satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第319話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ミルティアさんとラルの対話パート。
今回で終わる……お、おわ……る? と思います?
ラル「なんで疑問っ!?」
ミルティア「あはは♪」


《L side》
私がこんな質問をするとは思ってなかったのだろうか。ミルティアは驚いたような表情を浮かべ、何かをするでもなく沈黙した。
私としてはずっと気になっていた。
世界のため、家族のため、その選択をしたんだろう。きっと、それしかなかったから。
でも、最愛の家族と、パートナーと離れるのは嫌だったはずだし、恐怖なんかもあったと思う。
それなのに今はこうして明るく振る舞い、あたかも笑い話のようにしてしまうのは、なぜなのか、と。
ミルティアはふっと表情を元に戻し、街の夜景へ視線を移した。
「そうだねぇ……当時はそれしか方法がなくて、恐怖も存在してたよ。……でも、ラルちゃんなら分かるんじゃないかな。こういう時、何を思って、どうしたらいいのかってさ。そういう感性は似てると思うんだよね、私達」
今度は私が黙る番だった。
私だったら何を思うのか。どうするのか。
死への恐怖。
大好きな人達を置いていく悲しみ。
信頼してくれているパートナーへの罪悪感。
色んな負の感情を抱きつつも、それらは押し殺してしまう。そして、私一人で実行するんだろう。
皆を助けられるなら、私の命なんて安いものだと言い訳をして。
「例え、私がいなくなって悲しむ人がいたとしても、それ以上に救える命があるのなら。……何度時間が繰り返されても、私は同じ選択をする。……って、私は思ってたんだけどね。あの人は違ったみたい」
「……あの人?」
ミルティアは小さく笑い、くるっと私の方を振り返る。そこにはどこか寂しさが窺えて。
「ラルちゃんも視たんじゃないかな? 私と一緒にいたアルマだよ」
「顔までは視てないですが……黒マントの」
「そう。……ちょっと昔話してもいいかな?」
私が黙って頷くと、ミルティアは「ありがとう」と小さく笑う。
「私が世界に命を捧げた日。……その日、私は一人で身を投げたの。それで丸く収まるはずだったんだけど、予想外というか、予定外なことが起きちゃって」
予定外を起こしたのが、アルマ?
「そ。私が身投げした時、彼も落ちてきたの。流石の私もアルマのこと、落ちながらだけど叱っちゃった。……でもね」
先程まで憂いを帯びていた瞳は今はなく、パッと嬉しそうに微笑んだ。
「あの人、『お前のいない平和な世界で苦しみながら生きるのなら、俺はお前と共に死を選ぶ』って言うんだよ? 馬鹿だなぁって思った。けど、同時に嬉しくなっちゃった。あの時代で、私と彼は一緒にいられなかったから」
ミルティアの考える幸せとアルマの考える幸せは違ったのだろう。
ミルティアはアルマに生きてほしいと思っていた。だからこそ、一人で犠牲になる道を選んだのだから。けれど、アルマはミルティアのいない世界に幸せはないと思ってしまったんだろう。
だから、共に死ぬ選択をした。
それにミルティアは呆れつつも、許した。
それはきっと、ミルティアもアルマと共にいたかったから。……きっと、最期の瞬間まで。
それを叶えられた二人は幸せだっただろう。
ハッピーエンドではないにしろ、二人にとってはトゥルーエンドではあって。
仮に、私はそうなったら、受け入れられるんだろうか。私のした最善で最悪の選択に誰かが伴うことになってしまったら。
……あぁ、それはきっと、私にとってのバッドエンドになる気がする。
一人が二人になった時点で、私の考え得る一番のバッドエンドとなってしまうのだろうな。つくづく、自分勝手で身勝手な考えだと思うけれど。
「? ラルちゃん?」
「……何でもないです。変な質問してごめんなさい」
「ううん。なんでも答えるって言ったからね♪ 後は何かあるかな?」
「いえ。今のところはありません。ありがとうございました」
「いえいえ♪ もし何かあれば、来年また会いに来てくれたらお話しできるよ。なんなら、消えた私だから話せる天界のあれこれとか話しちゃうかもよ~♪」
滅茶苦茶、面白がってるな。言うつもりないだろう。仮にあったとしても聞きたくない。平穏な生活を送るってさっき決めたはずだ。好奇心がないとは言わないが、平和が一番。
「遠慮します。神様に殺されたくないので」
「ありゃ、残念♪」
クスクスと面白そうに笑い、本当に冗談で言っていたんだろうなと感じる。
……冗談、だよね?
「じゃあ、そろそろルーメンのところに戻ろっか~♪……って言いたいところなんだけど、最後に私から一つだけ」
「まだ、何か?」
「んーとね? これはアドバイスかな? 本当のところ、これを話すために二人になったと言っても過言じゃないかもね!」
え、あ、え? そこまで重要なアドバイス? しかし、私はミルティアに相談したいようなことも、した記憶もないけれど。
「まだ『ツバサ』として半年もない付き合いだけれど、そこでラルちゃんとティールくんを見てきた私からのアドバイスです」
「は、はぁ……?」
なぜ、ここでティールの名前が?
ミルティアは真剣な眼差しを私に向け、ピシッと指差した。さながら、何かを教える先生みたいに。
「ラルちゃんはもっと素直になった方が言いと思いますっ」
「す、素直……?」
「そ! 特にティールくんとの仲について! だって、ラルちゃん、ティールくんのこと好きだよね?」
そりゃあ、数年一緒に過ごしてきた仲間だし。好きじゃなきゃいないし、探検隊も組みませんけど。
「違うちがーう! 仲間とかパートナーとかじゃなく、一人の男の子として! 恋愛の話っ!」
「…………はあ!?」
真面目な話かと思ったら、そういう方向!? なぜ! 今!! ここで!?
流石に戸惑いが隠しきれず、数歩後退りしてしまう。そんな私を見て、ミルティアはクスクスと楽しそうに笑った。
「……ふふっ♪ いきなりごめんね? でも、ラルちゃんは本音を隠すのが上手だから。恋愛に限らず、もう少し素直になってもいいのかなーって思ったの♪」
初めからそう言えばいいよね……? 恋愛をジョブで持ってくる意味とは?
「ま、すぐに素直になれって言われてなれるものでもないと思うけどね? でも、少しでもいいから、ラルちゃんが素直になれば……私が視た未来よりも早く幸せになれれるかも?」
私が視た未来……ミルティアが“夢見”で何かを視た?
何を。どんなものを。
話の流れからすると、私の幸せな未来を視たみたいだが……単純にそんな未来の話を引き出すのにティールの名前を出す必要はない。
……と、なるとだ。待て? 待ってくれ。
幸せな未来。幸せな未来をどう定義するかにも風景は変わるが、恋愛を初めに話したとなると、その未来に私といるのは……?
そこまで考えて、頬が熱くなるのを感じた。
なんて馬鹿げた妄想をしているんだ。会話の流れからそう推測できるってだけだ。確証はないだろう。
「あの……私の何を視たんです」
「ふふっ♪ これ以上は私から言えないので秘密でーす♪」
否定させろ! この考えを!
ミルティアは心底楽しそうに笑い、ここへ来た時みたいにぎゅっと私の腕を掴む。
「よぉし! 今度こそ、ルーメンのところへ帰ろ~う♪」
「え、あ、ちょ……!?」
パチンっとミルティアが指を鳴らすと、ふわりと浮遊感が体を包み込む。
嘘だろ! ここで帰るの!?



~あとがき~
とりあえず、幸せな未来は約束された。よかったな、ラル。

次回、一方その頃。
久々にティール&ルーメンコンビ。

ラルはきっとミルティア&アルマの最期みたいな展開になったら、嬉しく思う前に、自分を責めるんだろうなと思います。こうなってしまった原因はなんなのかとか。どこで間違えたんだろうとか。
つかまあ、ラルの場合、そうならないように準備するんだろうけど。その辺、用意周到というか、卑怯ですからねぇ(笑)

ではでは。