言葉に辺りから拍手の音が響いてきた。二人に対する尊敬の念なのか、私達に対する称賛の念なのか……判断はつけられなかった。が、これだけは分かる。
「な、なんかこの空気は気恥ずかしいな……」
「同意。……ま、すぐになくなるよ、多分」
私達はこのなんとも言えない気まずさを抱えていたものの、それを吹き飛ばしたのは空に咲く花だった。
耳を塞ぎたくなる程の破裂音と共に、煌びやかな花火が打ち上がったのだ。それも一回ではなく、何度も、それも様々な花を空に咲かせていく。観客達もそちらに目を奪われ、歓声を上げていた。
私とティールは互いに顔を見合わせ、思わず、吹き出してしまった。
「あははっ♪ ほんとに一瞬だったね?」
「ん。けど、助かった」
だね。言えてるわ。



~あとがき~
終わった! 無理やり終わらせた感なくはないが、終わった!!

次回、女神祭終幕!
終幕って書き方で合ってるかな。まあ、終わりってことが伝わればよき!

長かったですね、女神祭。
でも、終始シリアスしてるわけでもなかったし、バトルしてるわけでもなかったので、楽しく書けました。よきかなよきかな。
さて、スプランドゥールの夏もそろそろ終わりですかね~……ラストスパート、頑張ります。
ゆーて、ラル達の夏はまだまだこれからだけどなぁ!?

ではでは!