satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第325話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で決断する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、チーム会議を経て、ラルが仲間達に自分の出した未来を語るところで終わってます。(正確は語る直前)
とまあ、答え合わせはルーメンさん相手に話すところでしてもらおうかと思います!


《L side》
ルーメンさんとの約束の時間ぴったりに部屋を訪れた私とティールは、部屋のソファに腰かける。目の前にはルーメンさんが座り、側には微笑むアルフォースさんが控えている。
アルフォースさんの淹れてくれたお茶を飲み、ルーメンさんが私達の方を向き直る。
「して、アルフォースによれば、ギルド入団の件を伝えに来てくれたそうじゃな。……早速、答えを聞いてもよいかの?」
その言葉に無言で頷き、一回だけ深呼吸をする。
……先程、チームからの同意は得ている。後はそれをルーメンさんに伝えるだけだ。
「その前に謝罪をさせてください。返事が遅くなってしまい、申し訳ありません」
「それについては構わんよ。ここを発つまで待つと言ったのはこちらだ。なんら問題はないさ♪ 無事に結論を出せたようで何よりじゃ」
「はい。……それで、入団するか否か、こちらの解答ですが──」
言葉の続きを紡ぐだけなのに、こんな緊張することがあるだろうか。無意識に震える手を押さえる手すらも無駄に力が入る。
「……大丈夫」
そっと私の手にティールの手が重なる。そして、そのまま優しく包み込んでくれた。
うん、大丈夫。そうだね。
もう一度、深呼吸をする。そして、しっかり目の前のルーメンさんを見据えた。
「──私達は、今回の話を受けようと思います」
この答えにルーメンさんはピクリと眉を動かし、アルフォースさんは笑顔を崩さなかった。それは、“夢見”で未来を知っていたからかもしれない。まあ、真相は分からないけど。
そして、この返答はルーメンさんにとって、予想してなかったのだろうか。多少なりとも意表が突けたようで何よりだ。
「しかし、入団するに辺り、こちらから条件を提示しても? それが受け入れてもらえるのなら、よい返事をしたと受け取ってもらって構いません」
「ふむ。よかろう。その条件とは?」
「私達の入団を公にせず、今まで通りの活動を許して欲しい。これだけです」
簡単に言えば、イグさんやリアさんみたいな扱いをして欲しいということだ。
理由としてはいくつかあった。
一つは長年、拠点としていたフェアリーギルドを……プリン親方が治めるあの街を離れたくないから。
二つはチームメンバーの住むあの家を手放したくないから。元々はティールが一時的に住むための家だったけど、今ではチームの家になっている。私達が学生でなくなっても、ともやしーくんはこれからがある。あの街で友達と同じ学校へ行ったり、過ごしたいだろうから。
まあ、家の所有権云々はこれからブライトさんに交渉するとして……とりあえず、あの街を離れるつもりはない。少なくとも、しーくんが学業を修めるまでは、だ。
私の言葉を最後まで聞いたルーメンさんはゆっくりと頷く。
「うむ。その条件を受け入れよう。まあ、もとよりそのつもりじゃったしな。……あまりこういう言い方はしたくはないが……こちらの目的はあくまでラルの持つ“時空の叫び”を保持すること。それが達成できるのなら、どんな条件でも可能な限り受け入れる所存じゃ」
だろうな。
何としても私の能力を確保したいルーメンさんがこれくらいの条件で断る理由なんてない。無理難題を突きつけてる訳じゃないもの。
ルーメンさんが恐れているのは、自分の知らないところで祖先の過去が暴かれること。それだけなのだから。
「しかし、本当にこの誘いに乗ってくれるとはなぁ……この結末になるのなら、報酬金をあそこまで底上げする必要もなかったの? まあ、結果論じゃが」
……今、何つった?
私とティールがポカンとしていると、アルフォースさんが笑みを浮かべたまま、ルーメンさんさんの肩を叩く。
「親方? 本音が少し漏れていますよ」
「む? おっと、これは失礼」
いやいや、あれを聞いてそうですかとスルーできるほど、人間できてねぇぞ!?
「報酬金ってぼくらが受けた依頼の報酬のこと、ですよね? あの高額金の」
「ここまできたら、お互い隠し事はなしにしましょう、ルーメンさん?」
「う、うむ。……そうじゃなあ」
言い淀むルーメンさんだったが、「実は」とあの謎にバカ高い報酬について話してくれた。
「あれはラルが入団を断った際の迷惑料込みの金額だったんじゃ」
迷惑料?
「例えば、ラル達が未踏のダンジョンへ赴いたとするじゃろう? その際にワシのお抱え隠密部隊がお主らを動向を窺う……みたいな迷惑料じゃ♪ 一応、プリンにはこの事を伝えた上で許可はもらっておったんじゃが」
……つまり、なんだ?
断っていたら、今後、探検隊として活動し続ける限り、監視が着いてたってことぉ!?
ルーメンさんの言葉を素直に受け取るなら、四六時中見張るわけではなく、あくまで、未開の地の探索、調査時のみの監視みたいだけど。……いや、それを許すプリン親方はどういう思考回路をしているんだ。馬鹿なのか。私のプライベートはないの!
「そちらが断ったとしても、ワシとしてはラルの能力を野放しにはできん。そのための策を用意していたという話さ」
過激すぎだろ、それぇ……?
なんか、強引に迫ってきたり、捕まえてきたりしてくるよりもタチ悪くない?
「結果的に、ラル達はワシの提案に乗ってくれた。今後、監視等を着けることはないから、安心しておくれ?」
「私としては、そうであって欲しいと願うばかりです」
どちらにせよ、ルーメンさんは私をフリーにさせるつもりはなかった。どちらに転んでも、私はこの人から逃れられないってことか。今回はお互い、穏便な方向でまとまっただけだ。……双方、利益のある方を選べたってことかな。少なくとも、私は得をしている……と、思う。こちらのルートで間違ってなかったと思いたい。マジで。
「……くそ。帰ったら覚えてろ、あんのセカイイチ馬鹿親方め」
「多分、話にならないと思うよ。諦めよう?」
諦められるかぁ!! 文句の一つや二つ、許される! 絶対に!!
プリン親方については、とりあえず置いておこう。今ここで文句言っても仕方がない。
「さて、お主らの入団の手続き等なんじゃが……お主らの卒業が近くなってから本格的に進める予定じゃ。そのつもりでいてくれると助かる」
今のところ、入団決定(仮)、みたいな扱いか。大体、学校を卒業するか決まってからだもんね。できないことはないと思うけど。
「ふむ。ギルド入団の件はこれで終わりなんじゃが……ラル、ティール。この後、少し時間いいかの?」
? なんだろ? ルーメンさんがそう言うのなら、別件か?
私とティールはお互いの顔を見合わせ、首を傾げるものの、時間は空いているので問題はないと頷いた。
「ちと、相談がしたくての。……二人はここを発った後、そのまま海の国へ行くんじゃったな」
「はい。私としーくんもティールの里帰りに着いてく予定です。せっかくなので、しーくんに海の国、見てもらいたくて」
「里帰りは母がなんかうるさいんで、仕方なくですけど」
まだツンツンしてるなぁ~……まあ、ティールは最初から嫌々ではあったけど。
不満そうな表情をしていたティールだったが、ふっと表情を和らげる。
「……まあ、父と話すいい機会かなって。ルーメンさんとの話を繰り返して、そう思ってます」
……なんだ。前向きじゃん。
未だに里帰りを嫌がるから、ルーメンさんとの話で得られるものがなかったのかと思ったけれど、そんなことはないらしい。
ティールはちゃんと前を向けたんだね。
「……? 何、ラル。嬉しそうに笑っちゃって」
「ん? いや、楽しみだなって思って?」
「ぼくは別に楽しみではないけど……君が楽しみなら、まあ、よかったよ」
またまたぁ? なんて、いじっても不機嫌になりそうだな。やめた。
「そうか♪ そう思ってくれたのなら、ワシのくだらん話も役に立ったんじゃな~♪」
「くだらないなんてそんな……!」
「ほっほっ♪ と、話が脱線してしまうな? 相談というのは、ラル達の里帰りにツバサ達も同行させて欲しいんじゃ」
お? ツバサちゃん達も海の国へ行くってことか。私は構わないけど。
「ツバサ達って言うと……?」
「ツバサ、アラシ、レオンの三人じゃ。ツルギはここでの仕事があるから、同行できんでな。すでにあちらには話を通してある」
あら、ルーメンさんらしく用意周到。
あちらってことは、ブライトさん達にってことだろうか。あれ、単なる観光ではない? 何か目的があって行かなきゃ行けないってこと?
「なぜ、いきなり三人の海の国行きが決まったのです?」
「ふふっ……やはり、ラルは鋭いの。今、海の国ではとある噂が流れておる。それがツバサと……ティール、お主に関わるものでな」
「……え、ぼく?」
ルーメンさんはこくりと頷く。そして、どこか疲れたような顔をして、噂の内容を教えてくれた。
「まあ、なんじゃ。簡潔に言えば、『ツバサとティールが婚姻を結んでいる』という根も葉もない噂が貴族間に流れておるらしい」
ツバサちゃんとティールが……婚約者ってことかぁ!?
思わず、隣に座るティールの方を見る。ティールはティールで、私を見て、これでもかと全力で否定していた。となると、ティールも初めて聞いた、らしい。
「噂の発端はアズ。女性と酒の席であれこれ話しているうちに、なぜかワシの孫娘であるツバサの話になり、自身の孫のティールの話になり……気がついたら、『ティール王子があのルーメンの孫娘と婚約関係になるらしい』みたいな盛大に盛られた謎の噂が完成した」
お、お酒の力ってこと? 酒は偉大……いや、今回の場合、迷惑の何物でもないか。
しかし、『あのルーメン』ってどういうことなんだろう? そう言わざるを得ない何かをやらかした前例でもあるのか。
……なんだろう。ルーメンさんだから何しててもおかしくないと思ってしまう自分がいる。
「ラル? どうかした?」
私としてはどんな表情をしていたのか分からないけど、ティールから見て、気になる点でもあったのだろう。不思議そうにこちらを見ていた。
正直にルーメンさんについて考えてたって言ってもいいけど、本人にも聞かれてしまう。それはなぜか今ではないような気がしたので、とりあえず適当に誤魔化しておこう。
「いやぁ……ツバサちゃんまで私から奪うなんて、ティールは私に喧嘩を売ってるのかと思ってただけです」
「んなわけないだろ。これ、ぼくも被害者みたいなもんでしょ? っていうか、『ツバサちゃんまで』って何?」
「私を差し置いてツルギ君と仲良しになったくせに、私からツバサちゃんという天使すらも奪うのかって意味だ、この悪魔め」
「誤解だっつてんだろうが!!」
「今回の件、一番の悪人はアズじゃ。全く、あの阿呆め……昔っから余計なことしかせん」
あぁ、朝練で話題になってた噂の詳細ってこれかぁ……これのせいで、アルドアーズさんは地面に埋められてたんだな。
まあ、それはそれとして。
この噂とツバサちゃん達の海の国行きがどう関係するのだろう? まさか、ツバサちゃん本人が噂を否定しに行くとでも言うのか。
「当たらずとも遠からずじゃの。ツバサには貴族らの集まるパーティーに出席してもらい、噂の沈静化を図ってもらう。ま、ツバサには、うちの商品の宣伝をしてきて欲しいと伝えるつもりじゃがの~」
ツバサちゃんが噂の内容を理解できるとは思ってないですけど。しかし、渦中の人物の一人であるツバサちゃん自ら参加しても大丈夫なのだろうか? 悪化してしまいそうな気もするけれど。
「いや、ワシはツバサだからこそ沈静化する確率が高いと踏んでおる」
……? ふーん?
ルーメンさんがツバサちゃんを使って、どんな風に沈静化しようとしているのかさっぱりだ。しかし、ルーメンさんの考えるそれが一番よい手だと言うのなら、それを信じる他ない。
「ここまでの準備が一番面倒じゃったわ……パーティーの選別、招待状の返信、参加者の洗い出し……これなら、普通の仕事をやっとる方が何倍も楽じゃよ」
準備していた時を思い出しているのだろうか。ルーメンさんにしては珍しく、遠くを見つめ、すっと目が死んでいった。それ程までに苦労したのかと同情と哀れみを感じてしまう。
……ツバサちゃんが行くのは分かるが、残りの二人はなぜ?
「ん? あぁ……元々、アラシはあちらの騎士団との合同訓練が控えておってな。それのために行くことが決まっておった。そして、その間、レオンにはツバサの付き人役をしてもらうつもりじゃ」
ふむ。アラシ君は騎士団の仕事。ツバサちゃんは明けの明星の商品宣伝……もとい、噂の沈静化。そして、レオン君はアラシ君のいない間、代わりにツバサちゃんの護衛役ってわけか。
ツバサちゃん達が同行したい理由はわかった。とは言え、私は里帰りするティールのおまけみたいなものなので、どうするかは彼が決めればいいと思う。
ティール的にはどう? 私は口を挟む側じゃないと思うから黙るけど」
「えっ? いやぁ……ツバサ達はあっちでやらなきゃいけない目的があるだろ? なら、別行動する意味が分からない」
そりゃそうだ。どうせ、あっちで合流するんなら、最初から一緒に行けって話だわな。
「と言うことなので、私達は構いませんよ」
「すまんの~? この後、ツバサ達にもこの事は伝えておくからの。当日はツバサ達をよろしく頼むぞ」
了解です。
今度こそ、話は終わりだな。帰るか~?
私はティールに目配せをして、ソファから立ち上がるように促す。彼も小さく頷き、それに従った。
「ラルさん、少しよろしいですか?」
え、今度はなんだ……?
私を引き留めたのは話の間、沈黙を守り続けていたアルフォースさんだった。
「僕から伝えたいことがありまして。そこまでお時間は取らせません。なので、ティールくんは先に雫くんのお迎えに行ってもらえますか?」
ツバサちゃんのところでお留守番しているしーくんを気遣っているのか。或いは、ティールには聞かせられない話なのか。それとも、私一人で事足りるような話なのか。
……全く心当たりがないだけに滅茶苦茶怖いんですけど!?
ティールはちらりと私を見るものの、私が頷いて見せれば、「分かりました」と一言残して、部屋を出ていく。
アルフォースさんが私に話なんて珍しい。大体、─ルーメンさんがいるとは言え─アルフォースさんと二人でってなんだ。共通点も特にないけど。
立ち上がったばかりのソファに再び腰かけ、じっとアルフォースさんを見据える。アルフォースさんも先程はずっと立っていたけれど、私の正面、ルーメンさんの隣に座り、ふぅっと息を吐く。
……一体、何があるというんだ。



~あとがき~
上手く切れなくて長くなってもた。
すんませぬ。

次回、アルフォースの話とは。

原作の空と海では完全フリーのベテラン探検隊なんですけど、レイ学ではギルドに再びお世話になる世界線です。せっかく、お互いのキャラが絡む話なので、こういうのもありかなぁと相談した結果ですね。
ゆーて、大きく変わることもないんですけどね!

ではでは!