satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第321話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ティール&ルーメンによる夜会話。この二人の会話は何回目なんすかね~?
まあ、どの夜会話に共通するのはティールのお悩み相談室になってるってところかな!(笑)


《Te side》
ルーメンさんは子供に寝物語を聞かせるような優しくゆったりとした声で、とある昔話をし始める。

─その昔、陸の国には民に慕われていた王族がいた。その王族は女神の血を引き継ぐ者達で、代々、心が清らかで優しい性格の者が多かった。
とある代の王女と王子の姉弟は、街中で花屋を営んでいた兄妹と出会い、各々が恋に落ちた。王女と花屋の兄、王子と花屋の妹……互いが互いを想い、愛を誓い合った仲となる。
それを知った民は喜ばしいことであると四人を祝福した。しかし、一部の貴族らは庶民と王族が共になることをよしとせず、やがて、花屋の兄妹に圧力をかけるようになってしまう。
花屋の兄妹は王族の姉弟に心配させまいと、貴族の執拗な嫌がらせにも耐え続けていた。その嫌がらせの事実を知った王族の姉弟からは普段の温厚な笑顔は消え、怒りに震える。そして、声を荒らげ、貴族らにこう言い放った。

「大切な人達も守れないで何が王族だ! 何が神の血を引き継ぎし者だ!
こんなことを続けるのであれば……私達は王族をやめる!!」

王族の姉弟は代々国宝として受け継がれてきた王笏を取り出し……─

パンッ!
突然響いた破裂音に思わず、肩を震わせる。
音の正体はルーメンさんが手を叩いたというなんてことのないものだった。
目を細め、にっこりと笑うルーメンさんが再び口を開く。
「……と、王族の姉弟は王笏をへし折り、揃って王族の身分を捨て去った。花屋の兄妹と一緒になるために庶民になったと言われておるよ」
受け継がれてきた国宝を壊してまで、愛する人と一緒になることを選んだのだ。
『? どしたの、てぃー?』
『なになにー? なにかあったー?』
こいつらを壊してまで、庶民になろうとは思わない。確かに鬱陶しいし、いなくなればいいのにって思うことも少なくない。けれど、ぼくには、無理だ。
まあ、話に出てきた王笏とぼくの持つこいつらとじゃ、状況が違いすぎるから、比べようがないけれど。
「その昔話を聞く限り、二人の親である王と王妃はどこにも出てきませんでしたね。反対とかしなかったんでしょうか?」
あくまで、国を仕切っていたのは王と王妃なはず。しかし、王族をやめると啖呵切ったのは、その子供達。子供にそんな権利があるとも思えなかった。
「当時の王と王妃も貴族達の横暴には困り果てておって、行く行くは身分制度を廃止しようとしていたらしい。そこに子供らの提案……特に反対もせんじゃろ」
な、なるほど。
話にもあるように、王族らは温厚な性格で平和を望む人達ばかりだったんだろう。
「うむ。そのため、このような陰湿な事件はいい印象がなかったんじゃろう。……まあ、今語った話は簡潔にまとめたもので、本来はもっと複雑な状況じゃったと思うがの。しかし、これがきっかけで陸の国から王族がなくなったのは事実じゃ」
ルーメンさんはお茶を一口飲み、一呼吸置く。そして、穏やかな笑みを浮かべた。
ティールもこの話のようにせよ、とは言わん。じゃが、身分を気にせず、お主の気持ちをラルに伝えてもよいと思うぞ。第一、身分云々を気にするのなら、セイラさんも元は普通の女性、旅人じゃった。二代続けて、伴侶が平民でも問題はなかろう♪」
まあ、それはそうかも知れない。
母さんが何を思って、どんな覚悟で父さんと一緒になったのか知らない。その逆も然り、だ。父さんは強いから、どんなことがあっても母さんを守れる自信があった……んだろうか。それとも、ルーメンさんみたいな後ろ楯があったから?
……その両方、かな。多分。
「心配はいらんぞ? 何かあったら、ワシも手助けしよう♪ 乗り掛かった船じゃ」
「……心強いです」
完全に不安が消えた訳じゃない。今でもラルとの関係が壊れるのは怖いし、嫌だ。ラルの本心を聞くのも、怖い。
……でも、このままもよくはないのも分かる。
「いつかは分かりませんが……ラルに思いを伝えます。必ず」
「うむ♪ そうするがよい」
「はい。ありがとうございます。お話してくださって」
「構わん構わん♪ その様子じゃと、ワシらの手助けなく、ラルに想いを告げられそうじゃな? 鈍感にぶちんライトとは雲泥の差じゃの~♪」
そこまで言われてしまう父さんはどうやって母さんと結婚したんだ。謎すぎる。
「──とーちゃくっ!」
こちらの話が終わるのと、ラル達の話が終わるのはほぼ同時だったんだろう。ミルティアとラルが転移魔法で部屋に戻ってきた。
「ただいま~♪ ティールくん、ラルちゃんを貸してくれてありがとね♪ おかげでゆっくり話できたよ!」
と、ミルティアは満面の笑みを浮かべる。隣にいるラルはどこか考え事をしているのか、大した反応はない。
「え、えーっと、はい。おかえりなさい?」
別にラルはぼくのものではないし、なんなら強引に連れていかれたわけで、貸した感覚もない。強いて言うなら、勝手に持ってかれた……って感じだったけどね?
「ミルティア様、おかえりなさいませ。ラルとはゆっくりと話せましたか?」
「うんっ♪ 十分にね!」
ルーメンさんにも笑顔を向け、大きく頷いて見せた。しかし、次の瞬間、両手で口を多い、大きな欠伸をした。
「おや……時間切れですかな?」
「ん~……みたいだねぇ~?」
ルーメンさんの言葉に返答をする間も小さく欠伸を漏らし、眠そうに目を擦っている。そこでようやくラルが顔を上げ、隣のミルティアをちらりと見た。
「……時間切れ?」
「うん。あくまで、この体の持ち主は『ツバサ・ケアル』だから。私はその体を借りているだけだし、活動限界はどうしてもね~」
「じゃあ、仮にまた会おうと思ったら、来年ですか?」
ぼくの質問にミルティアはゆったりと頷く。
「そだね♪ あと数回はこっちに出てこれると思うから。ま、私としては話したいことぜーんぶ話したし、満足なんだけど。……ってことで、ルーメン。話したいことがあれば、また来年だね~♪」
「そうですな。またお目にかかる日を心よりお待ちしております」
その言葉にミルティアは頷くと、パチンっと指を鳴らして、─目はミルティア本来の色のままだが─涼しげな甚平を着た、本来のツバサの姿に戻る。
そして、部屋の扉まで移動し、ぼくらの方を振り返ると、ひらひらと手を振ってきた。
「それじゃあね♪ 今後も私の転生体である『ツバサ』と仲良くしてくれると嬉しいなぁって思うっ♪」
「こ、こちらこそです!」
「……まあ、約束なので」
「うふふっ♪ では、おやすみなさい。ラルさん、ティールさん」
最後の最後でミルティアではなく、ツバサとして振る舞った彼女は、笑顔で部屋を出て行った。
不思議な人だった。本当に、不思議な人だった……
残されたぼくら三人にしんとした空気が流れる。誰が喋るでもなく、何かをするでもない、なんとなく気まずい空気が辺りを包み込んだ。
しかし、それも長くは続かなかった。沈黙を破ったのはルーメンさんだった。
「二人とも、色々あって疲れたじゃろ? 時間も大分経ってしまったし……今日はもう部屋に戻って休みなさい」
あ、と……もうそんな時間か。
「今日はお時間ありがとうございました。失礼します」
部屋の時計を確認したラルはペコリと頭を下げる。ばくもそれに倣い、ソファから立ち上がり、感謝の気持ちを込めて頭を下げた。
「いいんじゃよ♪ ゆっくり休むんじゃぞ~♪」
にこやかに手を振るルーメンさんに見送られながら、ぼくらは親方部屋を後にした。

自分達の部屋に戻る道中、ぼくらは言葉を交わすことはなく、ただただ歩いていた。
ラルが何を考えているのかは分からなかったけれど、ミルティアとの話を終えてから、どうにも口数が少ない。何を言われたのか、話したのか気にはならない訳じゃなかったけど、聞いても話してくれるとも思えない。
そして、ぼくはぼくで、ルーメンさんに言われたことを思い出していた。
身分なんて気にせず、自分の気持ちに正直になれ、と。
「……素直、ね」
「え?」
「何でもない」
「あ……そ、そう?」
ぼくが何か口走ったのかと思った。何でもないならよかったけど。
「……嘘。何でもあるわ。……ねぇ、ティール」
「え、何?」
ラルが歩みを止め、ぼくも止める。
彼女がいつになく真剣な瞳を真っ直ぐぼくに向けるから、思わず、肩に力が入ってしまう。
「前の……ルーメンさんに誘われた件、本当に私が決めていいの?」
「それは……ギルド入団の話?」
ラルは真剣な表情のまま小さく頷く。
ぼくは安心させたくて、笑顔を見せながら頷いた。
「ぼくの答えは前と変わらないよ。ラルがどんな選択をしても反対はしないし、君に付いていく」
「……そう」
「うん」
「ありがとう。改めて聞きたかっただけなの。……帰ろっか」
ふっと息を吐いたラルは薄く笑い、再び歩み始める。その後を少し遅れて、追いかける。
ここを発つまでに答えを出さなければならない。まだ数日あるけれど、ラルの中で答えが決まったんだろうか?
……大丈夫。どんな答えでもぼくは君といる。それだけは変わらないよ、ラル。



~あとがき~
長かった祭りも終わり。

次回、祭りの後の朝。

ちょいとおさらいをば。知らなくても大丈夫なレイ学世界観のお話です。
この世界には大まかに三つの国が存在します。陸、海、空。多分、それ以外にも小国がいくつもあったりしてそうではあるけど、大きなところってのはこの三つになります。
そのうちの陸だけが王権主義国家ではなく、各地に長、領主(その土地のリーダー的な人)が中心となり、地域を守り、複数人で国の運営をしてます。
ルーメンさん(……ついでにプリンは)その複数人で国の運営してるというメンバーの一人ってことっすね。どっかで言った気がしてるけど。
んでもって、これもどこかで言った気がするけど、海は名前だけめちゃ出てるブライトがトップ。空は……今後出る予定もないけど、クラウの父、ルフトって人です。出る予定もないけど、ルーメン、ブライト、ルフトは顔馴染みという謎設定があります。活かせる日は来るのか。

最後に。
少しずつではありますが、ラルとティールの関係性も変わってくるかなぁと。
明確に変わるのはまだ先なような気がしますけれど、のんびり温かく(?)見守ってくださればと。

ではでは!