satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第327話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ラルとアルフォースさんのお話が終わりました。
今回は因縁の(?)対決です。


《L side》
約二週間程の滞在をしたこのスプランドゥールとも今日でお別れ。……ということで、スプランドゥール滞在最終日。
ツバサちゃん達と向かうことになった関係で、移動手段もルーメンさん側が用意してくれるとのこと。そのため、午後にこの街を出る手筈になっているとルーメンさんから聞いていた。
その時刻に間に合うよう荷物もまとめ終わっているし、今回、お世話になった人達との挨拶等々も終了している。
後は、予定時刻まで部屋でのんびり過ごす──つもりだったのだが。
「なんでこんなことに」
そう問いかけても、それに答えは返ってこない。当然だ。目の前の人物は答えるつもりがなさそうだから。
部屋にいる予定だった私は中庭にいるし─ついでにティールとしーくんも─、目の前には刀を構えてやる気満々なツルギ君の姿がある。

──こうなった経緯を思い返すと、本日の朝まで巻き戻る。
海の国へ出立する関係で、朝練参加も昨日で最後にしていた。そのため、いつもより少し遅い時間に目を覚ました。
ふわりと欠伸を漏らしつつ、大きな窓まで歩み寄ると、そこのカーテンをシャッと勢いよく開ける。
窓から覗く空模様はご機嫌そのもので、嫌な雲一つない爽やかな晴天だった。
「うん。……これぞ、絶好の旅立ち日和ってやつだね」
遠出すると分かっているのに、雨だったり曇り空だったりしたら、気持ちも沈んでしまうというものだ。暑すぎるのは勘弁だけど、どうせなら気持ちよく晴れている方が嬉しい。個人的には、だけど。
私はティールに起きるように声をかけつつ─全く意味ない行為でもあるけど─、身支度を済ませ、テキパキと小物類の荷物もまとめてしまう。
そんなことをしていると、ティールのベッドがもぞもぞと動き、むくりと体を起こす人物が一人。
「ん~……おはよー……ラル~」
「うん。おはよう、しーくん。よく眠れた?」
「ん。……ねれた!」
それは何より。じゃあ、隣ですやすや眠ってるティールを起こしてくれると嬉しいな?
「あい! おこす!」
幼児の方が先に起きるんだ……それでいいのか、ティール君や。
最早、慣れた光景ですらあるが、しーくんにこれでもかとぺちぺちされ、激しくゆっさゆっさされて、ようやく身動ぎするティール。
「おーきーてー! ティール!」
「うー……」
しーくんの必死の努力により、ティールはようやく体を起こす。しかし、寝惚けているのかなぜかしーくんを撫でつつ、メトロノームみたいに体をゆらゆら揺らしていた。
「起きてる?」
「あー……おき、ては……いる、とおもう……うー? あ~……ねっむい……」
いつものことではあるが、これは覚醒するまで時間がかかりそうだな。
「もう。準備終わったらごはん食べに行くよ?」
「はぁい……あー、あと、さんぷん……まって」
それくらいで覚醒するなら待とう。
というか、こんなんなら、今日も朝練出てもよかったのではと思いつつ、外の様子を見たくて、部屋の扉を開けた。
すると、そこにはつり目の白狐がちょこんと座っていた。口には何か手紙のようなものを咥えている。
「……ツルギ君の精霊?」
精霊らしい狐は返答はせず、代わりに受け取れ言わんばかりにぐいっと手紙を見せつける。
受け取らないと帰らなそうなんだけど、その手紙に嫌な予感がするのは私だけだろうか。
「それ……貰わなきゃ駄目っすか」
「……」
狐は無言。しかし、手紙を差し出してくるのは変わらない。仕方なく、その手紙を受け取ると、白狐はふてぶてしい顔ですっと立ち上がってどこかへ行ってしまう。
貰った手紙を見ると、表に『はたしじょう』と子供らしい字で書いてあった。
「……読まずに捨てるのはありか?」
『マスター、無慈悲だな』
くつくつと面白そうに笑いながら雷姫が現れる。
こちとら、今日、ここを出るっつってんだぞ! なんで最終日まで決闘をせにゃならんのだ。
『しかし、いつでも受けて立つと言ったのはマスターだろう? それを素直に信じ、こうして果たし状とやらを寄越す小僧の心意気を無視するのは如何なものかのぉ?』
「それを言われると……というか、雷姫はツルギ君の味方なの?」
『いや? マスターに勝てぬと知りながらも挑む姿勢を崩さんのは称賛に値するとは思う。しかし、あの態度は気に食わんから、捻り潰すがな』
結局、好きなのか嫌いなのか分からない感想だ。
私は雷姫に言われるがまま、手紙を確認してみる。内容はとってもシンプルで『午後一時! 中庭にて誘惑魔を待つ!』とだけ。
「私、いつまで誘惑魔でいなきゃいけないんだろう?」
『白狐の小娘と仲睦まじい光景を見なくなるまで?』
じゃあ、一生誘惑魔のまんまじゃん。
さて、どうするか。
無視もできなくはないけど、今更放置プレイもないか。ここまで付き合ったのだ。最後まで、彼の相手をするのが大人ってやつだ。
「一時、ね。出発ギリギリになりそう」

──とまあ、こんなことがあって、仕方なく受けて立つことになっている。
最終日はもうよくない? やらなくてもいいよね? って気持ちはなくなってないけども。
「よそ見すんなぁ!」
いつまで経ってもやる気を見せない私に痺れを切らしたのか、ツルギ君が怒りを露にしながら真っ正面から斬りかかる。それを紙一重でかわし、軽い身のこなしで再び距離を取った。
「大丈夫。よそ見はしてないよ、よそ見は」
まあ、余計なことは考えていたけれど。……とは言わず。
一度、避けられだけで諦めるはずもなく、ツルギ君は刀による攻撃をやめようとはしなかった。再度、正面から斬りかかってくる。
同じ手で攻撃するだけなら、何度だって避けてやろう。……と、思ったのだが、そう簡単にはいかせてくれないらしい。
私が回避行動を見せると、ツルギ君は瞬時にバックステップで後方へ飛び退き、私の周りに地面からゴーレムを数体呼び出して、逃げ場を塞ぐように取り囲む。
あらぁ? ゴーレムを倒すのなら、素手は無理かぁ……しゃーない。
「来て、雷姫」
『うむ。今更、我なしで終わらせるなんて水臭いぞ、マスター?』
呼ばずに終われるのなら、そっちの方がいいかなーと思うわけですよ、私はね?
しかし、そうもいかないのが現実だ。私は電流を放出しながら現れた雷姫を握り、ほんの少しだけ力を込める。
「雷姫、敵を一掃する」
『承知した』
「“雷撃─」
「その電撃、もらったぁぁぁ!!!」
ゴーレムを一掃するために“雷撃一真”を放とうとした瞬間、ツルギ君が私の攻撃に臆せず、ゴーレム達の隙間から現れた。
ツルギ君に当たるとまずいと咄嗟に攻撃を中止させようとしたのだが、その前にツルギ君の刀が雷姫に触れる。その瞬間、彼はニヤリと笑った。
「“ドレイン”!!」
恐らく、何かの魔法なのだろう。雷姫が纏っていた電気がツルギ君の刀へと流れていく。言葉通り、私の……いや、雷姫の電気を吸収しているのか。
以前、イグさんの言っていたツルギ君の得意魔法……“反射魔法”とは、これのことか。やってくれる。
『……』
「へへーんっだ! これでも食らえっ!!」
本来、私が放つ予定だった“雷撃一真”の電撃をツルギ君は全て吸収し、私に返そうと一歩踏み出した足はぴたりと止まる。
「うぐっ!?」
突然、ツルギ君は顔を歪ませると、その場に倒れてしまう。それと同時に私を囲んでいたゴーレム達も土に還り、刀の電撃もバチンと大きく弾け、宙へ消えてしまった。
「……雷姫、やり過ぎ」
『はん。童の分際で我を操ろうなどするからだ。罰当たりな小僧めが』
「多分、ツルギ君は技を反射したかっただけで、雷姫を操ろうとした訳ではないかと」
『何を言う? 我が作り出した電気を纏おうとしたのだ。それだけで罪深き行為であろう?』
……左様ですか。
ツルギ君の倒れた原因は雷姫だ。
雷姫はツルギ君が“ドレイン”を発動させたのと同時に彼がコントロールできない位の電気を流したのだ。
そんな雷姫の流した強力な電気に耐えられなかったツルギ君は重度の麻痺状態に陥り、ばたりと倒れてしまったのだろう。
子供相手に容赦ない雷姫も大人気ないけれど、未然に防げなかった私にも非はある……かな。いや、こんなん防ぎようもなかったけども。
私はため息混じりに雷姫を鞘に納めると、遠くで観戦していたティールに向かって大きく手を振った。
ティール、麻痺治しのポーションちょーだい! ツルギ君、雷姫の制裁、受けちゃったみたーい!」
「うえぇ!? ちょ、ちょっと待っててー!」
ティールがあわあわとポーションを探しながらこちらに近寄ってきて、見つけた小瓶を私に手渡す。
やれやれ、ティールが持っててよかった。
「あ、ラルさーん! こちらの準備は終わりましたよー! ラルさん達の方は……って、ツルギ!?」
ツルギ君にポーションを飲ませていると、遠くの方で手を振りながらツバサちゃんが近寄ってきた。が、中庭の真ん中で倒れる実の兄を見つけ、慌てて駆け寄ってくる。
「な、何があったんですか!? ツルギ! 大丈夫!?」
「あ~……気にしないで? いつものだから。今回はちょーっと雷姫の怒りに触れただけ。ポーション飲ませたし、大丈夫だよ。私のお手製なので、効果と即効性は保証する」
まあ、私がというか、ティールが、だけどね。私は滅多に麻痺状態になんてならないし?
「な、なんだ……よかったぁ」
心からほっとした様子で安堵の表情を浮かべていた。まあ、普通はびっくりするわな。
「うぅ……っ」
「ツルギお兄ちゃん! だいじょーぶ?」
ポーションが効いてきたのか、ツルギ君はゆっくりと体を起こす。しかし、しーくんの心配の声には反応せず、泣くのを我慢しているのか、小さく体を震わせていた。
「……結局、最後まで……ラルから一本も取れなかった……っ! 僕だってツバサにかっこいいとこ、見せたかったのに……!」
「ほえ……? ツルギ?」
不思議そうにするツバサちゃんをよそに、ツルギ君は悔しさからから声を震わせ、俯いたままポツリと呟く。
「僕……弱いまんまじゃん……」
おおっふ……この二週間、果敢に私に挑んできたメンタルはどこへ。うーむむ……ツルギ君を自信喪失させたまま、ここを離れるわけにはいかないよなぁ。
「いや、そんなことはないと思うけどね?」
「そんなことあるもん! 現にラルに一回も勝ててないじゃないか!!」
私の言葉に勢いよく顔を上げ、涙を溜めた目で睨み付けてくる。
なんで、一番戦ってきた相手の言葉を信じないの、この子。
……これは私が何を言っても否定するんだろうな。それじゃあ、意味がない。
「……はぁ。ティール、頼んだ」
「ん、了解。任せて」
私は一歩引いて、ティールにバトンタッチする。かなーり悔しいが、ツルギ君は私の言葉より、ティールの言葉を聞くだろう。そう思って、私は身を引いた。
「確かにツルギは今日まで一度もラルを倒せなかったけど、だからって弱いままだとはぼくは思わない。確実に強くなってるよ」
「……ふえ?」
ティールの優しい声にツルギ君は不思議そうに彼を見上げる。ティールは優しく微笑みかけ、ツルギ君と同じ目線の高さに合わせた。
「最初の頃はラルにあれこれダメ出しされてたけど、今はそんなことないだろ? 気配の消し方、刀の使い方、攻撃方法……前よりたくさんの戦い方を覚えたんじゃない?」
「……ん」
「それに結局、不発だったけど……ラルに技を撃たせるまでになったんだ。今は勝てなくても、ぼくらがここのメンバーになって……来年とか一回は勝てるかもしんないよ。その努力を惜しまなければ、ね」
ティール……!」
ぽんぽんっと頭を優しく撫でられ、ツルギ君は自信と元気を取り戻したらしい。それは大変よろしいのだけれど……一言いいか。
一年足らずで倒されるようなせっこい鍛え方しているつもりはないんだが!?
もちろん、こんなところで反論しても意味はない。これはツルギ君を慰めるために言っているのだ。ティールだって本心で言っているとは思わない。思わないけど……!
なんか悔しい!! なんか! 悔しい!!!
心の内を叫びたい衝動に駆られるが、もちろん、口にしてしまえばツルギ君のご機嫌が台無しである。沈黙が吉。分かってるけどぉー!
「そうだよ! 私もちゃんと知ってるよ? ツルギが戦い方、上手になってるって! だから、弱いなんて言わないで? かっこいいよ?」
「……!」
「ん! ラルとたたかう、ツルギお兄ちゃんはね、かっこよかったよー!」
「……雫。……へへっ♪ ありがとっ!」
……なんだかな。
「ねぇ、ティールさんや」
天使達が微笑ましい光景を見せてくれている横で、私はちょいちょいっと相棒の肩をつつく。それにティールは気づき、そっと立ち上がると私の横に立ち、何も言わずに耳をこちらに傾ける。
「色々言いたいことはあるけど、何? つまり、来年以降もツルギ君の相手をしろってことなの?」
「そりゃ、そうなると思うけど」
「……もうよくね?」
私の言葉にティールは少しだけ思案する。が、それも数秒で、にこっと笑う。
「それを決めるのはラルじゃなくて、ツルギだよ。最初に自分を相手にしろって仕向けたの、君だろう?」
ぐ……まあ、そうなんですが。
当時はそこまで続くとは思わないじゃないですか。え、私は年単位で彼の決闘に付き合うの? 嘘やん。



~あとがき~
なげぇ。

次回、さらば、スプランドゥール!
終わるで~

入れたかった説明が本編じゃ入らなかったので、ここで補足します。
ツルギ君が使った魔法、“ドレイン”とは、その名の通りです。相手の技をそっくりそのまま吸収し、カウンターする魔法。
なので、今回の場合、ツルギ君はラルが使おうとした“雷撃一真”の威力そのままうばっちゃうぞ☆をしようとしたんですね。雷姫が邪魔(?)したので、できませんでしたが。
というか、仮にできたとして、ラルに雷属性の攻撃はほぼ無意味(雷姫が吸収してしまうため)なんだけど……それはツルギ君が知るよしもないってことでね。はい。

今後、ラルVSツルギが見れるかどうかは今のところ不明です。相方の気分次第じゃないですかね(笑)
なんだろう。二人で仲良く(笑)休日を過ごす話とかあれば面白いかもなぁとは思うけど、ネタがなさそうなのと、需要もあまりない気もする。

ではでは。